雅史、覚醒す! 投稿者:風見 ひなた



 頭が痛い…。
 授業中に突然襲った頭痛は未だひかず、激しくなる一方だ。
 雅史は保健室のベッドでシーツを頭から被って苦しんでいた。
 瘧にかかったように、体中がぶるぶると震える。
 だが、それ以上に異様な頭痛が止まらない。
 そして、ともすれば自らの内から湧き上る黒い衝動。
 違う。自分はそんなことを望んでいるのではない。
 だが…。
(僕はどうしてしまったんだ…!)
 雅史はシーツを握る手に力を込め、苦悶の叫びを上げた…。

 雅史の奴、いきなり保健室に運ばれてったけど大丈夫かな?
 浩之はそんな事を考えつつぼんやりと黒板を眺めていた。
 今は四校時目。
 これが終わったら雅史の見舞いに行くのもいいだろう。
 幸い今はもう昼食のゲットにあくせくしないで済む身分である。
 ふと思いついて浩之はノートを引き千切って短く何事か書き記した。
 そして、くしゃっと丸めて放り投げる。
 紙団子は見事に真面目に授業に集中していたあかりのさらさらの髪に命中する。
 あかりはそれをこっそりと広げ、そしてにっこりと微笑みかけてきた。
 どきっとして浩之は慌てて視線を黒板の方向に向ける。
 右隣の席から委員長の苦笑が聞こえてくるような気がした。

