『"電波戦隊"デンパマン』第1章 投稿者:久々野 彰
『電波戦隊"デンパマン"』

  ネタ  その@「唄え、心の唄」

  スキャットマン・ジョンに成り切った白タキシード姿の月島拓也を中心に、沙織達
が軽快な音楽に合わせて踊り狂っている。
「エビフリャ〜。デンパ、GO!!」
  意味があるのか無いのか、ステージ上の月島先輩は右手の人差し指を天井に向けて
叫び出す。

  デンパ  バボベ  デンパデンパ  
 「デンパ!デンパ!」
  一昔前のディスコでしか見られないくねくねととした腰の動きの踊りをしている沙
織、瑞穂、瑠璃子の三人。無茶苦茶楽しげなさおりん、恥ずかしそうにしているみず
ぴー、全く無表情のるりるりと、三者三様ながらこれがデンパの力なのか、制服姿の
まま、狂おしく踊り続けながらハモっていた。  

  デンパ  バボベ  デンパデンパ  
 「デンパ!デンパ!」
  ステージの中心にいる月島拓也を挟んで、さおりん達と反対側の場所にいた香奈子  
と吉田由紀、桂木美和子(この三人に渾名はないのかな?)の三人が月島先輩と同じ様
に、踊りながら右手を突き上げて歌っていた。こちらは何故かと言うか、当然と言う
か全員全裸だった。三人共、目が完全にイッてしまっていた。

  パデパポデバべ〜〜  
  月島意味が分からない叫び声をあげ、両手を前に突き出しながら、激しく左右に腰
を振る。徐々にズボンが下がって行く。ベルトをしめ忘れていたようだ。
「グレコ  デンパァ〜〜プラン」

「こんなコマーシャルを流して国民皆が洗脳されたら、素敵だと思わないかい?。」
  対峙した時に、月島拓也はこう説明してくれた。
  …月島兄妹は底知れぬ能力を持っている。
  長瀬祐介はこの時初めて、敵意というものを知った。

  ネタ  そのA  「いざ、コマーシャル撮り」

  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ  デンパマ〜ン

  何者かが山道を疾走している。

  シュタタタタタタ・・・

「千鶴姉〜〜、もういい加減に諦めてくれよぅ〜〜」
「梓、もう一回、もう一回だけチャンスを頂戴。今度こそ、今度こそ上手くいくよう
な気がするの・・・」
「その"気"っていうのは、何処から生まれる訳?」
  柏木家の台所で千鶴と梓が口論している。と、言うより梓が千鶴に懇願していた。
「もう何も残って無いじゃない」
  換気扇がずっと引っ切り無しに廻されているのに、未だに台所内は激しい異臭が籠
っていた。隅には梓の言うようにフライパンや鍋、釜の類が全て黒焦げになって積み
重ねられていた。

  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ  デンパマ〜ン

  何者かが歩道を疾走して柏木家を目指していた。

  トタタタタタタタ・・・

「いいから、十億でも百億でも注ぎ込んでも・・・」
「そんな事に金使うんだったら、月々の食費上げてくれれば何の問題も・・・」
  台所では今まで奥にしまい込まれていたらしい立派な大鍋を両手に持った千鶴に、
後ろから梓が必死に羽交い締めにしてもみ合っている。
「ううう・・・御飯、まだ?」
「・・・・・。」
  居間ではここまで散々待たされている初音と楓が食卓にうっ伏して死んでいた。

  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ  テッテ  テテテ・・・

  お互いに鍋を掴んでもみ合う千鶴と梓。頬を食卓にぺったり張り付かせたまま動か
ない初音と楓。そこへ・・・。

  バンッ!

  扉を平手で突き出すように叩き開けた制服姿の月島拓也が現れる。思わず柏木家全
員の視線が現れた彼に集まる

  デンパマ〜ン

  彼は注目を浴びているのを意識しているのか、突き出した右手をそのままにして、
何かを言いかけながら左手だけで自分のズボンのチャックを降ろしかける。
「シュわ・・・。」
  デンパマンこと月島先輩は4匹の鬼によって惨殺された。

 ・・・次回に続く……かも知れない(死んだぞ、今)

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  --前回までのあらすじ--

  グシャ  クチャ  グッチャ  ムシャ  バリバリ  グチュグチュ  ガブゴブ

「デンパマンを・・・喰ってる!?」
  響子が唖然として呟く脇で、かおりが手で口元を覆いながらはいくつばって震えて
嘔吐していた。
  そこには4匹の鬼が取囲んで月島拓也を咀嚼している光景が見て取れた。

