私の部下が死んだ。 優秀な男だったが、人と関わることを避けていたように思う。 二十代半ば、か・・・。 前途ある若者達が、命を散らせてゆくのを見るのは辛い。 誰が彼を殺したのか。 見当は付いている。最近起きている連続猟奇殺人の犯人。 そいつ以外に、あんなむごたらしい殺し方はしないだろう。 ・・・いや。 認めたくないのだ。あんな殺し方の出来る人間が他にも居るなどと。 どれだけの悲しみを生み出せば気が済むのだろうか。 その日、私は辞表を提出した。 刑事なんて仕事をしていても部下一人守れない。もう二度と、部下を死なせない。 そのための辞表だった。そのためだけの・・・。 こんな私を、笑うか? 答えはない。それはそうだ。呼びかけた相手は、すでに他界している。 それでもきっと、笑っていることだろう。 結局私は、背負うのが厭なだけだ。人の命を。 帰り際に一人の青年が私を訪ねてきた。私は彼を知っている。 急死した旅館の社長の息子だ。その捜査の時に、一度だけ会っている。 「私に・・・何か用かね?」 その青年は、部下が死んだ事件の顛末を語ってくれた。にわかには信じがたい話であった が、彼の言う「鬼」の力を目にした私は信じざるを得なかった。 彼は、私の部下の知り合いを訪ねて回っているのだという。他に、罪を償う方法がないの だろう。警察に自首をしたところで、普通の人間に裁ける話ではない。 辛い物を背負ってしまったな。お互いに。 私は、辞表を取り下げた。 **************************************** くま「ども。この話は、以前書いた『墓参り』の続きのような物です」 川崎「しかも競作用にキャラの名前を出さないと言う・・・」 くま「別に、前作を読まなくても平気だと思うけど」 川崎「暗い話だねぇ、しかし」 くま「感想(一部)」 久々野 彰さん。 <『罪と罰 〜罪を憎んで鬼を憎まず〜』> 悪役なら殺していいのかって言うとやっぱり違いますよね。死ぬことが償いかって言う のも、一概には言えないし。 >指人形初音「でも、か行は風見さんとくまさんがいるから特に目立たないよ」 いや、まだまだです。作品数にしたら四分の一ぐらいだし、中身の量にしたらもっと少 ない。質の話は・・・止めましょう。 くま「それでは、また」 タイトル:贖罪 コメント:一人の刑事の苦悩。 ジャンル:シリアス/痕/長瀬刑事