『電波戦隊"デンパマン"(第2章)』 −第2章『月島瑠璃子と惨劇関係』− PART9 「デンパマン再度復活」 「やあ、久し振りだね。僕の名前は月島拓也。そしてその正体は知る人ぞ知るデンパ マンです。そう頭脳優秀、容姿端麗、元本保証と基本に戻った三拍子のリーフの貴公 子、SS界の高知東急と呼ばれたこの僕。"地獄のホラフキン"こと(昔のヒーロー物 の様に渾名を自称する馬鹿)久々野の唯一のヒット(してねえよ)作品の主人公の僕。 待たせたね。前回、名も無き鬼ごときに不覚を取ってしまい・・・修行に修行を重ね ・・・まあ、自分で言う事ではないね。まあ、心配かけて済まなかったね。だが、も う大丈夫だ。この己の持つデンパを磨く為に、更に強力なデンパを身につける為に、 それはもう苦労に苦労を重ね・・・まあ、自分で言う事ではないね。しかし、本当に ・・・まあ、いいか」 いい加減に思い出すのも疲れたのか、微かにため息をつく。 「しかし、この達成感・・・もう、煙も出ないって感じだな」 屋上でそんな事を言っていた月島拓也の背後で、ややひきつった表情で聞いていた いや、聞かされていた瑞穂がおずおずと尋ねる。 「ところで・・・月島会・・・もとい先輩。一体、何の修行をしたんです?」 「よくぞ聞いてくれた!」 振り向いてぐっと近付く。 「だって・・・先輩がさっきリハで散々言えって・・・」 「はっはっは知らないな。そんな事実は」 「事実と認めるんですか。何だか・・・先輩、すごいですね」 何だか、どういう所がパワーアップしたのか、瑞穂は分かった気がしてそう呟いて 納得する。 「ええい、五月蠅いな」 「・・・で、修行って?」 「それは勿論、瑠璃子と○○したり、瑠璃子を○○したり、瑠璃子から○○させたり ・・・兎に角デンパをパワーアップさせる為のあらゆる手段をだな・・・」 「ああ、もういいです。これ以上聞きたくないですから、ああ聞きたくない」 だが、彼女はずっと延々と聞かされる事となる。純粋な迷惑だけがそこにあった。 <完> PART10 「デンパマン アキバに行く」 「や、やあ・・・あのね、その、今日はある使命を帯びて来たんですが・・・」 月島拓也はそこで口籠る。 「ここは・・・危険だ」 月島拓也は珍しくシリアスな表情になって呟いた。その頬を汗が一筋流れる。 「こんなに・・・」 震える唇。 「こんなになってるなんて・・・・」 不明瞭になる言葉。 「みんな・・・みんな・・・みんな・・・」 じわじわと自分の中で何かが膨れあがって来る。 ガアァァァァァッツ!!!! 吠えた。 「みんな、マルチやんかっ!!」 そう、ここは秋葉原のメッセ○ンオー2階。同人誌コーナーにての出来事だった。 「あの本も!」 唐突に騒ぎ出した月島拓也に、それまで他人に無関心だった周囲の人々が眉をしか める。 「この本も!!」 同人誌の積まれた棚を蹴飛ばす。ほとんどの客が全員が注目する。だが、そんな大 騒ぎにも関らず、 「○○先生の新刊が・・・・ブツブツブツ」 全く無視してじっくりと同人誌を手にとって眺めているツワモノもいた。 「このサークルも!!」 袋に入った同人誌を歯で食い千切る。近くにいた客が引く。 「この作家も!!」 床に散乱した同人誌を片っ端から踏みつける。だが、踏んでいるのは全てマルチが 表紙の同人誌だけだった。あかりは無事だった。先輩も無事だった。 「こいつも!、こいつも!、こいつも!!」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「俺の、俺のマルチぃぃぃぃぃぃぃ!!」 マルチに魂をひかれた者達が、この月島拓也の行動に驚愕し、涙を流して次々と騒 ぎ出す。中には 「どうしてもマルチを踏むというなら、俺の屍を越えていけぇっ!!!!」 