『"電波戦隊"デンパマン』第2章(下) 投稿者:久々野 彰
『電波戦隊"デンパマン"(第2章)』(下)

 −第2章『月島瑠璃子と惨劇関係』−

 オルゴールの音が流れる。

 某月某日、晴れ。学校の帰り道、久しぶりに瑠璃子にあった。PART6以来だね
。もう何日経つんだろう。・・・瑠璃子は僕のこと、すっかりと忘れていた。
「寒いね」
「うん。でも星がこんなに綺麗」
 冴え冴えとした空には数えきれない星。僕達はしばらく黙ったまま、星を見つめて
いた。
「こうして"一人で"いるとなんだか、暖ったかいかも知れない」
 瑠璃子がポツリと呟いた。
「うん。そうだね」
 僕には瑠璃子が言いたかったこと、よく分かった。寒々とした冬の空、二人は、ず
っとずっと星を眺めていた。
「瑠璃子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ――――――!!!!!!!!」

「CLUB『時々メモリアル』!!」(文化、中国、福井放送以外の人、スマン)

 両手だぁ〜けじゃ、抱えきれない 重さを感じた 君の体重 訊ねたら〜 
 そこから〜 始まる修羅場〜  (こんな歌だったと・・・「オイ」)12/5放送より
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 PART15 「愛の西瓜」

「性跡腐臭、容疑端的、限界突破と、もうこのパターン無理だなと感じている最近・
・・どうも、月島拓也です」
 病院のベッドに寝かされながらも、半身を起こしてこっちを見ている拓也。カメラ
目線が決まっているぞ。だが、片足はギブスで固められ、吊られていた。理由は必要
ないだろう。前回を読んでくれ。片足の骨折で済んだのは僥倖と言っていいだろう。
祐介がどうなったか?。それは知らない。考えていないからだ。
「お兄ちゃん・・・最近、疲れてる・・・」
 ラジオを聞いたせいなのかどうかは知らないが、瑠璃子が傍らにいて、果物ナイフ
を手に彼女の顔以上ありそうな大きな西瓜の皮を(!?)器用に剥いていた。ナイフは
白い部分から水が滴る真っ赤な部分へと移っていたが、こんな行為をするのは、今の
ところ東海林さだ○と両津○吉以外、筆者は知らない。しかも季節は冬である。
「はい。お兄ちゃん」
 剥き終わった西瓜を瑠璃子は拓也に手渡す。真っ赤な巨大な物体を。
「あ、ありがとう。瑠璃子」
 と言って、受け取ったものの、拓也はどうして良いか分からずに両手に抱えた西瓜
を見下ろして途方に暮れる。
「・・・・・」
 その拓也をジーっと無言で見守る瑠璃子。自然と汗が出てくるのを拓也は感じてい
た。既にベッドの上は手から流れ落ちる西瓜の露でベトベトである。
「あ、あの、瑠璃子・・・」
「・・・・・」
 じっと見続ける瑠璃子。無言のプレッシャーだ。こうなったら・・・
「いただきます・・・」
 食べるしかない。嫌がらせだ。間違いなく嫌がらせだ。だが、拓也はどうする事も
出来ない。顔を突っ込むようにしてかぶりつく。口中が西瓜で詰まってあまり美味し
く感じない。だが、瑠璃子のそれは拓也が食べ終わるまで続いた。

「お兄ちゃん。デンパ、届いてたよ」
 前回の事(PART13より「〜瑠璃子の財布の紐は固いんだっ!!」)だろう。拓
也が死ぬ気で西瓜を平らげた瞬間、瑠璃子はそう言った。そして帰っていった。
「・・・・・」
 掛け布団とパジャマを西瓜の汁でベトベトになったまま、固まる拓也。この後、看
護婦に怒鳴られるまで彼が動くことはなかった。そして、それきり拓也が退院するま
で、瑠璃子は来なかった・・・。