「前回(コマーシャル編)とちょっと違ったような・・・」(久々野)
「デンパはいいよう・・・」(デンパマンこと月島)

 −第1章『ドス色の青春』編−

    PART1「デンパマン登場」

  昔懐かしい"○線マン"そっくりな格好をした男が喋り始める。
「やあ、僕はデンパマン。普段は月島拓也という頭脳明晰、容姿端麗、一石二鳥の三
拍子揃った優等生ですが、一度変身すれば誰も僕の正体を知る事は・・・」
「よ、拓也。何やってんだ?。校門前で?」
  格好良く校門前でポーズを決めている月島の肩を、同級生が叩きながら登校して行
く。思わず硬直する月島。
「よっ、拓也。おはよっ!」
「ボクはデンパマンだっ!。月島などではないっ!!」
  次に声を掛けて来た友人に思わず怒鳴りかえす月島。
「月島先輩・・・コスプレですか?」
  後輩の女の子が恐々と声を掛ける。
「だからデンパマンだって!」
「でも・・・」
  一緒に登校して来た隣の女の子も、月島の奇妙キテレツな格好に眉を潜めながら月
島に反論しかける。
「私がデンパマンと言ったらそうなのだっ!。下の人などいないっ!!」
  しだいにだんだん騒ぎを聞きつけた生徒が増えて来て、月島を取囲み始める。友人
の一人が、
「何言ってるんだ?。月島」
  そう言うと、
「違ぁ〜〜うっ!!」
  変なお面を被った頭を両手で抱えて大きく首を振る。
「コラァ、月島っ!。神聖なる学校にそんな格好で来ていいと思ってるのかぁ!!」
  生徒指導のジャージ姿の体育教師が騒ぎを聞いて飛び出して来る。
「デンパ・フラッシュ!!」
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
  月島が叫ぶと、周囲を取囲んでいた人間全てが頭を抱えてバタバタと倒れる。
『説明しよう。デンパ・フラッシュとは・・・教えてあげないよ、ジャン!!』
「何じゃあ、それはっ!!」
『改めて説明しよう。デンパ・フラッシュとは・・・とにかく凄い技なんだ。「それ
だけかいっ!!(月島)」』
「ふぅ・・・。」
  戦いは終った。それは月島拓也にはとても辛く、悲しい戦いであった。だが、悲し
んでいる暇は無い。これから彼に向かって更なる悪の影がひたひたと押し寄せている
かも知れないのだ。
  戦え、デンパマン。突き進め、デンパマン。誰か止めてやれ、デンパマン!!

                           <完>

    PART2「さようなら、デンパマン」

「やあ、僕の名前は月島拓也。人呼んでデンパマン(誰も呼んでないって)。普段は優
等生として頭脳迷惑、容姿堪能、五十歩百歩と三三七拍子揃った模範的学生としてこ
の学校に通っている。だが、ひとたび学校で怪事件が起こるとデンパマンの出番さ。
今までも謎の用務員A、謎の掃除のおばさんB、謎の給食センターの人C、動きそう
な気がした銅像、割るつもりが無かったのに割れた化石、理不尽にも抜き打ちテスト
をしかけた英語教師など、数々の邪悪な敵を打ちのめして来たんだ。まあ、自慢する
程の事じゃあ無いかも知れないけどね」
  言いながら自然に胸を張る月島。脇にへらへら愛想笑いをした久々野がいた。
「そ、それでは・・・月島拓也君にお願いしたいんだけど・・・」
「デンパマン!」
「あ、はい。じゃあ、デンパマンにお願いしたいんだけど、いいかな?」
「何だい?。」
「この企画。もう私一人じゃ無理くさいんだな。だから打ち切りた・・・あああぁぁ
ぁぁぁ、頭が、頭が!!」
「フッフッフ・・・聞こえんなぁ」
「だ、だからあぁぁぁぁぁ。」
    バタリ
  倒れる久々野。もう起き上がる事は出来なかった。だが、月島はそんな返事の無い
屍を相手に話し掛けようとする。
「僕は、このデンパの話をするのが大好きでね。まぁ、いわゆる自慢話で恐縮だけど
・・・瑠璃子!?」
「お兄ちゃん・・・帰ろう」
  そう言うと、取り乱したデンパマンこと月島拓也の襟首を掴んでズルズルと引っ張
って去って行った。そこには壊れてしまった男がひとり、残されただけだった。