と、散らばった同人誌を庇うように床に伏せて、代わりに踏まれる者までいた。 「お、お、お客様ぁぁぁぁぁっっーーーーーー!!!!」 店員が慌てて取り押さえようとする。だが、月島の暴走は止まらなかった。 「止めろぉ〜〜」 マルチに全てを捧げていた男が泣きながら殴りかかる。だが、 「認めん。ボクは認めんぞぉぉぉっ!!」 強力なデンパを放ってその衝撃波で反対側の棚へ叩きつける。危険な角度で落ちた ようだが、別にそれはどうでも良かった。 「僕は・・・僕は瑠璃子ちゃんの為にも負けられないんだ」 月島拓也はそう呟く。目尻に涙が浮かんでいた。 「語るに落ちたとは・・・この事だね」 全滅した2階で記帳のノートに「マルチなんてマルチなんてマルチなんて×80」 と、書き続けていた月島拓也の前にひとり、おとこが現れた。 「何ぃっ!?」 そこにはもう一人、月島拓也がいた。 「3階でFSSのプラモを眺めてささやかな幸せに浸っていたら・・・やけに騒がし いじゃないか」 「く、くそぉ・・・来ていたのか」 「どうせボクの人気を妬んで、ボクに成りすまして一番ファンの多いマルチを罵倒す る事で評判を落させようと企んだかと思っていたら・・・違ったようだね」 「・・・・・」 悔しそうに自信満々の月島拓也を見るもう一人の月島拓也。 「いい加減、正体を表わしたらどうだっ!!」 そしてビシィと指差す。 「くっ・・・・・」 格好いい!。連載始まって以来、一番格好いいぞ。デンパマン!!。 「くそおっ!!!!」 月島拓也の変装をかなぐり捨てた男は、長瀬・・・長瀬祐介だった。あれ?。何か 立場逆転してないか?。 「どうしてこんな真似をしたんだ?」 「お前になど・・・お前になど分かるものかっ!!。エロゲーの主人公がいかに辛く 、いかに大変かを・・・マルチは僕達主人公だけのものだ!!」 「でも、主役違いじゃ・・・」 「藤田浩之のモノは僕のモノ。僕のモノは僕のモノ」 「言い古された言葉を・・・・」 「フン。こんなモノ、皆、みんなニセモノだぁっ!!。嘘の世界なんだ!!」 「嘘の世界・・・」 「裏切りだ・・・これは彼女に対する裏切りだ・・・」 「彼女?・・・」 その時、拓也は気付いた。そう言いながらもしっかり実はマルチの同人誌全て一つ ずつ抱え持っていた事を。単に独り占めしたかっただけだと言う事を。金が無いから 万引きも出来るという事を。 「主人公には主人公の、けだものにはけだもののルールがあるっ!。それを踏みにじ ったお前には何も言う資格なんて無いっ!!」 「最後まで・・・ボケない気かっ!?」 こんなに会話しているのに一度も笑いを取ろうとしない拓也に、祐介は恐怖を覚え ていた。 『これが・・・修行の成果なのか・・・』 「最初で最後の見せ場かも知れない。ここでボケたら漢が廃る。K氏のアンケートで 選ばれる為にも・・・・」 「それは無理だと思う・・・・・」 その言葉にパタパタと手を横に振る祐介。 「とにかく、デンパ・フラッシュ!!!!」 その一瞬の隙を突いて、拓也は一気に必殺技を繰り出す。 シ〜〜〜〜ン 「デンパが・・・・効かない!?」 周囲の客や店員は既に全滅しているので、効果がないのは分かるが当の祐介にも全 く聞いていないのに驚愕する。 「フハハハハハ、楽しかったよ。デンパマン!!」 愕然と立ち尽くす拓也を尻目に、祐介は一気に階段を駆け降りて行ってしまう。脇 の壁にかかっている色紙も、マルチのだけ剥がして持って行く芸の細かさも忘れてい ない。 「デンパマン、恐るるに足らずっ!!」 表に出た時、祐介はそう叫んだ。入り口にある万引き防止のブザーが鳴る。だが、 そのまま逃走する彼には関係の無い事だった。 「どうして・・・どうして・・・・」 知らなかった。