リーフ三校史演義 第二章−プロローグ− 投稿者: きたみちもどる
隆山の街を雨が包む。
朝から降りしきる雨。やむことの無い雨。どんよりしている沈鬱な雲。
それら全て、自分の心を表しているのかも・・・と少女は思った。
その少女は、広く、そして冷たい感じがする部屋にただ一人でいた。
その面影は、まるで日本人形のように繊細で、そして、冷たく、捨て猫のような
雰囲気を醸し出していた。
その少女こそ、今や北日本全域を支配している柏木楓に他ならない。
はぁー、と少女−楓−は溜息をついた。
いったい何時まで、こんな事をすればよいのだろうか?
本当に自分のやっていることは正しいのだろうか?
大いに荒れ混乱したこの街を、この日本を救おうとして自分達−柏木の血を引く者−
が介入して果たして良かったのだろうか?
その想いは重責となって、楓に重くのしかかる。
この重く苦しい重責から早く抜け出たい。
それが楓の願いである。そして、その重責を取り払ってくれる唯一の人、
今は遠き地にいる前世からの想い人、柏木耕一に想いを馳せる。
ただ会いたいと・・・。

同時刻、鶴来屋の会議室内。そこで、ある重要な事が取り沙汰されていた。
「・・・と言うことでよろしいですかな、会長?」
ある重役が言う。
「しかしそれは・・・」
「いや、会長のおっしゃる事も分からないでもないですが、創始者の経営理念は、
いささか今の時代には合わないと思うのですよ」
「だからよろしいですな。会長?」
明らかに恫喝のこもった口調で問い掛ける。
そのような言い回しに鶴来屋会長−柏木千鶴−は、内心で毒づいた。
(もし聞き入れなければ、足立さんみたいになる・・・か)
事実、鶴来屋社長 足立は二日前謎の襲撃者に襲われ重傷を負ったのである。
(この人たちは、どうすれば私が折れるか分かっているのね)
たとえ自分がどうなろうとも、それを跳ね除ける『力』があるが、自分と関わりを持った
人たちを盾に取られればどうにもできない。
それだけに歯がゆい気がするのである。
それは、今回もそうなのである・・・。
「・・・以上のことを、われらが人形・・・いや、失礼、我らが『支配者』様に
お伝い出来ますかな、会長?」
頷くことしかできない千鶴。
「でわ、今日はこれにて閉会ですな」
こうして、事実上の支配者会議は終わりを告げた。

同日夜。柏木邸。
「いったいどういう事なんだよ!千鶴姉!!」
梓がテーブルを力いっぱいたたく。その勢いは、テーブル上の物を数cm浮かすほどである。
「どうもこうも、今言ったとおりよ」
「なんで、あたし達があんな欲ボケ爺たちのために闘わなくちゃ行けないんだ!
本当にそれでいいと思ってんのかよ?千鶴姉!」
勢いよく千鶴のむなぐらを掴む梓。千鶴はされるがままになっている。
「もうやめてよ、梓おねえちゃん。千鶴おねえちゃん苦しそうだよ」
初音の言葉にはっとなる梓。そして千鶴の顔を見る。そこには、涙があった。
あの、(こういう事には)冷静沈着なあの姉が泣いているのである。
「本当は、私だって嫌よ。あの人たちの言うことなんか聞きたくない。けど、けどね、
分かってちょうだい。こうしないと迷惑がかかる人たちがいることを・・・」
その言葉を聞いたとたん梓・初音は、はっとなる。
二日前のことを思い出したからである。
梓は、姉の胸座を掴んでいた手を放し、ややうつむき加減でいった。
「けど、けどやっぱり納得が行かない・・・」
「それは、私もそうよ。だから、私達にしかできないことをやろうと思うのよ・・・」
あらためて千鶴の顔を見る二人。そこには、ある決意をもった顔があった・・・。
                 (続く)
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き「みなさんお久ぶりでーす。どーもお待たせしました三校史演義の第二章です。
  次回から本編突入です。そして、多分見知った人達が出てくるかもしれませ   んよ。こうご期待」
東「けどいいんですか?そんなことやって・・・」
き「さぁ、次回も張り切っていきますよ!(聞いちゃいねぇ)
  そんじゃ、あでゅー」