『"電波戦隊"デンパマン』第3章(下) 投稿者:久々野 彰

 −第3章『瑠璃子だけを見つめて』−

 オルゴールの音が流れる。

 某月某日。曇り。三学期が始まった。移動教室の移動中、一学年下のクラスと一緒
になった。
 …え?、マジ?、あんな娘、いたっけ?
  ドキドキドキ
 …これって一目惚れ?

 …あの娘の横顔 あの娘の笑顔
 …神様、チャンスを下さい 勇気を下さい
 …せめて、名前を教えて下さい
 
 …あ・・・
 目と目が合った。
「手合わせ、お願いします」
 あの娘が私に微笑んだ。
 …まじ? らっきい!
「手加減しないわよ」
 私もとっておきの笑顔でそう言った。
 三学期が始まった。私の恋も始まった・・・。


 某月某日。雨。
「貴女と彼女、練習してるの?」
 綾香の奴にそう聞かれた。
 よく話すし、組み手もするけど、あの娘、私の事、どう思っているんだろう・・・

「好きだ」って一言、言ってしまえば、あの娘との距離、ぐっと近付くかも知れない
けど・・・
 …でも・・・ もしかしたら・・・
 …それが怖いんだ

 …好きだ 好きだ 好きだ・・・
 心の中では言えるのに、勇気が出ない

 …好きだ 好きだ 好きだぁっ!!

 あの娘のバースデーにはきっと勇気を出そう・・・

「CLUB『時々メモリアル』!!」(文化、中国、福井放送聞いてない人、スマン)

 両手だぁ〜けじゃ、抱えきれない 重さを感じた 君の体重 訊ねたら〜 
 そこから〜 始まる修羅場〜  (またやっちまったよ・・・) 1/9&16放送より


  PART31 「この女、妄想癖につき」

「それなのに・・・・」
 家の自分の部屋でヘッドフォンでラジオを聞きながら、小刻みに震える好恵。

 …もしも私が 利口だぁったら〜 貴女の笑顔続くように どんな事も黙ぁってあ
げる〜 年も 胸も 何でも〜 

 耳元から流れてくるEDの曲など、彼女の耳に入らない。
「どうして私を捨てて行っちゃったのぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」
 坂下好恵、魂の叫びだった。

 悔しかった。とにかく悔しかった。
「どうして、拳を交えた仲じゃないっ!!。熱い友情を約束しあった仲じゃない。私
の夢の中に現れてくれたじゃない。私が書いた漫画で「好きだ」って言ってくれたじ
ゃない。二束三文で買ったエロ小説で名前の部分だけ手を加えて、愛し合ったじゃな
い。どうして・・・どうしてよっ!!」
 ああ、やっぱりかなりヤバい人になってる。好恵ファン、いたらスマン。
「男だなんて・・・きっと・・・」


「ああ、○○さん・・・私・・・私・・・」(好恵は拓也を知らない)
 安っぽいラブホテルの一室で、裸に近い状態でシーツの上に転がされる葵。
「まさかカツサンドを嫌って見せただけでホイホイとついて来るとはな・・・」
 D・Sっぽい凶悪そうな顔をした男がニヤニヤ笑いながら、葵を見下ろす。

 …聞いたっ!!。葵、コイツは・・・この男はこんな奴なのよっ!!。

「ああ・・・何も聞こえない。○○さん・・・素敵です・・・」
「クックック・・・まあ、いいか。取り敢えず・・・戴いちまおう・・・」

 …だぁぁぁぁかぁぁぁぁらぁぁぁぁ・・・騙されてるんだってばぁっ!!!!。

「聞こえない・・・○○さん・・・来て・・・下さい」
 仰向けに寝たまま、男に両手を広げてみせる葵。
「んじゃま・・・一発、ブチ込んでやっか。感謝しな」
「ああぁ・・・ん」
 …葵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!。


