箱入り千鶴(偽善伝説) 投稿者: くま
 ある晴れた朝、それは起こった。

「いってくる」
 がちゃっ。ゴン。
「なんだ?」
 そっとドアの陰をのぞいてみると、段ボール箱がおかれていた。
 中に入っているのは・・・柏木千鶴。
 俺の姪だ。
「おはようございます、叔父さん」
 体育座りをして箱の中に収まっている姪は、俺を見上げてそういった。
「や、柳川さん!! だめですよ、偽善者はちゃんと保健所に連絡しないと」
「やっぱり、そうか? ・・・って、俺が捨てた訳じゃないぞ、貴之」
「野良偽善者ですかね・・・。首輪とかは?」
「していないようだが・・・」
「引きちぎりました(はぁと)」
 うむ、それでこそ偽善者だ。
「とりあえず保健所に行くか」

「困りますよ、今偽善者であふれかえってるんだから」
 保健所の担当者はそういって俺たちを檻の前に案内した。
「本当だ・・・」
「どれくらいいるんだ?」
「ざっと五十人はいるね」
「嫌な時代だな」
「全くですよ」

 とりあえず、引き取ってくれる人を捜すことにした。
「え〜、偽善者、偽善者はいらんかね〜」
「なんか僕たち、夜店のひよこ売りみたいですね」
「しかし売れないな」
「最近の消費者は賢くなってきましたから」
「限定モノには弱いと聞いていたんだが・・・」
 俺の後ろで『限定一名!!今、雑誌で評判の偽善者!!』という横断幕が風に揺れてい
た。
「・・・諦めよう」
「・・・賛成」

 俺たちは、しょうがないので偽善者の不法投棄をしなければならなくなった。
(真似しちゃいかんぞ)
「この辺でいいか・・・」
 俺の警察官としての良心がうずいたが、他にどうしようもない。
 とりあえず涙なんか流しながら、夕日に向かって駆けてみた。

 次の日の朝。
「「おはようございます、叔父さん」」
 今日は二人に増えていた(しかも同じ顔で)。

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くま「ども。ひでぇ、の一言ですね」
川崎「わかってるならやるなよ」
くま「それでは、また」

タイトル:箱入り千鶴(偽善伝説)
コメント:箱に入ってる(以下略)。
ジャンル:コメディ/痕/千鶴