『"電波戦隊"デンパマン』最終回(上) 投稿者:久々野 彰

 −第4章『この世の果てでデンパを放つ少年』−

  PART45 「はじまりの予感(最終回前編)」


「やあ、世界中で一番、"雫キャラ"を壊して使っていると確信している世界の住人で
その主人公の月島拓也です」
 相変わらずこっちを向いて喋る拓也。勿論、その場所には他の人間がいると言うの
に・・・。
「で、月島先輩・・・何の用です」
 で、ここは長瀬祐介の自宅。祐介本人のいる彼の部屋の中だった。当然ながら招か
れた訳ではなく、祐介の留守中に勝手に入り込み、キッチンでコーヒーを沸かし、戸
棚からお菓子を取り出し、タンスからへそくりを探しだし、本棚から漫画を取り、ベ
ッドの下や引き出しの裏から大量のエロ本を見つけだしてこれ見よがしに机の上に並
べ、「企業NOW」と表向きに書かれたAV(ちょっとだけ瑠璃子似の女の)を大音量
で再生していた頃に、ようやく祐介が帰って来たのだった。
「・・・長瀬祐介君・・・大事な話があるんだ」
 祐介が錯乱してひとしきり暴れ、落ち着いた頃を見計らって、話し掛ける拓也。
「・・・何ですか?。まさか・・・愛の告白なんて・・・止めて下さいよ。ここじゃ
あ冗談にならないんですから・・・」
 非常に不機嫌な顔をしたまま、牽制する祐介。
「誰が・・・いいから聞き給え。話と言うのは他でもない・・・瑠璃子の事だ」
「瑠璃子さんの・・・!?」
 思わず背筋がピンとはって居住まいを正す祐介。
「昨日・・・奇女に出会った」
「奇女?」
 話が逸れた気がして、怪訝な顔を向けかけると、
「話は最後まで聞き給え」
 今度は拓也の方がそれを察して制する。
「ああ・・・本人は微少除亀ナンタラとか言っていたが・・・」
「美少女仮面サオリーナよ!!」
 拓也が言い終わる前に、天井裏から声がして、ひびが入る。
「奇女・・・ですか・・・」
「ああ・・・奇女だ・・・」
 二人でしみじみと頷きあう。

  バリバリバリッ

「何、二人して納得してるのよっ!!」
 とうとう堪らなくなったのか、天井裏を突き破り新城沙織が現れた。スカートがめ
くれていたが、今日はブルマーを着けていた。しかし、どうもいつもの蝶の眼鏡が見
慣れてきた。少しヤバいかも知れない。
「奇女だろう・・・」
「奇女ですねえ・・・」
「あんたら・・・人の事、言えんのか、コラ」
 怪しい飾りの着いたバトンを上段に構えて威嚇する沙織。
「まあ・・・とにかく・・・こんな感じの変態さんに出会った訳だ」
「こんな奴、二人といないと思いますけど」
「・・・・」
 二人とも、沙織ことサオリーナを無視して話を続ける。
「冬最中、太郎の家に雪降り積むこの佳き日に、さおりんという愛くるしいの美少女
を無視するなんて許せない!!。美少女仮面サオリーナは、とってもご機嫌ななめだ
わ!!」
「やかましいっ!!」
 祐介がそう怒鳴り、意味もなく机上に乗っていたサオリーナの足首を掴み、引き擦
り下ろしてロメオスペシャルをかけると、
「黙れっ!!」
 と、同調した拓也も加わり、
「電脳昇技!!。トライアングル・デンパドリーマー!!」
 何処が電波と関係あるのか分からないが、二人掛かりの吊り天井攻撃でサオリーナ
を地獄に突き落とす。


「・・・で、話を戻すとだな・・・」
「はい・・・」
 幸いにもザ・ニンジャの様に真っ二つにはされなかったが、KOされて部屋の隅に
転がっている沙織の亡骸を無視して、会話を続ける二人。
「君は二股をかけているそうじゃないかぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!」

  ビシィッ!

 ここぞとばかりに祐介の鼻先に指を突きつける拓也。優越感のこもった顔だった。
「何だね・・・聞いたところによると、マルチに懸想してるとか・・・瑠璃子を二の
次にしたとか・・・ネタはあがっているんだ」
「う・・・ぐぐ・・・」
 窮地に追いやられた祐介は次第に後ずさりするが、拓也も指を突きつけたまま、追
いつめていく。
「お前はそんないい加減な気持ちで瑠璃子に接したのかぁっ!!。見損なったぞぉぉ
ぉぉっ!!!!!!!!!」
「そうよ、さっぱりと諦めて、さおりんと愛し合いなさいよっ!!」
 いつの間にか復活したサオリーナが、拓也の肩越しに追い打ちをかける。

  グシャッ!!

