玉砕日誌 投稿者:風見 ひなた



「雅史、覚醒す!」を読んでいない人のために人物紹介
 赤十字 美加香…主人公です。雅史激ラブで過激な女の子です。
 佐藤 雅史…美加香の憧れの人です。実は強くて鬼畜らしいです。
 藤田 浩之…雅史の親友です。
 神岸 あかり…浩之の恋人で、雅史の幼なじみです。
 高橋…下の名前を作者が忘れたためこのような扱いです。
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 4月8日
 今日は入学式。私もとうとう高校生です。
 この春、私達はどんな出会いをするんだろう―そう考えるとどきどきしちゃい
ます。
…なんちゃって、てへっ☆

 4月9日
 新しい学校にわくわくして駆け足で登校していると、慌てるあまり男子生徒と
ぶつかってしまいました。
 私に手を差し伸べてくれたあの人の顔は朝の逆光を浴びてとても神秘的にみえ
ました。
 そして、彼はにっこりと笑うと、こう言ってくださったんです。
「怪我はないようだね?」
「あ、はい!」
 私が彼の顔を見詰めていると、彼は頭を振ってこう続けました。
「違うよ、僕の話だ」
「え…」
「てめーみたいなすっとぼけクソ女にぶつかられて怪我したらたまったもんじゃ
ないからね。 今度から前見て歩けよボケ」 
 生まれて初めて浴びせられる強烈かつ遠回しな罵倒に私の心はどきどきしっぱ
なしでした。
 この生まれてはじめて味わう感情…これが、恋…?
 私がなすすべもなく立ち尽くしていると、彼はとっとと行ってしまいました。
 あの人は一体誰…?

 4月11日
 今日の放課後、グラウンドでサッカー部の部練を見学中、あの人の姿を見掛け
ました。
 サッカー部の二年生で佐藤 雅史さんとおっしゃるそうです。
 私は応援しよう、と思い手を挙げました。
 その瞬間顔面に猛烈なスピンを含む衝撃を食らい、私は後ろに吹っ飛ばされま
した。
「あっはっは、御免御免。手なんか挙げてるからパスの催促かと思っちゃった
よ」と佐藤先輩は笑いながらおっしゃいました。
 先輩、何をどうしたら自分のゴールの方向へパスを渡せるんですか?
 ってゆーか、一体どうやってこっちを見る事が出来るんですか?
 なんか、むかついてるから八つ当たりで適当な奴にボールをぶつけたように見え
たのですが。
 それとも、これは先輩からのアプローチ…?

 4月12日
 今日、お昼に先輩が自動販売機の前でかがみ込んでいました。
 どうしたのですか、と尋ねるとお財布を自動販売機の下に落としてしまった、
というのです。
 私は幸い小柄だったので、拾って差し上げました。
 先輩はニコッと笑って、
「ちょろまかさなかっただろうな」と、聞きようによってはとんでもなく失礼
に聞こえる感謝の言葉を下さいました。
 その後先輩は、わきめも振らずにカフェオレを1本買うと、ベンチでのんびり
とカツサンドを頬張っていたお友達に差し上げていました。
 なんだかその眼は恋する乙女のようにもみえました。
 先輩、お友達にも恋人のように振る舞われるのですね。
 私は先輩は凄く優しい人だと思いました。

 4月14日
 今日、お昼休みに上級生の先輩方に屋上に呼び出されました。
 先輩方は「雅史ファンクラブ」というものを結成しておいででした。
 是非とも仲間に入れて欲しい、と私は頼みましたが、先輩方は雅史先輩に付き
まとう私が邪魔だ、とおっしゃって鉄パイプ等の凶器を持って襲い掛かってこ
られました。
 私は先輩への愛のために敢えて挑戦を受けました。
 ふらふらになりながらも最後の一人をぶっ飛ばした時、空はきつね色に染まり
烏が遠い自分の住処へと帰っていくのが見えました。
 私は先輩方の屍の山に立ち、「帰ろう…」と思いました。
 先輩…掴み取ったあなたへの愛は、血の臭いがしました…。