                            <完>
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「・・・と、言う訳で大好評連載中だった『電波戦隊"デンパマン"』は作者取材の為
(苦しみの無い幸せの世界に行ったらしい)、突然ながら休載する事となりました。長
年の御愛顧、誠に有難うございました」
「続けられなくなったなら、素直にそう言ったら?」「御免」(*当時のコメント)

『電波戦隊"デンパマン"』(還って来たデンパマン)

  デン  デンパマン  デン  デンパマン

  頭で誰かが叫んでる  瑠璃子を犯せと唸ってるぅ  犯せぇ〜  デンパマン

  デンパフラッシュだぁ〜  脳裏にきらめく  毒電波ぁ〜〜

  デン  デンパマン  デン  デンパマン  *繰り返し  (ボロが出ない内に終る)

  PART3「ああっデンパマンっ(還って来たデンパマン)」

「はぁ、はぁ・・・」
  月島邸に駆け込んで来る瑠璃子。一方、拓也はジオングに乗り込む寸前のシャア・
アズナブルの様にデンパマンの衣装を身に纏い、仮面を小脇に抱えていた。
「良かった・・・もう会えないかと思った・・・」
「瑠璃・・・子・・・」
  月島拓也は庭でずっと空を見上げていたが、突然、瑠璃子が現れた為に、驚愕の表
情で彼女を見る。
「お兄ちゃん・・・」
  お互いを見つめ合った二人が駆け寄ろうと近付いた瞬間、
    パアアアァ
「あ!?」
  二人の間に紫色の電波の渦が現れ、だんだんと大きくなっていく。
    ブワッ
  黒色に変化した渦は見る見るうちに大きくなって、竜巻のように暴れだし、家の屋
根瓦を飛ばし、周囲の木々を薙ぎ倒していき、二人も思わず身をすくめる。
「あっ」
  突如竜巻が収まると、灰色に染まっている大空から一条の電波が差し込んで来て、
拓也の身体を包みこむ。
「ああ・・・」
  動揺して自分の身体を見る拓也。
「お・・・お兄ちゃん」
「瑠璃子・・・」
  光のゲートに吸い込まれそうになっていく拓也。
「ゲートが開いたわっ」
「はやく魔法陣を!」
  何処からか現れた瑞穂と沙織がその光景を見て駆け寄って来る。
「お兄ちゃん!!」
  慌てて近付いて拓也の身体に手を伸ばす。
    バチッ
「きゃっ!」
  強力な電波の壁に手を弾かれてしまうが、瑠璃子はめげずに拓也に近付くべく手を
伸ばす。
「ま、待って」
「瑠璃子!」
  拓也もまた、手を伸ばしかける。そして・・・
                       Never End

「あの、南シナ海に浮かぶコンソン島で大好評放映中のアニメ『電波戦隊"デンパマ
ン"』が大勢の熱烈なファンのお蔭により、遂に日本で放映される事になりました。
放送局は大日本帝国TVで時間は4年に一度の2月29日の午後11:55から11:59。」

  デンパマン「ウリチ島で僕と握手!」
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「元歌を忘れてしまった。こんな感じの歌だったと思う。もし、覚えていて最後まで
出来る方がいたら、デンパマンの歌を完成させて発表してくれると私が嬉しい」


  PART4「デンパマン、ラジオ出演!!」

「やあ、僕の名前はデンパマン。普段は精液優秀、煩悩満タン、千客万来と拍子木揃
った月島拓也という人間としてこの地球に暮らしているんだ。だけど、一度自分に危
機が訪れた時、デンパマンの登場って訳さ。これまでの僕の活躍は皆耳にしている事
と思う。知ってるよね。知らない奴は毒電波で九族皆殺しさ。で、今日は折角だから
ラジオ局を借り切って僕の番組をやろうと思い立ったんだ。初めはTV局に行って僕
の特番でも企画して貰おうとしたんだけれども、以前送り付けたコマーシャル企画が
受け入れられなくてね、見る目の無い奴に僕という逸材を安く買い叩かせるのもなん
だから・・・ラジオにしてみたんだ。どうだい、最高だろう?。鋭い人はそろそろ、
ビリビリと気持ち良くなってきた頃だと思うけどなぁ?」
  今度は特撮物の主人公の様な格好をした月島ことデンパマンが、スタジオのマイク
の前で気持ち良く喋っている。
「では、そろそろ行ってみようか・・・冥王曜日「月島拓也改めデンパマンのオール
カマースッポン」!!」