「はあっ!!。はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・くっ!!」
 こうしてひとしきり、好恵の頭の中で果てしない妄想の世界が繰り広げられると、
「葵の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿・・・」
 悔しさがこみ上げてきて手にしたダーツの矢を、次々と部屋中に貼った特製等身大
葵ポスターに投げつける。矢は一つたりとも狙い違わず、葵の眉間に突き刺さる。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 手元にあった矢が無くなり、これまた自作した特大葵ちゃん縫いぐるみにあらゆる
技をかけまくるが、
「・・・・でも・・・好き・・・」
 最後にはベッドの上に叩き付けられた葵縫いぐるみをとても切なそうに、ボソっと
呟きながら、ギュっと抱きしめる。
「葵の・・・馬鹿・・・」
 浮かべた涙を拭おうともせず、好恵は葵縫いぐるみを抱きしめたまま、ベッドに潜
りこむ。
「だから・・・」
 好恵は潤んだ目で、葵縫いぐるみを見つめて、
「今夜だけは・・・優しくしてね・・・」
 枕の下から何かを取り出した・・・。

 これ以上はヤバいので・・・(デンパマンは健全な少年少女の読み物だよ)。

                             <完>

  PART32 「明かされた過去」


 ヤックにて。今より少し若い頃の拓也と、二人の上級生の女生徒が窓際の席でハン
バーガー片手に雑談を交わしていた。専ら会話は二人の間だけで、拓也は頷いたりす
るぐらいだったが。

「私さあ・・・好きな人、妹と出来ちゃってぇ・・・」
「・・・私なんて中学生に彼、取られちゃって・・・」
 女の一人が拓也の方を向いて、
「やっぱり月島君も可愛い年下の女の子の方が好きよね」
「そんな、興味ないですよ。僕」
 鹿爪らしい顔をした拓也は、あっさりとそうあしらうと、
「もう、僕行かなきゃ・・・」
 トレーを持って立ち上がる。
「え・・・」
「もう・・・」
 二人が目で追うが、拓也はスタスタと歩き去っていく。


  バタン

 家に帰って、背中越しにドアを閉めるとそのまま寄りかかる拓也。
「瑠璃子・・・」
 疲れ切った表情で、息を荒くしている。


 視界に台所に立つエプロンを着けた瑠璃子の後ろ姿が入る。


「興味ないって・・・」
「私、彼、好みなんだ。Getしちゃおうかな・・・」
 残されたヤックで盛り上がる女生徒二人。


「瑠璃子・・・」
 拓也は玄関で靴を脚だけで脱ぎ捨て、フラフラと廊下を歩いていく。


「時代はやっぱりお姉さまよねぇ・・・」
「そうそう・・・ロリに転ぶ奴の気が知れないわ・・・」
 ハンバーガーを囓りながら、論議に花を咲かせる。


「瑠璃子・・・」
 ゾンビのような動きで廊下を歩く拓也。徐々に瑠璃子の後ろ姿が迫ってくる。


「あ、私、エステに行こっと・・・」
「ナイスバディに磨きをかけないとね・・・」
 それぞれ野望を胸に秘め、席を立つ二人。


「瑠璃子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――っ!!!!!!!!!!!!!!!」
 台所に来た拓也は、瑠璃子に後ろから抱きつき、そのまま押し倒す。


 とある・・・夏の日の出来事だった・・・。

                           <完>

  PART33 「間違いだらけの世界」

「はぁ・・・」
 ため息をつく拓也。最初だっていうのに元気ないぞ。
「元気などある筈がないだろう・・・どうも瑠璃子の機嫌を損ねてしまったらしく・
・・はぁ・・・」
 机の上に肘を乗せ、祈るように目を閉じる拓也。一応、悩んでいた。


「あ、あの・・・」
 拓也の教室の入り口に見慣れない少女が現れた。この学校では知られた顔。一時は
購買部の蒼い幽霊とまで言われていた少女。そしてこの度、無事転校を果たした松原
葵その人だった。思い込んだら、試練の道を。である。
「あ・・葵ちゃん。どうしたの?」
 事情を知っている女子生徒が対応する。結構、好意的に受け入れられている。可愛
い娘は得だ。
「月島拓也先輩・・・」
「あ、月島君ね・・・今はちょっと・・・」
 思い悩んでいる拓也の方を見て、申し訳無さそうな顔をして見せる女生徒。ああい
う状態の時に関わると、ろくな事がないのを知っている。
「あ・・・いえ・・・また来ますから」
 文句も言わず、素直に引き下がる葵。
「どうも、失礼しました」
 ペコリと丁寧に頭を下げると、そのまま帰っていく。


