「競作シリーズその弐 NTTT VS その他大勢」「お題:会話文のみ」 犬丸編 投稿者:犬丸 投稿日:5月20日(土)20時10分
タイトル『愛兄妹:理奈あそび』



「ふう〜、いい湯だった」
「ちょっと……兄さん」
「なんだい、理奈?」
「全裸のまま、バスルームから出てくるのは止めてって、何回も言ってるでしょ!?」
「そうだったか?」
「そ・う・よっ!! いーから何か身につけなさいよ!!」
「いいじゃないか、風呂上りはこれが一番落ち着くんだから。人間あるがままの姿でいる
のが、一番リラックスできるんだぜ。現にヨーロッパのヌーディストビーチでは、各界を
リードするカリスマがだね……」
「ここは日本よっ!」
「しかしだね、理奈。アダムとイブも『知恵の実』を食べたから、『羞恥』という束縛を
得、衣服を着る事になった事を考えると……」
「御託はいいから、さっさと着替えてくるっ!」
「やれやれ、理解の無い妹を持つと苦労するねえ」

「……まったく、兄さんったら何回言っても聞かないんだから、あの馬鹿兄貴…………あっ、
着替えてきた?」

「ああ」
「……兄さん?」
「なんだい?」
「パンツ履いただけじゃない! 大体、その豹柄に金モールが入っている上、こか……きっ、
際どい位置にキングコブラの刺繍が入ってるのはどういう訳っ!?」
「ははは、ハリウッドの友人からのプレゼントなんだ。面白いだろう」
「ビキニタイプなのがなんかいやぁぁ!」
「この、あえてハズしたユーモアを理解できないとは、理奈もまだまだだね」
「そんなユーモア理解できるくらいなら、一生ユーモアなんて分からなくてもいいわ!」
「残念」
「もうっ、残念がるのはいいから、とにかくまともな格好に着替えてきてよ」
「まったく、時々俺は、理奈の着せ替え人形なんかじゃないかと、自問自答したくなるよ。
まあ可愛い理奈の為だ。兄さんは素直に着替えてくるよ」

「着せ替え人形の方が、兄さんより素直だけどね……まあ人形には自意識がないからそう
なんだけど……でも、兄さんも変だけど、兄さんの友達ってのも、有名人が多い割に変な
人が多いのよね……やっぱり何処の世界でも、トップの人間ってどっか変なのかしら?」

「お待たせ」
「……」
「どうした、理奈。愕然とした顔をして。間抜けだぞ」
「……何、その趣味の悪いワインレッドのバスローブは?」
「ああ、フランスに行った時、知り合いのデザイナーの仕立ててもらったんだ。総シルク
のオートクチュールだぜ。いいだろ」
「モノがいいのは分かるけど、その色合いとかがバブリーっぽくて厭っ! それに兄さん
が右手に持ってる、ワイングラスの中身って……」
「んっ? ……ああ、勿論コニャックだが」
「銘柄は?」
「リシャール・ヘネシー」
「……」
「……」
「……オヤジくさ……」
「理奈」
「何よ?」
「君の瞳に乾杯」
「わたせせいぞうの、漫画の登場人物みたいな事は言わないでぇぇぇ!」
「ははは、一緒にトレンディ遊戯を楽しもうじゃないか。カラートーンを使いまくりでな」
「そのベタな、バブルの頃のトレンディの認識をどうにかしなさいよ!」
「このトレンディ遊戯は楽しいのにな」
「楽しくないわよ!」
「こういった、何事も楽しむ姿勢が人生に潤いを与え、創作活動の為のエネルギーになる
んだ。お前もそうやって何かをやる前から否定するばかりでなく、それすらも楽しむよう
にならなくてはね」
「なんだが、至極まっとうな事を言ってるみたいだけど、言い訳にしか聞こえないのよね」
「そりゃ偏見ってものだよ。お前も一度やってみな。病み付きになるぜ」
「遠慮します」
「理奈ちゃ〜ん」
「すがるような目つきをしても駄目!」
「り・な・ちゃん」
「可愛く言っても駄目!」
「全く、寝ている時の理奈は可愛いのにな。起きている時はどうしてかなあ」
「何で私の寝顔を知ってるの!?」
「時々、理奈が寝ているとき寝顔を見に行くんだ。可愛いなあって」
「勝手に部屋に入らないでって、あれほど言ってるでしょ!」
「俺の疲れた心には、理奈ちゃんの安らかな寝顔が、一番の薬になるんだがなあ」
「何処の世界に、妹の部屋に深夜忍び込む兄がいるのよ」
「いっぱい居そうだけど」
「……確かに居そう……じゃなくて、もう金輪際そんな事はしない事! いいっ!」
「昨日の寝言は可愛かったな」
「……なっ、そこまで聞いてるのっ?」
「『冬弥く〜ん、うふふ』って、甘えたように言ってさ。兄さんちょっと嫉妬しちゃった
よ」
「やだ……兄さん……そんな事まで……」
「ははは、どうした理奈。顔が真っ赤だぞ」
「にっ……兄さんの馬鹿ぁぁぁぁ!! もうこんな家、出てってやるから!」
「いや、もうお前の身体は俺無しでは生きていけないから、無理だぜ」
「変な表現使わないでよっ!」
「まあそれはいいとして、理奈ちゃんの寝言シリーズ、第二弾をいこうか、あれは一昨日
だったかな『とっ……冬弥くん……駄目っ! 私たちには、まだ早いわ……』とせつない
声を……」
「いやぁぁぁ! 止めてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「それじゃあ第三弾。先週の日曜のな『あっ……冬弥先輩……私も先輩の事……』とシチュ
エーションが学生っぽい寝言がまた秀逸でな。いやあ、兄さん傍で聞いていてドキドキし
ちゃったよ、ははは。理奈はどんな夢を見ていたのかな?」
「やぁぁ! 誰かこの兄貴をどうにかしてぇぇぇぇ!!」




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