「ひろゆきちゃん、おまちどうさま」
 あかりの差し出した弁当をありがたく受け取ると、浩之は教室のドアの方を目
で示した。
「とりあえず雅史の見舞いに行ってから庭園でゆっくりと食うぞ」
 あかりは嬉しそうににこっと微笑むと、「うん」と浩之の腕をとった。
「何だよ、いやにニマニマして」とばつが悪そうに浩之がぼやいた。
「へへえ、ひろゆきちゃん、やっぱり優しいね」と純真な笑みであかりは浩之
に応えた。
 頬まで赤くなった浩之は顔を隠すようにそっぽを向きながら、「馬鹿いってん
じゃねーぞ」と歩調を速めた。
 「ひろゆきちゃん、待ってよう」とあかりは慌てて腕を組んだ体勢を崩さないまま浩之の歩調に合わせはじめた。
 浩之はくすっ、と聞こえないよう小さく笑って歩みを速める。
 だが、決してあかりが付いてくるのに苦労するような速度は出さなかった。
 そんなラブラブな恋人同士の時間は保健室に到着するまで続く。
 はずだった。
 一階に降り立つなり、絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた。
 浩之とあかりは顔を見合わせ、駆け出した。
 もちろん浩之はあかりを無視したペースで走る。
 あかりの方も、どこかで絶対に浩之が待っていてくれるのを知っているのであ
えて文句を付けたりはしない。
 悲鳴は管理人用具室の方から聞こえてくるようだった。
「どうしたっ!」ドアを蹴破って叫ぶ浩之。
 その動きが硬直する。
 冷たいコンクリートの上に転がされているのは制服の前をびりびりに引き裂か
れた、あられもない格好の女生徒だった。
 そしてその上にのしかかっている少年は…。
「ま、雅史!?」
 不敵な笑みを浮かべ浩之を冷笑とともに見つめる少年は、保健室で寝ているは
ずの浩之の親友、雅史だった。
「どうしたの、ひろゆきちゃ…!?」遅れてやってきたあかりも思わず絶句する。
 別に高校生男女が昼休みに用具室で不純異性交友する事など珍しくも何とも無
いが(おひ)、よりにもよってその片割れが雅史とは。
 はっきり言って明らかに男子より女子の制服が似合って、しかも女の子と一切
お付き合いしない、「実はホモ」説が凄くもっともらしくて安永先生に修学旅行
中に食えるんじゃないかとまでいわれたあの雅史が…という理由もあるが、二人
が驚いたのはそれだけのためではない。
 まさか温厚そうな雅史が鬼畜に走るとは思ってもみなかったのだ。
 浩之はちらりと女の子に目をやった。
 たしか、雅史ファンクラブの一人だ。何度かラブレターを渡しているのを見た
ことがある。(全部玉砕していたが)
 浩之もあかりも、ついでに雅史も名前は知らない。
 エキストラである。少女Aという名も無粋なので作者が名前を付けてあげよう。
 あの高名なネット人の後援者にして最大の敵、「みかか」から名をとってお前
の名は「赤十字 美加香」だ。名字は「赤字」に繋がる、含蓄深い名である。
 よかったな、少女A転じて美加香。
 雅史は美加香から身体を起こすと、ふっ、と笑った。鬼畜系のものである。
「この空間に入ってこれるとは…まだ主役の力は完全には失われていないよう
だね」
「…何のことだ、雅史?」ただならぬ事態を察知し浩之の声が真剣味を帯びる。
「この管理用具室は今僕の結界の中にある。
一切の音、気配を遮断する主役の基本能力…浩之、君が持っているのと同じ、ね!」
 浩之は驚愕した。
 よりにもよって雅史が「HGフィールド(Hゲー絶対領域)」を持っているというのだ。
 あの、雅史が!
 浩之の反応を見て雅史は愉快そうに笑った。
「ふふ、驚いて声も出ないようだね」
 浩之はごくり、と唾を飲み込み、聞いた。
「ってゆーか雅史…嫌な事あったのか?」
 ひくっ、と雅史の顔が引き攣る。予想もしなかった一言だったらしい。
「相談しろよ、俺達は親友だろ?鬼畜に走る友人を止めるのも親友の務めだぜ?」 
「そうよ、雅史ちゃん。私達ずっと昔からの仲良しじゃない」
  二人の表情は思いっきり慈愛と同情に溢れていたので、雅史は地団太を踏んで
暴れまわった。
「ちっがーう!別に非行化した訳じゃなーい!!!」
 ある意味鬼畜になりきれてない雅史だった。
 ぜえぜえと荒くなった息を整え、額の汗を拭う。
「お前はもう行っていいぞ」と美加香を逃がして持てるものの余裕を取り戻し、
何事もなかったかのように浩之に向き直った。
「とゆうわけだ」
「なにが『とゆうわけ』なのよ」
 その場の全員がずざっと退いた。
「し、志保!?」
 いつのまにか長岡志保がちゃっかり浩之とあかりの間に立っていた。
「なによ、あたしが居ちゃ悪い訳?」とこれっぽちも悪いとは思っていない口調
で抗議する。
「悪いもクソも何処から出たんだお前は!」と浩之が突っ込んだ。
 志保は不敵な笑みを浮かべる。
「あたしのジャーナリストとしての勘がここが怪しいと報せたのよ」
「わー、志保すごーい」あかりは単純に信じた。
 浩之は半信半疑、といった面持ちだ。
 お前らあんだけ騒いで人がこねーわけないだろが、と雅史は思ったが話がこじ
れてゆくのが容易に予想できたので言わなかった。
「ともかく…浩之、今CG達成率は何%だ?」
「当然100%だが…?」浩之は怪訝そうに答える。
 雅史はふっ、と冷笑を浮かべた。
「じゃあもう十分だね?もはやTo Heartは極められた!これからはこの僕が
裏・To Heartとして鬼畜編“From Heart”を造り、その主役となるんだ!」
「なにぃぃぃ!?」
 今度こそ浩之は驚愕した。
「是非ともやってみたい!頑張れ、応援してるぞ親友!」
「ありがとう、浩之!」