「私の葵を門前払いだなんて・・・許せない」
 やっぱり葵を追って転校して来ていた好恵は、僅かな隙間から覗くように一部始終
見ていて、拓也の様子に怒りを抱く。

「やっぱり男なんて身勝手で粗雑で乱暴な生き物よ」
 何かかおり菌でも犯されたような感じの好恵の眼差しは殺意に満ち満ちていた。

  ゴゴゴゴゴ・・・・

「ねえ、何か暑くない?」
「掃除用具の中から熱気が・・・」
 好恵の潜んでいた掃除用具の周りで生徒達がひそひそ話をしていた。


「あ、松原さん・・・」
「藍原先輩・・・」
 自分の教室に戻るべく、葵が階段を下りていると瑞穂が上ってくるのとすれ違い、
声をかけられる。
「今度の事では色々と・・・」
「ああ、いいのよ。これも生徒会役員の仕事なんだから・・・」
 瑞穂が丁寧に頭を下げる葵に向かって、パタパタと手を振る。どうやら転校の事ら
や何やらの手続きで世話になったらしい。
「あら、葵ちゃん。もう、学校に馴染んだ?」
 瑞穂の後ろから沙織がやってきて声をかける。ケロっとした顔をしている。勿論、
顔面にバレーボールを叩き付けた事など、覚えちゃいない。今でもあれは幽霊だと信
じているらしい。
「え・・・あ・・・はい・・・」
 やられた方は覚えているらしく、やや引き気味に応対する葵。
「まだ、そんなに経ってないから分からないことも多いでしょうけど、もし何かあっ
たらわ・た・しに相談してね。この学校、「ちょっと」変わっている人、多いから」
 随分言うようになった瑞穂。鍛え上げられたのか。
「私も何でも力になるからね」
 当然、「ちょっと」に自分が含まれているとは露にも思わない沙織が付け加える。
「ありがとうございます・・・」
「いいのいいの・・・んで、その噂の好きな人には出会えた?」
「え・・・?」
 沙織にニッコリした顔に、動揺する葵。
「何です・・・それ・・・?」
 事情を知らない瑞穂が怪訝な顔をして尋ねる。
「あら、みずぴー知らないの?。もうその噂で持ちきりなんだから・・・」
「あ・・・あの・・・」
 真っ赤になる葵。初々しい。
「何です・・・その「みずぴー」ってのは・・・」
「愛称よ。瑞穂ちゃんの・・・でさ、その好きな人って・・・つ・・・」
「し、失礼しますぅぅぅぅぅぅ――――――――――――――っ!!!!!!!!」
 慌てて階段を駆け下りていってしまう葵。
「誰・・・ですって?」
 仕方がないので、残された瑞穂が沙織に尋ねる。
「月島拓也先輩だって。何でも、運命的な再会を果たしたのがきっかけだって・・・
聞いてる?」
 瑞穂は小刻みに震えていた。まさか・・・瑞穂も・・・
「間違ってる・・・」

  ポツリ

 そう呟いた。
「え?。」
「あんな男がモテまくるなんて・・・世の中間違ってる・・・」
「あ、あの・・・」
「こんな出鱈目な世の中、私には耐えられないっ!!」
「あっ!!。みずぴーっ!!」

 階段の階と階の間の部分の小窓に登りだし、飛び降りようとする瑞穂。
「ちょっとぉっ!!。みずぴーっ!!。止めなさいっばぁっ!!」


 この日以来、藍原瑞穂の眉間の皺が数本、追加された・・・。


                           <完>

  PART34 「赤い林檎」


 …拝啓、瑠璃子さん江・・・

  ザッザッザ・・・

 リュックを背負って、田舎の農村風景をバックに畦道を歩いている祐介。

 …僕は今、旅に出ています。

 道の反対側から通りかかった農婆に礼儀正しく深々と頭を下げて挨拶している。

 …僕らが新未来のアダムとイブになれるように・・・それに因んだ林檎のお酒を送
ります。ちょっぴり大人になった気がする貴女に、相応しい飲み物と・・・


「な〜に、言ってんだか」
 自宅の縁側で冬の麗らかな日差しを浴びながら、林檎のお酒(あ、ヤバい)を片手に
くつろいで、祐介の手紙を読んで笑っている沙織。


「他人の家の郵便物、勝手に持っていかないでくれる・・・」
 何故かいつの間にか庭に立っている瑠璃子が、ポツリと呟く。
「聞こえな〜い」
「・・・・・」
 葉書を胸にあて、知らんぷりを決め込む。
「あ〜、愛されてるってカンジ〜」
「・・・・・」