 4月15日
 お昼休みに先輩を渡り廊下で発見。
 今日はこの前見たお友達と一緒でした。
 そのお友達の方は私の同級生の松原さんが突然始めた愚にも着かない演説に
興味をお示しになったらしく、雅史先輩にパシリをお申し付けられていました。
 その時、私は確かに先輩の松原さんを見る目の中に「殺意」を感じました。
 ですがそれもつかの間、先輩はすぐさま購買部へと走っていかれました。
 10分後とぼとぼと帰ってこられた先輩は、何も持っていらっしゃいませんでし
た。
 やっぱり間に合わなかったようです。
 私はあんまり可哀想に思ったので、先輩にまだ開けていなかったお弁当を差し
出しました。
「あ、あの、これ、よろしければどうぞ…」
 先輩はにっこりと笑うと、そのまま包みをごみ箱に投棄しました。
「ごめん、人がくれた弁当なんて何が入ってるか分かんないし」
 先輩ったら、もう、おちゃめさん☆

 4月17日
 二校時目の休み時間、先輩の御学友が髪がピンク色の先輩に真剣な表情で語り
掛けていらっしゃるのが見えました。
 柱の陰では髪がピンピンに立った先輩が固唾を飲んで見守っていらっしゃいま
した。
 それだけならまだしも、雅史先輩までが自動販売機の裏に無理矢理隠れていら
っしゃいました。
 こんなあからさまな変装なのに気が付かれないお二人に呆れつつも、興味があ
ったので通りすがりの振りをして耳をそばだてていました。
「あかり、お前が好きなのは矢島じゃねーんだな!?」
「え?どうして矢島くんが?」
「あ、いや、何でもねーんだ!忘れてくれ!」
 そう言うと真っ赤になった御学友は逃げるように去っていかれました。
 みしっ。という音に私は振り向きました。
 雅史先輩に握られたコンクリートの柱がボロボロに崩れかけていました。
 ピンク色の髪の方を見つめる形相は凄まじく、なんだか覚悟が完了している様
に思えました。ついでに言うと目は「お前を殺す」と言っていらっしゃるよう
でした。
 先輩ったら、もどかしさのあまりついついスーパーモードに突入してしまわれ
たのですね☆

 4月23日
 「疫病神」という噂のお隣のクラスの姫川さんが先輩の御学友の方に話し掛けられ
ていらっしゃいました。
 何事か話していらっしゃいましたが、やがて走って逃げられてしまわれました。
 みしっ、という音がしたので振り返ると案の定雅史先輩が校舎の壁の陰に隠れ
つつ、壁を握り潰していらっしゃいました。
 その次の休み時間に今度は松原さんと話していらっしゃいました。
 やっぱり何事か短く話し合われた後、松原さんはとぼとぼと何処かへ行ってし
まわれました。
 振り返ると例によって雅史先輩が壁を破壊していらっしゃいました。
 その目にはやっぱり蒼い炎が燃えていらっしゃいました。

 4月24日
 昨日の晩松原さんと姫川さんが暴漢に襲われ頭を割られて入院してしまいまし
た。
 暴漢はまだ見つかっていません。
 朝礼で私は黙祷を捧げつつ、思いました。
(先輩、私が襲われたらきっと助けに来てくれますよね?)
 ちなみに今日の先輩はとっても晴れやかな顔をしていらっしゃいました。
 何かいい事がおありになったのでしょうか。
 先輩が笑っていらっしゃると私も嬉しくなります。

 4月26日
 裏工作に一日を費やしました。

 4月27日
 昨日言いくるめた神岸先輩にラブレターを届けていただきました。
 受け取って一瞬眉を顰められた先輩ですが、御学友がいらっしゃると何事もなか
ったかのように平静に振る舞われました。
 神岸先輩達が行ってしまわれると神岸先輩の後ろ姿にキルサインを送り、それ
からラブレターで鼻をかんでごみ箱に捨ててしまわれました。
 先輩ったら照れ屋さん☆

