「イリュージョン」 投稿者:カレルレン
 「うわあ・・・」
 
 マルチは目に飛び込んでくる映像すべてに、常に感動している。
 夕食後の気怠さの中、二人で借りてきたビデオを観ていた。それは古い白黒映画で
、いわゆる名作と呼ばれているものだった。舞台はローマ。

「わわわ、自転車です。」

 マルチの目を一層輝かせた映像、若い男女が自転車で二人乗りをする場面。スーツ
姿の男が振り返り、ジェラードを舐める女がはにかむ。くるくると回る自転車のシャ
フトとローマの整えられた町並みに、マルチはうっとりとしている。

「自転車に乗るってどんな気持ちなんですか?」

 風邪気味の俺の為に、マルチが初めて作ってくれたチーズケーキ(らしき物体)が
ガラスのテーブルの上で生暖かくなっていた。なんで風邪にチーズケーキなんだ?

「そりゃあ気持ちいいものだぜ、空を飛んでるような気分になるぞ。」

 自転車に乗ったことのないマルチは、しきりに、うわあ、うわあと感動している。
俺は一切れのチーズケーキをフォークで口に放り込んだ。固くてパサパサした食感が
口腔を刺激する。同時に、甘くて優しい温もりが胸に広がった。

「自転車に乗ってみたいか?」

「え?は、はい。乗ってみたいです。」

「じゃあ、明日、自転車の練習をしなきゃな。」

「え?でも浩之さん、風邪は大丈夫なんですか?」

「そんなもん、一晩寝れば全快だ。」

「でも私に出来るでしょうか?」

「俺にまかせとけ。俺がコーチすればあっというまに競輪選手クラスになれるぞ。」

 マルチは俺の身体を気遣ってるのだろう、申し訳無さそうに髪を垂らす。
映画は自転車のシーンを過ぎ、ジェラードを舐めていた女が実は王女であり、自分の
立場を呪い葛藤するシーンが映し出されていた。自転車に乗ったスーツ男もまた、し
がない新聞記者である自分と王女という二人の差に胸を焦がす。

「よし、決まり。明日はマルチの自転車デビューの日だ。」

 悩むマルチを勢いづかせるため、俺は強く瞳を覗き込みながら言った。ケーキの最
後の一切れを飲み込むと、風邪で腫れた喉が少し痛んだ。

「は、はい、ありがとうございます。がんばります。」

 痛む喉を手でさする俺に、マルチは元気な返事とお辞儀をしてくれた。そして再び
映画の作り出す、美しい空間に没頭するマルチ。時折、自転車に関する質問を俺に浴
びせながらも、目をパアッと輝かせ画面を見つめていた。

「自転車は右足から乗るんですか?それとも左足からですか?」

「自転車の動力源はなんでしょうか?」

「どうやって止まるんですか?」

「噛みつきませんよね・・・?」

 自転車と映画の美観に終始ニコニコしていたマルチだったが、それでも映画がラス
トシーンになると、やっぱり泣いちまった。
 他国のお姫様として、大勢のイタリアの記者達の前、プリンセススマイルで記者会
見に望むジェラード女。ひとりの新聞記者として、会見に参加する自転車スーツ男。
そのふたりの男女の間には、群がる記者の数以上のものが横たわっている。
 
「どうしてですか?どうしてお姫様は男の人に何も言わず帰っちゃうんですか?」

 どうしても理解ができないマルチは、肩までの髪を左右に散らせながら、わんわん
と泣きじゃくる。

「あんなにお二人、楽しそうだったのに。笑ってたのに。」

 ジェラード女は記者の、イタリアのどこが一番お気に召しましたか?の質問に、ロ
ーマの休日、と自転車スーツ男の顔を見つめて答えた。そして自分の国に帰った。

「悲しすぎます。二人とも可哀想です。」

「映画としてはこういう展開のほうがいいんじゃねえのか?」

 目に涙の粒をためるマルチ、それを適当になだめる俺はさらに喉が痛んだ。
 二人で乗った自転車、二人で切ったローマの空気、甘く冷たいジェラード、トレヴ
ィの泉、スペイン広場、真実の口、ローマの休日。
 想像上の人物二人に、完全に感情移入しているマルチは、映画のシーンを頭の中で
反芻しているのだろう、何度もビデオをラストシーンに巻き戻している。