「う"う"う"・・・」
 そして翌日、拓也の腹がどうなったかは押して知るべし。

                             <完>

 PART16「新城沙織、初登場」

「ふう・・・」
「祐ちゃん。どうしたの?。何だか、元気ないみたい」
 机の上に肩肘をついてため息をつく長瀬祐介に、隣のクラスからやってきた新城沙
織が声をかける。
「あ、新城さん」
「やあね、さおりんって読んでよ。二人の仲じゃない」
「仲って・・・」
 やや、遠慮なくて勝手な言い方に祐介は何か言いかけるが、
「まあ、いいや。筆者がいい加減だから設定あいまいだし・・・」
 変な納得の仕方で片づけ、
「はぁ・・・」
 再びため息をつく。
「・・・どうしたのよ。ねえ、悩みがあるなら私に話してよ。きっと力になってあげ
られると思うの」
 無根拠な自信で沙織が言う。
「新城さんに言ったって・・・何も解決しないよ。どうせ、面白がるだけだろうから
・・・」
 意見そのものは正しいような気がしたが、彼は過ちを二つ犯した。一つはそういう
事は口に出してはいけない事。そして、もう一つは・・・
「さ・お・り・ん!!!!!」
「あ・・・さ、さおりん」
 強く迫ってきた事で分かると思う。名前の呼ばれ方に五月蠅いのだ。
「で、どんな悩み?」
「人の話をキチンと聞けいっ!」
 だが、名前以外は気にしていないようだ。

「ま、まあ・・・いいか。その、ね・・・ちょっと寂しいだけだよ」
「何が?」
 結局、折れたように祐介は別な意味のため息をついて、理由を語り出す。
「瑠璃子さんだよ・・・」
  ピキッ
 その瞬間、沙織の表情が引きつった。
「最近、合体してくれなくてさ・・・あれ?」
 気がつくと、沙織の姿は消えていた。


「・・・・・」
 放課後、拓也が入院中と言うこともあってか、一人でトボトボと下校しようと校門
をくぐった瑠璃子の頭上で声がした。
「ワァ――――――ハッハッハッハッハ」
 その声に立ち止まり、そのまま顔を上げると、
「美少女の晴れやかな恋路を妨げようとする毒婦めが・・・ハー○ィアに代わってお
仕置きよ!」
 学校の塀の上に女生徒が立っていた。丁度逆光で、瑠璃子の位置からはパンツは見
えても、顔は見えなかった。
「・・・・・」
「"美少女仮面サオリーナ"、ただいま見参!!」
 蝶をあしらった悪趣味な眼鏡をかけた沙織は無言で立ち尽くす瑠璃子目がけて、
「とうっ!!」
 飛び降りた。

 ヒョイ

 そのまま、一歩下がる瑠璃子。

 グシャッ!!

 避けた場所に何故か頭から突っ込んで落ちる沙織。
「・・・・・」
 瑠璃子は頭から地面に突っ込んでピクついている沙織を一瞥しただけで、再び帰宅
の徒についた・・・。

「また変なのが増えた・・・」
 救急車で運ばれていった沙織を見送った瑞穂は、頭を抱えながらそうため息をつい
ていた。彼女の望む平和な学園生活は・・・まだまだ訪れようとはしなかった。

                             <完>
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 もしも私が 利口だぁったら〜 貴女の笑顔続くように どんな事も
 黙ぁってあげる〜 年も 胸も 何でも〜 (EDです。分かる人は笑ってね。)

  PART17  「浅ましい惨状事件」

「君は完全に包囲されている!。無駄な抵抗は止めて、大人しく出てきなさい!!」
 パトカーに囲まれるようにしていた警察官の一人がスピーカーで囲んでいるアパー
トに向かってそう叫んだ。
「うるせいっ!!。こっちには人質がいるんだぞっ!!」
 そう言って連続婦女暴行魔の犯人が窓の外に引き出した人物・・・やっぱり可哀想
な星の元に生まれた青年、阿部貴之君だった。


「ふ・・・まさか、こんな事になろうとはな・・・」
 その様子を近くで見守っていた拓也は苦笑いを浮かべていた。彼が謎の鬼の正体に
ついて気付いたのは、暴走したトラックから放り出され大怪我して入院中の時だった
・・・。

「貴之・・・大丈夫かい?」
 病院の中庭で足のリハビリをしていた拓也の耳に、病院から出てきた二人組の声が
聞こえてきたのだ。その声に顔を向けると一人は、

 ・・・間違いない!