  バシュ・・・


 …拝啓、祐君。空が・・・何故か空が赤いの・・・お願い、早く帰ってきて・・・


                           <完>

  PART35 「だって・・・元はチョイ役だし」


「あれ・・・長瀬君だけじゃなくて・・・今日は新城さんまで休みですかぁ・・・」
「静かな訳よね〜」
 月曜日の放課後、生徒会室でつかの間の休息を得ている美和子、由紀、瑞穂らの役
員達が雑談している。
「あれ?。吉田さん・・・何編んでるんですか?」
 瑞穂が毛糸玉を入れた紙袋を脇に置いて、編み物をしている由紀に尋ねる。
「え・・・」
「由紀ちゃんったら・・・時期遅過ぎじゃ・・・」
「いいのよ。これはスプリングセーターだから・・・」
 ペンを持った手を口元にあてて言う美和子に、慣れた手つきで編みながらあしらう
由紀だったが、
「それに・・・」
「それに、新しい彼氏の誕生日まではまだあるしね・・・」
 最後の言葉を美和子に引き取られる。
「み、美和子・・・何でそれをっ!?」
「だって・・・由紀ちゃん思考が短絡なんだもん・・・私だって分かるよ」
 真っ赤になって慌てる由紀に、クスリと微笑む美和子。
「桂木さんって・・・ふうん・・・」
 脇で唖然としている瑞穂が呟く。
「今度はすぐ飽きたりしないで、完成させてあげるのよ。由紀ちゃんって何でも飽き
っぽい性格なんだから・・・」
「そ、そーゆーアンタは何してるのよ」
 赤くなりながらも、編み棒で美和子の手元を指す。
「同人誌作り」
 ネームを作っていた。
「終わったんじゃないの・・・?」
 あっさり言ってのけた美和子に、顔を近づけながら尋ねる由紀。
「夏コミの準備よ。今のウチから始めないと・・・」
「あ・・・あ、そう・・・」
 ヒクツク由紀と、にこやかに微笑む美和子を見ながら、
『親友って・・・いいなぁ』
 微笑ましい気持ちになる瑞穂。
『香奈子ちゃん・・・』
 そして、今も病院にいる筈の親友に思いを巡らす。

  ガチャ

 そんな時、生徒会室のドアが開く。
「二号三号、ここにいたか。出かけるぞ」
 現れた拓也が二人に声をかける。

「は・・・い・・・」
「今・・・すぐ・・・」
 それぞれ、見えない糸で操られるように拓也の招きに応じて部屋を出ていく美和子
と由紀。勿論、目は虚ろだ。

 そして後には、編みかけのセーターと書きかけの同人誌と・・・

「彼女たちに・・・人権はないのね・・・」
 両頬を涙で濡らす瑞穂だけが、その場に取り残されたのだった。

                             <完>

  PART36 「全ての元凶は・・・」


 …私・・・お兄ちゃんが好き・・・

 にこやかに僕に微笑む瑠璃子。この笑顔を失ったのは、いつの頃だろうか・・・


「お・・・一瞬シリアスか?。と、思わせてみた月島拓也です。人呼んでデンパマン
です」
「・・・ハロハロハロ〜」
「・・・ハレハレハレ〜」
 壊れている二人がその後ろに続く。何故か迷彩服を着ていた。しかも雪山装備だ。
「吹雪が続くこと1週間・・・ランタンを無くし、カイロは切れ、食料はもう尽きた
・・・」
 猛吹雪が吹き込む雪山を掘ったような洞穴に身を寄せ合って、僅かな薪で暖を取っ
ている3人。
「どうしてこんな所にいるのかって?・・・フッ、愚問だね・・・」
 青ざめた顔をして震えている二人を無視して、こちらも完全に防寒服を着込んだ拓
也が最後のカロリーメイトを囓りながら語りかける。
「あれは・・・1週間ちょっと前の事だった・・・」



