(しまった!) 梓は自分のベッドから飛び起きるとドアノブに手をかけた。 (やられた!クソッ!) ガチャ!ガチャガチャ! 開かない。 ドン!ドン! (完全に私のミスだ!) チッ! 梓は軽く舌打ちすると、バックステップをして扉から離れる。そして・・・ 「ハアアアァァァーーーーーー・・・」 目を閉じて大きく息を吐き出す。全ての息を肺から追い出して数秒息を止める。 腹筋に意識を集中させて、身体中の筋肉を引き絞りながら息を一気に吸い込む。 目をカッ!と見開いて身体中の筋肉に行き渡っていたものを両手の拳に集める。 拳が震える!だが、まだだ!瞳を閉じる。 シーーーーーーーン・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・ピチョン・・・ 何処からともなく雫の音・・・ 「今だ!」 再び瞳を開き扉を見やる。 右腕をゆっくりと上に上げまた下ろす。次に左腕を同じ様に・・・ まるで白鳥が羽ばたきをするかの如く・・・ 「ダイヤモンド・ダストォォォーーーーーー!!!」 冷気が!扉が!見る見る凍り付いてゆく! 「ふううぅぅぅぅぅ・・・・・・」 梓は呼吸を正し、凍り付いた扉を軽くこずく。 パラパラパラパラ・・・ まるで湖に薄く張った氷が割れる様に粉々になる扉。 「おかしいと思ったんだよ。千鶴姉がお茶をくれるなんて」 昨日の事だ。耕一が遊びに来てもう三日になるその日。千鶴姉はあたしに何度も、 「ねぇん、梓ちゃん。耕一さんに手作りのお料理を作ってあげたいんだけど・・・」 と、信じられないくらい甘ったるい声で言ってきた。 あたしは何度も断ったのだが・・・ 「くそ、絶対昨日、千鶴姉の奴お茶に何か仕込みやがった」 今日は<何故か>昼過ぎまで起きれなかった。 扉の残骸を大股で越える。 「・・・ドアノブに鎖を巻き付けてやがる・・・」 残骸の中に鎖を発見した梓はそう呟いた。向こうは本気だ。 (殺らなきゃ・・・耕一が・・・) 「!?」 その時、鎖が廊下の角に向かって引っ張られた。 「千鶴姉か!」 しかし角から出て来た者は・・・ 「!?・・・初音?」 ピンク色の妙な物を着て出て来た者は初音だった。 「ご、ごめんなさい。梓姉さん・・・でも、こうしたら朝ご飯、私の分は出前してくれるって言うから・・・」 「朝ご飯?まだ食べてないの?」 「うん・・・千鶴姉さんが納得出来る物が作れないって・・・」 「耕一はまだ無事なんだな」 「うん・・・たぶん・・・」 「だったら、まだ間に合う。どきなよ、初音!」 「だめ!」 じわり・・・二人の間隔が狭まる。 「だめなの・・・このネビュラの鎖の中には、誰も入る事は出来ないの」 「えっ!」 梓は足元を見た。数本の鎖が波状に広がっている。あと一歩で最初の鎖だ。 (・・・・・・・・・) しばらく考えて梓は不意に思い付いた。 「・・・・・・そっちは居間・・・こっちは」 と言って梓は姉妹達の部屋を指差した。 「初音の部屋。これ以上邪魔をするなら、あんたの部屋に入って初音が録ってた、 電撃大作戦の録音テープ全部握り潰すわよ!」 「そ、そんな!」 あからさまに顔色を変えて驚愕する。 「さっ、どうする・・・」 そう言って後ろを向いて初音の部屋へと歩いて行く梓。 「解かったわ・・・」 ジャラジャラと鎖が短くなり、涙目になった初音が道を開ける。 「そうそう、わかればいいのよ」 梓はクルリときびすを返すと居間へと向かった。 初音は泣きながら部屋へと走った。 「あっ、お姉ちゃん・・・」 「ん・・・何」 居間へと向かっている梓は足を止めた。 自分の部屋の扉の影から初音が声をかけてきた。 「あの・・・オムライスって卵にご飯が入っているからオムライスでしょ。 じゃあ、あんこが入ったら何になる?」 「えーと・・・オムあんこ?」 「もう一回」 「オムあんこ」 「ちょっと早口で」 「オムぁんこ」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・エッチ」 バタン!・・・・・・カチャ! 「・・・・・・」 ハッ!早く行かなきゃ・・・ 「耕一ぃー」 ピシャ! ふすまを思いっきり開ける梓。 そこには・・・ 三人と一匹が倒れていた。 楓は緑で、千鶴は何故かスコーピオだった。デスだ。こーなる事を予想していたからか・・・ 耕一は顔だけ出して壷に入っていた。 そしてタマは黒王だ。何故か黒王だっだ。近くに自称世紀末覇者は・・・居なかった。 「・・・・・・」 全員身体中から、カラフルな茸を生やしていた。良く見ると人の顔もある。笑っていた。 「・・・・・・・・・」 テーブルには鍋が乗っていた。蓋がしてあり中を見る事ができない・・・が、 時々見た事も無い色をした煙が立ち上っている。 「・・・・・・・・・」 ツツツツ・・・・・・ピシャリ。 「さ、寝るか」 恐らくこの家の中でもっともまともな意見を言い放ち・・・・・・梓は居間を後にした・・・ エピローグ 三人は倒れたままだ・・・・・・何処からともなく吹き込んでくる風が茸をさわやかになびかせる 書いた人・・・仮面慎太郎 梓は歩く、かつて、自分が憎しみだけで歩いたこの廊下を・・・・・・ 手伝った人・・・樋口シンタロー 風が梓の帽子を遠くへ飛ばす・・・その方向をじっと見る梓・・・ スペシャルサンクス・・・まさた館長 ドアの残骸をジャンプで飛び越え、ベッドの上で大の字になる・・・ スペシャルサンクス・・・読んでくれている人達 初音は一人テープを聞いている・・・そう、電撃大作戦を・・・後に始まるであろう電撃大賞のテープの横で・・・ 風は心の痕まで癒してはくれない・・・ なぜなら・・・人は痕によって成長するものだから・・・ fin シリアス(?)/痕/梓 コメント・心の痕は癒えない・・・人々の持つ自分だけの物 ############################################# 初心者仮面でっす。しょしんしゃカリオモテって読んで下さい。 レス!いっきまーす。 睦月周様・・・>8月の魔法 笑った。サイコー。 くま様・・・>第四話 自分には一つしかネタはわからなかった・・・(しくしく) セリオはよかったよ・・・ 久々野彰様・・・>WA 2行ss 家庭教師とケアレスミスがツボに入ったヨ。 感想ありがとうございます。 紫炎様・・・>CCマルチ 千鶴さんのスタンド名は・・・やっぱりホワイト・アルバム?それとも、THE・ワールド? >ボードの名前決めてください よしっこの初心者一肌脱ぎましょう。 ボード名・・・「イヤーズ」 マルチの耳にとりついてそこから高出力のエネルギーを出す。 また、数mならコントロールも可。 ボード名・・・「薔薇(ローズ)」 マルチのお父さんとお兄さんをくっつけ(バキィッ!) (失礼しました)(括弧の中の住人樋口さんまたの名を理性) 感想ありがとうございます。