 あの名前の知らない気弱な男、Piaキャロの雪子の男にちょっと似た奴、その男
だった。いつもあの男が絡むとろくでもない事になる。そう拓也は知っていた。

 月島拓也(デンパマン)は知っている・・・ネス○フェ・ゴールド○レンド。

「待てよ・・・」
 慌てて災いを逃れるべく、隠れようとした瞬間、思いついたのだった。
「あの男の隣にいる奴・・・あの男は・・・?」
 もう一人の眼鏡をかけた青年の方に注意が行く。それからの拓也の思考回路の働き
方はペンティアムUにも負けない程、素早かった。貴之と呼ばれる男の様なタイプに
友人がいるとは考えにくい事。彼が窮地に追いやられるとそれを護るようにしてあの
鬼が現れる事。それら全てを一瞬にして計算して出した結果・・・

 ・・・あの眼鏡の男こそ、例の奴の正体に違いない!

 誰でも分かりそうな結論に達した。
「・・・て、事はアイツこそ、一緒にいるあの「貧弱な坊や」こそ、鬼のウイークポ
イント・・・一矢報いるチャンスだな」

 それから、拓也は松葉杖をつきながら監視を続ける事にした。貴之の尾行を続けた
結果、分かった事実は・・・。
「殆どスキが無い・・・」
 いつもべったりとくっついている柳川の目をくぐり抜けて貴之に接触するのは至難
の技だった。何せ、貴之が道を歩いていて小石に躓いた時でさえ、
「貴之ぃ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 全身真っ黒の鬼がどこからか現れ、傷を消毒していくこの対応の早さ。

 ・・・下手に手を出したらやられる・・・。

 だが、ここで引き下がったら男が廃る。そこで考えた作戦が、
「余所で大事件を起こす」→「柳川も駆り出される」→「貴之のアパートで捕獲」
 →「直ぐに手の届かないところへ監禁」→「脅迫電話」→「仕返しタ〜イム」
 だった。そこで最初の二つ目までは見事に仕込んだのだったが・・・

「まさか犯人がそのままアパートに逃げ込むなんて・・・」
 頭を抱える拓也。予想外である。アクシデンツである。鯨樹内閣官房特命事故調査
官(通称クジラ)を呼ばなくては。
「折角のアイディアだったのに・・・」
 抱えた頭を大袈裟に振る拓也。折角、そこいらの性犯罪者予備軍をデンパで操って
大騒ぎを起こしたのに・・・。

「貴之ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ――――――!!!!!!!!!!!!!!」

 立て籠もってほんの僅かな間・・・パトカーが来て、取り囲んで、警官の一人がス
ピーカーで犯人に呼びかけた5秒後。叫び声と共に吹き飛ぶパトカー。蹴散らされる
警官。そして拓也でさえ黒い影の残像だけ知覚できるに過ぎなかった。

「うぎゃぁぁぁぁぁっっっっ――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その2秒後から聞こえてくる断末魔。全くの見込み違いだった。逆に計画が成功し
かかったら、消し飛ぶのは彼ではなく、自分だっただろう。人間の対応できるスピー
ドではない。この僕でさえ。そう、ゆっくりとスローモーションの様に宙からこちら
に向かって落ちてくるパトカーを避けることの出来そうにない僕には・・・。

 ・・・僕の入院が、少し延びた。瑠璃子は、来てくれるだろうか?・・・

                            <完>

 PART18 「沙織覚醒?」

「祐く〜ん。一緒にお昼食べよ」
 チャイムになるや否や、それが鳴り終わる前に沙織は待ちかねていたように祐介の
教室に飛び込んで来る。
「し、新城さん・・・」
「ね、ね、いいでしょ?。それともお弁当でも作ってこようか?。それとも私がいい
?。やだぁ、祐くんったら、スケベなんだから・・・」
「何も言ってねえぞ・・・」
 勝手に盛り上がってパンパンと肩を叩く沙織に、祐介は冷ややかな視線を送るが、
気付いていないようだった。
「第一・・・さ」
「何?」
「まだ、授業終わってないんだけど・・・」
 祐介がそう言って前を指さす。その先には気むずかしそうな中年教師が怒りで震え
ている。この教師の授業は長いのだ。
「や、やだぁ・・・」
 沙織はそう言ってちょっと照れてみせると、

  ギュルン バキィッ!!

 常備しているとしか思えない小脇に抱えたバレーボールでスパイクを敢行、一撃で
中年教師を葬り去る。
「さ、行こう」
「行けるかぁぁぁぁっ――――――!!!」



「もう・・・祐くんったら・・・」
 祐介に逃げられて不貞腐れながら、一人で学食へと向かう沙織。
「こうなったら、やけ食いよ。カツサンドでも頬張って・・・」

  バァンッ!!!!!!!

