『(緊急特別企画)さおりんも一緒!!』 投稿者:久々野 彰
「私、新城沙織。私立きらめき学園には通っていないけれど、近所では評判の美少女
よ。でも・・・そんな私だけれども、最近悩みがあるんです・・・そこで!」

『(緊急特別企画)さおりんも一緒!!』

「だって・・・だって・・・私、人気、落ちたんじゃないかしら!!!」

  ドドーンッ!!(*効果音)

「昔、リーフ創世期の遥か昔。私はずっと一番の人気だった。「雫」の世界だけでな
く、「痕」の世界を合わせていても、誰よりも人気があった。だから・・・だから「
さおりんと一緒」と私の名前を冠したものまで出来た。月島兄妹も、柏木四姉妹も、
怖くなかった。その他のキャラなんて眼中になしって思ってた。それなのに・・・」

「・・・・・・「To  Heart」。この存在が私の運命を狂わせたのよ。今迄は
暗い暗いリーフ世界の中で私は一筋の光明だったわ。沈んだ気分にさせる人々の希望
の光だった。日本の象徴だった。なのに・・・なのに・・・どうしてあんな明るい学
園物なんて手掛けたのよっ!!」
  両手で顔を覆ってワアアァァァと泣き崩れる。
「見る見るうちに次々と明るいキャラクター達が世界を覆い尽くし、その結果私の存
在はぼやけ、消えて行った。ありがたみが無くなった結果、誰も私の事を見向きもし
なくなった。人々はマルチに酔いしれ、浮かれ騒ぎ、おごっていってしまったわ。そ
して選択肢が広がった結果、今迄影の薄かったキャラへの注目を浴びる事となり、太
田香奈子や、柏木梓、その他諸々の連中にまで「萌え萌え〜」なんて言う輩まで現れ
た・・・そして今迄私の前に平伏していた「やっぱり大ボケお姉さんだよ」こと千鶴
ファン、「ずっと待っていてくれたんだね。ホロリン」こと楓ファン、「やっぱりお
兄ちゃんになりたいもん」こと初音ファンなど柏木姉妹ファンの逆襲、「雫はやっぱ
り瑠璃子あっての話だし・・・」こと瑠璃子ファンの反逆、そして「俺は○○が好き
」「俺は○○派だし」などと群雄割拠状態を創り出したTHの各キャラのファン共、
そして一番憎むべきはマルチ・・・口に出すのも憎々しい・・・マルチファン。これ
が・・・これが・・・・私の人生を狂わせたのよ!!」
  ハンカチで顔を隠しながら、すすりあげる沙織。
「何よ、何よ・・・皆勝手ばかりして!。最初は私が好きだって言ってくれたじゃな
い。支持してくれたじゃない。援助交際OKって言ってくれたじゃない。昔は色々な
所のアンケートで私に一票入れてくれたじゃない。嘘付き!。裏切り者!。騙したの
ね・・・・私を騙したのね!」
  そう言うと、ギュッとハンカチを握り締めて向き直る。
「でも・・・私は負けない。負けたなんて自分で思ったら、本当に負けた事になるも
の・・・だから、前向きに。前向きになるの。人気を・・・取り戻すの。正々堂々と
、最善を尽して・・・そして人気を復活してみせる!!」
  沙織は涙を溜めた目で睨みつけながら、
「そうよ!。最後に笑うのはこの、さおりんなのよっ!!!!!!!!!!!」
  突然、絶壁の淵に立ちながら日の出を見つめるような姿勢に宣言する。

    ザザーンッ!!

  お約束の打ち寄せる波。

「初代"ふきふき"の名に賭けてっ!!」

 沙織の決意は固かった。



「・・・で、まず色々考えてみたんだけども・・・どうも思いつかなくて・・・最強
の美少女なのにどうして成績優秀という設定がなかったの?。後、お嬢様・・・」
  屋上に通じる階段を登りながら、ブツブツと文句を言う沙織。

