藤田浩之、二十九歳。 妻二人、娘四人を養う来栖川HMラボきっての研究者である。 朝は早く妻あかりと共にラボに出かけ、夕方頭脳労働の末帰宅。 精神をすり減らす仕事の日々である。 そんな彼の唯一の心休まるときは食後、娘達と一緒に遊ぶ時間。 「お父さん、疲れたでしょう?お肩おもみしますね」 マールが後ろから抱きついて言う。 「お父さん聞いて聞いて!今日ね、学校でティーナがね…」 ルーティが膝の上から見上げながら言う。 「ねえお父さん、みかん食べる?甘くて美味しいよ!」 ティーナが横に座ってみかんを剥いてくれる。 …違う。 何か物足りない。 娘達の笑顔は嬉しいはずなのに、これは違うのだ! そう、俺が求めているのはこんなものではない…俺が求めているのは! 「お父さん、疲れたにゅ?お肩揉み揉みするにゅー☆」 猫耳マールがぷにぷにした肉球を肩に押し当てながら言う。 「お父さん、聞いてにゃ☆今日ねぇ、学校でティーナが…」 猫耳ルーティが喉をごろごろ鳴らしながら頬ずりしてくる。 「甘くて美味しいにゅー!お父さん、食べて食べて☆」 猫耳ティーナが爪でぺしっとみかんを叩きながらほほえみ掛ける。 (さあ、これを読んでるあなたもレッツ妄想!) 「これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 次の瞬間、強烈な寒気を感じて俺は立ちすくんだ。 「浩之ちゃん…マルティーナ達を何に改造するつもり?」 「浩之さん……まさか、自分の娘に怪しい格好させようなんて思ってませんよね……?」 フライパンを構えたあかりとモップを構えたマルチが鬼気迫る表情で睨んでいた。 かくして浩之の妄想は終わりを迎える。 どこかで猫の鳴き声が聞こえた。 それはあるいは妻二人に袋叩きにされた一人の青年の叫びへの鎮魂歌かも知れない。