贖罪 投稿者: くま
私の部下が死んだ。
優秀な男だったが、人と関わることを避けていたように思う。
二十代半ば、か・・・。
前途ある若者達が、命を散らせてゆくのを見るのは辛い。

誰が彼を殺したのか。

見当は付いている。最近起きている連続猟奇殺人の犯人。
そいつ以外に、あんなむごたらしい殺し方はしないだろう。

・・・いや。

認めたくないのだ。あんな殺し方の出来る人間が他にも居るなどと。
どれだけの悲しみを生み出せば気が済むのだろうか。

その日、私は辞表を提出した。

刑事なんて仕事をしていても部下一人守れない。もう二度と、部下を死なせない。
そのための辞表だった。そのためだけの・・・。

こんな私を、笑うか?

答えはない。それはそうだ。呼びかけた相手は、すでに他界している。
それでもきっと、笑っていることだろう。
結局私は、背負うのが厭なだけだ。人の命を。
帰り際に一人の青年が私を訪ねてきた。私は彼を知っている。
急死した旅館の社長の息子だ。その捜査の時に、一度だけ会っている。

「私に・・・何か用かね?」

その青年は、部下が死んだ事件の顛末を語ってくれた。にわかには信じがたい話であった
が、彼の言う「鬼」の力を目にした私は信じざるを得なかった。
彼は、私の部下の知り合いを訪ねて回っているのだという。他に、罪を償う方法がないの
だろう。警察に自首をしたところで、普通の人間に裁ける話ではない。

辛い物を背負ってしまったな。お互いに。

私は、辞表を取り下げた。

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くま「ども。この話は、以前書いた『墓参り』の続きのような物です」
川崎「しかも競作用にキャラの名前を出さないと言う・・・」
くま「別に、前作を読まなくても平気だと思うけど」
川崎「暗い話だねぇ、しかし」
くま「感想(一部)」

久々野 彰さん。
<『罪と罰 〜罪を憎んで鬼を憎まず〜』>
 悪役なら殺していいのかって言うとやっぱり違いますよね。死ぬことが償いかって言う
 のも、一概には言えないし。
 >指人形初音「でも、か行は風見さんとくまさんがいるから特に目立たないよ」
 いや、まだまだです。作品数にしたら四分の一ぐらいだし、中身の量にしたらもっと少
 ない。質の話は・・・止めましょう。 
 
くま「それでは、また」

タイトル:贖罪
コメント:一人の刑事の苦悩。
ジャンル:シリアス/痕/長瀬刑事