    ガチャ

「そこで、今、人気のあるキャラに直接聞いてみようかなって・・・」
  そこにはデンパを拾っていた瑠璃子がいた。
「「雫」で急速に力を取り戻し、私の寝首をかいた張本人。恐怖の月島ブラザーズの
妹、月島瑠璃子ちゃんの元にやってきました」
「・・・・・」
「どうも、こんにちわ。今日のデンパの調子はどうですか?」
  いつの間にかレポーターになっている沙織はマイクを瑠璃子に突きつける。
「あの・・・」
「そうですか。そうなんですか。はいはい・・・では、ここで質問です」
  勝手に肯いて、勝手に話を進めてしまう沙織。
「貴女の人気の秘密を私なりに解釈して見た所・・・やっぱりデンパが出せるってい
う所が大衆に受けたと思うの。表面ではミステリアスな部分や、ゲームでのメッセー
ジに心惹かれたなんて言っているけど・・・やっぱり羨ましいのよ、デンパが」
「そう・・・?」
「そうなの。で、本題に入ります。どうしたら、私もデンパが使えるようになります
か?」
  瑠璃子は一瞬だけ、何かを言いたそうな顔をしたが、ワクワクした表情を崩さずに
マイクを突きつけている沙織の顔をチラリと見て、諦めたようなため息をついてから
、ゆっくりと口を開く。
「それは・・・ゲームをはじめ色々な所でで紹介されているから・・・」
「違うの。私は貴女と"ピー"出来ないから!。そして貴女は元々使えるようになった
訳をしっかり言っていないわ。私はそこが聞きたいの!!」
「・・・・・わかった。沙織ちゃん」
「分かってくれたのね、貴女の秘密・・・さあ、話して!」
  一瞬だけ、瑠璃子の表情に冷やかなものが混じっていたのに、催促する沙織は気が
付く事はなかった。
「じゃあ・・・耳を貸して」
    ゴニョゴニョ・・・
  瑠璃子が両手で口を隠すようにしながら耳うちすると、肯きながら聞いている沙織
の表情がだんだんと曇って行った。


  とぼとぼと肩を落しながら、道を歩いている沙織。
「残念ながら、「さおりんのデンパでGO!」計画は挫折しちゃったわね。まさか長
い事デンパを使うと女の子はみんな例外無く白髪になっちゃうなんて・・・随分な若
白髪だとは思ってたけどねえ・・・人気が出てもそれじゃあ、私耐えられない・・・
でも・・・」

    ジャン!

「めげずに次は、今の所一番人気らしい・・・マルチを、あのマルチを生んだ来栖川
エレクトロニクスの研究所にやって参りました!」
  大きな建物の前でポーズを取る。

「では・・・開発主任の長瀬さんにお聞きします。私がマルチ並に人気を復活させる
にはどうしたらいいでしょうか?」
「・・・普通「人気の秘密は?」とか、聞かないか?」
  入って来るなり唐突にマイクをつきつけて本題に入る沙織に、流石にやや面食らっ
た表情を浮かべる長瀬源五郎。咥え煙草の灰がポロリと床に落ちる。
「それは既に分かってます。ただ、私の口からは言いたくないし、聞くだけでも気分
が悪くなるから・・・」
「色々、大変だねぇ・・・まあ、いいや。じゃあ、マルチの様にメイドロボに改造さ
れたらどうだい?」
「え"・・・いや、その・・・」

  来た道をやっぱりとぼとぼと、今度はやや肩を怒らせながら戻って行く。
「まったく・・・機械の身体なんて・・・銀河鉄道999じゃないんだから・・・第
一、一回改造されちゃったらもう戻せないじゃない。スパコー○ぐらいよ、元に戻せ
るの・・・魔族のゼ○ガディスだって元に戻ろうとしてるのにまだ無理なんだから、
迂闊には改造なんて出来ないわ・・・「さおりんの敵の庇を借りて母屋を乗っ取るわ
作戦1997」も駄目ね・・・じゃあ!」
  そして駅につくと、
「今度は第3ステージ、海底鬼岩城まで・・・行って来ま〜す」
  手を振って駅の中へと入って行った。


「皆さん、こんにちわ。ようやくやって参りました。柏木姉妹の皆さんです」
  沙織は彼女達の家に乗り込んで来て、玄関前に姉妹を一列に並べさせると、
「では、最初は司堂さんの人気アンケート(*当時、Leaf伝言板で催された企画
)で見事一位に輝きました柏木梓さんに聞きましょうっ!」
  梓に用意してあったマイクを向ける。
「え・・・?」
「どんな手を使って一位を勝ち取ったのでしょうか?」
「そ、そんな事言われたって・・・」
  梓は面食らったような顔をしながら、チラリと隣にいる千鶴の顔を窺う。
「如何なる手段を使ったのか?。その秘密をここで・・・」
「わ、私は何も・・・」
「またまたぁ〜。一人だけいい子ぶったって駄目ですよ。一人で何回も自分に投票し
たとか、不正操作して偽の情報を入れたとか、人に言えない事の一つや二つ・・・」
「無いよっ!!」
「梓・・・」
  ムカッときた梓の握り拳にそっと千鶴が手を添えて和らげる。
「千鶴姉・・・」