 二人の漢は熱く互いの手を握り締めた!
『和解すんなーーーーーーー!』女性陣二人の声が唱和し、ハリセンがとぶ。
 二人はしばらく地面に突っ伏していたが、やがて同時に起き上がった。
「いや、純愛系の主人公としてそんな鬼畜な行いは断じて許すわけにはいかん!」
と浩之はあかりの目を気にして叫んだ!
「やはり僕に相対するか、浩之!」と雅史はびしっとポーズを取る。
「…とゆーかさ、恋愛ゲーの主人公は結構損だぞ」と浩之は半目で呟いた。
 はあっ?と雅史は目を剥く。
「いいか、恋愛ゲーの主人公はまず自己主張出来ない!主義なんか語れない!
しかもちゃらんぽらんで全く何も考えてない!女の子の機嫌取りをしなくちゃ
ならない!これがナンパゲーともなろうもんならこれに加えて女の子を散々
貪った挙げ句目標以外の女の子は全てポイだ!薄情どころか人間の屑だぞ、屑!
ついでに学園モノなら多くの場合は嫌われ者の鼻つまみ、よくてクールと根暗
の評価ギリギリだ!」
「そうよ、しかもひろゆきちゃんの場合は女の子は一人しか選べないのよ!
おまけに恋愛ゲーの主人公は共通して死ぬほど頭が悪くて、ひろゆきちゃんなん
か私が勉強教えなきゃ赤点とっちゃうのよ!
しかも目茶苦茶鈍感!現実にこんな男が居たら誰も友達付き会いしてくんないほ
ど人の気持ちが分からないのよ!」
「その上プレイヤーは初めての時八方美人に振る舞いつつ狙いを決めるから
薄情度はアップよ!さらにメインヒロインは二股以上掛けなきゃゲットできない
事があんのよ!今回の浩之なんかあかりを恋人にするために純真無垢な孤独な
下級生を二人も犠牲にしてるのよ!不可抗力でやっちゃう祐介君や耕一さんより
余計に極悪!そこまでの苦労をしてヒロは主役張ってんのよ!」
 ………。
 突風。砂塵が舞う。校舎内なのに。
 浩之はへなへなとその場に座り込んだ。
「今更だが、自分が最低の人間だと認識してしまった…」
「あああ、ひろゆきちゃん落ち込まないでぇ」    
 そんな二人を無視して志保はびしっと雅史に指を突きつけた。
「結局のところヒロが他人に誇れるものなんて他人の猿真似とちょっといい運動
神経だけなのよ!
どう!?それでも主役やりたい!?」
 後ろの方で浩之がさらに落ち込んでゆくが、無視した。
 雅史はぴたっと硬直して動けない。大迫力であった。
「大体あんた、人望はあるは美形だわ勉強はそこそこ出来るはサッカー部のル
ーキーだわその上女の子にモテモテでこの上いったい何を望むのよ?」
 確かに言われてみるとものすごく恵まれた奴である。いくらなんでも出来すぎ
ではないだろうか、と作者なんかは思ったりする。
 しかしそんな志保や作者の考えとは裏腹に、雅史はゆらぁと立ち上がると高笑
いをあげはじめた。
(そこまで追いつめたつもりはないのになぁ)と志保が思っていると、雅史はい
きなり自分の顔を鷲掴みにした。
「ふふふ…もう遅いよ…もう遅いのさぁ!」
 言うなり雅史は自分の顔の皮膚を引き千切った。
 たまたまそちらを向いたあかりが絶叫する。
 志保は驚きのあまり2、3歩後じさり、落ち込んでいた浩之でさえ一気に立ち
直った。
「雅史、お前…!?」
 雅史には顔がなかった。顔じゅうに黒いもやが広がっているようで、雅史の顔
が見通せない。
 肩が震えている。どうやら笑っているようだ。
「僕は、主役になったんだ…これが主役の特権、『顔が無い』!」
 顔が無い。それは「男なんていらねー」というプレイヤーの要望を叶え、
かつ主人公をあらゆるプレイヤーの代弁者とする為に生まれた処理である!(多分)
 だけど…。浩之はぎゅっと拳を握り締めた。
(それって…特権かー!?俺は顔があった方がいいぞ、おい!)
 しかし友人思いの浩之は思っても何も言えなかった。
 その沈黙を怖れと見たか、雅史は得意げに胸を張って見せた。
「ふふふ…鬼畜主人公誕生!」
 戦え、戦うんだ浩之!鬼畜などこの学校にのさばらせてはいけない!
 そして何より、主役の座の危機だ!
「…はあ…」しかし浩之は作者の激励にも関わらずため息を吐いた。
「好きにしろ。俺はしらねー。…今日は早退して寝よ…」
「待てこら!主役の座の危機なんだぞ!?」
 あんまりにも投げやりな態度に雅史が思わず突っ込んだ。
 しかし浩之はひらひらと手を振った。
「もうCG100%見たし、あかりも恋人にしたからもういいや…それに」
 浩之は言葉を切るとふふ、と諦めたように笑った。
「脇役の方が顔があっていいし…」
 あまりにも重い言葉に一同は凍り付いた。
 さすがに雅史も声の掛けようが無くて呆然と佇む。
 浩之はそんな三人を尻目に歩き出す。
 だが、完全に画面外に出ようとした時、志保がぽつりと呟いた。
「鬼畜なら友人の恋人を寝取るくらい簡単にやるわよね」
 浩之の歩みが止まる。
 それに勢いを得て、雅史が叫んだ。
「そ、そうだ!ヒロイン達だって一人残らず僕のもんなんだからな!」
「ひろゆきちゃん…」とあかりが哀しそうに呟く。
 ヒロイン。九+一人の女の子。
 マルチ。
 瞬間…「あいつにマルチはやれねえっ!」回路が作動し、浩之は振り向いた。
「正義と愛のために俺は戦う!」
「それでこそ僕のライバルだ!散って花見を咲かせろっ!」雅史が思いっきり嬉
しそうに叫ぶ。
 浩之はへへ、と不敵な笑みを浮かべた。
「主役の力、見せてやるぜ!愛の力…そう、マルチへの…」
 鋭い何かが浩之の頬を切り裂いた。
「…じゃなくて、あかり、様への愛を見せてやろー…」
 あかりはよろしい、といった風に深く頷いた。
 なんだかパワーダウンしたように見えるのはきのせいだろうか。
「よおし、表へ出ろ!」