「でも・・・でも、なんでお二人とも悲しい表情をしてないんですか?」

 再びブラウン管に映し出される、ジェラード女と自転車スーツ男の表情。白と黒だ
けの二人の顔。

「悲しいお別れのはずなのに、悲しいお顔をしてません。なんででしょう?」

 風邪で頭がふらついていた俺は、マルチの問いにまともに答えてやれなかった。
 
 その後もマルチは寝る(電力が切れる)まで、どうしてお別れしなければいけない
んですか?なんで悲しいお顔じゃないんですか?とまるで自分がジェラード女になっ
たかのように、冷たく黒いブラウン管に向かって呟いていた。
 そんなの俺が聞きたいくらいだ。なんであんな顔で別れられるんだ。どうして。
熱でうなされる夢の中で、俺も自転車スーツ男になりきっていた。


 「おーい、マルチ。はやくしろー。」

 俺が玄関先から家の中に向かって声をかけると、マルチの焦るような、慌てるよう
な、今行きます、の声が返ってきた。
 物置の奥から引っぱり出した、埃だらけの自転車をやっときれいに磨き終えたんだ
、はやくマルチに見せてやりたい。
 初夏の休日の午後。緩やかな風と優しい日差し。自転車の練習には絶好の日といえ
た。目に映るさまざまなものが梅雨明けを知らせ、ようやく夏らしい七月の陽光をま
ぶしく照り返している。
 俺は、朝になっても熱の引かない額に、吹き出す汗を拭いながら、光の横溢に目を
細める。

「お、お待たせしました。」

 玄関から勢い良く飛び出してきたマルチの容貌に、俺の頬の筋肉が緩む。

「なんて格好してんだ、お前。」

「え、え、変ですか・・・?」

 俺のおさがりのトレーニングウェアを着たマルチは、髪を無理矢理ポニーテールに
束ねていた。改めて見る、耳のセンサーから首筋にかけての白さがまばゆい。

「まあ、動きやすければいいか。スカートよりはいいだろうな。」

「はい。」

 ブカブカの袖を口元に置きながら、マルチはさっそく自転車に興味を示したようだ
。自転車のまわりをぐるぐると回る。

「どうだ、俺が昔乗ってたやつだから錆だらけだけど、まあまあいけてるだろ?」

 俺が誇らしげに紹介した自転車は、ギア切り替えもない普通の婦人自転車(ママチ
ャリ)だった。チェーンも所々錆びていて、前カゴは、昔、雅史と自転車競争した時
に豪快に壊して以来、無くなったままだ。

「はい、かっこいいです。でも昨日の映画に出てきた自転車と違う形ですね。」

「そりゃそうさ、あれは大昔の自転車なんだ。あれと比べればこいつは最新式だぞ。」

「最新式ですか。ふわあ、すごいですね。」

「・・・よし!じゃあ早速、練習しに行くぞ。」

「え?どこかに行くんですか?」

「公道は危ないからな、近くの小学校で練習だ。」

「はい。」

 マルチがハンドルを握り、俺が荷台を掴んで二人で自転車を押す。車通りの少ない
道を選んで、住宅街を縫うようにして進む。マルチのうなじが楽しそうに揺れる。

「浩之さん。」

「なんだ。」

「この自転車で二人乗り、出来ますか?」

「ああ、出来るよ。」

 からからと音を立てて回る錆び付いたシャフトに、午後の日差しが反射する。ちら
ちらと光る万華鏡のようだ。
 住宅街を抜けて、まるでサイクリングコースのような公道に出た。道路の両脇に等
間隔に植えられた木々。小学校の卒業式の日に、俺を含む全卒業生が記念に植えた苗
木が、今や立派な木になっていた。