「兎に角・・・」
 拓也はそのままの姿勢での肘うち一撃で、取り敢えず背後にいたサオリーナを再び
床に沈めると、
「男としてはっきりさせ給えっ!!。瑠璃子をとるかぁっ!!、マルチをとるかぁっ
!!」
 今まで苦渋を飲まされ続きだった祐介に対し、ここぞとばかりに言う拓也だったが
・・・
「フッ」
 祐介の口元が歪む。あざ笑ったのだ。
「?」
「分かってませんね・・・月島先輩・・・」
 この余裕は一体どういうものなのか・・・。
「・・・・・」


 その頃、
「先輩・・・月島拓也先輩・・・」
「あ、カツサンドの嬢ちゃん」
 放課後の学校では、由紀が廊下を徘徊していた葵を見つけて声をかける。
「ああ・・・どうも・・・」
 振り返る葵の表情に元気がない。どうしたと言うのか。
「一体どうしたの・・・?」
「あの・・・実は月島先輩を捜してまして・・・」
「ああ、あのタコ?」
 ウンザリしたような顔を隠そうともしない由紀。オイオイ・・・。
「今日は生徒会室にもいらっしゃらないようですし・・・」
「帰ったみたいよ」
「え・・・もうですか!?」
 いつもダラダラと学校に残っているのは誰でも知っていた。
「ええ。多分だけど・・・教室見てきたら?」
「え・・・あ、はい・・・」
 葵が慌てたように来た道を引き返す。
「どうも、すいませんでした〜」
「そうね・・・今日は珍しく大人しかったわね・・・そーゆー時は大概・・・」
 ハァと諦めたようなため息をつく由紀。
「良からぬ事、企んでいるのよねぇ・・・」
 その判断は間違ってなかった。


 その頃、好恵は、
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあ・・・」
 まるで禽獣が辺りの様子を窺うように、しきりに周囲を見回しながら人気のない教
室に忍び込む。
「・・・・・」
 その息は荒く、全身が緊張のためか、汗をかいている。
「・・・・」
 ゆっくりと目で数えるようにしながら、後ろの方の席に忍び寄る。
「・・・」

  キョロキョロ、ギョロッ!!

 そこで再び周囲を窺って、ゆっくりとその場にかがみ込む。
「・・・・・・」
 ゴクリと唾を飲み込みながら、その目的の机、勿論葵の机に手を伸ばす・・・。


「藍原さん・・・今日は静かですね・・・」
「嵐の前の・・・じゃなきゃいいんだけどね・・・」
 そう言って美和子に苦笑する瑞穂。生徒会室での光景。今日もいつもの・・・学校
内での器物破損の状況を計算していた。



 そして、祐介の誘いのまま、拓也は祐介の家の地下室への階段を下っていた。
「こんな所に・・・何の真似だい?」
 意外と距離が長い。恐らく祐介の家よりもずっと広いスペースだろう。
「さあ・・・着きましたよ」
 そう言って祐介は重い鉄製の扉を開く。

  ギィィ・・・

 扉の軋む音と共に、ゆっくりと開かれた扉の奥から、目映い光が射し込んでくる。
「ひゃあ・・・」
 ちゃっかりついてきた沙織(眼鏡を落としたのだ)が声を漏らす。

 その部屋は・・・その何だ。大きな大仏のような黄金のマルチが横たわっていた。
そして周りにも沢山のマルチグッズが・・・世界中のマルチ関連の品が飾られていた
。そして部屋の中央には、『マルチ教』と書かれた看板と、それっぽい仏用具が並べ
られていた。
「どうです・・・僕のマルチへの思い・・・分かって頂けましたか?。彼女は"神"な
んですっ!!。恋愛感情を抱くとか・・・そんな次元ではないんですっ!!」
 教祖のような顔になって、説法をし出す祐介。
「「○月X日、マルチが校門を掃いた箒・・・15万円」おいおい・・・」
「「髪の毛」「涙の雫」皆、プレミア・・・ついてんだ・・・」
 ショーケースに飾られた呆れたような、感心したような声をあげる二人。
「あはははは・・・・世界広しと言えども、これほどのコレクションはありますまい
・・・。ここは神殿なんです。最早っ!!」
 自分に酔っているのか、顔を紅潮させ、最高に盛り上がりを見せている祐介。


