真・鬼伝説 最終章 Gift 第三話 投稿者: くま
・・・なんだここは? 
 プロトエルクゥたちの村の地下にこんな空洞があったとはな。 
 それはそれとして、奴は・・・。 
 ・・・見つけた。音叉のようなものを持った男。 
 俺は刀を抜きながら、素早く近づく。 
 一撃で仕留める。 
 ガキッ。 
 刃は、突然現れた男の鎧のごとき右腕で止まった。 
「・・・川崎。何のつもりだ?」 
「彼を殺してもどうにもならない」 
「どういうことだ?」 
「彼の意識は今、あの音叉のようなものに操られています」 
「ならば、それを破壊すればいい」 
 川崎を押しのけて歩き出す。 
「柳川さん!!」 
「俺にはこうすることしかできない」 
 自分に言い聞かせるように呟いた。 
「可能性を否定するわけにはいかないんだ。どうしてもというのなら、・・・力づくでも 
あなたを止める」 
「できるのか? お前に」 
「・・・やってみなければわからない」 
「その右腕にかけて、という訳か?」 
  
「地下にこんな巨大なものがあったなんて・・・」 
”ずいぶん前にこの区画は封鎖されたから。あれが超弩級精神波増幅器、『メルクーア』。 
全高30メートル位かしらね” 
「あ・・・」 
 『メルクーア』の頂上に人影が見えた。 
「全ての者に、我が意志を伝えよ!!」 
 彼は手にした『ギフト』を『メルクーア』に突き立てた。 
 蒼い光を放ち、『ギフト』が『メルクーア』と融合していく。 
 そして・・・、その持ち主すらも取り込んでしまった。 
”まずいわ・・・。『メルクーア』が暴走すれば物質界と精神世界のバランスが破綻して 
物質界が精神世界に飲み込まれてしまう・・・” 
「どうすればいいの?」 
”え?” 
「止めるにはどうすればいいの!!」 
”・・・『メルクーア』と同調して内部に潜るわ。そのあとはあなた次第よ” 
  
 どれだけの時が過ぎたのだろう。 
 ・・・俺は、どうなるのだろう。 
「こうしていると、スタジアムの一件を思い出す」 
 ジョー・ヤブキ。彼は、全身を硬質化させることすらできた。 
「俺を彼と重ねているんですか」 
「俺は負けたままでいる気などない!!」 
 柳川さんの渾身の突きが繰り出される。 
「くっ・・・!!」 
 突きを止めようとした右腕を、『神刃(カムジン)』が貫いていた。 
 右腕が崩れてゆく。砂が流れ落ちるように。 
”消える・・・のか?” 
「『ツァーン』!!」 
  
 ふと気づくと、見覚えのない景色が広がっていた。 
 見渡す限りの森と、ひときわ目立つ建造物。 
「もうすぐ『メルクーア』が完成するわね」 
「え?」 
 振り返るとそこには、笑顔の弾けるような女性がいた。 
 どこかで・・・会ったような・・・。 
「・・・グライス・・・?」 
「どうしたの? あ、わかった。ボーっとしてて話聞いてなかったんでしょ」 
 それじゃ、もう一回説明するわね。 
 そういってグライスは私に『メルクーア』のことを教えてくれた。 
  
 この星には争いが絶えなかった。 
 この星の人々は精神感応力を使えない。 
 それが原因だと思った。 
 だから、『メルクーア』を建造しようとした。 
 心と心をつなぐために。 
  
「この星の人々はすれ違いばかりを繰り返し、その手を悲しみの血で濡らしている。解り 
合うことさえできれば、そんな悲劇をなくすことができるのに」 
 『メルクーア』にはそれができなかった。 
 その言葉を私は言い出すことができないまま、時間ばかりが過ぎてゆく。 
 気が付けば、もう日が暮れてあたりは真っ暗だった。 
 いつの間にか、グライスもいない。 
「『メルクーア』には、一番重要なものが欠けている」 
 厳しい、でも優しい目をした男性が『メルクーア』を見つめていた。 
 やっとわかった。ここは『メルクーア』の記憶の中なんだ。 
 自分を作った人たちの想いをずっと守っていたんだ。 
「・・・ギフトさん?」 
 私がなぜ彼をそう呼んだのかは私にもわからない。 
 ただなぜか・・・そんな気がしたから。 
「なにかね?」 
「『メルクーア』に欠けているものって、何ですか?」 
「核(コア)だよ。ただ、材料に問題があってね」 
「問題?」 
 ギフトさんは、辛そうに顔を歪めて言った。 
「材料は、精神感応力者なんだ」 
  
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くま「ども。この話も残すところあと一話です」 
川崎「は〜、右腕を硬質化できるのか、へ〜」 
くま「そこ、うるさい」 
川崎「ところで、右腕だけなの?」 
くま「可能だからといってやるとは限らない」 
川崎「なにそれ?」 
くま「たとえばだな、何かあったときに耕一は『真の鬼』をいきなり使うと思うか?」 
川崎「まずは『鬼の爪』からじゃないの?」 
くま「そうだろうな。自分の持つ力がどれだけのものかわかっていれば軽々しくフルパワ 
   ーは出さない」 
川崎「悲劇を繰り返さないために・・・か」 
くま「語るのはこの辺にして、感想(一部)&レス」 
  
MIOさん。 
<楓と『か』> 
 なるほど。でもなんか、鬼の血を吸わないと一日で死んじゃう体質になってそう。 
 あと、なんかマッチョな吸血鬼が住んでたりとか。 
  
くま「・・・レスないや。突っ込み解禁まであと一回です。それでは、また」 
  
タイトル:真・鬼伝説 最終章 Gift 第三話 
コメント:地下に眠る超弩級精神波増幅器『メルクーア』。それに込められた想い。 
ジャンル:シリアス/ALL/川崎