「この道の先に小学校があるんだ、もう少しだぞ。」

「浩之さん、身体は大丈夫ですか?」

「へーき、へーき。」

 俺は、それっと声を出し、荷台を掴む手に力を入れた。急にあがったスピードに引
っ張られてマルチも走り出す。汗で濡れたシャツが背中に張り付く。マルチのポニー
テールがピョコピョコ跳ねていた。
 優しく湿った風が吹き、緑の木々が歓喜する。

 小学校に着くとグラウンドは、俺達のためにあけられたかのように、誰もいなか
った。ここは俺が6年間通った学校、初めて自転車に乗った場所だった。

「よーし、練習開始だ。」

「はい、よろしくお願いします。」

 まずマルチを自転車に乗せた。初めて乗ったサドルとペダルの感触に、緊張して肩
を張らせて、まるで子供のような顔だった。
 マルチの緊張がある程度ほぐれたところで、俺は自転車の荷台をつかまえて倒れな
いように支えてやり、スタンドを上げた。いくぞ、という俺の合図でマルチが足に力
を入れてよろよろと走り出した。手を離さないでください、というように、マルチは
何度も後ろを振り返る。

「こら!よそ見するな。真っ直ぐ前を見てしっかりとペダルを漕ぐんだ。」

 俺の怒鳴り声がマルチの身体のバランスを奪う。倒れそうになる自転車とマルチを
俺が支える。
 俺が強く押しすぎると、スニーカーを履いた小さな足がずり落ち、ペダルが空転し
、止めてください!とマルチが叫ぶ。
 グランドの上に引かれた、二百メートルトラックの白線に沿いながら、俺の支える
マルチが自転車を走らせる。徐々に伸びる校舎の影と傾く太陽の下、慣れてきたマル
チの楽しそうな声が響く。

「本当に気持ちがいいですね。」

「まるで鳥になったみたいです。」

「自転車さんも私と同じロボットなんですね。」

「昨日の映画のお姫様もこんな気持ちで自転車に乗ってたのかな。」

 頭にとりつく痛みを我慢しながら、自転車の荷台を掴んでいると、俺自身が自転車
乗りを覚えようとしていたころの記憶が自然と蘇ってきた。
 あのとき俺もここのグラウンドで練習をしていた。ただ自転車に乗る俺を後ろで支
える人はいなかった。親父もお袋も忙しく、小さな身体には不釣り合いの自転車に悪
戦苦闘して、何度も転びながらも練習した。雅史とあかりが補助輪をはずそうとして
いるのを知った俺は焦っていたんだ。負けたくなかった。朱色に染まる放課後のグラ
ウンドで一人、俺は泥だらけになっていた。よろけながらも、初めて転ばずにトラッ
クを一周することが出来たとき、俺は生まれて初めての達成感とじゃじゃ馬自転車に
対する征服感に酔い、インディアンのような雄叫びをあげた。
 いつのまにか、俺はマルチの乗る自転車の荷台から手を離していた。それに気づか
ず、よろけながらも一心にペダルを漕ぐマルチ。ますます悪化する風邪に視界が揺れ
る。立ち止まる俺からどんどん離れる自転車とマルチに、俺の頭の中で朱色のグラウ
ンドとセピア色の校舎がぐにゃぐにゃと混じり合い、少し寂しくなった。