月島拓也はどうしてデンパが効かないのか、理由を知らなかった。 屈辱感に打ちひしがれたまま、その場でしゃがみ込んでいたので、息を吹き替えした マルチのしもべ達に、間違われてボコボコにされた。そして遠くなる意識の中、 拓也・・・・・リーフを守りなさい 女性の声が聞こえていた。勿論、幻聴だった。 <完> PART11「あの娘とカツサンド」 「困った・・・」 月島拓也は悩んでいた。己の使命に、己の無力さに打ちひしがれ、項垂れていた。 「拓也のヤツ・・・また変なものでも食ったのか?」 彼の席を遠巻きにして、クラスメートの一人が呟く。近づくとどんな目に遭わされ るかわからないので、迂闊に近寄れないのだ。 「う〜〜ん・・・」 まあ、ムリもない。第1章では柳川に2度も敗れ、前回は祐介に敗れたのだから。 いくら辛く苦しい修行をしようとも、敗北では意味が無い。ヒーローの宿命として悩 み、苦しんでいる事は想像に・・・ 「今日の昼食は焼きそばパンにしようか、それとも・・・何てベタベタなギャグを言 うとでも思ったのか!」 こっちの思惑に反して、あっさりと一喝される。以前よりギャグに厳しいぞ。 「だが、僕の昼飯の問題もある事は確かだ。今日は瑠璃子が寝坊して愛情弁当を作っ てくれなかったのだ」 「だったら、素直に認めろよ・・・あうぐっ!?」 遂、ツッコンでしまった軽率な生徒が悶絶する。また一人、病院送りとなる。この まま放って置いたら学級閉鎖間違い無いであろう。 「仕方が無い。カツサンドにでもするか・・・」 結局、最初の悩みを忘れ、昼食問題をそう結論付けると、月島拓也は昼休みになる と同時に教室を出る。カツサンドを買う為に。 「駄目ぇっ――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 購買部へ向かうべく、階段を降りようとしていた拓也は、大声でそう呼び止められ る。 「な、何だ?」 「カツサンドは・・・カツサンドだけは・・・」 振り返ると、ショートカットの似合う、蒼い髪をした少女が息を切らせながら、す ぐ後ろまでやってきていた。 「き、君は・・・?」 見た所、下級生の様に感じたが、着ている制服は違う学校のように見えた。 「駄目なんです・・・カツサンドを選んじゃ・・・駄目なんです・・・」 少女はそう言って、真剣な眼差しを拓也に向けた。 必死になってここまで走って来たのであろう。肩で息しながらも、縋りつくような 眼差しでこっちを見上げる少女。どうしてここに来たのか?。何故拓也がカツサンド を買おうとしている事が分かったのか。そして、何よりも何が彼女をそこまで追い詰 めたのか。駆り立てたのか。拓也は次々と疑問が浮かんで来る。 だが・・・ 「質問に答えとらん」 「んぎゃ!?」 デンパ一閃。沈む少女。 「さて、急がないと売り切れてしまう・・・」 やや小走りで階段を降りていく拓也。そしてそこには、松原葵と言う、カツサンド と同価値の、哀れな少女の身体が残されただけだった。 <完> PART12「絶え間なく注ぐ毒電波」 「やあ、皆。ドクデンパのお兄ちゃん、月島拓也だよ。20世紀最後のヒーロー、デン パマンとは、何を隠そう僕の事さ。成績優秀、本意満願、これで元ネタ揃ったと思う 今日この頃。詳しくは各自で見比べてくれと・・・そんな事はどうでもいい。で、今 回は僕の謎について少しだけ語ってあげてもいいかなって思ったんだ。で、前回借り 切ったこの某ラジオ局にわざわざ来てあげたんだ。取り敢えずアシスタントを紹介し よう。残念ながら局の人間は眠ってしまって・・・起こすのも気の毒だからさ、それ で、取り敢えず一人連れて来たんだ。賢明なる諸君には既に理解して貰えたと思う。 