 かくして男と男の主役争奪戦は幕をあげた。

(勝負は2ターン…「主役の意地」で一気に削って「自己流パンチ」で沈める。
問題は雅史も「主役の意地」を使って来るかもしれないって事だ。
この勝負、スピードが物を言う!)
 浩之は速攻パターンを組むと、雅史を睨み付けた。
 雅史も構えを作っている。
(よし!)
 先手必勝!浩之は雅史に飛び掛かっていった。
「これが主役の意地だああああああああああ!」
 浩之の闘気が拳から雅史の全身を駆け巡る!
 そしてコンマ7秒遅れて雅史も主役の意地を繰り出した!
(避ければ勝てるっっっ!)
 そして、(避けた!)
 浩之は体勢を立て直し、「くらええええええ!」とパンチを繰り出す。
 その瞬間は、勝利を確信した。
 雅史の唇がにやりと歪んだ。もやがかかってるくせに何故か分かった。
「鬼畜ア○ーーーーーーック!」
 浩之は衝撃波をもろに食らって吹っ飛んだ。
 が、まだ意識はある。
 すぐに立ち上がると、せき込みながら雅史に食ってかかった。
「お前、仮にもリーフキャラがそんな技を使っていいと思ってるのか!?」
 そんな技。ア○スの某キャラの技である。当然リーフキャラは使えない。
 雅史は鼻で笑った。
「ふふん、やっちゃいけないことするから鬼畜なんじゃないか」
 正論であった。
 あまりにも筋の通り過ぎている理屈に浩之もあかりも反論できない。
 しかもこの理屈は正義である浩之がずる出来ない事をも示していた。
(そうだ、志保なら言い負かせられるはず)
 あかりは志保に何か言ってもらおうとした。が、志保が居ない。
 おかしい…あの志保が、こんな見世物を見逃すはずが無いのだが。
 仕方なくあかりは観戦を続けた。

 そのころ、校内をフードを被った八人の人々が徘徊していた。

 勝負は熾烈を極めた。
 雅史が浩之の持っていた弁当を盗んで体力回復し、浩之が魔王を召喚して3つ
の願い事を言わされそうになったり、雅史が何処に持っていたのかサッカーボ
ールをぶつけたり浩之がアクアシャワーを放とうとチャックを開けあかりにどつかれた。
 なんだか一方的に浩之がやられていたようだったが、もともと雅史のHPが少
なかったので結局最後には二人とも技pを使い切って拳と拳の語り合いになった。
 そして、何合目かの拳がぶつかり合った。
「お…堕ちたりとはいえ流石俺の親友…やるな」
「主役の力は伊達じゃないってことか…」
 拳の友情。目と目で語り合う男の喧嘩。
「この前力一杯喧嘩したのはいつだった?」
「もう五年になるんじゃないか?」
 思えば、永い付き合いだ。それゆえに忘れていたものもある。
 …浩之は限界を感じた。 
「次で終わりだ」
「どちらかが…死ぬ」
 煌き。
 神速の拳の打ち合い。
 双方の拳は互いに相手の頬を打ち抜いていた。
 浩之が、力を失う…。
「いやあああ、ひろゆきちゃーーーん!!」
 ぴくりと浩之の上半身が反応する。
 必死の形相。たたらを踏み、踏ん張った。
 満足そうに…雅史が倒れた。
 あかりは硬直したまま結末を迎えた。
 勝った?勝った。勝ったんだ。ひろゆきちゃんが…勝ったんだ。
「やったああああ!」あかりは歓声を上げて浩之に抱きついた。
 浩之はボコボコに腫れた顔をしかめ、言った。
「勝ったぜ、あかり」
「うん――うん!」
 浩之はあかりが何度も何度も頷くのを見て、倒れた。
 驚いたのはあかりだが、寝息を立てているのを確認するとくす、と笑った。
「ご苦労様、ひろゆきちゃん」
 あかりはそっと浩之の唇に口付けた。