「「デンパマンのオールスターカッポレ」この番組は「いつも元気だ。フセイン偉い
」イラク石油、「コクもないのにキレもない」トロみビール、「札束抱えて旅に出よ
う」メキシコ誘拐連合組合MKAU、マカウの提供でお送り致します」

「改めてこんばんわ。電波戦隊のリーダー、デンパマンです。今回はまだ、始まった
ばかりなんで、残念ながら葉書が来ていません。そこで今日は普段、僕事、デンパマ
ンに関して皆さん愚民共が抱えている疑問、質問、ファンレターの宛て先、GIレー
ス必勝法などに答えたいと思っています。では、最初は前々回、デンパマンは戦隊物
と唱っておきながら・・・と言う指摘を受けた事がありました。これから答えて行き
ましょう。正解は・・・貴方の心の中に真実があります。これが答えです。「真実は
いつも一つ!」かの少年も毎週言っています。それが正しい答えです。では、今回は
この辺で・・・バリュー〜〜」
  そうマイクに向かって手を振る月島(自称デンパマン)の前に構成作家が倒れている
。ディレクターも倒れている。ガラスの向こう側でADが倒れている。その他大勢の
スタッフが倒れている。本来この時間に出る予定だったパーソナリティの女性(因み
にバリバリの人気声優だったりする)も倒れている。ガードマンも倒れている。守衛
さんも倒れている。局内の全ての人間が倒れていた。こうして誰も動かないラジオ局
で、月島の声だけが、爽やかに響き渡っていた。

「お兄ちゃん・・・・やっと帰って来てくれた・・・」
  その頃、深夜の学校の放送室で、瑠璃子は何故か嬉しそうに小さなラジオを抱えた
ままそう呟いていた。

                                                            <完>

『電波戦隊"デンパマン"』−次回予告− (オマケです)

「ねえ、僕は・・・僕はどうしたらいいんだい。ねえ、助けて。助けてよ・・・さお
りん!」
「・・・嫌」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯して
やる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる
。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯
してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯して
やる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる
。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯してやる。犯
してやるぅ〜っ!!!!!!!!!!。」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「欠けた女の補完。不要な香奈子を捨て、全てのデンパを今、一つに・・・」
「私はお兄ちゃんのダッチワイフじゃない。私はオナペットでもないもの」
「・・・瑠璃子ぉ・・・!!」
「駄目。長瀬ちゃんが呼んでる・・・」

『電波戦隊"デンパマン"』
  
「あんたねえ、まだ生きてるんでしょ!!。犯れるだけ犯って、それから死になさい
っ!!。」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他人の迷惑だから、今すぐ死んでくれ。(久々野)
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    PART5  「月島家の食卓」

「私、何故ここにいるの」
(「ここが僕達の家だからじゃないか」)
「私、何故また生きてるの」
(「デンパ死すともるりるり死せずってね」)
「何の為に」
(「勿論、新たなるデンパを補給する為だよ」)
「誰の為に」
(「だから、僕の為にに決まってるじゃないか」)
「・・・あの人、私と同じ感じがする・・・どうして?」
(「チッ、長瀬か。邪魔にならない内にやってしまおうか」)


「・・・お兄ちゃん」
(「何だい?」)
「家にいる時ぐらい・・・デンパ使わずに普通に口で喋って」
(「だったら、もっと普通の話題を出して欲しいもんだ」)
「・・・・・」

