晴れ着のこと  投稿者:丹石 緑葉


「明けましておめでとうございますぅ」
「うーん、おはよう」

その日俺が目を覚まして最初に見たものは、白い物体だった。

「・・・マルチ、何だそれは?」
「はい、お正月ということで、お父さんに貰った晴れ着ですぅ」
「・・・かがみもち?」
「ザッツ・ライト!ですぅ」

鏡餅に、マルチの手足と頭が生えてる感じ?
ちゃんと頭にミカンのってるし・・・
やたらうれしそうに手を振り回している。

「セリオさんも、晴れ着を貰ったそうです」


午後。
セリオが年始参りに来た。
「−−明けましておめでとうございます、浩之さん」
「? セリオ、その格好は?」
「−−辰年、ということで・・・」

チャイナな赤いドレスを着ている。
ご丁寧に尻尾までついている。

「・・・どらこけんたうるす?」
「−−はい」
「そのリボンは?」
「わたし風味、ということで」

セリオの二つのアンテナには、リボンがついていた。

「それはちょっと、イケてないなぁ」
「−−では、こちらなぞ・・・」
赤いものを取り出して、頭に装着する。
「うっ そ、それは」
さっきのリボンの替わりに、頭に大きなリボンが!
その瞬間、リボンしか目に入らなくなってしまって。
「あ、あ、あ・・・」
吸い寄せられてしまう、俺。


その日俺は、心ゆくまで鏡餅とリボンを堪能した。