とぅ・まさし 投稿者: 仮面慎太郎
第四話  「オレガマモッテミセル」

子供の頃、あいつが怪我した時、俺とあいつはただ見ているだけだった。
・・・ナニモデキナイ・・・
あいつはたいした怪我でもないのに、泣きじゃくっていた。
・・・何モ出来ナイ・・・
俺達はただ見ているだけだった。
・・・何もしてやれなかった。
あいつのきれいな足に、血の赤だけが妙に印象的だったと覚えている。
・・・何か出来ると今なら思う。もう子供じゃないんだから・・・三人とも・・・

雅史は俺のガクランを掛けられ、先輩の部室で横になっている。
だが、寝ている場所はベッドの上ではなく先輩の描いた魔法陣の上、
硬く冷たい床の上だ。俺はしばらく雅史を見つめながら、今の現状を
認めようとしている。俺なりに、とても冷静になろうとして。
・・・雅史を見つけてすぐに、先輩が屋上に上がって来た。
先輩の姿を見た瞬間、雅史は崩れる様に倒れた。
四人掛かりで部室まで運び込み、先輩の言うがままに雅史を横にした。
あかりと志保は、俺が帰らせた。先輩が出て来た以上ただ事ではないだろう。
あの降霊会の時の事件も記憶に新しかったし、先輩の顔が見た事も無いくらい、
真剣だったこともあった。
二人とも不満げだったが、いつもと様子が違う俺を見て何かを察してくれたのだろう。
・・・ただ、雅史は倒れたままピクリともしない。
今もそうだ。
「先輩・・・そろそろ話てくれないか?」
黒いカーテン越しに空が赤いのがみえる・・・気持ち悪いくらいに・・・
「・・・・・・」(コクン)
先輩はぽそぽと話し始めた。
その日先輩は雅史とあったらしい。おまじないの為、
俺の髪の毛がいるのだそうだ。
俺が気づかれるとだめだから、いつも一緒にいる雅史に声をかけた。
雅史は俺がいつも話しているので先輩の趣味を知っている。
それで散々悩んだ末、OKを出した。
雅史は先輩呼ばれて、この部室に一度来たらしい。知らなかった。
そこで、先輩は 雅史に聖水をかけ雅史に自分の思いを乗せたらしい。
そして、雅史は・・・
・・・先輩は話しを止めた。
「どうした?先輩。何、その先輩の思いが入った分、雅史の本来持っていた
防衛能力が無くなり・・・霊的に無防備になった・・・そこへ・・・
そこへどうした?先輩。そこへ・・・あの時呼び出して追っ払ったあいつが
雅史に乗り移った?だって?えっ、何、全部私のせいですって・・・そう
言われても・・・」
俺は大体理解した。
「・・・・・・」
「えっ、だから結界の中に入れて二人とも眠らせている?
俺は入っても大丈夫だよな?」
「・・・・・・」(コクン)
「それよりどうすりゃいいんだ。また他の部員達に助けてもらえないのか?
・・・えっ、さっきやってもらったって?あぁ、雅史が倒れた時か・・・って
じゃあ、あいつらでも眠らせるだけ・・・えっ、何、方法はある。
なんだあるんじゃん。でも、とても危険?んな事言ったって、
やるしかないぜ。で、どうやるんだ?」
先輩はまた、ぽそぽそと話し始めた。
「まずあいつを、俺の中に入れる・・・ふんふん。
そして・・・次に俺の防御力を上げる。えっ、防衛能力です?いいってどうでも。
んで、急にそれ上げてあいつを消滅させる・・・」
なんだ。簡単じゃないか。
「それなら早速やってくれよ。何、危険です、ってそれしか無いんだろ?
さっ、早く、先輩」
先輩はなにやら妙な液体を俺に振り掛ける。
「まず、今の雅史より住みやすい様に防衛能力を限界まで下げる・・・
それから・・・何、この作業中一番危険な事・・・限界まで一気に上げる・・・」
「なるほどね」
不意に聞き覚えのある声がした。
「志保!どうして」
「甘いわね、ヒロ。そーいう事なら私達だってって・・・
何してるの?」
俺はいつの間にか倒れていた。
「だいじょうぶ?ヒロ・・・」
「ダイジョウブダ・・・マサシハ・・・」
俺は薄れゆく意識の中で・・・
「オレガマモッテヤル」
とつぶやいた・・・
                    つづく・・・

#################################
お詫び  久々野様申し訳ございません。
      苦患の人様私にでありましょうご指導ありがとうございます。
長くなりましたので失礼します。
  追記  BEET様ありがとうございます。