雫(TH風) 投稿者: くま
(前置きは省略。一日目・朝)
 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……。
 カチッ。
 布団の中から手を伸ばし、目覚まし時計のスイッチをオフにした。

 ……あ〜っ。
 なんだ、もう朝?
 ゆうべ、ふとんに入ってから、まだほんの少ししか経ってないような気がする……。
 半分眠ったままの腕をのろのろと動かし、カーテンを開いた。

 眩しい朝の光が射し込み、部屋を明るく染める。
 どうやら外は、今日もいい天気らしい。
 ふとん越しに陽射しのぬくもりを感じつつ、僕は頭を傾け、時計を見た。
 7時30分。
 いつもの時間。
 でも、ベッドを出るのは40分になってからだ。
 それまでの10分間は、こうして布団の中でぼーっとしながら、体が目を覚ますのを待
つ。

 時計を見ながら、うつらうつらと寝たり起きたりを繰り返す、この10分間。
 ああ、一分一秒のありがたみをこれほどしみじみと感じることはないよ。
 それが、まだ……9分もある。
 なんて幸せなんだ……。

.
.
.
.
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 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

 ……う〜ん。
『長瀬ちゃん』
 窓の外から、受信し慣れた電波が流れてきた。
 あれは……瑠璃子さんの電波だ。

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

 ……いたたたた。
『長瀬ちゃん、起きてる?』
 起きてるよぉ。

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

『長瀬ちゃん。ね、長瀬ちゃんってば』
 ……瑠璃子さん。
 いい加減辛いから、電波で起こすのは止めて欲しいって言ってるのに。
 いくらしつこく言っても、ちっとも止めようとしてくれない。
 いつまでも子供じゃないんだから(意味不明)。

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

『長瀬ちゃん、遅刻しちゃうよ』

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりち
りちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり。

『長瀬ちゃんってば』

「……だーかーらっ、『電波』は止めてって言ってるのに!!」

 がばっ!
 ふとんから起き上がった瞬間、時計を見てギョッとなった。
 なっ、なにっ!?
 8時01分!?
 うわっ、まずいっ、いつもだったら、もう家を出てる時間じゃないか!
 僕は慌ててベッドから飛び降りた。

『ねえ、長瀬ちゃん、起きてってば』
 窓の外で、瑠璃子さんがしつこく繰り返す。
 ああっ、何度も何度も、強力な電波を放射してっ!
 近所に迷惑だろうに!
『長瀬ちゃん』
『もう起きたって!』

 窓に向かってそう電波を放射しながら、寝巻用のTシャツを脱ぎ捨てた。
 制服のズボンをはき、ハンガーに掛けられた新しいシャツに袖を通す。
 ボタンを止めて、靴下をはいて、制服の上着とカバンを持って、部屋から出た。

 だん、だん、だん、だん、だんっ。
 一段抜かしで階段を降りて行く。

 カバンと上着を下駄箱の上に投げ置くと、靴を踏んで手を伸ばし、カチャッと玄関の鍵
を開けた。
 ひと呼吸ほど置いて、扉が開く。
「おはよう、長瀬ちゃん」
 そう言いながら、にっこり笑顔で入ってきたのは、当然瑠璃子さんだった。

「呼んでもなかなか返事してくれないから、どうしようかと思っちゃったよ。……駄目だ
よ、朝ぐらいちゃんと電波を放射しなくちゃ……」
「……あのね、瑠璃子さん」
 その言葉を遮って、僕は言った。
「なに?」
 小首を傾げる、瑠璃子さん。
 僕はわざとらしく、ため息をついてみせた。

「……わざわざ家まで起こしに来てくれるのは、それはありがたいよ。助かる。だけどね」
「……?」
「あんなに強力な電波を放射しちゃダメだよ! 普通の人は耐えられないよ!」
「……で、でも、長瀬ちゃんは、やっぱり小さい頃からずっと長瀬ちゃんだし、これから
だって、私にとっての長瀬ちゃんは長瀬ちゃんだし、できればこのまま、ずっと長瀬ちゃ
んのままがいいなって……」
「そんなこと聞いてない」

(以下略)

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くま「ども。時節的には雫本編の後です。いいんでしょうか、こんなの」
川崎「もう一つネタはあったんだろ?」
くま「図書室のシーンを、橋本=月島兄、志保=沙織で選択肢が
    A、威力重視で破壊爆弾
    B、派手に破壊爆弾
   ていうのがね。長くなるから止めた」
川崎「どっちにしろ破壊爆弾か」
くま「それでは、また」