『背中』 投稿者:久々野 彰
 …浩之ちゃんは優しいね・・・。

 私がそう言うと、きっと、

「んな訳ねーだろ」

 浩之ちゃんはそう言う。

 …ううん、浩之ちゃんは優しいよ。

 そして、私は重ねて言うの。

 それが、今の私たち・・・。

・
・
・

 あの娘がいなくなっても、浩之ちゃんは私には笑って見せた。

 …嘘つき。

 私は悲しくなって思うの。

 …嘘つき・・・。

 どうして、笑うの。
 どうして、笑顔を作るの。
 どうして・・・。


 ずっと・・・ずっと私、追いかけてきた。

 …浩之ちゃんの背中。

 それだけを見て追いかけてきた。

 浩之ちゃんも気付いてるから、私が遅れないように歩くスピードを落とすの。

 つかず、はなれず。

 こんな中途半端な距離を今まで、保ってきた。

 …幼なじみ、だから?。
 …妹みたい、だから?。

 追いつきたいのに、追いつけない。
 でも、そのままいなくなったりはしない。
 いつも背中を見せて、私に見える距離に浩之ちゃんはいる。

 その背中に飛びつきたくて、私は歩くの。

 …浩之ちゃんの背中、欲しいよ・・・。

 いつまでも、いつまでも追いつかない。

 つかず、はなれず。

 …それじゃあ、嫌なの。

 必死に歩くスピードをあげる、私。

 でも、追いつかない。追いつけない・・・。



 …浩之ちゃんは優しいね。

 私は、笑う。

 決して縮まることのない距離、それが二人の距離。
 私が立ち止まれば、待っていて、
 私が足を早めれば、早足になる。

 …浩之ちゃんは、優しいね。

 浩之ちゃんが作る距離。私が歩き続けられるようにと、作る距離。

 でも、ゴールがない、残酷な距離。

 …浩之ちゃんは・・・優しいね。

 私が引き返すまで、何も言わない。ただ、黙って歩き続ける。


 前を歩く浩之ちゃんは、何を見てるの?。
 私は、背中しか見えないよ・・・。
 浩之ちゃんの背中しか・・・。


 浩之ちゃんは傷ついた。浩之ちゃんは悲しんだ。

 でも、背中を向けてる私には分からない。
 背中しか見えないから、分からない。
 肩は、震えているのに・・・。

 …浩之ちゃんは優しいね。

 だから、笑う浩之ちゃんを見て、私も笑うの。
 私に見せたくないのなら、見ないようにしよう。


 きっとこの距離は変わらない。
 いつまでも、変わらない。

 私はきっと歩き続けるから。
 そして、私が歩き続ける限り、浩之ちゃんも歩き続けるだろうから。

 …浩之ちゃんの背中を見続けて、これからも私は歩き続ける・・・。

                          <完>
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「浩之嫌いなのか私シリーズ第2段(?)。「犬」なんて言われちゃってる"健気"なあ
かり嬢。私は好きです。例えどんな事になっても、浩之の事を見続けるのではないか
・・・そう思ってしまうのが彼女の魅力。現に様々なSSでマルチとハッピッピにな
っても彼女が浩之を諦めて他の男とつき合ったなどというオチは・・・私の知る限り
ですが、ありません。よくて健全な三角関係、もしくは微笑ましく見つめ続ける・・
・「何て娘だよ、アンタは・・・」と涙を誘うようなあかり。そしてそれに気付いて
いるくせに、彼女の気持ちに甘えている気がする浩之。そんな二人の距離を過激にな
らないように書いたのですが・・・(ゲームの"私"ではなく"藤田浩之"が好きじゃな
い)。ついでに言うと、コレ、久々野の心境でもあります。追いつきたいけど追いつ
けない」
 思わず涙もののマルチエンドもいいけど、私は胸キュンのあかりエンドを推したい
今年は一足遅れのTHの年の久々野でした。(まあ殆どが甲乙つけがたいけどね・・・)