セバスの世界にようこそ 投稿者:風見 ひなた
 ルーンブレーカー風見 ひなた……るーんさん、ネタパクばっかでごめんね。
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  ACT1.更衣室

 祐介は沙織に言われたとおりバーガーショップに行ってハンバーガーを買い、学校に赴
いた。
 時間はもう既に約束の時間をとっくに過ぎてしまっていたのだが、沙織は一向に現れな
い。とっくにバレー部の練習は終わったはずなのだが…。
 祐介は時計を見て5分だけ待ってみたが、現れる気配すらなかった。
(かまされたかな…)
 そう思いながらもしばしの間だけ待ってみる。
 まあ、仕方ないかも知れない。深夜の学校に男子と二人っきりで入るというのはやはり
尋常ではない。気が付いて現れなかったとしても納得のいくことだ。
 だが…。
 やはり違う。自分はずっとここで張っていたではないか。バレー部の練習に参加してい
たことは事実で、こっそりと目をかいくぐって逃げたのでないかぎり沙織を発見している
はずだ。
 ちらりと祐介の頭に叔父の言葉がよぎる。
(校内でそういう真似をされては黙ってるわけにもいかないんでな)
 まさかとは思うが、祐介は不意に不安にとらわれた。
 沙織が連中に見つかって捕まったという事はありはしないだろうか。
 次第に大きくなる不安に祐介は柄にもなく落ち着かない気分になってきた。
 何か、とても嫌な予感がする。
 祐介はちらっとハンバーガーの包みを見ると、校内に入っていった。

 夜の体育館は非常に気味が悪い。
 昼間の活気の名残が行き場もなくうろついている感じだ。
 ここにはもう沙織どころかバレー部の人間は一人も残っていないことを確認して、祐介
は足早に体育館を離れた。
 廊下を歩く。
 と、微かに物音が聞こえてきた。
 水の音だ。
 祐介はそっと壁を注視しながら歩いてゆく。
 音は次第に大きくなる。
 一つのドアの前で祐介はぴたりと立ち止まった。
 そこにはこう書かれていた。
「シャワー室」
 祐介はしばらく札を見つめていたが、やがてにやっと笑うとドアノブに手を掛けた。
「新城さん、どこにいるんだい?」
 などとわざとらしくドアを開けると……

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 祐介はぴったり5秒間石化すると、凄まじい絶叫をあげながらドアを全力で閉めようと
した。
 が、がしっと中からぶっとい手が突き出てドアと壁の間を遮る。
「長瀬君、どうして逃げるのぉ?」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?だ、黙れジジイィィィィィィィ!!!」
 祐介の咆吼を全く無視して、セバスチャンはドアを無理矢理こじ開けた。
「もう、ホントは見たかったんでしょ?祐君たら照れ屋さん☆」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!よせやめろ触るな来るなぁ!!それ以上近付くと祖孫の縁を切るぞ
ぉぉぉぉ!!!」
 セバスチャンはそれを聞くとぴたと祐介の学生服を掴んだまま止まったが、やがてにま
ぁぁぁと笑って言った。
「じゃあ、今日からお爺ちゃんと孫じゃなくて恋人同士に………」
 祐介はその顔を見て、自らの意識が遠のいてゆくのを感じた……。
 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
    やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
           ぁぁぁぁ……。
 そんな叫びがどこか遠いところで聞こえた。

 十分後、シャワー室の前のドアを足音が通過する。
「あれー?長瀬君、どこいっちゃったのかなぁ……」
 彼女が祐介を見ることは二度となかった。


 長瀬教師は翌日ふっと笑うと、ずらっと生徒名が並んだ黒手帳のリストにマジックで戦
を入れながら呟いた。
「やはりあいつも帰ってこなかったか………」

              BAD END…………。


 ACT2.四月二十八日深夜の恐怖

 藤田浩之は部屋の電気を消すとベッドに潜り込んだ。
 いろいろと忙しい毎日だが、この時間が一番好きな時間だ。
 睡眠しているときは誰も話しかけては来ないし、心を乱されることもない。
 浩之は今日一日の疲れをいやすべく規則正しい寝息を立て始める…。

 わぉぉぉぉぉぉん!

 ぐたっと脱力し浩之は耳を押さえた。
 ああ、やかましい。くそぅ、どこの犬だ。
 浩之は頭から掛け布団を被ったが、再び聞こえてきた声に眉をしかめた。
(発情期か馬鹿犬が…飼い主もちゃんと管理しろよなぁ〜)
 しばらくそうしていたが、やがて意を決して起き上がると窓に近付いてゆく。
 犬に怒鳴りつけても意味はないが、少しは気も紛れる。飼い主が何とかしてくれること
もあるだろう。
 浩之は窓に手を掛けようとしてひくっと立ち止まった。
 …発情期?