 4月29日
 学校に行って校長にピーナッツを渡してきました。
 ひどく喜ばれ、御褒美に二年生の修学旅行に連れて行ってくださる事になりま
した。
 持てるものが得をする世の中だなあ、と思いました。
 
 5月2日
 いよいよ明日は修学旅行です。
 興奮で眠れません。雅史先輩、待っててくださいね。
 私がお手製の「雅史くんマクラ」をぎゅっと抱きしめると、マクラは爆発音を
立てて破裂してしまいました。
 えへへ、張り切りすぎちゃった☆

 5月3日
 雅史先輩は揃ってやってきた神岸先輩達を見られてから凄く不機嫌そうでした。
 今日は諦めましょう。

 5月4日
 ついに今晩私は少女から女になります。
 そう覚悟を決めて私は部屋の窓を開けると壁に張り付いて移動を始めました。
 強力な粘着力を持つ吸盤など誰も使う訳がないと思っていたらしく、教師共の
見張りもありません。
 と、なんだか隣の部屋が妙にうるさいので物のついでに窓から覗いて見ると、
神岸先輩と藤田先輩がベットに腰掛け抱き合っていらっしゃいました。
(藤田先輩がここにいらっしゃる、という事は雅史先輩は今独り☆)
 私はデバガメを中断してさかさかと雅史先輩の部屋の窓へと急ぎました。
 窓から様子を伺ってみると、雅史先輩は藤田先輩の鞄を漁っていらっしゃいま
した。
 なんだか嫌な予感がしましたが、私はとりあえず予定通り窓をぶち割ってその]
まま雅史先輩に一撃を食らわせ、意識を奪いました。
 第一ミッション終了を確認し、私は先輩の上着を脱がせようとして硬直しまし
た。
 先輩は藤田先輩のパンツをしっかりと握っていらっしゃいました。
 そう、まるで子を守るライオンの親のように…。
 私はなんだかすっごく見てはいけない汚れたものを見てしまったような気分に
なり、そのまま速やかに部屋に戻りました。
 隣の騒音に神経を逆撫でされながら、私は眠りに就きました…。