ほら、ん・・・」 「・・・・・」 相変わらず局内の人間が全て倒れ伏す都内のラジオ局で、マイクの前で月島拓也が 隣で無表情のまま立っている顔を包帯で巻いたままの半裸の女性を紹介する。 「相変わらず無表情だな。何か喋らないとラジオだから分からないぞ。ほら」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「喋れ」 放送事故になる寸前に拓也は命令する。 「セックス」 「それは放送禁止用語だ。いかんな、ラジオの常識をわきまえてもらわないと・・・・」 いつの間にかいっぱしのパーソナリティーになったつもりでいる拓也は、全く反応 を示さない太田香奈子を相手に説教する。 「自己紹介も満足に出来ないのか・・・仕方が無い。代わりに特別に僕が紹介してや ろう。君の名は・・・ええと・・・その、あ、ほらほら・・・あれれ・・・うんと・ ・・誰だっけな?」 不要な事柄なので忘れてしまったのか、頭を抱えながら本気で考え出す。 「ま、まあ・・・玩具に名前など不要だね。それでだな・・・」 −−−−−−−−−−−(数時間後)−−−−−−−−−−−−− 「それじゃあ、また明日。ここで会おうね。じゃあ!」 そう言って放送が終り、しばらく無人のブースだったが、かなりの時間が経って再 び拓也が戻って来て椅子に座りなおす。いつの間にか、香奈子はいなかった。 「どうも、あれから道に迷ってね。未だにラジオ局から出られないでいるんだよ。ま あ、僕自身はもう少しいてもいいかなと思ってる。強がりじゃないよ。誰も教えてく れないからでも無い。実はそう言う事にして置かないと・・・あ、いや。その、ま、 まあ、今僕がいないとここ、困るだろうし、仕方が無い。もう少しだけいてあげるか 。瑠璃子、もし聞いてたら差し入れ頼む。大至急だ。ん・・・来たな。おや、何だ、 君達は?。何を、何をするんだ・・・・この、デンパ・スレイブっ!!・・・・・・ ・・・・はぁ、はぁ、はぁ。この技をあまり多用する訳にはいかないのだが・・・」 「相変わらず、派手にやってますね。月島先輩」 「はっ!?。お、お前は・・・長瀬祐介っ!?」 異常に気付いてやって来ていた警察官とラジオ局職員の破壊された屍に埋まった廊 下を歩きながら、長瀬祐介が話かけてくる。 「貴様、何でここにっ!?」 「では、ここで一曲、聞いてください」 「こらぁっ!、無視するなぁっ!!」 ボクの名前は祐介 君の名前は拓也 二人揃ってデンパマン 君とボクとで毒電波 チリチリチリチリ ドドドドドドドド 流れる力は 瑠璃子のおかげ〜♪ 「この歌を聞いて、君は理解しただろうか?。そう、何を隠そうこの僕、長瀬祐介も 何を隠そうデンパマンなのだ。正確に言うとデンパマンXだったりする」 「き、貴様・・・君みたいな下衆野郎がそんな訳ないだろう。冗談も大概にしておき 給えっ!!」 「このデンパに充満した局で僕が無事にいられる事がその何よりの証拠・・・」 「そう言えば・・・しかし・・・ん!?。ま、まさか・・・じゃあ貴様っ!!。瑠璃 子と・・・・したんだなっ!!」 「歌で気付けよ」 「五月蠅いっ!!。ゆ、許さんっ!!」 そう言って両手を広げる拓也。 「遅いっ!!。デンパ・トルネードォッ〜!!」 その前に、祐介がデンパの渦を竜巻に変化させ、拓也の身体を包みこむ。 「うぐ・・・うぐわぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 デンパの竜巻に巻き込まれ、ラジオ局の壁を突き破り、大空の彼方へと飛ばされて いく拓也。またしても、祐介に敗れたのだった・・・。 