リーフ童話・龍神の玉(TH編) 投稿者: 仮面慎太郎
      龍神の玉

昔々、ある山間の村に浩之と言う一人の狩人が住んでいました。
浩之は自他共に認める狩りの名人で、村一番の腕前でした。
ある日、浩之はいつもの様に、森に狩りに出かけました。
しかし、その日は、兎一匹、小鳥一羽見つかりませんでした。
「どーなってんだ。獣の気配がしねーじゃねーか・・・家じゃあかりが待ってるっていうのに・・・」
おかしいと思いつつ、獲物を求めて浩之は森の奥深くへと、足を運びました。
森はいつもより、大きく、暗く、そんな感じがしました。
ピュイイイイィィィィィィィィン
「なんだ、この気配は・・・ララァ・・・いや、アムロか!」
浩之は気配の元を探しました。気配は森の奥からしてきます。
浩之は森の奥へと気配を頼りに進んで行きました。
しばらく行くと、大きな岩の下から一匹の白い蛇が顔を出していました。
「大丈夫かよ・・・お前が気配の主か。可哀相に・・・よし!待ってろよ」
そう言うと浩之は岩を押しはじめました。
「この間の嵐で崩れ・・・ウオォォ・・・お、落ちたん・・・だな・・・クソ、どけよ」
「そーなのよ。もぅたいへん。志保ちゃんピンチって感じよね」
「フンムムム・・・そうそう、志保ちゃんピンチっておい!」
「なによ」
なんと、その白蛇は人の言葉が喋れるのです。
「お・・・おま、おま今・・・」
「何よもう。おまおま、だなんてあーもーいやらしい。そんな事だと、18禁になっちゃうじゃないって
 もともと18禁かこれ。てへ、志保ちゃん大失敗、あっ、ほら休んでないで岩動かしなさいよ
 まったく・・・男でしょ!」
「・・・・・・」
「な、なによ。あっ、もしかしてこんな美少女と森の中で二人っきりになって、良くない事でも
 考えてんじゃないでしょうね」
「・・・あっ、そうか」
「何よ」
「さっきの気配はクロウ・カードだな!なんとなく森の入り口にいそうだ。急いで引き返さないと」
「ち、ちょっとちょっと」
「よし、まってろクロウ・カード!」
そう言うと、浩之は何も見なかった事にして、もと来た道を引き返した。
「ねー、まってよー」
「もう出られるだろ」
「あっほんとだ」
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・
「まったく・・・散々だったよ」
今日の夕食の席。
「大変だったね、浩之ちゃん」
「まったく・・・結局、収穫ゼロだぜ・・・」
おつゆをよそいながら、浩之の妻あかりは夫の疲れを癒す。
「・・・・・・」
「どーした、あかり」
「えっ、だって・・・浩之ちゃんの・・・お嫁さん・・・」
「ば、バカ。それは設定上・・・」
「でも・・・」
浩之はあかりの「お嫁さん」に過敏に反応した。
・・・・・・・・・
沈黙。
「も、もう寝るぞ」
「えっ!」
・・・・・・・・・・
「あ、いや・・・だから、明日にならないと話しが進まないだろ」
「あ、うん・・・そうだね。・・・ふたをして・・・と」
「なぁ」
「ん?なぁに、浩之ちゃん・・・」
「布団・・・」
「えっ」
「どうやって敷こうか・・・」
・・・・・・・・・・
沈黙・・・
そのころ・・・
「行かせろ!佐藤!俺は行かねばならんのだ」
「行かせない。浩之の為に・・・行かせはしない!」
家の前でにらみ合う二人。
「お前は藤田の事が好きなんだろう?なら、たとえ一夜だろうと神岸さんと・・・」
「だまれ!矢島君!僕は・・・それでも・・・」
「・・・・・・・・・どうしてもか・・・」
「あぁ!」
「なら・・・仕方ない・・・か」
「!?」
「はぁぁぁぁっっっっ!」
矢島の片腕が龍の様に見えた。一瞬後、
シャアアアァァァァァァ!
地面を這うように伸びる腕。雅史は辛うじて身体を捻る。
ズン!
