今年初めての雪の日に。 投稿者:ごしょ


------ すこしずつ、ふりつもっていく。------


「わあ〜、積もったね〜」
「うへ〜、寒みい、寒みい。」
「わあ、ねえねえ浩之ちゃん、踏むと「きゅっきゅっ」って音がなるよ。すごいすごい!」
「い〜ぬは よろこび に〜わ かけまわり〜」
「え、何?浩之ちゃん」
「いや・・・、おい、あかり、あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
「えへへ。」
・・・しかし、あかりの奴も寒がりな筈なのに、なんでこんなに嬉しそうにはしゃいでるんだ?
「そんなに雪が好きなのかねえ」
「うん。・・・ねえ、前も、こんな大雪の日があったの、覚えてる?」
「え?大雪ねえ・・・、中学のときの、か?」
「そうそう!」
「まあ、なんか、あの年はすげー降ったってくらいしか覚えてないけどな」
「・・・ふうん」
ねえ、浩之ちゃん。あの年はね、あのときはね・・・

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最近、浩之ちゃんは私を避けてる。
ちょっと前も、たまたま話ができたとき、ちょっと図星をついたようなことを言ったら
すっごく不機嫌な顔をした。
何となく、理由も、わかる。
でも、それって、ちょっと、すごく、淋しい。

「きゃっ!」
すてん。
うう、また転んじゃった。
今日、天気予報で雪になるって言ってたけど、まさかこんなに降り積もるなんて。
こんなことなら、違う靴履いてくればよかった。

一緒に帰れないかなあ、と思って、今日、下校のときにさりげなく下駄箱で
出会うようにしたんだけど、浩之ちゃんはやっぱりスタスタ行っちゃった。
私も、慌てて追いかけて、でも何だか近寄れなくて、少し遠めからトボトボついてってる。

小っちゃい頃は、暗くなると、浩之ちゃんが手を繋いでくれて歩いたんだけどな、この道。
いつから、手を繋がなくなったんだっけ。

「きゃっ!」
すてん。
うう、また転んじゃった。
・・・浩之ちゃんの背中ばかり見てないで、足元も見て歩こう。
「おい、」
え?
「ったく、何回転んでんだよ、ほら、」
差し出された右手。

慌てて手を出そうとして、
「あ・・・」
「おい、なんで手袋はずしてんの?」
「え、その、あの・・・ あっ!さ、さっきから転んでて、その、手、付いてて、
 もう冷たくなっちゃったから! なんか、もうすっかり染みちゃって」
「そうか」
・・・本当は、違うよ、浩之ちゃん。
手と手を、繋ぎたかったの。

手を繋ぎながら(というより、握った手を支えにしてヨロヨロとバランスを取ってるん
だけど)歩く帰り道。
えへへ。
「浩之ちゃん、手が冷たいね」
「そうか? あかり、さっきまで手袋してたからじゃねえの?」
「ふふふっ、手が冷たい人ってね、心は優しいって言うよ」
「なんだそりゃ」
「うん、小っちゃい頃もね、夕方暗くなると、浩之ちゃん、手を繋いでくれたんだよね・・・」
はっ、いけない、昔話なんてしちゃった!
浩之ちゃん、また不機嫌になっちゃう!!
「・・・そうだっけ?」
え・・・、なんだか、大丈夫みたい・・・
「・・・うん、そうだよ。」
「それって、すげーガキの頃じゃねえ?」
・・・なんだか、大丈夫みたい。

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中学の頃の大雪かあ。
新幹線とかがやたらと止まってたってニュースくらいしか、記憶無いなあ。
あ?大雪の日?

そういえば、何か思い出してきた・・・
そうそう、その頃の俺って、何でも知ってて、何でもお見通しのあかりがうざったくて、
避けまくってたんだよな。
そうだ、あの日、あかりが後ろからつかず離れずついてくるんで、いよいよあかりが犬チックに
思えたんだっけ。
で、結局、見るに見かねて手を出してやったら、あかり、なんだかとても嬉しそうな顔をして。

そしたら、なんだか、俺、何馬鹿馬鹿しいことこだわってんだろう、と思ったんだよな。

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「ふふふっ」
「・・・本当に、心底嬉しそうだねえ、まったく」
「きゃっ!」
「とと、おい、笑ってるばあいじゃねーぞ、ったく、なんか危なっかしい歩き方だなあ」
「大丈夫、だいじょ、わっとと!」
「うお、あぶね。ったく、しょーがねーなあ、ほれ!」
え?浩之ちゃん、左腕を浮かして・・・
「しがみつけよ」
え、え、う、うわあ、うわーい!
「えいっ!」
抱きつきっ!!!
「うわっ!」
「きゃっ!」

すって〜〜〜〜〜ん。

「ッツツ! ・・・あ〜か〜り〜!!」
「うう、ごめんなさい・・・」
「ヒューヒュー!! あらあら、朝から二人して雪の上で抱き合っちゃって。
 ちょっと、私の目には刺激が強すぎるわねえ〜」
「・・・志保、お前はどうしてこう、タイミングいいのかねえ?」

<やべえ、もう4時だよ、会社が・・・ と、いうことで打ち切ります(笑)>