拓也・・・リーフを救いなさい またしても幻聴が聞こえる・・・飛ばされていく拓也の耳に・・・ <続く> PART13「毒電波少年達(上)」 (前回までのあらすじ) 廃墟と化したラジオ局に呆然と佇む月島拓也(木村拓哉)の前に突然現れた長瀬祐介 (堂本剛)。二人はお互いに瑠璃子(水野真紀)との関係を知り、相田響子(榎本加奈子) の結婚式場で殴り合いの喧嘩となる。そして、その時に巻き込まれた貴之(中井貴一) を二人で誤ってコンクリ詰めで東京湾に沈めてしまう。二人は共犯意識から一時的に 新庄沙織(松たか子)から身を引く事を誓い合う。が、その時に既に貴之の身を案じた 刑事、柳川(反町隆史)の魔の手が祐介に迫っていた。一方、拓也のマンションに深夜 訪れた太田香奈子(ともさかりえ)の突然の告白。そして未だに吉田由紀(中山エミリ) によって監禁されたまま放置された藍原瑞穂(吹石一恵)の運命は・・・。 「配役は本当に思いついた名前で適当に決めたので、文句は止めてね。後、本当のあ らすじを知りたい人は前回の部分を自分で探してね」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「うぐ・・・うぐわぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 拓也は祐介の放ったデンパの竜巻に巻き込まれ、ラジオ局の壁を突き破り、大空の 彼方へと飛ばされていた。 「く・・・くそうっ!!」 強大な竜巻の力の前に、為す術もないでいた拓也の耳に、 「はーはっはっはっはっはっは。どうです、先輩。僕のデンパの力は?」 勝ち誇ったような祐介の言葉が・・・言葉? 「へ?」 ふと拓也は目を開けると、隣で同じ竜巻の中に祐介がいるのを発見する。 「な、何でお前がここにっ!?」 「分からないですか?。月島先輩」 驚愕する月島をよそに、落ち着き払った表情で祐介は言う。 「僕も・・・巻き込まれたんです」 「あっさりと言ってんじゃねえっ!!」 「はっはっは・・・参りました。こんなに強力な竜巻になろうとは・・・」 「で、これからどうなるんだ」 少し壊れ始めている祐介に、拓也は聞く。 「もちろん・・・何れは」 竜巻に飛ばされながらも、ピンと人差し指を立てて勿体つける祐介。 「竜巻に聞いて下さいよ。はっはっは・・・」 「そんなこったろうと思ったよっ!!」 朗らかに笑い続ける祐介に頭を抱えて見せながら、拓也は絶叫する。 「このままアメリカかどっかまで運ばれるんじゃないでしょうかねえ。そうしたらパ スポートどうしましょう?。堀江さんが初めて筏でアメリカまで行った時も所持して なかったですから、大丈夫ですかね。まてよ、ひょっとしたら僕達、堀江さんみたい に有名人になっちゃうかも知れませんねえ・・・いやはや・・・」 「き、君なあ・・・」 何だか怖くなってきた拓也は祐介に背を向けるように体をひねる。 「あ、でも、海なんかに落ちちゃったら・・・風船おじさんみたいに忘れ去られるの も寂しいですしねえ・・・」 「いーから黙れ!。頼むから喋るなっ!!」 目を閉じ、耳をふさいで絶叫する拓也。 −−−数時間−−− 「月島先輩。何だか身体中がとても痛いんですが・・・」 「落ちたからな」 素っ気なく答える拓也。 「どうして僕達、助かったんですか?」 「知りたいか?」 あれから竜巻からはじき飛ばされるようにして落下した後、気がつくと二人は地面 にではなく、ボロいアパートの壁へめり込んでいた。勿論、身体の形をした穴をそれ ぞれ開けて。 「そりゃあ・・・読んでいる人も納得できないでしょう。はっきり説明してくれない と」 「説明した方が、納得してくれない気が・・・」 それぞれ、壁に埋まっているので声がくぐもっている。 