「カツサンドは駄目ぇぇぇぇぇっ――――――!!!!!!!!!!」
 廊下の曲がり角から突如現れる葵。
「キャァァァァァッ――――――!!。イヤアァァァァァッ――――――!!。オバ
ケェェェェェッ――――――!!!!」

  バキィッ!!

 やはり何故か小脇に抱えていたバレーボールをジャンピングサーブで力一杯葵の顔
面に叩き付ける沙織。

「・・・・・」
 時間の流れが遅くなり、ゆっくりと空中に吹き飛ばされていく葵。鼻血が綺麗な弧
を描く。

  ドシャァッ

「もう、嫌!。何!?。信じられないっ!!」

  トタタタタタ・・・・

 泣きながら走り去っていく沙織。廊下がジワジワと血で染まっていく。一人の少女
を中心として・・・。

                             <完>


 PART19 「誰か私を殺して・・・」


「瑠璃子ぉぉぉぉぉっ――――――!!!!!!!!!」
「祐くぅ〜〜〜んっ!!!!!!!!!」
「止めろぉぉぉぉっ――――――!!!!!」
「カツサンドはぁぁ――――――!!!!!!!」
 今日も今日とて騒がしい日々。所々聞こえてくる絶叫。この学校の風物詩と言えば
少しは風流に聞こえ・・・る筈もない。

「はぁ・・・」
 生徒会役員、書記としてこの学校の将来を憂う瑞穂が他に誰もいない生徒会室でた
め息をつく。半ば諦めているとは言え、何とかしたい。だが、どうしようもない。だ
から、彼女はため息をつく事くらいしか出来ないのだ。
 だが、今日はそんな彼女の元に
「やっほ〜、瑞穂ぉ〜」
「元気してましたか?。藍原さん」
 しばらく入院していた吉田由紀と桂木美和子が来た。
「桂木さん!。吉田さん!」
 驚いて立ち上がる瑞穂。原因不明の病気だと一応そう表向きには通達されていた筈
の二人が、揃って再びこの生徒会室に戻ってこようとは・・・。
「二人とも・・・もう大丈夫なんですか!?」
「あはは、心配かけて御免ね」
「実は・・・今日から学校に来られることになったの・・・」
「そうですか・・・良かったぁ・・・」
 ホッとしたように胸をなで下ろす瑞穂。
「今まで、ずっと雑務を一人でやってたんだって?」
「迷惑かけちゃって・・・」
「ううん。それよりも私は二人が帰ってきてくれて・・・」
 仕事を一人でやる事よりも、この狂った状態に一人で取り残されていた事から解放
されそうな喜びから笑みが零れる瑞穂。
「まあ、まだ暫くは通院しなくちゃいけないみたいだけどもね・・・」
「そうなんですか・・・無理しないで下さいね」
「ええ・・・気をつけないとね」
「気を緩めないようにしないと・・・ね」
「こーんなになっちゃうもん。ゲヘゲヘゲヘ・・・」
「それじゃあ、困っちゃうもんね。ガハガハガハ・・・」
 いきなり壊れる二人。

「私、先に・・・・帰ります・・・」
「あ、ちょっとちょっとぉっ!!」
「かなり直って来たからさぁ・・・」


 瑞穂は校門をダッシュで駆け抜けていた。流れる涙が止まらない。負けるな瑞穂。
頑張れ瑞穂。挫けるな瑞穂。明日は君のためにある・・・と思う?。

                          <完>

 PART20 「眼鏡は顔の一部です」


「いけない・・・遅れちゃう・・・」
「トイレ、トイレ・・・」
 放課後、瑞穂と祐介がそれぞれ廊下を小走りで進んでいた。そして・・・

  ドシンッ!!

 お約束の廊下の曲がり角での正面衝突。
「あ、御免御免・・・」
「その声は長瀬祐介さん・・・あれ?」
 瑞穂が顔を上げる。いつもの眼鏡が・・・無い。
「め、め・・・」
「め?」
「眼鏡ぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――っ!!!!!!!!!!!!!」

  バキィッ!! スカァッ!! ドカァッ!! グシャァッ!!