鈍い音がして、後ろの木が倒れる・・・
「佐藤、貴様は正しいのか」
「なんだって」
「他人の恋路を邪魔して・・・貴様は正しいのかと聞いている!」
「矢島君・・・」
・
・
・
・
「なぁ・・・あかり」
「何、浩之ちゃん・・・」
明かりの消えた夜。
「俺達、夫婦・・・だよな」
ビクッ
隣で寝ているあかりの動きがはっきりわかる。
「うん・・・」
・・・・・・・・・・・
沈黙・・・夜はまだ長い・・・
・
・
・
翌朝・・・
今日も今日とて浩之は朝早くから狩りに出かけた。
家の前にピエロの仮面を半分に割った様な大きな板が突き刺さっていたが、
あまり気にしなかった。
「今日の森は活気に溢れているな」
森の元気は感じとれる。
しばらく獲物を探していると、
「下を向いて・・・下さい」
と、人の声がする。
ふと下を見ると一匹の白蛇がいた。
「おお、お前は・・・」
「昨日は、私達の姫を助けて頂いて、ありがとうございました」
消え入りそうなか細い声で白蛇は言った。
「お館様が挨拶をしたいと申しておりますので、迎えにまいったしだいです」
言う事を言って白蛇は森の奥へと進んで行った。
「ついて来て下さい」
しばらく進と見た事もない広場に出た。
「ここは・・・」
「はい・・・お館様に許された者しか入る事ができません。しばしお待ちを」
・・・・
「えーと」
「・・・琴音とお呼び下さい」
「あの、琴音ちゃん・・・」
「はい」
「お館様ってどんな人」
「男であって男にあらず、女であって女にあらず。また、神であって神にあらず。
 そして、その全てでもあるもの・・・」
「ふ、フーン・・・そうなんだ・・・」
「えぇ」
「あのさ」
「はい」
「結局、何なワケ」
「・・・・わかりやすく言うと、この森の主、龍神様です」
その時、一台の「かご」がこっちに向かってやって来た。
「どうぞ・・・」
そういうと、琴音ちゃんは何処へと去って行った。
・
・
・
「かご」から降りると、深い霧の中の立派な屋敷に着いていた。
「ここか・・・」
「やっほー、ヒロ」
「・・・お前は・・・」
声の方へ振り向くとそこに白蛇の姿は無く、代わりに一人の少女が立っていた。
「私よ。この格好の方がいいでしょ」
「・・・あぁ」
「さ、こっちに来て。お父様がお呼びよ」
「お父様?」
「あら、聞いてないの。私はこの森のお姫様よ」
「さ、行こうか」
「・・・・・・・・・」
長い廊下の向こうにこれまた立派なふすまがあった。
「この中よ。・・・失礼します」
スススーー
そこには、広いお座敷に一人の男が座っていた。
「はじめまして、浩之殿。娘が世話になったね」
「いえ、そんな」
「そーよ、そんな大した事じゃ・・・」
喝ぁぁぁぁぁーーーーーーーつ
「うわあぁ」
「これはすまんな、浩之殿。志保下がりなさい」
「はーい」
「ところで、浩之殿。わしとしても、君に何か礼をせねば気が済まんでな。ここに呼んだわけじゃ」
「礼・・・ですか」
「うむ・・・ついてまいれ」
そう言うと龍神様は座敷の奥の廊下へと歩きだした。
「色々な部屋がありますね」
「うむ」
先がぜんぜん見えないほど長い廊下の両脇に幾つもの部屋があった。
「この部屋は108部屋あり、それぞれに種類別けしてある。この中から三つだけお前の好きな物を
 やろう。絶対に獲物を捕らえる弓矢、性格が反転するキノコ、マヨネーズ納豆、朝起きるとクマに
 なるという、くまクマ茸、他にもいっぱいあるぞ」
「龍神様」
「なんだ」
「あなたが今、持っているその玉がほしいのですが・・・」
「何!この玉がほしいのか」
「はい、さっきから気になっていたもので、他には何も要りません」
「うぅぅぅぅむ・・・」
「だめ・・・ですか」
「いや、わかった。ただし、この玉は使い方は難しいぞ」
「使い方?」
「左様。この玉を飲むと森の動物の話しがわかるようになる。ただし、この玉の秘密を他の
 人間に教えると、お前は石になる」
「石に・・・ですか」
「うむ。それでもいいと言うのならば、今この場で飲んでもらおう」
「わかりました。誰にも教えません」
「うむ。では」
浩之は玉を一息で飲みほすとそのまま倒れた。
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「ここは・・・」
気が付くとそこは森の入り口だった。
日も暮れかけて、そろそろ家に帰る時間だ。
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「寝るか」
「えっ」
「いや、だからな・・・」
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・
「燃え上がれ、俺のコスモよ!!」
「たかがブロンズのくせにぃぃぃぃ!」
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・
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、浩之ちゃん」
ねーねー・・・・ってる?