    シャクシャク  ポリポリ  ムグムグ

  他には誰もいない夕飯時、居間で向かい合って食べている拓也と瑠璃子。月島家の
食卓は、いつもこんなだった。

                                                        <完>

  PART6「街を歩けば  デンパマン」

「やあ、僕の名前はデンパマン。普段は性的強襲、不能免疫、国士無双の裏表紙の早
苗ちゃんを描いたの♪・・・でなくて揃った月島拓也と広く一般には呼ばれている青
少年さ。前回唐突に復活した事に疑問を持っている諸君。そんな君達はこの白い旗を
立ててある場所に集まってくれたまえ。素直に喜びを持って迎えてくれる諸君。そん
な君達はあっちの赤い旗を立ててある場所に集まってくれたまえ。え、わざわざそん
な事をやらせるな?。そんな君には・・・ド・ク・デ・ン・パ」
  街中を歩いていた月島拓也はウインクしながら右手の人差し指を立てると、最後の
声に合わせていちいち横に振って見せる。妙に可愛らしい仕草だが不幸な往来の人々
は悶え苦しみながら七転八倒する。
「そこの・・・君。ちょっといいかな?」
「ひいぃぃぃぃっ・・・」
  少し離れた位置にいたのが良かったのか、デンパの直撃を免れた少年、とあるゲー
ムで橋本先輩と呼ばれているチョイ役の少年を見つけ近寄る。可哀想に完全に目の前
で繰り広げられている地獄絵図に腰を抜かして、逃げられそうもなかった。
「ん?。どうして君はそんなに脅えるんだい?。はっ、まさか・・・どこかで悪の影
でも見かけたとか?」
「は・・・はぃぃ・・・」
「何処に?。いるんだい?」
「た、助けて・・・だ、誰でもいい。正義の味方ぁっ!!。助けてぇ〜〜!!」
  恐怖のあまり絶叫するが、月島拓也は不思議そうに首を傾げる。
「正義の味方なら、ここにいるのに?・・・」
「う、う、う、嘘だっ!!」
「いいかい、君。正義の味方ってコトはだね、正義ではないのだよ」
「へ?」
「正義には近い存在かもしれない。だが、正義に味方するだけの存在でしかないと言
うコトであって、正義そのものでもなければ、正義の行いをするとも限らない」
「じゃあ・・・」
「そう、正義の味方は正義ではないんだ」
「何か違う気が・・・」
「信じなさい」
「あああああ、あうあうあうぁ、し、信じます。信じますってばぁぁっ」
「分かってくれて嬉しいよ」
「はあはあはあはあ・・・」
  ナ○スの拷問の様に納得させている月島拓也の前に、小走りに走って来た瑠璃子が
やってくる。
「あ、お兄ちゃん・・・」
「おう、瑠璃子。いい所にきた。なあ、僕って正義の味方だよな」
「・・・お兄ちゃんはリーフで発売された18禁パソコンゲーム「雫」の唯一の悪役。
それ以上でもそれ以下でもない」
  瑠璃子はちょっとだけ立ち止まって無感情でそれだけ言うと、
「本、返しに行かなきゃ・・・」
  再び小走りになって呆然と立ち尽くす拓也達の前を去って行った。

「瑠璃子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
  また、一人、壊してしまった。
「これで終ったと思うなよっ!!」

                                                            <完>

  PART7  「遂にライバル登場!?」

  満員電車の中で阿部貴之がヤク○らしき男達に囲まれて因縁をつけられている。
「むっ!  いたいけな青年が苛められている!!  こんな時は・・・デンパフラッシ
ュ!!」
  その瞬間、狭い車内全ての人間が悶絶する。
「―――と・・・・・・・」
  全滅してしまった為に、月島拓也は所在無げに頭を掻き、
「まあ、いいか」
  そう結論付けて駅に着いた時、電車を降りた。


  北海道の大平原で阿部貴之がヤク○らしき男達に囲まれて因縁をつけられている。
「むっ!  またいたいけな青年が苛められている!!  こんな時は・・・デンパフラ
ッ・・・」
  月島拓也が言いかけた瞬間、
「貴之ぃ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
  後ろから来た、全身真っ黒の鬼に突き飛ばされる。
「ぬおっ!?」
  そして飛ばされて坂を転がり落ちる隣で、

「どうも有難う・・・」
「いや、いいんだ。君が困っている時は、いつでも呼んでくれ給え」
  ヤク○を蹴散らした漆黒のツヤ光りした鬼が、貴之にお礼を言われている。
「じゃあ、僕はこれで・・・」
「せめて。名前を・・・」
  無言で鬼はそう尋ねる貴之に背を向けて、走り去って行ってしまった。

「ア、アイツは一体・・・」
  転がって飛び込んだ牧場の馬に頭をかじられながら、拓也はそう呟いていた。
  新たな、敵の予感を感じていた。

                                                        <続く>

  PART8  「学園祭だよデンパマン」

「やあ、どうも、皆さん。僕はデンパマン。煩悩明白、幼児担当、文明開化と賛美さ
れてる、この頃流行(はやり)の男の子。月島拓也です。デンパマンです。今日は、そ
う今日はちょっと地方の、本当に地方の大学の学園祭に来ちゃったよ」
「あの・・・全然招いていないんですけど」
  実行委員が勝手にステージに登って喋り出していた月島拓也に声をかける。