「や・・・やあ、瑠璃子」
「あ・・・お兄ちゃん・・・」
 瑠璃子の教室へぎこちなくギクシャクして挨拶する拓也。瑠璃子は彼が先ほどから
ずっと廊下の隅で隠れながら様子を窺っていた事を知りながらも、驚いたような顔を
してみせる。
「さ・・・最近・・・その・・・おべ・・・」
「お勉強?。うん・・・大丈夫だよ」
 知ってて誤魔化す瑠璃子。しかも、全く嫌みな顔をせず、本当に気付いていない素
振りだから始末が悪い。笑顔まで清々しい。
「あ・・・いや・・・」
 今まで数回、この手で誤魔化されてきたが、流石に危機が迫っていると感じていた
のだろう。食い下がる。
「そうじゃなくて・・・べん・・・」
「弁財天・・・弁舌、音楽、財福、知恵などを司る印度の女神。美しい顔を持ち、琵
琶を弾いている。美音をもって衆生を喜ばせると言う。我が国では後世、吉祥天と混
同し、財宝を与える神として信仰された。七福神の一つ。べざいてん。べんてん。ス
ワティと呼んでと本人談。岩波国語辞典第四版+α」
 あくまで誤魔化そうとする瑠璃子。いい度胸している。
「いや、お弁当・・・どうなっちゃったのかなぁ〜なんて・・・」
 久○綾っぽく言ってみせる拓也。今日こそは、らしい。
「弁当・・・外出先で食事する為、器物に入れて持ち歩く食品。また、その器物。転
じて、外出先でとる簡単な食事。・・・好きじゃない。岩波国語・・・」
「いや、言葉の意味じゃなくて・・・」
 何か、嫌な気持ちになる言葉が含まれていたようだったが、拓也は気付かなかった
らしい。
「実はね・・・冬だから・・・食べ物が・・・」
 夏ならまだしも・・・何だって言うのだろう。
「瑠璃子ぉぉぉぉぉ、いい加減に許してくれぇぇぇぇぇぇぇ・・・」
 耐えられなくなったのか、拓也はそう号泣する。
「何が?」
 しれっとした瑠璃子。
「瑠璃子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 縋り付いて泣く拓也。情けない男全開だった。
「あ、瑠璃子さぁ〜ん・・・」
 十分、その仕打ちを脇から楽しんでいたらしい。ゆっくりとわざとらしく祐介が脇
から現れる。
「頼んでいた・・・お弁当の事なんだけど・・・」
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ――――――――――――――っ!?」
 わざわざ拓也に聞こえるように、わざとらしく尋ねる祐介。
「はい」
「いやあ、ありがと・・・」
 脇から差し出された弁当箱を受け取る祐介。だが、その差し出された先は、
「へへへ・・・」
「し・・・新城さんっ!?」
 凍り付く祐介。
「自信作なんだ・・・これから毎日、作ってくるね」
 沙織が悪戯っぽく舌を出して戯ける。
「・・・ねえ、お兄ちゃん」
「何だい!。妹よ」
 凍り付く祐介に、反撃の機会は来たとばかりに笑顔を向ける拓也。
「冬虫夏草って・・・今どこにあるの?」



「まあ、そう言う訳だ・・・」
 かぐや姫かいっ!!。
「そこで探しに探して・・・はや一週間。完全に閉じこめられたな・・・」

  バタ・・・

 背後で美和子が倒れる。
「あっ!?。二号っ!?。僕に無断で倒れるなっ!!」
 無茶言うな。
「そうか・・・このままでは全滅だっ!!。ここは・・・雪山の鉄則・・・裸だっ!
!。裸で暖まるんだっ!!」
 服を脱ぎ出す拓也。秀才と呼ばれていたのも昔の事・・・かなりおかしく、いや立
派におかしくなってしまっていた。


 …数時間後・・・

「る、瑠璃子・・・愛しているよ・・・ま、また・・・生まれ変わっても・・・」
 極寒での全裸はやはり・・・拓也達は生命の危機を迎えていた。


 その頃、学校では、
「あれ?。瑠璃子さん・・・それは?」
「冬虫夏草・・・」
 輸入業者から通販で取り寄せた冬虫夏草茶を煎れている瑠璃子。
「身体・・・あったまるよ・・・」
「え・・・いいの?」
 学校の皆に振る舞っていた。


「ルリコ・・・アイシテル・・・ルリコ、アイシテル、ルリコ、アイシテル・・・」

 凍死寸前の拓也達が救出されたのは、数時間後の事だった。

 "電波戦隊デンパマン"  第3章『瑠璃子だけを見つめて』      <完>