 わぉぉぉぉぉん!浩之殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

 浩之は奇声を上げるとベッドに飛び込む。
 それを察したか、黒い影は窓に張り付くと必死にそれを殴りつけ始めた。
 浩之は強化ガラスがいつ割れるかと恐怖に怯えながら頭から布団を被りただただ震えた。


「…………」
「夕べはうちのペットが迷惑をおかけして済みません?いや、いいんだよそんなこと…」
 翌朝、そう言って芹香に謝られる浩之の顔はげっそりと憔悴していた……。


 ACT.3 コン太君

「先輩……いつかえって来るんだろ……」葵はそう呟くと脚の間に顔を埋めた。
 これまで考えても見なかったのだ。浩之の存在がどれほど大きかったか。
 自分がどれほど彼に甘え、寄り掛かってきたのか。
 だから、浩之が帰ってきたら言うつもりだった。
『ありがとう』と。
 だが、そう思ってから幾日…浩之はまだ戻らない。
 胸が苦しく、締め付けられてゆく。
 一人の寂しさにまかれ泣きつつも足を向けるのは何故かこの境内。
 浩之が帰ってくるそのときを夢見て、ただただ待ち続ける。
「先輩……」
 葵がそう呟いたとき、ひょこっと足下から声がした。
「やあ、何泣いてるんだい!?」
 葵はそっちを見てひきっと震えた。
「せ…せ…」
 セバスチャン!?
 妙にリアルなそれはちっちと顔を振るとにやっと笑った。
「オレは先輩なんかじゃないよ!オレ、セバスチャンてゆうんだ!よろしくな!」
 葵はしばし口をぱくぱくとさせていた。
 その口はこう言っていた。
 …みりゃ分かるわボケええええええええええ!!!!!
「何で泣いてるんだい、良かったらオレに話して…」


 浩之はこの直後両手にはめていたセバス人形ごと65565HITコンボを喰らい全治
三ヶ月の重傷を負って入院した…。

                            BAD END…。
                      

 ACT.4 ガチ○ピン

 初音ちゃんと楓ちゃんはあの侵略者を「セバスチャン」と呼んでいた。
 俺はその神経が理解できなかったが…。
 あの気味悪い生き物のどこをどうすれば「セバスチャン」なんて名前が出て来るんだろ
うか?
 とにかく梓も俺も奴には十分注意している。
 奴が俺達を狙っていることは間違いないのだ。
 その警戒として、俺達は警察から拝借してきた銃器を携帯していた…。

「きゃあああああああああああああああああ!!!」

 はっ、悲鳴!?
 まさかあのエイリアン野郎、楓ちゃんと初音ちゃんを!?
 俺は全力で倉庫に駆け込むと、奴の胸元めがけて銃器を向けた。
「よくもやりやがったなこのエイリアンめ!」
 血しぶきをあげてセバスチャンはのけぞり、倒れる。
 気が付けば俺は呆然とした目を梓を含めた三人から向けられていた。
 初音ちゃんがやがて我に返り、涙に潤んだ目で俺を見つめた。
 楓ちゃんがそっと奥を指さす。
 そこには「お誕生日おめでとうコーイチ」と書かれたケーキが…。
 俺は…宇宙から来た友達をこの手に掛けてしまった…。


 俺は絶叫をあげると、セバスチャンに駆け寄った。
 セバスチャンは既に冷たくなっており、目を閉じていた。
「ゆ、許してくれセバスチャン!お前が…お前がそんな…」
 いくら叫んでも最早彼は帰らない。
 初音ちゃんと楓ちゃんは哀しい目で俺を眺め、梓は同情を込めた目で俺を見つめてる。
「セバスチャン…お前のためなら何でもしてやる!だから…だから、目を覚ましてくれ!」
「本当ですかな?」
 セバスチャンはむくっと起きあがった。
 俺達は呆気にとられて彼を見つめた。
「本当に、何でもしてくれるのですな?」
 俺はその笑いに魂の奥底からの叫びをあげた。
 ぽんと肩に手が置かれる。
 振り向くと、梓がほほえましいものを見る目で俺を見つめていた。
「おめでとう、耕一…」
「いやぁぁぁぁっぁぁあ!?と、止めてくれぇぇぇぇぇ!!!!!」
 初音ちゃんは俺と目が合うとぎこちなく微笑み返し、楓ちゃんはすっと目をそらせた。
 ふっと熱い吐息が耳に吹き込まれる。
「幸せな家庭を作りましょうね、あ・な・た・☆」
 俺の魂は絶叫をあげ…そして頭のどこかで自分が哄笑をあげていることに気付いていた
…。

 こうして俺は…宇宙から来た奥さんを嫁にもってしまった…。


            BAD END…。