『悪夢 〜赤い血潮の矢島〜』 投稿者:久々野 彰
『悪夢  〜赤い血潮の矢島〜』

<配役>
  紳一・・・矢島  直人・・・雅史  木戸・・・橋本  古手川・・セバスチャン

  俺の名前は矢島。詳しい経緯はゲーム『悪夢』をプレイするか、もしくは小説を読
む、そこまでしなくても雑誌の記事を読んだだけでもある程度分かってもらえると思
うから省くが、俺は生まれついて業病にかかっている。いや、本当はかかってなどい
ないのだが、雰囲気だけは味わっている。で、金持ちである。これは都合がいいから
そう言う事にしておく。そんな俺は部下達に命じて、山奥の廃校となった校舎を改造
した建物にリーフのヒロイン共を監禁する事に成功した。誰の手下にでもなりそうな
雅史。おっさん臭い役が適役な橋本(先輩なんてつけないぜ。主人はこの俺だからな)
。そしてじじいの役はじじい以外やれないセバス長瀬にやらせる事にした。俺は確か
に振られる為だけに出て来たような男だ。名前すら覚えてもらえないようなチョイ役
だ。久々野が『あの日〜(楓編)』で名前を間違えられた男だ(全部間違えやがって)。
だから復讐しなくてはならない。この俺をコケにする、ヒロイン共を。そしてリーフ
を。他のメーカーのゲームの話が舞台なのはこの俺の怒りだ。本当は違うが、そうい
う事にしておこう。(*名前間違いは今頃、気付いた。済まんっ!!!!!。久々野)


  初めは高慢チキな女がいい。そのタカピーな女をこの俺が屈伏させる瞬間。これこ
そ監禁物の醍醐味だからな。そう思い、俺は女共のファイルに目を落す。
「・・・・・」
  いない・・・。今の所、リーフにはそんなタイプの女はいない。何?。綾香が近い
だと?。フン、あんな女。ヒロインでない以上、興味はない。あくまでこれは復讐な
のだ。単にヤリたいからなどと言う下らん理由ではない。いや、少しそれもある。
「仕方が無い・・・」
  軽く舌なめずりして、俺は目標を変更する事にする。気の強い・・・そんな女を圧
倒的な立場で奈落の底に叩き落す。そんな快感もこれまた醍醐味だ。
「・・・柏木梓・・・これがいい」
  俺は雅史を呼ぶ為の鈴を手に取り軽く鳴らすと、すぐに雅史がやってくる。
「矢島様。お呼びでございますか?」
  当たり前だ。用事など無ければ貴様の顔など見たくない。バットエンディングじゃ
ないか・・・俺は思わずそう言いそうになって、止める。THの事は忘れよう。その
為に今があるんじゃないか。そう思い直す。
「梓を連れてこい」
「はい」
  雅史は何を考えているのか分からない。あっさりとそう返事をして部屋を出て行く
と、
「お待たせ致しました。梓を連れてまいりました」
  すぐに梓を連れて来た。俺は戸口に控えたままの雅史に顎をしゃくって下がらせる
と、無言で一礼して雅史が部屋を出て行く。
「・・・・・」
  部屋に残された梓は、無言で俺を睨みつけたまま黙っていた。良いトコの令嬢な筈
だが、あんまりそんな雰囲気はない。どちらかと言えば、庶民、それも恋愛シュミレ
ーションで言う所の主人公の幼馴染みで、喧嘩友達として長く過ごして来た為に女と
して見てもらえない。しかし、彼女はずっと主人公の事が好きでそれを言い出せない
でいる。そんなタイプだ。(よくあるパターンだが、具体的過ぎないか?。矢島。)
「何か言いたそうだな?」
  俺がそう水を向けると、梓はカッとしたように口を開く。
「アンタ、何考えてんだよ」
  俺は余裕がある所を見せる為に、低く笑って見せる。小馬鹿にしたようなこの俺の
態度に梓はカチンときたらしく、ツカツカと駆け寄るとこの俺の胸倉を掴んで釣り上
げ・・・ってオイ!。

  バキグシャドカッ!