「・・・で、わざわざ招かれたんで一曲、唄っちゃおうかな」
  彼の足元には先程まで実行委員だった男のなれの果てが転がっていた。
「帰るなっ!!。帰ったらこの男と同じ運命だぞっ!!」
  先程のこの科白で不運な、誠に不運な聴衆は月島の唄を聞かされる事になる。
「では、聞いてください。月島拓也もといデンパマン。まずはファン待望のファース
トアルバム『L'altra parte』より『Questo e rotta.』!!」
  まばらな拍手が痛々しい。そんな中、彼のオンステージは続けられた。

「絶え〜間なく注ぐドクデンパ!  永遠にぃ出す事がぁ出来たなら〜」
・
・
・
・
・
「聴くに絶えない歌だね。いや、ただの騒音と呼べばいいのか・・・」
「だ、誰だ!?」
  すっかり日も暮れ、96曲目に差し掛かろうとした時、聴衆の最後列から声がした。
「貴之の帰りが遅いんで心配していたら・・・こんな事に巻き込まれていようとは・
・・」
    ザワッ
  聴衆の群れが二つに別れ、中央から漆黒のボディスーツに全身を包んだ角のある男
が歩いてやって来る。その横には色白で不健康そうな長髪の青年が立っていた。
「お、お前はっ!!」
「愛する貴之の為なら、何処へでも即座に現れる愛と勇気と希望の戦士・・・」
  先日の事を思い出して身構える拓也に構わず歩き続け、
「"鬼道戦士エルクゥガー"只今見参!!」
    ビシィ!!
  数メートルの所で立ち止まって指を突きつける。


「先日の怨み、晴らさせてもらいますよって」
「正義の裁きを受けよ!」
「いて込ましたる・・・覚悟しいや」
「来い!」
  その声に挑発されたように、月島拓也はステージから飛び降りる。
「天魔が呼ぶ、血が呼ぶ、非道が呼ぶ・・・悪を倒せと叫んでる」
「悪はお前だ」
「黙れ、外道。"電波戦隊デンパマン"呼ばれなくても参上です!!」
  何故か着替えを一瞬で完了したデンパマンがエルクゥガーの前に着地する。

「いきなり、デンパ・フラッシュ!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
  着地して睨み合った瞬間、デンパマンが必殺技を繰り出す。
「うぎゃあぁぁぁぁっ!!!!」
「ぎえええええぇぇぇぇぇっ!!!!」
「うぐうぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
  これまでで既に疲れ果てていた学生達がもがき苦しみながらのたうち回る。
「フハハハハハ・・・・どうだ?。デンパの味は?。苦しかろう?。はっはっは」
「それは・・・どうかな?」
「何ィ!?」
  周囲の人々が苦しむ中、エルクゥガーが平然とデンパマンの背後に回っている。
「き、貴様!?」
  慌てて振り返ると、
「エルクゥにデンパなど効かん」
  きっぱりとそう言われる。
「くそっ!!」
「死ねぇっ!!。プリチイ・焦げティッシュ・ボン・・・」
  腕を振り上げた瞬間、背後で苦しんでいる貴之の姿に気付く。
「た、た、た・・・」
「た?」
「貴之ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!」
    バキグシャァッ!!!!
「うごおぅっ!?」
  振り上げた腕とは関係なく、強烈な体当たりでデンパマンを突き飛ばすと、そのま
ま貴之の方へと全力で戻って行く。その脇で砂煙をあげながら転がっていくデンパマ
ン。
「貴之。大丈夫かい?。どこが痛むんだ?。ここか?。それともここか?」
「こ、こ、これで勝ったと思うなよ・・・・」
  数十メートル転がり、やっと転がるのが止まると、デンパマンはそう言い捨ててそ
の隙に逃げ出していった。


  デンパマン初めての敗北の味は、ハイビスカスの香りがするキャンディーを噛み砕
いたような味だった。だが、これで全てが終った訳ではない。世界が彼を必要として
いる限り、いつかまた、再び我々の前に戻って来る。そうに違いない。多分、いや、
その、まあ、ちょっとは・・・兎に角!。そのう・・・・

  "電波戦隊デンパマン"  第1章『ドス色の青春』            <完>