真・鬼伝説 最終章 Gift 第二話 投稿者: くま
「くっ・・・、ここは?」 
 だだっ広い空間。 
 壊れた檻。 
 鉄環の破片。 
「またここか・・・」 
 随分と久しぶりの気がする。思えば、俺がここに来たときは必ず新しい力を得ていた。 
 ・・・新しい力を必要としていると言うことなのだろうか。 
”川崎・・・” 
「誰だ?」 
”私の名は『ツァーン』。そなたの牙となるべき者・・・” 
 振り返った俺の目に、巨大な鬼の姿が映った。 
「声をかけられたのは・・・初めてだな」 
”そんなことよりも、私の力を悪用しようとする者がいる。今はまだ何とかこらえてはい 
るが、いつ暴走するかわからぬゆえ・・・” 
 「ツァーン」はそこで言葉を切った。 
”私を、殺せ” 
 聞きたくない言葉だった。他のなによりも。誰かを救うための覚悟というものは、救わ 
れる側にとってこれほど辛いものだったのか。 
「なに考えてるんだよ!!」 
”すまない・・・” 
「俺は誰も死なせたくないんだ!これまでお前が手を貸してくれたのはそのためじゃなか 
ったのか!?」 
”それは、確かにそうだ。だがそなたは私の、そしてそなたの手が血で染まるのを見過ご 
すつもりか?” 
「くっ・・・」 
”そなたの『誰も死なせたくない』という気持ちは分かる。目の前で友達を殺されれば当 
然のことだろう。だが・・・” 
「なんでそれを・・・」 
”私はあのときに生まれた『トラウマ』なのだよ。鬼の人格は深層意識の一部だ。それが 
宿主にとって重要な位置を占めていることも多い” 
 俺の頭の中でキルシュの言葉がよみがえる。 
『力を持てば誰でも、自分の中の欲望に逆らいづらくなるわ』 
『心に悲しみを持っている人は違うの』 
「・・・お前が『悲しみ』なのか?」 
”そういってもいいのかもしれん。だが、『トラウマ』でも『悲しみ』でもないただの 
『牙』に成り果てる日が近づいている。だから・・・” 
「ダメだ」 
”このままでは手遅れになってしまうのだぞ!!” 
「お前がいなくなったらもっとまずいことになるかもしれない。番人のいない火薬庫なん 
て、危なくて近づけない。それに、ガイエルの持ってきた『グライス』がある。今はただ、 
キルシュを信じて待つしかない・・・」 
  
 私は『グライス』を掲げ、周囲に充満する精神波に同調した。そのままそれを『グライ 
ス』に同調させ・・・。 
”こんにちは・・・いえ、もうこんばんはの時間ね” 
「え、なに? だれ?」 
 どこからともなく聞こえてきた『声』に、少し取り乱してしまった。 
 でもこれは、『声』と言うより・・・。 
”そう、精神に直接呼びかけているの。私に完全に同調したから聞こえるけど、そんな素 
質を持った子は久しぶりね” 
「あの・・・、あなたは?」 
”あ、ごめんなさい、つい・・・。私は『グライス』。長きに渡り精神波を受け続け、人 
格を持つに至った精神波増幅器” 
「・・・・・・」 
”あら、信じてない? じゃあ、どうして私が人格を持つようになったか説明しましょう 
か” 
 信じる信じないよりも、精神波を普段からブロックしている精神感応力者の意識に入り 
込んでくる力に驚いた。でも私は『グライス』についてしらなすぎる。 
”精神波はその名の通り波の姿をしているわ。その波に同調することを繰り返すうちに、 
音叉そのものが常に振動するようになったの。その固有振動が私の『心』になったわけね” 
 『グライス』が何かを隠しているように見えたのは私の気のせいだったのだろうか。 
”ところで、あなたに協力して貰いたいことがあるの” 
「それはいいんですけど、この精神波の『嵐』をどうにかしてくれませんか?」 
”わかったわ” 
 周りを取り巻いていた精神波が消えてゆく。波が引いて行くように。 
「それで、協力して貰いたいことっていうのは・・・」 
”私は変調器だから外からの精神波に影響されることはないんだけど、増幅器はそうはい 
かない。『鬼を倒す』という目的に使われているせいで、使い手の意識の影響を受けてし 
まう。さらには、使い手の意識すら乗っ取ってしまう・・・” 
「それってもしかして・・・」 
”私は『彼』を助けたいの。人を傷つける『彼』を見ているのは辛いから・・・” 
  
 タワーの上の人影は苦しんでいた。 
 その男は、シュヴァルツ=プルヴァと呼ばれていたが、今彼を動かしているのは彼自身 
ではない。 
「何故、我が意志が届かぬ・・・」 
 影は、夜の闇に消えた。 
  
「どうやらあの気分の悪い精神波は消えたようだな・・・」 
 ビルの上の人影は、一振りの刀を携えていた。 
「いつまた始まるかわからん。元から断っておくか・・・」 
 鬼を殺す刀。その名は『神刃(カムジン)』。 
 それを持つ者もまた、鬼であった。 
  
 いつの間にか、人影は消えていた。 
  
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くま「ども。次回あたりからパクリ度メーター(提供・vladさん)がかなり上がりま 
   す」 
川崎「しかし、どのくらいの人が元ネタ知ってるのか・・・」 
くま「ゼロではないと思う」 
川崎「ところで、『新しい力』ってなに?」 
くま「それは次回の内容だ。能力そのものは以前一度だしてる」 
川崎「へえ」 
くま「それでは感想(一部)&レス」 
  
久々野 彰さん。 
 「転石、苔を生ぜず」 
 ほのぼの・・・。まぁ、英二さんだから(なぜ?)。 
  
vladさん。 
<次郎衛門さま> 
 >ダ・エリ 
 「・」、伏せ字?(笑)いや、「新・雨月山物語」の作者がそうしたんだろうけど。 
  
八塚崇乃さん。 
<皆さんへのお〜わ〜び〜。「えいえん」はなかった……(爆)> 
 「転石、苔を生ぜず」 
 『魔法のヒモ』、採用されたら読んでない人はわからないですしねぇ。 
 さすがにないとは思うけど・・・でも・・・。(淡い期待を抱く馬鹿) 
 『すすめ聖学園電脳研究部』・・・だったかな?よく覚えてないけど。 
 最終回、男キャラで唯一まともだった主人公まで壊れてましたし。 
  
アクシズさん。 
<青き星の、白き勇者> 
 はっはっは、柳川らしいなぁ(嘘)。 
  
くま「突っ込み解禁まであと二回です。それでは、また」 
  
タイトル:真・鬼伝説 最終章 Gift 第二話 
コメント:自分の中に眠っていたもの。それを認めたとき、彼は新しい力を得る。 
ジャンル:シリアス/ALL/川崎