 何度も転ぶマルチを、鉄棒にもたれながら見つめていた。汗はひっきりなしに吹き
出していたが、腕にはびっしりと鳥肌がたっていた。

「浩之さん、大丈夫ですか。そろそろ帰りましょう。」

 苦しそうに肩で息する俺にマルチが声をかけたとき、太陽はすでに日暮れを向かえ
ていた。

「そうか、じゃあ帰ろう。」

 髪も服も土まみれのマルチに、何か言ってやりたい言葉があったが、それくらいの
余裕も今の俺には無かった。

「ごめんなさい、私のせいです。無理させちゃってごめんなさい。」

「大丈夫だって。それより自転車乗れるようになって良かったな。」

「はい、浩之さんのおかげです。」

 来たときと同じように、二人で自転車を押しながら歩く。小学校の校門がやけに小
さく見えた。

「浩之さんの言ったとおり、本当に空を飛んでるようでした。」

「そうだろう。」

「風が私の肌を舐めるんです。空がとっても青くて、グラウンドからとてもいい匂い
がしました。」

 興奮冷めやらぬといった感じで喋り続けるマルチ。ポニーテールを縛った黄色いゴ
ムが解けそうだ。

「私、ひとりで自転車に乗れたんですね。本当に感動です。」

「そうさ、マルチはがんばったんだ。だから自転車にも乗れるようになったんだ。が
んばって努力すればなんだって出来るようになるんだ。自転車だって、料理だって、
買い物だって、これからもみんなうまくいくさ。」

「・・・はい。」

 目を刺すようなスピードと体を真っ二つに引き裂くクラクションといっしょに、一
台の車が通り過ぎた。ゴウッと巻きあがる風にマルチのポニーテールが揺れ、俺の心
をくすぐった。

「マルチ、荷台に乗れよ。二人乗りしようぜ。」

 冷えた汗でべとついたシャツ、胃からこみあげてくるものにむかつく胸、霧と靄の
かかった頭と視界。いろんなものが気持ち悪かったが、なぜか心だけはきれいなまま
だった。

「だめですよ。顔が真っ青じゃないですか、それに汗がびっしょり。はやくお家に帰
ってお薬を飲んで寝ましょう。」

「自転車で走ったほうが速いさ。ほれほれ、はやく乗れ。」

 腕をぱたぱたと振りまわしながら、だめですよだめですよ、と気遣うマルチの腰を
強引につかみ持ち上げる。それでもしつこく断るマルチを、俺はたぶんその日一番の
優しさを込めた笑顔で座らせた。

「行くぞ、ちゃんと捕まってろよ。」

 ハンドルを握り、サドルに尻を置き、ペダルを踏む。錆びた鉄から懐かしい匂いが
した。腰に回されたマルチの腕の感触にはにかみながら、最初の重い一漕ぎに奥歯を
噛みしめる。ぎしぎしと軋みながら二人を乗せた自転車がゆっくりと進み出す。
徐々にあがるスピードに、マルチの悲鳴のような歓声と歪んだ景色が飛ぶ。

「うわあ、はやいはやい。ビデオテープの早送りみたいです。」

 ペダルを漕ぐ俺の体が鉛のように重い。呼吸は荒いが酸素は血管を流れていってく
れない。肺が震え、強い酸液を出し、俺を溶かしてしまう。

「ビューン、ビューン」

 マルチがはしゃぐ。足を金魚のように動かし、頬を濡れたシャツに擦りつける。
 俺の意識は迷子になった。
 道路に敷かれた中央線がまるで心電図のように波打つ。

「浩之さーん、大丈夫ですか?」

 生き物のように揺れ動く街、縦横無尽に駆けめぐるアスファルトの血管、街をつく
る住宅、町外れにある廃屋は死んだ細胞だ。増幅された電信柱の影が怪物のように牙
を剥き、一瞬俺を驚かせる。
 すべての色彩が失われていった。俺の白い目と黒い瞳に、昨日の白黒映画の映像が
焼き付く。汗だくの風邪ひき男と土まみれのメイドロボ。
 ほら、マルチ、もうすぐ公園にはいるぞ。あそこの公園は夏休みになるとアイスク
リーム屋がくるんだ。ローマのジェラードほど有名じゃないけど、北海道の牛から取
ったミルクで作ったから結構うまいんだぜ。夏休みになったら一緒に食べような、そ
れからまたふたりで自転車乗ろうぜ。
 自転車はよろよろと蛇行して、マルチが、止まってください、と叫んでいる。
 自分が今どこで何をしているかよく分からなくなっていたが、マルチの腕にきつく
しめられた、腰の感覚だけははっきりとしていた。