「仕方がない・・・プログラムナンバーTSー5の処理手順に従い、回想モードへの 移行を行います」 「あ、ウィ○ディになってる・・・感情無しの」 「うわあぁぁぁぁっ〜〜」 重力に従って自由落下する二人。見る見るうちに地面が見えてくる。そして丁度、 アパートを出てコンビニのバイトへ行こうとしていた阿部貴之が、二人の落下地点に 歩いてくる。 「貴之ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」 ぶつかる瞬間に、脇から現れた黒い影に体当たりをかまされる。 ごおぉぉぉぉぉっ!!!!!! そのマッハをも超えた速さで、アパートへと吹き飛ばされる二つのもの。 それが・・・・・。 「・・・痛いです」 「知ったことか」 で、張り付け状態になった二人だった。 「それで、ここはどこだ?」 「さあ?」 しばらくしてから壁から脱出した二人は、よたよたとしながらも道ばたへ出る。 「とにかく、駅に行って電車にでも乗ろう」 「そうですね。そうすればここがどこだか分かりますし」 「で、金は?」 「小銭位しか・・・」 「そ、そんな訳はないだろうっ!!。今時の高校生なら1万や2万!」 「・・・Piaキャロット2買ったら、もうスカンピンになったんです」 薄っぺらい財布を出して拓也に振ってみせる祐介。 「しかしだな・・・」 「・・・で、月島先輩はいくら持っているんです」 「・・・仕方がない。取り敢えず・・・」 腕を組んで考え込む拓也。 「・・・いくらです?」 「・・・やはりここはヒッチハイクでもするしか手は・・・」 「だから、いくらなんですか?」 「二百三十円・・・」 「無茶苦茶どうしようもないですね」 「し、仕方がないだろっ!。瑠璃子の財布の紐は固いんだっ!!」 「愛されてないんじゃ・・・」 「な、何いっ!!。居候生活が長かった僕達の苦しみをお前は分かるとでも言うのか っ!!」 興奮して祐介の胸ぐらを掴む拓也。 「いえ、分からないですけど・・・」 「だったらっ!!」 「取り敢えず、ヒッチハイクでも何でも、しに行きません。日が暮れないうちに・・ ・」 「・・・・・そーだな」 話はまとまった。 「止まって・・・くれませんね」 「そーだな」 「男二人だからでしょうか・・・」 二人はあれから町道へと移動して、さっきから1時間程、車が止まるのを待ってい た。 「先輩、どうしましょう・・・」 「全く・・・仕方がない」 今までずっと祐介に任せっきりでいた拓也は、重い腰を上げて立ち上がると、 「見ていろ。ヒッチハイクって言うのはこうやるんだ」 颯爽と指でサインを作って手を高くあげる拓也。 ・・・・・5分経過 ・・・・・10分経過 ・・・・・20分経過 「・・・・・」 「止まんねーじゃん」 さっきからサインをだした姿勢で固まっている拓也に、後ろから祐介の容赦ないツ ッコミが入る。 「・・・・・うおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」 ドーン!! ガシャン!! バキィッ!! キィィィィ!! グシャァッ!! 「・・・・・もっと、違う場所でやろうか?」 「・・・そうですね」 二人はその場所を後にした。黒煙が上がり、炎が見えるその場所から・・・ <続く> PART14「毒電波少年達(下)」 「ネタを書いておいたメモ紛失」「まずい、ここの部分すべて入ってたのに・・・」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「はぁ〜〜このまま、東京かぁ・・・」 祐介は思いきり腕を伸ばして、のびをする。 「まあ、何とかなったな」 「本当に・・・何とかですけどね」 二人は今、トラックの荷台の上にいた。 「暇ですね」 「そうだな・・・」 お互い、数秒間の沈黙の後、拓也が叫ぶ。 