 5月5日
 不眠の反動で何も出来ませんでした。

 5月6日
 宴会の席で藤田先輩と神岸先輩が付き合っている事が長岡先輩にばらされまし
た。
 本能的恐怖のため雅史先輩をちらりとも見る事が出来ませんでした。

 5月9日
 修学旅行明け。
 ついに先輩をゲット出来ないまま修学旅行は終わってしまいました。
 仕方なく、せめてスポーツタオルだけでも届けて差し上げようと部室前で待っ
ていると、見知らぬ先輩が声を掛けてこられました。
「おや、君可愛いね。新入生?」
「あ、はい」
 むかつく態度でしたが雅史先輩のお知り合いかもしれないので自制しました。
 しかし相手はますます調子に乗ってなれなれしく話し掛けてきます。
「ふーん、俺は橋本っていうんだ。よろしくね」
 私は相手もしたくなかったのですが、やむなく対応する事にしました。
「私は赤十字です」
「赤十字さんは誰を待ってるの?」
「佐藤先輩です」
 それを聞くと橋本は気味の悪い笑みを浮かべました。
「ふーん。実は、俺雅史のマブダチなんだ。紹介してあげようか?」
 らっき☆
 私はしめた、と思いました。
 こんな愚民でも利用価値はあるんだなあ、と新たな発見に歓喜の声を洩らした
くらいです。
 それが間違いでした。
「お近付きの印に握手」
「あ、はい」
 何の疑いもなく手を握り締めましたが、その瞬間指に激しい痛みを感じました。
「な…」
「ふっふっふ…」
 私の視界はゆっくりと振動を始め、身体から力が抜けてゆくのが感じられまし
た。
 この症状は…。
「ふーん、通販の筋弛緩剤でも効くもんだね」と嘲笑うような声が降ってきます。
 全身の力を振り絞って橋本の顔を睨み付けました。
 橋本はにやけた笑いを崩しません。
「そんな恐い顔しても説得力ないよ。この筋弛緩剤は30分有効…十分な時間だ
と思わないかい?」    
 何に十分な時間か知りたいとも思いませんでした。
 橋本の右手に光る指輪…小さな刺が生えていました。
 あれが筋弛緩剤の注射針だったようです。
 私は(使うのは初めてだから伝染病の危険はないな)などと思いながらも、自
分に出来る精一杯の抵抗を捜しました。
 まだ喉からは完全には力は失われていません。
 私は橋本の顔めがけて唾を飛ばしました。
 ぴたり、と橋本の動きが止まり…次の瞬間には真っ赤になって怒りだし、左手
を振りかぶりました。
(助けて、先輩!)
 願いは…届きました。
 いつまで経っても振り下ろされない左手を不審に思った私が見上げると、橋本
の左手はがっしりと雅史先輩に押さえられていました。
「相変わらず鬼畜ですね、橋本先輩?」
「さ、佐藤…君!」
 雅史先輩は何事か言いかける橋本ににっこりと微笑みかけ、突然真上にぶん投
げました。
「幸せにもできねーくせして手当たり次第手ぇ出してんじゃねえええええええ!」
 心の叫び、とも思われるような絶叫の後、雅史先輩の鉄拳は落ちてくる橋本先
輩をはるか上空へと吹っ飛ばしました。
 荒く息をついて、「悪いね。誰でもよかったんだ…」とぽつりと呟き…先輩は
私に向き直りました。
「怪我はないかい?」
「は、はい!」
「そりゃよかった」先輩はにっこりと笑いました。
(やっぱり先輩は来てくれた!思いが通じたんだ!)私は心の中で感涙にむせび
泣いていました。
 そして先輩は私の顔を覗き込むと、ゆっくりと顔を下げ…って、えええ!いい
の?
(神様、今なら私は死んだって構いません!たとえ雅史先輩に殺されるのでも、
本望です!)
 私の唇まであと3センチ、というところで先輩の唇は言葉を紡ぎました。
「怪我が無い方が殺りがいがある…」
(へ?)
 瞬間…
「人が失恋してる時にいちゃいちゃいちゃいちゃしてんじゃねええええええ!」
 絶叫とともに、私は強烈なヘッドバッドをかまされました。
 そして、ばたっと倒れる私をあとに…
「悪いな…誰でも、よかったんだ…」
 そう呟いて先輩は葉桜の道を歩いていきました。
 私の口にはだくだくと額から流れ出す血が入り込んでゆきました。
(初めてのキス…おでこへの、おでこのキス…
 私のファースト・キスは、動脈の血液の味がしました…)
  
 雅史に恋するエキストラ赤十字 美加香、彼女の恋の実る日は遠い…。
                            多分、完

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ひ:うーん、なんかちがうなあ
み:こんなもの書かずにマルチの続き書いた方がいいんじゃないですか?
ひ:かもしれませんね。ちなみにこの作品は6時から書いてます
み:何でいちいち時間なんか書くの?
ひ:この時間中にレスが来たら失礼じゃないか
み:それはお約束だからレスしなかった内に入らないとおもうけど
ひ:そうだね。次回から書かないようにしよう。
    それはさて置き、友人に「昨日のは「雫」知らんけど読めた」と言われま
    した。
み:殺しましょう。やったことがないなんて…。
ひ:いずれやらせましょう。さて、レスだ
    NoGodさん、すげえ…爆笑しました。足元にも及びませんねえ。
み:こんだけ?
ひ:うい
み:もう終わり?
ひ:うい。それではまた1週間以内に!>ALL
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 「友人」とは、Hi-Waitのことです。
 この頃から美加香は外道だった。
 しかし―誰もこいつが「外道」とは思わないらしいです。
 裏金ばらまいたり背後から殴り倒したり他人を「愚民」と呼んだりしてるのに。