「お医者さん呼んできましょうか?」

 公園に入ったところで、身体の限界に達し、自転車を降りた。大きな楡の木の下の
芝生に倒れ込んだ俺の瞳に、マルチの心配顔が映った。

「少し休めば大丈夫だって、家だってすぐじゃないか。」

 短く刈り揃えられた芝生から、青臭い匂いがした。俺が枕にしている楡の木の根、
去年の年末に町内会の大人達がクリスマス用に植えたものだった。

「熱がひどいですよ、冷やしたほうがいいのかな。私ハンカチを濡らしてきます。」

「いいよ、マルチ、そばにいてくれよ。」

 仰向けに寝ている俺の横に、ちょこんと正座をして座ったマルチが俺の額に手を乗
せた。冷たいけれど、暖かい体温が俺の頭骨に染みわたる。
 少し落ち着いた俺の瞳に、再びオレンジ色の粒が飛び込んできた。朱色に歪む太陽
から生まれた光の粒。藍から茜に移る空のグラデーション。

「マルチ、また二人乗りしような。」

「はい。でも、ちゃんと風邪をなおしてからですよ。」

「昨日の映画のようにアイスでも舐めてさあ・・・」

 芝生に転がった自転車は鈍い光を放っていたが、徐々に朱色の太陽に飲み込まれて
いく。

「マルチ、俺さあ、解ったんだ。なんで映画がああいう終わり方したのか、解ったん
だ。王女と新聞記者が全然悲しい顔してなかっただろう。あれはさ、我慢してた訳じ
ゃないと思うんだよ。ふたりはさあ、短い時間だったけどちゃんとした恋愛をしてい
たんだ、ふたりの間には、愛はしっかりと成立していたんだ。ラストシーンのふたり
の顔覚えてるよな、すごいいい顔だったなあ。王女は綺麗だったし、自転車に乗って
た新聞記者の男もかっこよかったなあ。ふたりとも一番輝いてたよ、今思い出すと、
スゲー眩しいよ。なんか上手く言えないけど・・・」

「浩之さん。」

「なんだよ、マルチ。」

「私に、あのお姫様のような表情が出来るでしょうか。」

 マルチの表情が逆光でよく見えない。

「わたしと浩之さんの、その・・・愛はもう成立してしまったんでしょうか。」

 太陽は今日最後の力を振り絞り、世界を朱色に染めていく。マルチの震える声も、
夕暮れを告げる小鳥の囀りも、楡の木のざわめきや芝生の匂いも、全部。

「もう、成立しちゃったんですか?」

 俺の額に置かれたマルチの手が一瞬強く震え、やがて朱色に発光する。世界のすべ
てが焼かれるなか、マルチの薬指にはめられた、オニキスの指輪だけが白い光を放ち
、俺に強い想いを抱かせた。

「マルチ。」

「・・・はい。」

「キス、してくれないか。」

 マルチの両手が俺の胸をつかみ、身体を重ねるようにして甘い唇を近づける。唇を
重ねながらも、マルチの真っ直ぐな視線と大粒の涙に、俺は動けなかった。漂う俺の
視線の先で、解けたポニーテールが跳ねている。マルチが揺れるたびにそれは振り子
のように泳ぎ揺れる。俺達は一点で強く支えられ、結ばれながら時を刻んだ。俺はま
どろむ意識の中で、重なった唇と胸から、聞こえるはずのない、マルチの心臓の鼓動
を聞いた。
                          (終)
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こんにちは、カレルレンです。
マルチと浩之を美しく描こう、というコンセプトのもと、がんばって描き上げました
が、いかがでしょうか?(前回の反動が来てます。)
コンセプトが似ているということもあり、「藤田浩之 27歳 秋」と同じような展
開、ラストシーンになってしまいました。力不足ですね、精進します。
またまたいい加減な、切り捨て的終わり方。今回のラストはどうでしょう?鈴木静さ
ん。

「マルチ、ごめんよ。俺、お前の匂いが好きなんだ。だから、アニキスの指輪、無理
して買ったよ。俺は多くのものは望まないよ。でも、一度掴んだものはそう簡単には
手放したりしないよ。絶対、放すもんか。」(カレルレンの謝罪より抜粋)

追伸:「藤田浩之 31歳 冬」(仮)は僕の遅筆のため、順延いたします。