『私がここにいる理由』 投稿者: 久々野 彰
「こみっくパーティー発売カウントダウン記念SSです。ネタバレはないと思ふ」
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『こみっくパーティー』が今日もまた、始まりました。
 俗に言う同人誌即売会の事で、月に一回行われます。


 申し遅れました。
 私、長谷部彩と言います。
 個人誌を書いています。


 良く知らない方は、知らないことですけど、別に『同人誌』と呼ばれる物はアニメ
とか漫画とかゲームとかのキャラクター同士が色々とHをする本だけじゃなくて、H
じゃないものや、オリジナル創作物は勿論、男同士のカップリングが多いようですけ
どアイドル物とか、三國志物とか、戦国物とか、日本書紀物とか、史記物とか、平安
物とか、水滸伝物とか、幕末物とか、封神演義物とか、そうそう平家物語物・・・


「こらこらこらー!!」


  ビシベッ!!


 不意にハリセンで叩かれました。
 紙だけれども、結構痛いです。



「全部同じようなものやないの!!」
「・・・猪名川さん」


 仁王立ちしているのはこのイベントで知り合った、猪名川由宇さんです。
 いつもハリセンで人の頭を殴って脳細胞を壊死させることで自分の知能指数を1原
子でも優位に立とうと目論んでいるどうしようもない関西じ・・・


  ベシバッ!!


「聞こえとるわっ!!」


 更に叩いてきました。
 私はこの人は嫌いです。
 多分、世界中でもこの人が好きと言う人よりも嫌いだと言う人の方が多いのではな
いでしょうか。


「世界中って・・・皆、知らへん知らへん」


 知り合ったきっかけは単純に、割り当てられた場所が隣り同士だったからです。
 横長のテーブル一つで、二人分の割り当てを無視するが如く、殆どの場所を占拠し
、私が迷惑そうな顔を向けると、


「どーせ使っとらんのとちゃう?」


 と、盗人猛々しい論理で、私をねじ伏せ、あまつさえこちらを自分の行列待ちに利
用させたという思い出が今でも私の日記に克明に残っています。
 あの日は赤のボールペンで書き殴ったからはっきりと目立ち、後ろの頁もへこんで
いる程です。



「あー、あー、あー!! 悪かったって言ってるやろ!! それに何度も言うけど行
列の事はわざとやない!!。気づいてちゃんと直したやろが!!」


 そのくせ、私の本を一瞥すると鼻で笑って、


「変なものようかいとるなぁ・・・キてるのとちゃいまっか?。パーデンネン?」


 と、似てない明石○さんまの物まねをしつつ、600円のところを「まぁ、記念だ
から」とか言って、500円玉だけ置いて立ち去ったという出来れば忘れてしまいた
いような・・・


「はいっ!! 100円っ!! 「いくら?」聞いても答えんかったのはそっちやな
いか!!」


「あらー、楽しそうね。由宇」
「あ・・・詠美」


 また嫌な人がきました。
 類は類を呼ぶと言いますが、勝手に増産ユニットになっても困ります。


「何、ぶつぶつ言ってるのかなぁ・・・彩ちゃぁ〜ん」
「ひたひれす」


 私のチャーミングなほっぺたをぐいぐい抓るのは、徹夜続きで目の下にはくま、肌
荒れぼろぼろ、髪もぼさぼさで、ト○ーズ雅の曲がBGMにかかってきそうな大庭詠
美さんです。このキューテクルな髪につやつやの肌の私に嫉妬しているのか、いつも
こんな嫌がらせをしているから溜まったものではありません。
 ただ、彼女には助けて貰ったことがあります。


