みみ(「競作シリーズその弐 NTTT VS その他大勢」「お題:会話文のみ」 投稿者:丹石 緑葉 投稿日:5月19日(金)18時01分
「やぁ浩之君、まだ起きていたのかい?
 どうだい、マルチの耳カバーに搭載した電話システムは?」
「お、おっさん、久しぶり。ちょっとマルチに付き合っててな・・・
 っつーか、これに電話するんだったらもうちょっと時間を選んでくれ。
 ・・・萎えちまったよ・・・」
「おっとそりゃ失礼。うちの娘は毎晩愛されているんだねぇ。
 ところで明日、君の所に訪ねていってもいいかい?」
「え、マルチになんか用なのか?
 なんなら研究所に連れて行くぞ、ちょうど俺も休みだし」
「いや、君の家でなければならないんだ。
 そういうわけで、明日の昼過ぎに、お邪魔させてもらうよ」


「こんにちはー、マルチはいるかい?」
「いらっしゃい、お義父さん。
 来栖川電工研究所の長瀬所長が直々の用事とは・・・
 何か重大な用事なのか?」
「娘の顔を見るのに何か理由が必要かい?
 ・・・マルチ〜、婿殿が儂を邪険にするんじゃ〜」
「おいおい」
「いやもちろん、娘の顔を見に来たってだけじゃないけどね。
 マルチの電話システムにオプションを取り付けようと思ってね。
 こうして持ってきたんだが・・・マルチはいないのかい?」
「ああ、すまねぇな、ちょうど買い物に行っているんだ。
 もうすぐ帰ってくると思うけど・・・待つかい?
 茶ぁぐらいなら俺でも入れれるぞ」
「そうだね・・・ 先に、これの取り付けを済ましてしまおう。
 台所に案内してもらえるかい?」

「・・・おい。
 なんだ、あれは」
「見ての通り、耳だよ」
「いや耳は分かる。
 問題は、何でコンロの向こう側に、んなもん付けてんだよ?!」
「・・・壁に耳あり?」
「こらっ!」
「まぁまぁ、これは科学的洞察による非常に重要なものなんだよ。
 論より証拠。
 例えば今ここにやかんが沸いているよね?
 これを取ろうとすると、やたら熱いわけだ。
 そんなとっさの時に! 耳をつまむ!」
「だからってなぜに壁にある耳をつまむんだよ?」
「熱いものを触ると、耳に手を持っていくものだろ?
 残念ながら、マルチには耳カバーがついているからね。
 代わりにこっちをつまむと言うことだ。
 より人間らしい仕草になっただろ?」
「気色悪いわっ! はずせ!」