「嘘は、いけないわ」


  きっぱりと真顔で言う。
「違う――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ムキになるトコが怪しい」
「あのなぁっ――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「お願い。正直に言って。誰も貴女を責めたりしないわ」
「ち、千鶴お姉ちゃん・・・・」
「・・・・・」
  二人掛かりで責められている梓を横で引きつった顔をして見ている初音と楓。
「では、今度はリーフの企画物第2段の主役に選ばれました初音ちゃんに聞きましょ
うか?」
「え?」
  梓と千鶴の言い争いが激しくなっていく横で、いつの間にか抜け出した沙織が初音
にマイクを向ける。
「どうして選ばれたんですか?」
「そ、そんな事聞かれても・・・初音、分かんないよ」
「そう?。本当に?」
「ただぁ・・・」
  言い難そうにモジモジとしだす。
「ただ?」
「私なりに考えてみたんだけど・・・」
「考えてみたら?」
「私じゃないと、落ち着かないかなって・・・テヘ」
「それは興味深い発言ですね。成程成程」
  いつの間にか喧嘩が収まった梓達も、初音の横にいた楓も、沙織と初音に注目して
いた。
「つまぁ〜〜り!。千鶴さんでは歳がネックに!。梓さんでは美少女ゲーとして相応
しく無く!。楓ちゃんでは暗い!。貴女はそう言いたいんですね!!!」
「そ、そんな事、言ってないようっ!」
「いいや、分かります!。さおりんには十分、分かっちゃったもんねぇ〜!!」
「そ、そんな・・・」
「初音」
「初音」
「初音ちゃん・・・」
「思ってない!。そんな事、これっぽちも思っていないって・・・」
  3人に詰め寄られる初音。必死に首を左右に振るが、距離が詰まって行く・・・。


「もう・・・初音ちゃんは制作者に祭り上げられただけじゃない。可哀想に・・・梓
さんは怪しい事したみたいだし・・・「さおりんのジャパニーズエクスプレス作戦」
も駄目ね。正々堂々とやるって誓っちゃったもん」
  駅から出て来た沙織は、今度は普通の住宅地の方へと足を向ける。
「こうなったら、今でも私のファンだと思う人に話を聞いてみるしかないわね。そこ
でいい作戦ネームを付けて貰おうっと」
  足元の空缶を蹴る。
「そ・こ・で、全国に点在する私のファンッ!!。深夜にどっかの公園に集まれ!!
。合言葉は「リィィィフ!」よ。証として腰に手斧も括りつけてね。私もきっと会い
にいくからね・・・きっとよっ!!」
  そう言ってバタリと沙織は倒れた。


「ノイローゼだって・・・」
「沙織ちゃん・・・」
  救急車で病院に運ばれて行った沙織を見舞いに行った祐介と瑞穂は、帰り道でどう
して沙織がああなってしまったのか、考えていた。
「そんなに脇役じゃいやだったのか・・・」
「全く忘れ去られた訳でもないのに・・・」
「本当だよねぇ・・・」
「長瀬さんなんてこないだ発表されたHMR−28さん人気投票(*当時、ヒロイン
以外の人気投票をLeaf伝言板で行っていた)、源一郎先生にさえ負けましたもの
ね・・・」

    ピキィ!!

「作戦だ・・・僕が人気投票で一位になる作戦を練らなければ・・・」
  隣で倒れている瑞穂を全く無視しながら、祐介は何かに取付かれたようにうわ言を
言い続けていた。それは、日が暮れて辺りが闇に包まれても、続いていた。


                                               <完>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「手直しヴァージョンです。かなり遅くなってしまいました。大幅な変更も考えまし
たが、一度発表した物に手を加えるのは苦手なようで殆ど変わりません。思い出とし
ては、アルルさんがこれに反応したような動きをしてくれた事が嬉しかったかな」