『セリオちゃんとマルチちゃん』 投稿者:久々野 彰
「幻の続編。セリスさんは絶対に絶対に読まないで下さい(笑)」
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 第7回 「ザッピングで如何?」


(浩之サイド)

 あれから、高校を卒業できたオレは、あかりと同じ大学に進学した。
 ちょっと理想高めの大学だったが、あかりとふたりで頑張った甲斐もあり、なんと
か無事、合格できた。

 ・・・(略)・・・
 
「…浩之さん…」
「マルチ…」

 オレの前にマルチがいる。そう、HM−12型じゃなく、HMX−12型、オレの
学校で出会い、一緒の時を過ごした8日間のシンデレラ。あの「マルチ」が・・・。


「…あ、会えた。…また、会えました…」
「マルチ!」
「浩之さあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
 広げた腕に勢いよく飛び込んできたマルチを、オレは思いっきり強く抱きしめた。
「マルチ、マルチっ!」
「浩之さん、浩之さんっ!」
 マルチの目から、大粒の涙が溢れ出した。

「…わ、わたし、…てっきり、もう、会えないんだとばかり思ってました」
 マルチはぎゅっとオレにしがみついた。
「…マルチ、オレのこと、覚えてるんだな!?」
「はい、もちろんです! わたしにとっては、ほんの昨日のことですから」
「オレ、寂しかったぜ? お前のその笑顔が見れなくてさ」
「…ひ、浩之さん」
「でも、今日からはずっと一緒だぜ。なんてったってオレは、正式にお前のご主人様
になったんだからな」
「は、はいっ! 嬉しいです。とっても、とっても、嬉しいです! ご主人様!」

 押し寄せる、感動のシーン。

 そしてそのまま自然の流れとして二人はベッドに倒れ込み・・・。


「はあっはあっはあっはあっはあ・・・マ、マルチ・・・」
 全てが終わった時、マルチの口からボソッと出た言葉。それが幸せの絶頂にいたオ
レの耳に届いた。


「下手ですね」


  ピキ――――――――ン

 マルチの口から、マルチの声じゃない声が・・・・。
「お、お、お・・・・・・・お前はぁ!?」
「お久しぶりです。浩之さん」
「ど、ど、ど、どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「破壊された私ですが、奇跡的にメモリーが無事でして・・・マルチさんのメモリー
と一緒にお願いして入れて貰いました」
「なっ、なっ、なっ・・・・・・・・・・・・・・!?」
「これからも、宜しくお願いします。『ご主人様』」

  ニヤリ

 マルチが笑った。

 だがそれは、オレの記憶の中にあるマルチの笑顔ではなかった・・・。

「あ・・・ああああ・・・・・ああああああああああああ・・・・・・・・・」

 オレの中で、何かが壊れていくような音が聞こえてきた・・・。



(セリオちゃんサイド)

 後日、ハッキングして調べたところ、あれから高校をぎりぎりの成績で卒業した浩
之さんは、幼なじみの神岸あかりさんと同じ大学に進学したようです。
(吉井さんではやっぱり、浩之さんには物足りなかったのでしょうか?。でも流石は
スケコマシさん、ですね)
 ちょっと浩之さんには無理っぽいクラスの大学でしたが、あかりさんの熱意と、コ
ンピューターの入力ミスに救われ、幸運にも無事、合格できました。
(でもどうやって関係、修復したのでしょうか?。ある意味、執念ですね)

 ・・・(略)・・・
 
「…浩之さん…」
「マルチ…」

 目を開けた私の前に浩之さんがいました。そう、ゲームセンターの前で出会い、正
直な意見をしたら襲ってきた「藤田浩之」さんが・・・。


「…あ、会えた。…また、会えました…」
(出来ればあんまり、私は会いたくなかったです)
「マルチ!」
「浩之さあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
 浩之さんが広げた腕に勢いよく飛び込んでいくマルチさんを、彼は思いっきり強く
抱きしめていました。
(痛い、です。もう少し、力の加減を・・・)
「マルチ、マルチっ!」
「浩之さん、浩之さんっ!」
 マルチさんの目から、大粒の涙が溢れ出しました。
(そう言えば、マルチさんも浩之さんに犯されていたんですよね。身体を許すと情が
移るものだと聞いていましたが・・・)


「…わ、わたし、…てっきり、もう、会えないんだとばかり思ってました」
 マルチさんはぎゅっと浩之さんにしがみつきました。
(そんなに、好きだったのでしょうか?。その場その場の安易に振りまく優しさに絆
されたのでしょうか?)
「…マルチ、オレのこと、覚えてるんだな!?」
「はい、もちろんです! わたしにとっては、ほんの昨日のことですから」
(因みに私は、発見されるまで数週間、バラバラで放置されてました)
「オレ、寂しかったぜ? お前のその笑顔が見れなくてさ」
(この人の、殺し文句の一つみたいですね。神岸あかりさんにも以前・・・{検索})
「…ひ、浩之さん」
「でも、今日からはずっと一緒だぜ。なんてったってオレは、正式にお前のご主人様
になったんだからな」
(そう、私のご主人にもなった訳です。ですから、挨拶しなくてはいけませんね)
「は、はいっ! 嬉しいです。とっても、とっても、嬉しいです! ご主人様!」
(嬉しそうです。よかったですね、マルチさん)

 押し寄せる、感動のシーン。

 そしてそのまま自然の流れとして二人はベッドに倒れ込み・・・。
(もしかして、身体が欲しいのでは?・・・)


「はあっはあっはあっはあっはあ・・・マ、マルチ・・・」
 行為。自分がダッチワイフではないかと疑ってしまう時間。だから全てが終わった
時、私は遂、マルチさんの口を借りて呟いてしまいました。


「下手ですね」


  ピキ――――――――ン

(驚かせてしまったようです。無理もありません、私が喋ってしまったのですから)
「お、お、お・・・・・・・お前はぁ!?」
(仕方がありません。全てを打ち明けましょう)
「お久しぶりです。浩之さん」
「ど、ど、ど、どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「破壊された私ですが、奇跡的にメモリーが無事でして・・・マルチさんのメモリー
と一緒にお願いして入れて貰いました」
「なっ、なっ、なっ・・・・・・・・・・・・・・!?」
「これからも、宜しくお願いします。『ご主人様』」

  ニヤリ

(私はこういう笑い方しか出来ませんが・・・宜しくお願いします)

 マルチさんの顔を借りて笑ってみせました。

 でも、まだショックが抜けないのか、浩之さんの顔は強ばったままです・・・。

「あ・・・ああああ・・・・・ああああああああああああ・・・・・・・・・」

 でも、本当に困ったのはマルチさんの意識がさっきの行為で飛んでしまって・・・
。もしかしたら・・・。

(もしかしたら、ずっと私がこのままいなくてはいけないのかも知れません。どうし
ましょう、浩之さん・・・)


 けど、浩之さんは放心してしまったように動きません・・・ですから、新たにつけ
ていただいた機能をここで使う事にしましょう。


「いけない、いけない。驚かせちゃったよ・・・」

                          <おしまい>
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「まさたさん。作風は完全に対極の位置にいます。マルチファンの怒りが怖いので、
シリーズはこれで終わりにしようと思っています。本当は前回で終わらせるつもりで
したが、思い付いてしまったので(笑)」