『いっしょに、過ごそう』 投稿者: 久々野 彰
「遂に150回作品投稿(感想のみとかは除外)!!」(久々野)
「何とか間に合わせました・・・」(セリオ)
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「どうして・・・なのかしら・・・?」

 最近、考える繰り言。

 いつもの、癖・・・。

 とっくに起きなくちゃいけないだろうに、こうして寝床に転がったまま、いつまで
も考えている。俯せのまま、枕に顔を埋めるようにしているので、ちょっと髪が気に
ならない訳でもなかったが、無視していた。

 …私は自分に正直に生きてきたのかな?

 不安になってしまう。


 …流された結果じゃないのかな?

 そう考えてしまう。


 ――あの人の生き方みたいに・・・。



『いっしょに、過ごそう』



 一緒にいると安心するのに、こうして一人で考えていると、捕らわれてくる思い。


 …私は、これでいいのかしらね?


「・・・まぁた、うだうだ考えてる・・・ふぅ・・・」
 そのままぼんやりしたまま、手を伸ばし、時計を手に取る。そろそろ、準備をした
方がいいだろう・・・。

「・・・ってもう、こんな時間!?」

 慌てて、飛び起きる。


 ――交わした約束まで、あと一時間30分。





「やっばぁ〜・・・流石にちょっと遅れ過ぎよね・・・怒ってるかなぁ・・・」

 道を小走りに急ぎながら、ちょっぴり舌を出す。あれから寝間着を脱いで、シャワ
ーを浴びて、髪を乾かして、服を選んで、軽く化粧を済ませて、服に似合ったアクセ
サリーを選ぶ。そして、からなので当然ながら遅刻していた。


 …まぁ、少なくても怒ったところは見たこと、ないんだけどね・・・。

 ちょっと狡い考えをしている自分に気付き、チロリと舌を出す。

 …いけない、いけない・・・兎に角、何て言って謝ろうか・・・あ、いた。


 目標の公園の噴水に一番近いベンチに見馴れた男が大人しく、座っていた。
 やや、俯き加減で、どうやらまだこっちには気付いていないらしい。


「ごめ〜ん・・・ちょっと、さぁ・・・ん?」
 目の前まで来て、やや乱れた息を整えながらも謝ろうとして、おかしな事に気付い
た。
「え・・・」
 公園のベンチにやけに行儀良く座っていると思ったら・・・寝ていた。


「・・・・・」


 近くまで来る。
 間違いなく、寝ていた。

「・・・・・」
 自分が待たせたことが原因なのは間違いなかったが、こうして焦って来て見た結果
がこののんきな寝顔だと、ちょっぴり腹立たしくもある。その寝顔を睨み付けてみた
が、当然ながら何のリアクションも起きない。
「はぁ・・・」
 諦めて大袈裟に肩で息をしてみせると、指を伸ばして、
「こら・・・」
 指で気持ちよさそうに寝ているコイツの額をつつく。
「ん・・・・」
 眉が、動く。
「こら」
 更に、つつく。
「ん・・・あ・・・綾香・・・」
 ちょっと眉を顰めるようにしながら目をゆっくりと開けて、私に気付く。
「おはよう」
 そしてニッコリと私を見て、挨拶をする。
「お早うじゃないわよ全く・・・こんな所で寝て・・・風邪ひいてもしらないわよ」
「綾香が来たら起こしてくれるからいいかなって・・・」
 暢気そうな声を出して――いや、実際暢気そのものなのだが、コイツは言った。
「アンタねぇ、こんなトコで寝てて・・・もし来られなくなったりしたらどうするつ
もりよ。忘れてたりしたらいつまでも寝て・・・」
「大丈夫だよ。綾香は遅れることはあっても、すっぽかしたりはしないから」
 コイツはそう言って再び、にっこりと微笑んでくれやがった。


「――馬鹿・・・」
 そう言うが、かなり頬が赤くなっているのが自分でもわかる。





「何処、行こうか?」
 のんびりとした口調でそう言う。
「何処って・・・アンタ、何も考えてなかった訳?。この長い間、待っている間・・
・ちょっとは今日のこと・・・」
「寝てたからなぁ・・・」
 にっこりとそんな事を言ってのける。
「寝てたって・・・ずっとじゃないでしょ?」
「その前は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ボーとしてたな」
 かなり長い間考えていたが、そう答える。
「はぁ〜」
 大袈裟にため息を付いてみせる。
「でも、綾香が誘ったから・・・何かあるのかと思っていたんだ」
 そう言って、笑う。


