『Good Night』 投稿者: 久々野 彰
「二百回投稿記念です。梓で始めたから、梓で締めくくるのも一興かと・・・」
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 俺は夜中にふと目を醒ました。


 目の前で眠っている梓がいる。


 俺の目の前で。
 俺のすぐ横で。
 俺の布団で。


 日頃あれだけ、狂暴、ガサツ、粗野、無神経、そんな単語が並ぶ梓だが、こうして
目を瞑って寝ているこいつをみると、そんな事がまるで遠い昔の現実のような錯覚に
陥ってくる。

 多少横向きに寝ているお陰で、その寝顔をこっちも横になったまま見ることが出来
る訳だが、布団から両手の先だけが覗いている。


 何か、その仕草がとても可愛らしく思える。普段は楓ちゃんや初音ちゃんが無意識
で持っているような雰囲気を、今の梓に感じる。


 …かわいい・・・か。


 きっと、今までなら沸かないでいた感情。
 恐らく、そう思わせないように無意識のうちにしてきたのではないか。
 梓自身が。
 俺自身が。


 外のことは千鶴さんに任せる代わりに、家のことを、妹たちのことを一手に引き受
けてきたこいつは、「お袋さん」を演じることしか出来なかった。
 そして、俺はいつまでも昔の思い出の「親友」としての梓の存在が、とても気安く
て有り難かった。
 だからこそ、素直になれないまま、お互い、剥き出しのように見せかけた関係を望
んでいた。
 いや、もしかしたら望んでいたのは俺一人で・・・こいつは、脱したかったのかも
知れない。
 ただ、俺が変わらないことを望んでいたから、知らずに続いていただけかも知れな
い。
 俺自身、俺の気持ちは、わからなかったし・・・。


 もしかしたら、ずっとこうしたかったのかも知れない。
 こいつは。


 こんな顔をしたかったのかも知れない。
 梓は。


 そして周りだけが目まぐるしく動いた。
 俺の中のこと。
 俺の外のこと。

 巻き込まれたのか、必然だったのか・・・。


 運命という安易な言葉でまとめるなら、そうだったのだろう。
 結果として、俺は改めて梓を得、梓は俺に・・・くれた。


 その時、俺は梓を「かわいい」と思った。

 間違いなく。


 その時からだったのか、そうじゃなかったのかは判らないし、どうでもいい事だ。


 今、俺はこんな素直な梓の寝顔を「かわいい」と思う。

 それだけで、いいことだ。
 それで、何を確かめなくてはいけないと言うのだ。


 相変わらず、梓は長い睫毛を閉じたまま、眠っている。
 安心しきったような、解放されたような・・・全てを委ねたような顔。
 眠ることにいささかの迷いもないような、そんな寝顔。


 何か、無性に嬉しくなった。

 だから、手を伸ばして、そんな梓の頭を撫でてみた。
 髪をさするように、力も籠もらない、軽い手つきで。


 優しく。
 やさしく。


「・・ぁ・・・」


 今まで静かに閉じられていた眼がゆっくりと開いた。つり目がちな眼差しがこちら
を捉える。

「ん・・・耕一・・・?」

 まだ、意識の方がはっきりしていないらしく、中途半端な瞼の開き具合だ。
 俺は、布団の中へ手を伸ばして、梓の目を醒まさせることにした。


「え・・・あっ・・・」

 布団の中から梓の乳房を掴んで揉む。
 たっぷりと、暖かい膨らみの感触が掌いっぱいに広がってくる。


 暖かい。
 あたたかい。


「な・・・なに・・・?」


 驚きで、眠気は吹き飛んだらしい。
 だが、頭の方は動ききっていないらしく、ただただ慌てているだけだった。
 俺の悪戯な手の阻止すら思い至っていない。


「いや・・・暖かけーなって思って・・・」


 そう言いながら、揉みしだく作業を続ける。
 片手では掴みきれないボリューム。


「な、なんだよ。それ・・・?」


 ようやく、こっちが何をしているのか気付いたように、揉まれるままになっている
自分の胸を、布団を捲るようにして見る。別に確認するまでもないだろうに。


「梓・・・」


 目を醒ました梓を片手は胸を揉みながら、もう片手を梓の背中に回して、自分の方
に引き寄せる。


「あっ・・・」


 片手だったせいで、引き寄せると言うより、自分の方から近付いただけだった気が
する。


「耕一・・・?」


 そのまま、俺は幾度目かのキスをした。




 これからも数え切れないほどするであろう通過点として・・・。




                          <完>
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「梓を「可愛く」しようと企んだ結果です。梓にさして思い入れのない方は引いてし
まうかも(苦笑)。もっと続くんですが、同じ事の繰り返しっぽかったんで、思い切っ
てバッサリ全部削除しました。そしたらかなり短くなってしまったです(汗)」