んうん・・・でしょ・・・
・・・うそう・・・
「なっ、なんだ、声・・・そうか。あの小鳥の声か・・・聞こえるんだ」
それからの狩りは楽だった。どこに何が住んでいるかは、動物達の話しを聞けば判ったからです。
しかし、その生活は長くは持ちませんでした。
ある日森の動物達の大移動が始まったのです。
最初は鳥達が次は兎や狐、最後には熊ですら森からいなくなりました。
浩之は不思議に思い、森の中で聞き耳を立てていました。すると、
何と、山の向こうから鉄砲水が来ていて、この山間の森や村が湖の底に沈んでしまうそうです。
それを知った浩之は早速、村の皆の所へ行き逃げるように説得しました。・・・・・・
・・・・・・が、誰も浩之の事を信じようとはしませんでした。
「お願いだ、信じてくれ。村長」
「せやかて、そんな事言われても・・・」
「なぁ、頼むよ」
「・・・あかんあかん。村捨てて、どないせぇゆうんや」
「でも・・・雅史、雅史は信じてくれるよな・・・」
「・・・うん、でも浩之、なんでそんな事知ってるの」
「そ、それは」
「浩之ちゃん・・・」
「あかり・・・お前は早く山の上に逃げろ」
「浩之ちゃんを置いて行けないよ」
「あかり!」
「やめろ、藤田」
「矢島か・・・」
「そう言う事ばかり言って・・・どれだけ神岸さんを困らせればすむ」
「・・・今あかりは、藤田だよ」
「認めん!だいたいお前の話しには信憑性が無さ過ぎる」
「信憑性なら・・・」
「浩之ちゃん・・・」
「あるぜ」
「ふん、何処にだ」
「俺を見ていろよ」
浩之は村の皆の前で龍神様の話しをした・・・
皆は信じなかったが、浩之の身体が石になりはじめると、とたんにシーンと静まり返った。
「そ、そこで・・・鳥達の話し・・・を聞いて・・・それ・・・で・・・」
「わかったから、もうわかったから。お願い喋らないで」
「皆、聞いたな。藤田君の今の話し。はよ、山の上までのぼるよ!」
村人達は、蜘蛛の子を散らす様に山の頂上目指して走り去った。
「藤田・・・俺・・・俺」
「気にするな、矢・・・島」
「わかった。神岸さんはまかせろ」
「てめぇ・・・」
「浩之ちゃん!浩之ちゃん!・・・うぅっ・・・」
「泣くなよ・・・あかり・・・」
「浩之・・・」
「雅史か・・・」
「あ、あかりを・・・たの・・・む」
「あぁ・・・」
「は・・や・・・く・・」
完全に浩之は石になった。雅史は俯きながら、泣き叫んでいるあかりの手を引いて山へと向かった。
途中・・・
「矢島君・・・」
「どうした、佐藤」
「あかりちゃん・・・お願い」
「?佐藤?」
「お願いしたからね・・・きちんと安全な所まで連れて行ってね」
「おい、佐藤」
雅史はまたふもとの村まで降りて来た。
「ハァ・・・ハァ・・・ごめんね・・・浩之・・・龍神ーーん聞こえていたら出て来ーい」
「なんだ人間・・・」
目の前に何時の間にか白蛇が無数に這っていた。
「頼む、浩之を元に戻してくれ」
「だめだ、あいつは約束を守れなかった。罰は受けてもらう」
「その罰を僕に受けさせてくれ」
「だめだ。それでは罰にならんではないか」
「しかし・・・」
「いいんじゃないの。お父様」
「志保・・・」
「親友の犠牲の上で生きなければならない一生。十分すぎる罰ですわ」
「・・・そうか・・・わかった」
「龍神・・・ ・・・ありがとう」
・
・
・
・
「・・・・・・・・!」
「う・・・・ん」
「・・・・・!・・・・・・・!」
「え、ここは・・・」
「・・・・・ちゃん!よかった」
「ここは、いったい・・・」
見覚えのない場所、目の前の大きな湖・・・自分はいったい・・・
どうしてここに・・・自分は石になったんじゃあ・・・
「雅史!」
「え・・・浩之・・・?」
「ばか野郎。どうして・・・どうして俺何かの為に」
「浩之・・・どうして・・・」
「龍神様が来てくださって・・・俺の石化を解いただけで疲れたからってお前を石にしないって」
「龍神・・・様が・・・」
「あぁ、村は沈んじまって、玉も返したけど・・・お前が・・・お前が・・・」
「・・・浩之・・・」
むかし、むかし。大きな大きな湖が出来た時のお話でした。

                おわり

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制作時間6時間感想書く気力無し。
くま様・・・蜜柑もいいけど罪と罰がサイコー。
い、以上・・・(つかれたー)


    さぁ、次回もおもしろマッサシいゼ(仮)