 …あ〜あ、これが惚れた弱みってやつなのかなぁ・・・。

 どう見てもこんないい加減な奴と付き合っている自分がおかしく感じた。別にこの
柔らかい笑顔に絆されているつもりはないのだが、いつの間にかペースを握られてい
るのだ。
「・・・・どうする?」
 にこにことして、こっちの事情も察せずにいる。こんな男にどうして・・・と、や
っぱり思う。昨日、ろくに眠れずに考えた命題だ。このせいで、遅刻までしたのだか
ら、やっぱり謝る必要はなかったかも知れない。だが、馬鹿らしいことでもある。
「ふわぁ・・・」
 思わず、欠伸が漏れてしまった。気が張っているならまだしも、こんな肩の力が抜
けるよな付き合いでは、無理もない。
「眠いのか?」
 さっきまで寝ていた奴とは思えないように自然に、こっちの考えをまるで察したよ
うに静かに、訊ねる。さっきの顔と矛盾しているようで、変わらない、顔。
「ちょっとアンタのぐーたらが移ったみたい・・・」
「ははは・・・」

 …笑い事じゃないって・・・。

 私は、コイツが・・・あなたがわからない。


「だったら・・・寝ようか」
 唐突に、そう言う。
「え・・・?」

 いつまでたっても、わからない。


 そのまま、あなたは私の目の前で草むらにゴロリと横になる。緑色の絨毯に寝そべ
る姿はまるでそうするのが正しいような錯覚をこちらに覚えさせてしまう。
「・・・・嫌?」
 そして、私の目を見上げる。
「・・・・・」
 私は無言で、隣に腰を下ろし、あなたに倣って横になった。


 夏にはちょっと早いせいか、そんなには暑くない太陽の恩恵を身体いっぱいに浴び
る。草の香りが鼻腔の奥をくすぐる。普段ならやれ服が髪が汚れるだとか、言い出し
たくなるだろうに、今はそれがどうでもいいことのように思える。前髪を揺らす風が
午後のお昼寝タイムを演出する。


 雲がゆっくりと流れていく。
 見渡す限り、上空には真っ白い雲しか見えない。
 そんな雲が、ゆったりとした時間を届けてくれる。


「いい天気だな・・・」
「それしか言うことないの?」

 苦笑する。


 …いつも、苦笑しっぱなしだ・・・。



 世界で一番、君が好き。
 ううん、あたしこそ・・・貴方に会えて、本当に良かった。

 そんなくさい科白も言わない。


 ・・・指輪
 今日は特別、ちょっと奮発したんだ

 そんなこともない。


 やりたいことがあれば
「やればいい」

 したいことを言えば
「すればいい」

 突き放す訳じゃない。何をしても、どんなことをやろうとしても、貴方はいる。

 私の後ろで見守ってくれている。
 私の前で護ってくれている。
 私の隣で微笑んでくれる。


 不器用な私の言葉も
 貴方の微笑みが飾ってくれる。

 悪戯な私の気持ちも
 貴方の優しさが包み込んでくれる。


 …あなたは気付いてくれていたのかな?


 ちょっぴり横を向いて空を見つめているあなたを見る。するとそれに気付いたのか
、私の方を見て、静かに聞く。
「――どうした?」


 まるで父親が娘に問いかけるように?

 ううん、違う。

 まるでお祖父ちゃんが孫に笑いかけるように・・・

 おかしいわよね、私とそれほど違わないのにね。


 あの日、電車の改札前で、咳が止まらなくなったっけ。
 そしたら、貴方、何をしたか覚えてる?。

 …笑っちゃたわよ。

 おかしなドラマでも見たの?。まさか・・・貴方、見ないものね。そんな虚構の世
界なんかに頼らないでも・・・

 貴方の世界、あるものね。

 貴方を軸に、中心となって開けている世界。

 わたしは・・・その住人。


 あの日、別れ際にちょっと淋しくなってため息ついたわよね。
 その時、貴方が言った言葉、覚えてる?。

 …驚いちゃったわよ。

 誰かに吹き込まれたの?。でも・・・貴方、人の言うことなんかあまり聞かないも
のね。いつも何か、ちょっと離れた遠い世界を見てる・・・

 あなたにしか、見えないのよね。

 私にも、いつか見せてね。


 私の不安、混乱をあなた、
 帰り道のコンビニで、済ませたわよね。
 貴方らしくて、笑っちゃったわ。
 でも、ちょっぴり泣けちゃった。

 本当に気付いてないのかなって?
 気付いてて、惚けてるのかなって?
 もしかして、私が自分で解決するまで、それで押し通すつもりだったの?