「で、どうして君と馴れ合わなくてはいけないんだね、長瀬祐介君!」 「今頃、言われても・・・」 本当に、今頃だ。 「大体、君は何だね。瑠璃子の一体何なんだ!!」 「間男」 「な、何だとぉっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「ヒモ」 「て、てめえっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「やだなあ・・・冗談ですよ。冗談って・・・聞いてます?」 「だから、だから今月の小遣いが先月よりも減っていたのかっ!!。おかしいと思っ たんだ!。そうか、それでなのか、畜生!!」 背中を向けて絶叫する拓也。 「兄ちゃん!。五月蠅いぞっ!!」 乗せてくれたトラックのアンチャンが運転席から文句を言う。 「先輩って・・・面白い人ですね」 ハアハアと肩で息をする拓也に、祐介は言う。 「君に言われたくないぞ」 「そうですか・・・」 「ま、まあ・・・冷静に考えれば、瑠璃子が君なんかを相手にする筈ないしな」 カチン 「そうですかぁ〜?。一昨日も僕達、体育用具室で合体しましたけどぉ?〜」 ピキィ 「フン。瑠璃子に利用されてるだけと気づかないお子ちゃまは、これだから困る・・ ・」 ピキピキ 「まあ、異常なシスコンよりはいいですよ。未だに妹離れできないでいる人よりは、 大人ですから」 ピクピク 「どうやら、僕達、気が合うようだねえ・・・長瀬祐介君!」 「そうですねえ・・・月島拓也先輩!」 「だから、上でゴチャゴチャ言ってんじゃねえっ!!」 気のたったアンチャンの声。勿論、彼は二人を乗せたことを後悔していた。 「あ〜あ、今日も日が暮れる・・・今まで無遅刻無欠勤だったのが自慢だったのに・ ・・」 「それくらいしか自慢出来る事、無さそうだからねえ・・・」 夕焼けを見ながら祐介が呟くと、拓也がのんびりした声で言ってのける。 「僕、合体した数なら負けませんよ」 「せいぜい3人位だろ。君が出来るのは。僕なんて主な登場人物ほぼ、出来るんだぞ 」 情けない自慢合戦を始める。この二人、メシもろくに食ってないのだ。 「誰かさんのSSでは僕に掘られたくせにっ!!」 「知るかっ!。んなのっ!!」 「フン。自分に都合の悪い事になるとすぐこれだ・・・」 「だいたいだな・・・こうなったのは誰のせいだと思ってるんだっ!!。責任を取れ !。今直ぐっ!!」 「分かりましたよ。お兄さん、瑠璃子は僕が幸せにします」 「そうじゃないだろうがぁっ!!」 「いい加減にしろぉっ!!!!!!!!!!!!!!!」 遂にブチ切れたらしいアンチャンの怒声が飛ぶ。 「荷台で騒ぐんじゃねえって散々言ってるだろうがぁっ!!」 「「やかましいっ!!」」 「・・・んがあぁっ!?」 「君とは一度、決着を着けなくてはって思っていたからね・・・」 「二度も負けて・・・懲りませんね、セ・ン・パ・イ」 「何をっ!」 「いいでしょう。受けてたち・・・」 「ん?。どうした?」 「このトラック・・・蛇行してませんか?」 急にトラックの動きが怪しくなってきたのを祐介は指摘する。 「そう言えば・・・危ない運転だな」 「寝てるんですかね、運転手」 「そいつは危険だな・・・上に乗っている僕達の事も考えてくれないと・・・」 「わっ、わっ、わっ!」 「やばい・・・ね」 その直後、トラックは反対車線に乗りだし、対向車に正面衝突をする・・・。 ・・・翌日 「今日も平和だったね」 「本当、本当」 「瑠璃子ちゃん、本当にありがとう」 「・・・・・」 今日もささやかな平和を保つことの出来た学校で、生徒達はつかの間の幸せをくれ た瑠璃子に感謝の声を送っていた。 <完>