  敢え無く半殺しの目に遭った。


「ふう・・・」
  やはり、鬼では相手が悪い。いくら拘束したところで、常人では太刀打ち出来ない
力を持っているのだから・・・俺は素直に反省する。
「次は・・・」
  今度は、逆の方が良い。気の弱い・・・いつもびくびくしていて、こっちが強く出
れば脅えて泣いてしまうような・・・そんなか弱い雰囲気を持った女。とてつもない
恐怖に脅える女に、あんな事やこんな事を命令した挙句、無理矢理・・・これも監禁
物の醍醐味だ。俺は、再び雅史を呼ぶ。
「お呼びで・・・」
「藍原瑞穂をここに連れてこい」


「うう・・・これだよ。これ、この脅えきった瞳が・・・サスペンスだ」
  矢島の部屋で二人きりになり、彼女は訳の分からないながらも、妙な事を口走り感
動している矢島に本能的に怖さを感じたのだろう。瑞穂がやや後退する。
「こっちに来い」
  そう言うと、更に瑞穂は脅えたようにドアの前まで後ずさりする。
「いいから、こっちに来るんだ」
  興奮しきってまるで変質者(違うのか?)のように、息をハアハアさせながら近付い
て行くと、
「きゃあああっ!!」
  と、怯む瑞穂。問題ない。後は、あんな事やこんな事を・・・

  ガキンッ

  その瞬間、俺は後頭部に強い痛みが走るのを自覚していた。
「か、香奈子ちゃんっ!!」
「ミズホ、ゴメンネ、ミズホ、ゴメンネ・・・・」
  理不尽だ。朦朧となる意識の中、俺は叫んでいた。どうやったら消火器を持った太
田香奈子がこの鍵のかかった部屋にやってこれると言うんだ。ギャグとは言え、こん
な事が許されていいのか。しかし、俺は部屋の鍵が開いている事に気付く。

  雅史・・・キチンと鍵をかけろ・・・

  俺は気を失った。


  これで2度の失敗だ。監禁している立場なのに、どうしてこんな目に遭うのだろう
か?。そう俺は考えて、今までとは違う事をしようと考えた。
「雅史」
  俺は3度目の呼び出しをして、こう言った。
「ひまだろ」
「いえ、そんな事は・・・」
  雅史は自分の部屋でプレステをしていたので、ちっとも退屈ではなかったが、一応
役柄を考えて控え目にそう答える。
「俺は退屈ではないが、面白くない」
「はあ・・・」
  まあ、そうだろうな。と、考えているだろう雅史を前に、俺は先程の思い付きを口
にする。
「だから、女を一人やる」
  これでいい。わざわざ自分が危機に陥る真似をすべきではない。要は復讐である。
自分でやる楽しみは無いが、痛い目にあうよりはマシである。ビデオ観賞で弾みをつ
けることにしよう。何せここは自分が主人公の世界。何をするのも自由だし、自分が
嫌でも中心にならなければいけないのだ。いずれは見せ場がある。そこまで我慢しよ
う。そう納得して、包帯を巻いた頭を軽く撫でる。胸に巻かれた包帯も痛々しかった
。そう、本当は自分でやりたくても出来ない状態だったのだ。
「これが終ったら・・・橋本にもあてがってやろう」
  そんな事を矢島は考えながら、部屋で高笑いをあげていた。


「・・・で、これが矢島様の・・・」
  既にセバスチャンは身を乗り出していた。写真を見る眼付きが血走っている。
「兎に角、好き勝手にやれって・・・」
  そう言いおわる前に、セバスチャンは鍵束を持って牢へと走っていった。そしてT
Hヒロイン達の牢の前まで来ると、すぐに鍵を開けて芹香達を救出する。
「お嬢様っ!!」
  セバスチャンは忠誠を忘れなかった。この架空の世界の関係よりも、本当の立場を
選んだのだ。
「何を吐かすかっ!!。この儂が芹香お嬢様の事を・・・」
  ああ、分かった。分かった。とにかくセバスチャンがそんなんだから、雅史も平然
と、後を追う。
「あ、志保。それにあかりちゃん。元気だったかい?」
「元気じゃないわよっ!!。人をこんな薄暗いじめじめしたところに閉じこめといて
っ」
「でも、有難う。助けてくれて・・・」
「いやあ、何・・・」
  雅史もこんなヤツだった。因みに橋本は銃のレプリカが気に入ってしまったらしく
、一心不乱に自分の部屋で磨いていた。


「まだかな。まだかな」
  ウキウキして結果報告を待つ矢島。だが、その扉の向こう側には各々、それぞれの
怒りを持った少女達が押し寄せようとしていた。もはや彼の命運は尽きていた。

                                                          <完>