「・・・そんなもの、興味がない人が見たら・・・ただのゴミ」
 この凍り付くような発言(コレクターにゃ禁句)・・・勿論、瑠璃子だった。彼女は
反対側の奥にひっそりと立っていた。
「瑠璃子っ!!」
「瑠璃子さんっ!!」
「毒婦っ!!」
 何故かここにいる瑠璃子だったが、誰も違和感を感じなかった。
「おお、瑠璃子・・・分かってくれたか。言ってやれ、もっと言ってやれ」
 元気づいて、瑠璃子の隣に来て、そそのかす拓也。
「お兄ちゃん・・・」
「あ・・・いや・・・ははは・・・」
 窘めるような視線を拓也に向ける瑠璃子。慌てて空虚な笑いを浮かべる拓也。
「ゴ・・・ゴミ・・・僕のマルチが・・・ゴミ・・・」
「マルチそのものじゃなくて・・・その集められたグッズの事だと思うけど・・・」
 そんな沙織の声も聞こえない。それほど、祐介にはショックだったようだ。
「嘘だ」
 そしてポツリと呟いたかと思うと、
「嘘だ・・・そんなの・・・」
 何かに取り付かれたように繰り返すと、
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――
っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 祐介が、壊れた。


「今日こそは・・・今日こそは告白しようと思ったのに・・・」
 何故か特殊セラミックの籠手を填め、白の鉢巻を巻いていた葵は拓也の教室を寂し
そうに後にしていた。
「今日は・・・帰ろう・・・」
 このまま部活に出る気もおきなかったので、自分の教室に戻ろうとしていたら、教
室から黒い影、まるで大きなゴキブリのような動きで何者かが出ていくのに気付く。
「!?・・・・、何?。今の・・・」
 不審がりながらも、教室に入って自分の席に向かうと・・・
「・・・・・!?」
 自分の机に・・・彫刻刀で彫られたのだろう。デカデカと合い合い傘が書かれてい
た。そこには葵の名前と、もう一方には坂下とだけ書かれていた。恐らく恥ずかしく
て下までは書けなかったのか、そこまで書くまで時間がなかったのだろう。
「坂下・・・って誰?」
 今現在の葵の頭には、カツサンド55%、月島拓也40%、エクストリーム4%、その
他1%で占められている。その他には勉強の事とか、友人の事とかが入るので・・・
一時期の知り合いでしかない好恵のスペースなど、とっくの昔に"ゴミ箱を空にする"
の作業で忘れ去られていた。その事実を、好恵は知らない。


「あ、藍原先輩・・・」
 業務も終わり、一緒に帰ろうとしていた瑞穂、美和子、由紀の3人に下級生が呼び
掛けてくる。
「何?」
 瑞穂が尋ねると、
「体育倉庫の床に穴が開けられているから、先生が生徒会の人に知らせるようにって
・・・」
「・・・ああ、そう・・・」
 修理費を生徒会予算から出しておけと言うのであろう。既に再来年度分も底をつい
ている。
「穴ねぇ・・・もしかして秘密の抜け穴?」
 由紀が面白そうに笑う。
「まさか・・・」
 美和子がそう言いかけたとき、
「あ、月島先輩がそっから消えていったって話も・・・」
「え?。帰ったんじゃないの?」
「妹さんの方です・・・えっと・・・瑠璃子さんでしたっけ?」
 由紀の疑問にその下級生が答える。
「えぇっ!?。せ、先輩の妹さんが・・・それで・・・大丈夫なんですかっ!?」
 いつの間にか追いついたのか、葵が後ろから大声を出す。
「さあ・・・大丈夫なんじゃない?」
「その・・・私・・・」
 何かを言いたそうにモジモジしだす葵に、
「一応、立入禁止にすべきなんだけど・・・」
 何かを察したのか、瑞穂が何かをいいかけると、
「こんな所にいたのね・・・」
 そこに慌ただしく女子生徒がやって来た。
「え・・・?」
「そ、そんな・・・」
「あ、貴女は・・・」
 その場にいた全員が、絶句する。


「葵・・・・・」
 その頃、好恵は学校の焼却炉の所の近くで体育座りをしていた。泣いていた。その
目の前の焼却炉には手刀で叩き割られた机の破片がくべられて燃えていた。

  ジャンッ!

「学校の備品は大切にね」
 そんな彼女の前に誰かがそんな事を言った。そんな気がした。


                          <続く>
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 マウスポインタは桜木さんの葵、壁紙は秋葉さんの香奈子&瑞穂(ムチャ最高!)、
スクリーンセイバーは「初音〜」の物(志保悲惨だね)と・・・リーフに埋もれし久々
野であります。今、やっとデンパマン終わりました。長期連載でした。本当はもっと
余裕もってやりたかったのですが・・・で、今からテスト勉強をしますので、感想一
覧は完全ではありませんが、ご勘弁をっ!!。(昨夜の時点)


p.s デンパマンの過去の話は全てこちらの星野様HPに送らせて
  頂きました。宜しければ、御参照下さい。