 突如、安全弁の外れた破壊兵器として所かまわず暴れまくる瑞穂。勿論、被害の一
番手は祐介だ。
「んがぁんぼぅ・・・ぐっ・・・」
「眼鏡ぇぇぇ・・・何処ぉぉぉぉ・・・・!?」

  ドグシュッ!!

 祐介の顎を下から突き上げるような瑞穂の掌底。


「故・横山や○しかい・・・」
 眼鏡を拾った拓也はずっと物陰に隠れていた。そして、瑞穂は眼鏡を受け取るまで
暴走を止めようとはしなかった。祐介は・・・いや、祐介だったモノは瑞穂の何度目
かの絶叫の後の行為によって、シャツの切れ端を彼女の手に残して廊下の窓の外へと
消えていた。そして・・・

「月島先輩・・・ありがとうございました」
 眼鏡をかけた瑞穂は、今までの騒ぎが嘘のようにペコリと丁寧なお辞儀をして去っ
ていった。
「祐介君・・・新しい発見をありがとう」
 割れた窓を見て、拓也はそう言った。ここは3階だった。だから、窓の下を覗くよ
うな真似はしなかった。彼がどうなったかは・・・知らない。

                             <完>


 PART21 「素直に集めろ」

「もうすぐ・・・だな」
「・・・・・」
 12月も暮れ、学校は期末テストの真っ最中だった。だが、そのテストも後半戦に
さしかかる日曜日。拓也は瑠璃子と一緒に図書館から家へと向かっていた。
「瑠璃子・・・あの、その・・・25日は・・・?」
「駄目」
「・・・そうか・・・」
 拓也は急に寒気を感じた。


「・・・・・」
 職員室で期末テストの採点をする教師のペンを持った手が止まる。

『次の文章のかっこの中に適切な語句を入れよ・・・』

 回答欄は全て、"瑠璃子"で埋められていた。


「・・・・・」
 ほぼ同時刻に自宅で期末テストの採点をする教師のペンを持った手が止まる。

『次の文章のかっこの中に適切な語句を入れよ・・・』

 回答欄は全て、"瑠璃子さん"で埋められていた。


「・・・・・」
 やはり同時刻に何故かファミレスの隅の席で期末テストの採点をする教師のペンを
持った手が止まる。

『次の文章のかっこの中に適切な語句を入れよ・・・』

 回答欄は全て、"祐くん"で埋められていた。


「・・・・・」
 多分同時刻に新宿駅近くの屋台で期末テストの採点をする教師のペンを持った手が
止まる。

『次の文章のかっこの中に適切な語句を入れよ・・・』

 回答欄は全て、"カツサンドの馬鹿"で埋められていた。しかも、その答案用紙には
学校に居ないはずの生徒の名前だった。


 そしてクリスマス当日・・・

「・・・やっぱり、クリスマスは皆で祝おう・・・ね」
「そ、そうだね・・・」
 やはり「駄目」の一言で片付けられていた祐介だったが、瑠璃子のほんのりした笑
みの前に失意のどん底から立ち上がっていた。皆、偶然にも同じ所に集まっていた。
「どうして私が・・・」
「はっはっは・・・仕方が無いよね。生徒会の努めのひとつとして・・・」
「どうして同じ教室にいるんです?」
「いいじゃん。ね。祐くん」
「「ね」じゃない・・・」
 皆、仲良く教室にいた。瑠璃子がいた。祐介がいた。学年の違う拓也がいた。先生
に役目を押しつけられた瑞穂もいた。沙織も当然のようにいた。「追試」を受けるた
めに・・・。

