珍しく、芹香先輩に昼飯に誘われた。 二人連れだって中庭に向かい、日なたのベンチで弁当を食う。 今日は、俺の分の弁当も作って貰ったんだそうだ。 あかりの弁当に劣らずうまい(当然か)。 そのときに、甘いものはお好きですか、と訊ねられた。 「ん? 嫌いじゃないよ」 「・・・・・・・・・」 「そうだな、特に好き嫌いは無いな。 普段余り食べないけど・・・どちらかというと、和菓子の方が好きかな」 「・・・・・・」 「? 普段の食事も、たいがい和食風だしな」 「・・・」 数日後。 綾香に校門のところで待ち伏せされた。 「浩之! あんた姉さんに、何言ったの?」 「はぁ? 何のことだ?」 「姉さんが妙な料理を始めたのよ。 鍋で鯖やスイカがぐつぐついってるし」 「え?」 「こないだなんか、昆布や豆腐と一緒に糸ひいてたわよ!?」 「ちょっと待て、一体何が起こっているんだ?」 バレンタインデー当日。 一通りチョコレートを貰った。 あかりからは、チョコレートケーキ。 志保からは、板チョコ。 委員長から貰ったチョコには、大きく「義理チョコ」と書いてあった。 レミーのは、ハート型だった。 雛山さんのチョコは、貰うのが気の毒だった。 葵ちゃんのは、かわいいラップに包んであった(指の絆創膏が目を引いた)。 琴音ちゃんのはイルカの形をしていた(かわいくて食うのがためらわれた)。 マルチのチョコは、先輩経由で貰った。 何故か、綾香やセリオからのと一緒に。 芹香先輩は弁当箱をくれた。 おそるおそる開けてみると・・・ チョコそぼろかけご飯。 チョコ巻き卵。 鶏のチョコ揚げ。 チョコソースハンバーグ。 タコさんチョコ。 鰹だしチョコレート汁。 ・・・その他。 デザートはイチゴチョコ。 一緒に貰った水筒には、ホットチョコレートが入っていた。 「・・・甘」 意外とうまかった。