 …参るわよ、あなたには。


 時には泣きたくなるような事もあるのに、

 どうして貴方の前まで来ると、こうして落ち着いてくるんだろう。

 心地いい、気持ちいい


 あまりのニブさに、人を羨んだこともあったけど


 普段着のままで、

 かわらないで、


 私たちの身体を吹き付ける風も、
 寒くなると自然に庇ってくれる。


 …貴方がいて・・・よかった。


 そう思える。
 いつの間にか、思ってる。

 ズルイと思う。
 理不尽だと思う。

 でも、駄目なの。
 私の、負け。


「気持ちいい・・・よね」
「ああ・・・」

 馬鹿みたいに、日曜日のひとときを昼寝で過ごす。
 映画館のチケットも、
 人気のあるレストランの予約も、
 このひとときには、代えられない。


 あなたが、ここにいる。
 何ものにも代え難いもの。



「綾香・・・」
「ん・・・?」
「・・・いや、何でもない」
「何よ・・・言いなさいよ・・・」
「うんにゃ、何でもない」
「そう言われれば、気になるじゃないのよ・・・」
 私があなたの身体を揺すろうと身体を起こそうと腕を伸ばすと、その手が急に掴ま
れる。顔が、近付く。

 …・・・!?。

 不意打ち。

「!?・・・・」
「びっくり・・・した?」
 掴まれていた腕を振り解くと、あなたは意味ありげに、笑う。
 きっと今の私の顔・・・かなり驚いたままの顔で固まっているんだろう。
 これをあなたは見たかったのだろう。ちょっと悔しい。

 だから・・・


「したいならしたいって言えばいいのに・・・」
 そう言って、こちらから、お返ししてやった。


 再び、触れ合う。


「どう?。満足した?」
「・・・ああ、満足した」
 こんどはこちらがあなたの顔を見つめる番。でも、やっぱりあんまり変わらない。
 かなり、悔しい。
 悔しいけど、笑みが浮かぶ。


「寝ようか」
「うん・・・」
 大地の毛布に包まれながら、目を閉じた。気怠いこの季節の午後、中途半端な暖か
さが二人の微睡みを演出する。


 あなたは何もしてくれない。
 でも、けっして私から目を離さない。
 いつでも、必ず見ていてくれる。

 私が転んでも、手を伸ばさない。
 立ち止まって、私が立ち上がるのを待つ。
 そして、私の頭を撫でるのだ、コイツは。
 ふざけた、奴。


 だから、私は歩く。走る。飛ぶ。
 失敗は恐れない。
 どうなろうとも、見捨てないでいてくれる馬鹿がいるから。
 誉めてくれなくても、最後まで見守っていてくれる奴だから。


 私はそんなあなたが好きになってしまった。
 悪趣味だと思う。
 でも、好きになってしまった。
 変わり者のあなたを。

 それはきっと――

 …一緒にいて、最高に心地がいいから・・・。


 そしてやっぱり今日も私は誤魔化されるのだ。
 そんなあなたに。
 その、穏やかな微笑みに・・・。


                           <完>

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「何か、この相手の男、はるか入ってます(苦笑)。浩之絡まないでの綾香SSの要望
があった以前から、考えていた話です。個人的に狙っていたのですが、WAのせいで
どうも考えていた話と逸れていってしまったようです。もう少し男にサバイバル的風
格と飄々としたとらえ所の無さを強調させねばいけなかったのに・・・」
「綾香ちゃんには個人的に借りがあるみだいだしね・・・」(美咲さん)
「SS自体、目標はカレルレンさんのよーな雰囲気だったのですが・・・うぅぅ・・
・身の程知らずとはこーゆーことを言うのか。御免なさい。もう、言いません(謝)」
「でも、目標は高く、持たなくちゃ」(美咲さん)
「綾香が好きになりそうな男とは?・・・このコンセプトでこのSSを書きました。
浩之だとは思えません(過去、二つも書いたけど)。で、こーゆー風になりました。異
論あるでしょうけど(って言うか私の考えているのとも違ってる気もする(苦笑))」
「まだまだ試行錯誤の状態なのかな・・・?」(美咲さん)
「うん。綾香も前二つの時とちょっとだけ性格変わってるし・・・これは他の人の影
響が入っているんだと思う・・・」