ある晴れた朝、それは起こった。 「いってくる」 がちゃっ。ゴン。 「なんだ?」 そっとドアの陰をのぞいてみると、段ボール箱がおかれていた。 中に入っているのは・・・柏木千鶴。 俺の姪だ。 「おはようございます、叔父さん」 体育座りをして箱の中に収まっている姪は、俺を見上げてそういった。 「や、柳川さん!! だめですよ、偽善者はちゃんと保健所に連絡しないと」 「やっぱり、そうか? ・・・って、俺が捨てた訳じゃないぞ、貴之」 「野良偽善者ですかね・・・。首輪とかは?」 「していないようだが・・・」 「引きちぎりました(はぁと)」 うむ、それでこそ偽善者だ。 「とりあえず保健所に行くか」 「困りますよ、今偽善者であふれかえってるんだから」 保健所の担当者はそういって俺たちを檻の前に案内した。 「本当だ・・・」 「どれくらいいるんだ?」 「ざっと五十人はいるね」 「嫌な時代だな」 「全くですよ」 とりあえず、引き取ってくれる人を捜すことにした。 「え〜、偽善者、偽善者はいらんかね〜」 「なんか僕たち、夜店のひよこ売りみたいですね」 「しかし売れないな」 「最近の消費者は賢くなってきましたから」 「限定モノには弱いと聞いていたんだが・・・」 俺の後ろで『限定一名!!今、雑誌で評判の偽善者!!』という横断幕が風に揺れてい た。 「・・・諦めよう」 「・・・賛成」 俺たちは、しょうがないので偽善者の不法投棄をしなければならなくなった。 (真似しちゃいかんぞ) 「この辺でいいか・・・」 俺の警察官としての良心がうずいたが、他にどうしようもない。 とりあえず涙なんか流しながら、夕日に向かって駆けてみた。 次の日の朝。 「「おはようございます、叔父さん」」 今日は二人に増えていた(しかも同じ顔で)。 **************************************** くま「ども。ひでぇ、の一言ですね」 川崎「わかってるならやるなよ」 くま「それでは、また」 タイトル:箱入り千鶴(偽善伝説) コメント:箱に入ってる(以下略)。 ジャンル:コメディ/痕/千鶴