 それは忘れもしない、猪名川淳司さんが、


「ウチは由宇やっ!!」
「相変わらずねぇ・・・彩」


 場所だけはとってあったのに、本も出さずに印刷所に襲撃をかけに行っていて、ま
た運悪く隣だったので留守番を頼まれたときの事、




 ・・・人はそれをダミーサークルと呼びますが。



「人聞きの悪いことゆな!! あれは原稿が紛失したとか抜かすから・・・」



 私は相変わらず人の来ない閑古鳥の巣の中で熱心に次の卵を孵そうと、構想を練っ
ていました。
 その時に、

「あら・・・由宇は・・・? ねぇ、あなた知らない?」

 と、馴れ馴れしく声を掛けてきたのが大庭詠美さんでした。
 詠美さんは私が彼女の不在の理由を述べると、立ち去りもせずだらだらと暇人の如
く私に色々と話し掛けてきました。
 内容は全く聞き流していたので、いいえ、むしろ聞いてすらいなかったので、憶え
てはいないのですが、ただ、


「私は大庭詠美。知ってる? サークル『・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 と、最初に自分の名前らしき単語を発した時、「大庭? ・・・景親」と、構想が
浮かび、その次の本を大庭三郎景親x俣野五郎景久兄弟、そして頼朝方として敵味方
に別れた長兄景義と景俊の4兄弟相姦物を写実的に書いた物に決めたのでした。

 そういう経緯から、お礼にとその新刊を持っていったら、


「何これ? 売れるの? って言うよりも売るの? 本気で?」


 と、言って蔑んだ目で私を見ました。
 三冊売れたのに。



 ですから、私はこの人も嫌いです。
 二言目には「売れるの?」ですから。営利主義に走った商業サークルの小山の大将
的発想しかないこの人には、同人誌の本来の「自分が好きな物を作ってそれを読んで
貰い、その喜びをわかちあう」というようなものは根本的に抜け落ちていると、


「だから大庭景親なんて誰も知らないって」
「・・・平家物語に出てくる平家方の東国武者だって」


 だから、私はこの二人とはあまりお付き合いをしたいとは思いません。
 きっと、向こうもそうだろうと思っているのに、何故かやってきます。
 多分、お友達がいないのでは。



「「いるわよ!!」」



 オ○クで○クラで友達のいない人達が狢の如く集まる「こみっくパーティー」。
 安易にお金を稼ぐ手段を求める女性や、漫画を描くことしか芸がない女性を求めよ
うとする主人公さんはここで一体、何をしたいのでしょう。



 私はただ、好きなことをしていたいだけです。
 好きな髭だらけの鎧武者の中年同士が馬に乗って斬り結ぶ様を描いて、宮中にいた
官女達が怒り狂った群衆に蹂躙され代わる代わる犯されてる様を書いて、髑髏に漆を
塗って杯とし敦盛を舞ったり、皇帝お手つきの遊女にせがまれて諸肌脱いで入れ墨を
見せたり、虜囚の身でありながら女遊びで相手を孕ませ、相手の父親に殺されそうに
なって逃げたり、敗走のおり、一軍の大将が目印になると直垂を脱ぎ髭を切り捨て、
旗で顔を包んでまで生き延びようとしたりと、そんな出来事を思いながらペンを動か
し、共感してくれる人にだけ読んで貰う。それが私が、ここにいる理由です。
 熱き漢同士が己の肉欲と愛欲をぶつけ合うために闘う姿を描きたいと切に願い、皇
帝と宦官だったり、群雄と家臣だったり、将軍と小姓だったりしながらも命のやり取
りの合間に安らぎを求めて契り合う姿を夢見ながらペンを動かし、共感してくれる人
にだけ読んで貰う。それも私が、ここにいる理由です。



 別に男が欲しいとか、お金が欲しいとか、チヤホヤされたいとかではありません。





 あなたは、何をしたいのですか?
 ここで、何をしたいのですか?




 そして、私はここで本を売ります。
『こみっくパーティー』で。



 だから主人公さん。
 決して、そこの二人とは一緒にしないで下さいね。
 彩からのお願いです。




「「するかっ!!」」





                          <おしまい>


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「今週の金曜日(5/28)に発売されるみたいです。既に持っている人もいるみたい
ですけど、まぁそれは置いといて。一応、事前調査の結果、長谷部彩さんと芳賀玲子
さんでしょうか。次点は牧村南さんです。一番キャラ的に気になるのは芳賀玲(はが
れい)こと、玲子さんです。想像の域を越えてくれればいいのですが・・・。彩さん
は楓、芹香先輩系列からどこまで抜け出せるかにかかってます」