「なんでだ、おい!まだ倒れるな、倒れるなってば!」
 独り庭園の茂みの中で目を固く閉じ絶叫する男の肩を、細い指がつついた。
「うるさいな、今いいところなんだよ!雅史、早く浩之にとどめを―」
 ちょいちょい。
「しつこ…」
 青年はようやく気づいた。
 今の自分に話し掛ける奴が居るとすれば、それはすなわち…。
「あ、あ、…」
 白いフードが取られる。
「おかしいと思ったのよね。あんまりにも雅史がヒロにちょっかい掛けすぎる
もの。恋愛ゲームの主人公にはプレイヤーが必要よね、橋本先輩?」
 志保はにこにこと笑いながら橋本を見下ろしていた。
「ひ、ひいいいぃ!」橋本は恐怖の叫びを上げ続ける。
 それはすでに動物的なものであった。
 手には固く「わくわく電波の世界・電波入門マニュアル(監修・月島拓也)」
が握られていた。
「つ・ま・り・あんたが雅史を操ってヒロに復讐しようとした訳ね?」
「ごごごごご、ごめんなさいいいぃ!ほ、ほんの出来心だったんですう!」
 しかし志保は答えなかった。
 代わりに指を鳴らす。
 紫色の髪のおとなしそうな少女がはみかみながら進み出た。
「…今、あなたがフクロにされて自らの血の池の中で溺死しかけている映像が
頭に浮かびました☆」
 滅殺。

 目を覚ました浩之は、庭園の方から聞こえてくる断末魔に耳を澄ませた。
 と、うーん、とうなって抱えていた雅史が目を覚ました。
「あれ?ここどこ?保健室で寝てたはずなのに…?」
(やれやれ、いい気なもんだぜ)
 浩之は雅史を立たせてやると、パンパンと身体の泥を払ってやった。
「気分はどうだ?」
「うーん、なんだかすっごくいいよ!」
 美形の特徴としてすっかり顔が修復された雅史は大きく伸びをした。
「いやあ、いい夢見ちゃった」
 は?
 浩之はぎょっとして雅史を振り返った。
「ど…どんな夢だ?」
「うーんとね、あかりと志保が普段言いたいけど言えない事を代わりに言って
くれる夢。内容忘れちゃったけど、すかっとしたなあ」
 あかりと志保。間違いない。
 出来るだけ雅史の顔を直視しないようにしながら、浩之は確認した。
 せずにはいられなかった。
「なあ、俺達親友だよな?言いたい事はすぱすぱ言えるんだよな?」
「当たり前じゃない、何言ってるのさ、浩之」
 明るい顔だった。一点の曇りも感じられなかった。
「そ、そうだよな。あははははははは…」
「あははははははははははははははは…」
 二人のどこか空しい笑いは夕焼け空に吸い込まれていった。

                                 完

おまけ

 ちなみに逃走後八人の少女達が男を虐殺しているシーンを見た美加香は現在
人間不信に陥ってしまっているという…。

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 ごめんなさい。
 また破滅です。…別の意味で。
 このssは午後7時から10時半まででかいています。
 だからまだレスをもらっていません。
 批判でもなんでもいいですから、誰か下さい。
 僕もレス合戦に参加したいです。
 ちなみに友達に、昨日のはevaとw入ってるといわれました。
 今度はオーフェン入ってるといわれるのかなあ。
 下手ですいません;;    

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 これが僕の二作目です。
 いままでの作品群で一番笑えてしまったというなんだか情けない作品です。
 美加香初登場。この頃こいつは少女Aだった…。