                           <完>

 PART22 「激論、朝まで生デンパ!」

「いよいよ1997年も終わりに近づいてきましたね。こんばんわ。月島拓也です」
 何時になく真面目な始まりで始まる。ここは学校の会議室だった。
「今週は待ちに待ったスペシャル!」
 拓也の隣にいた祐介がそう付け加えると、
「ここではようやく"戦隊"物として動き出してきたこの作品・・・」
 貧血なのか血の気が失せてぐったりしている貴之を抱きかかえている柳川が、祐介
の反対側の拓也の隣でそう言って貴之を頬ずりする。
「ここで小説ではお馴染みの手口、登場キャラ達の座談会なるものをやっちゃうんで
す!!」
 祐介の膝の上に乗ろうとして遭えなくあしらわれている沙織。
「で、では・・・司会進行役を押しつけられた藍原瑞穂です」
「・・・・・」
「・・・・・」
「私の両隣には香奈子ちゃんと、瑠璃子ちゃんがいます。喋ってくれないけど」
 ため息をついてから、瑞穂は自分の両側の少女二人を紹介する。改めて説明してお
こう。この世の全ての不幸を背負った顔をしている瑞穂の右側にキチンと制服を着て
いるが、やはり包帯まみれの香奈子。そして何も写し出している感じには見えない大
きな瞳を持った瑠璃子がいた。そして彼女は、持ち込んでいた何やら訳の分からない
木製の物を卓上の乗せていた。


「さて・・・早速、本題に入ろうか。ここは円卓です。僕から見て左から三番目は一
体誰でしょう?」
「クイズかい・・・」
  バキィッ!!
 拓也がそうボケて、それに対して祐介が突っ込もうとした瞬間、拓也は瑠璃子の卓
上に持ち込んでいた怪しげな装置から射出された鉄球を顔面に喰らい、椅子ごと吹き
飛ぶ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「る、瑠璃子ちゃん・・・」
 周囲の空気が冷え切った中、瑞穂が無言でいる瑠璃子に何かを言おうとしたら、

  ガタンッ

「・・・・・」
 いきなり香奈子が立ちあがって、鼻血を出して悶絶している拓也の身体を抱きかか
えると、襟首を掴んでそのまま部屋の外へと運んでいく。
「さ、さて・・・気を取り直して議題に入りましょうか」
 流石に瑞穂もこの展開は予期していなかったのか、やや青ざめた表情をしている。
「・・・・・」
「そ、そうだね・・・」
「ここでは慢性的にネタ切れで苦しんでいる久々野に対して私達からリクエストがな
いかと・・・」
「はい!、は〜い!!」
 瑞穂の科白が言い終わる前に、沙織が手をあげる。
「はい。新城さん」
「さ・お・り・ん」
「・・・はい。さおりんさん」
 諦めたような声を出して瑞穂が言い直す。
「私とぉ〜、祐くんがぁ〜、ラブラブでぇ〜」
「ちょっと待て!。何でそんな勝手な話が出るんだよっ!!」
「あら、祐くん。あくまで希望だから・・・」
「僕は瑠璃子さん以外には・・・」
「パフパフしてあげるわよ。気持ちいいわよぉ〜」
「そーゆー問題じゃないっ!!」
「第一、これは私の意見なんだから・・・」
「不愉快だっ!!」
「もう〜、照れちゃって・・・」
「違ぁ〜うっ!!」
「見て見て、祐くんの大好きなブルマーだよ」
「阿呆〜〜!!!」

  ドバキィッ!! グシャァッ!!

 唸る鉄球が二つ、それぞれ沙織と祐介の顔面を直撃する。

「・・・次。誰かいい意見はないかしら」
 香奈子が二人の足首をそれぞれ片手で掴んでズルズルと引きずりながら部屋の外ま
で運んでいくのを、出来るだけ見ないようにしているのか目を閉じて、指でずり落ち
た眼鏡を直しながら続ける瑞穂。指が震えているのは気のせいだろうか。
「僕は・・・貴之と一緒にいられるならどうでもいい・・・」
 力無くへばっている貴之を軽々と膝の上に乗せて幸せそうな顔をしている柳川。唯
一残っている彼がそう言うと、

  ビュンッ!!

 今までと同じ様に怪しげな装置から鉄球が飛んでくる。
「ふん・・・」
 片手でたやすくその鉄球を受け止める柳川。鼻で笑って顔を上げた彼だったが、
「ん・・・?」
 さっきまでいた筈の場所に瑠璃子の姿は無かった。瑞穂が頭を抱えるようにしてい
るのだけが目に入った。

  グシャァッ!!

 いつの間にか背後に回り込んでいた瑠璃子は柳川の後頭部に金属バットを振り下ろ
していた。支えを失った貴之が力無く床の上に頽れた・・・。

「・・・どうせ、こうなる事になると、分かっていたのよ」
 大袈裟にため息をつく瑞穂。いつの間にか会議室には彼女一人が残されていた。

 "電波戦隊デンパマン"  第2章『月島瑠璃子と惨劇関係』      <完>