『Solitude(藍原瑞穂編)』 投稿者:久々野 彰
『汚れ無き心、汚れ過ぎた心』


 頑張れ・・・

 安易にそう励まされる。
 曖昧な言葉だ。

 私は・・・ひねくれてるのかも知れない。


 一生懸命頑張ること・・・

 ひどく安易で、いい加減な言葉だと思う。


 一生懸命って何?
 頑張るって何?
 自分が自分のやりたいことをする時には使わない言葉じゃないの? 
 一人では言わない言葉じゃないの?

 人に言わせる事で上がる高揚感。
 人に見せる事で奮い立たせる使命感。

 そのくせ、言われたくない、聞かれたくない言葉だと知っている。

 怒りが込み上げてくる。
 同時に、呆れてしまう。
 力が、抜ける。



 …色々な事あったんだ・・・私

 私は真面目だと、人から言われる。
 私はそうは思ってなかったが、そう言われる。


 真面目・・・従順にして人に逆らわない。
 都合の良い、存在。
 社会で一番便利で、望まれる存在。


 それを目指すこと。
 その行為に励ましの言葉。
 「頑張れ」
 ふざけてる。


 …私、そんなのはどうだっていい。

 そう、言えない自分。
 弱い、自分。
 醜い、自分。

 一番ふざけているのは、私。
 そして従うことすら出来ないでいる。
 だから・・・


 …勇気を貰ったの。
 …あの娘の為にも・・・。

 人にはそう言う事で誤魔化している。
 誤魔化している。
 そう、誤魔化し。


 頼っているあの娘をダシに使っている自分がいる。
 情けない姿。
 酷く醜い姿。

 愚かな、私。

「頑張ろうよ」

 呼び掛ける、私。
 どうしても、自分の方に引き込みたい。
 同じ世界を共有できないなら、私の中だけでも、一緒にいて欲しい。

 救いようのないエゴ。
 自己満足。

 …それでもいいの。一人じゃ、寂しいから・・・。

 一人では何もできない。出来ているフリか、勝手に自分の中に住んで貰っている事
で自分を偽る。

「私も・・・頑張るから・・・」

 今日もそう呼び掛ける。
 本当はもう、どうだっていいのかも知れない。
 ただ、形が欲しいだけ。
 私という存在を自分の納得がいく形で認めさせる形が。


「・・・・・」

 私を見ていないから、だから安心しているのだろうか。
 だとしたら、私はなんて汚い人間なのだろう。
 だけども、私は他に縋る術を知らない。
 だから、呼び掛ける事で自分を、周囲と同じ世界へと保つ事が出来るのだ。

「・・・だから、私を責めないで・・・」


 私には、何もできないのだから・・・・。


 …その瞳を私に向けないで。


 自分を保つことが出来なくなるから・・・・。


                          <完>
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「超久々の『Solitude』シリーズです。急に書きたくなって書きました。こ
れでヒロイン3人は完了。ちょっと瑞穂ファンには納得しかねる内容ですし、元々が
しっかりとした形になっているかどうかやや不安です。ですが、シリーズの原点に近
い作りだと自分の中では勝手に思っているので、発表させて貰いました。惜しむらく
は香奈子と切り離せなかった所です・・・」