真・鬼伝説 最終章 Gift 第一話 投稿者: くま
 ある夜のこと。 
 さびれた村の中の古びた屋敷の蔵に、その老人はいた。 
 蔵の中を静寂が満たしている。 
 数十年に渡り、鬼に対抗するための武器を造ってきた男の目に、焦りの色が浮かんだ。 
「な、なんということだ・・・」 
「どうしました、師匠」 
「『ギフト』が無くなっている・・・」 
  
「暇だなぁ・・・」 
「そうですね・・・」 
 何もする事がない俺は、キルシュと一緒に縁側で茶を飲んでいた。 
「平和だなぁ・・・」 
「そうですね・・・」 
「平和じゃないぞ、川崎!!」 
「・・・なんだ、ガイエルか。ちょっと待ってろ、今茶をいれてくるから」 
「人の話を聞け」 
「何かあったのか?」 
「実はな、うちの蔵から精神波増幅器『ギフト』が盗まれた。こいつは過去最強のもので 
な、しかも悪意を強く増幅する特性を持っている」 
「精神波増幅器って、なんだよ?」 
「人を操るためのものさ。生身の精神力では感覚神経に入り込んで幻覚を起こさせる位し 
かできないが、増幅器を使えば深層意識に干渉して操ることが出来る」 
「そんなもの、何のために造られたんだ?」 
「鬼を倒すためだと言われているが・・・、随分昔のものだからな」 
「よくわからないってことか。・・・何で俺のところに来るんだ?」 
「鬼の人格ってのはな、『深層意識に潜む何か』だ。それが前世の記憶だったり、秘めら 
れた欲望だったりするけどな。『ギフト』を奪った奴の目的は、『鬼の解放』かも知れな 
い」 
「『鬼の解放』・・・」 
「そこでだ。精神波変調器『グライス』を持ってきた。こいつは増幅器で増幅された精神 
波を打ち消したり、質を変えたり出来る。キルシュなら使えるはずだ」 
 質問に答えてないぞ。 
 ガイエルの差し出した『グライス』は巨大な音叉のような形をしていた。 
「ところで、お前も以前『神刃(カムジン)』を勝手に持ち出したんじゃないのか?」 
「・・・忘れろ」 
  
 また夜は来る。 
「目覚めよ、抑圧されし『鬼』達よ!!」 
 東京タワーの上に立つ人影。 
 その人影は手に持った杖・・・、いや、音叉のようなものを高く掲げる。 
 その刹那、蒼い光があたりを包んだ。 
 だが、その人物の顔は見えない。 
「夜を統べる者達よ・・・、時は来た」 
  
「ぐっ・・・」 
 なんだ? 体が・・・熱い・・・。 
「ぐああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 
「キルシュ、『グライス』を使え!!」 
「どうやって?」 
「まず、精神波を感じて『グライス』に同調させる。それからゆっくりと変調させていく。 
わかるか?」 
「・・・やってみるわ」 
 キルシュが『グライス』を掲げたとき、俺の意識は深い闇に落ちて行った。 
  
 ビルの上にはスーツ姿の人影があった。 
「ぐっ・・・、ふざけるなよ・・・」 
 彼は苦しそうに呟いた。 
「俺は俺の望む通りに生きる。誰の指図も受けん!!」 
 自らの意志のみで呪縛から逃れたわけではない。しかし、『グライス』が発動していた 
とは言え、気絶すらせずに呪縛を断ち切ったことは十分賞賛に値することだった。 
「誰だか知らんが、気に食わん真似をする・・・」 
  
 その頃の柏木家。 
「私はあなたから何もかも奪ってしまった・・・。ごめんね、エディフェル」 
「掟なんて物に縛られて、本当に大切な物を見失っちまった・・・。ごめん、エディフェ 
ル」 
「何一つ力になってあげられなくてごめんなさい、エディフェルお姉ちゃん」 
「俺がふがいないばかりに・・・。すまん、エディフェル」 
「・・・・・・」 
 エディフェル(楓)が寄ってたかって謝られていた。 
  
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くま「ども。この話、一人称と三人称が混ざってわかりにくいです。・・・以前からそう 
   だった気もしますが。ちなみに、劇中で使ったドイツ語の説明は完結後の全体の後 
   書きで書きます。さらに、何の漫画に影響されたかも。なので、「この言葉はこう 
   いう意味だ」とか「この元ネタはあの漫画だな」とか解っても、突っ込むのは完結 
   してからにして下さい。お願いします」 
川崎「逆に言えば、完結したら突っ込みたいだけ突っ込んで下さい。質問とかあると喜び 
   ます」 
くま「レス&感想(一部)ね」 
  
久々野 彰さん。 
 「かわいそうなセバス」 
 英二さんとどこで出会ったんだろう。諦めて箱に入ったのか? 
 ・・・箱入りセバス。 
 セリオなら拾うけどセバスじゃなぁ・・・(苦笑)。 
  
ギャラさん。 
 魔法のヒモって、『真・鬼伝説』から始まったんですよね。考えてみると、この作品は 
 本当にいろいろなことに気づかせてくれたんだなぁ、と思います。 
 シリアス系の短さってのは、余計なことを書かないことにしてるからですかね。 
 あと、長く書くと疲れる(本音)。 
 最近気づいたんですけど、シリアス系の淡々とした雰囲気って、『無限の住人』に影響 
 されてるみたいです。見比べると全然違いますけど。『無限の住人』読んでるとき、俺 
 がやりたかったのはこういう空気を表現することだったのかな、と思ったもので。 
  
へーのき=つかささん。 
 「柏木家の暴走 superX」 
 お願いですから、赤い扉を選ばんで下さい(トラウマ)。 
 あと、某新聞でデス様をプレゼントにしていました。おそるべし。 

くま「それでは、また」 

タイトル:真・鬼伝説 最終章 Gift 第一話  
コメント:突如として消えた精神波増幅器『ギフト』を軸に、最後の物語が始まる。 
ジャンル:シリアス/ALL/川崎