…月島さんの狂気の世界を消し去った僕は関係者の記憶を削除した。 …したはずだった。…なのに彼女は…瑠璃子さんは…。 「くすくす、……覚えているよ。」 「る、瑠璃子さん……。」 「忘れないよ………だって…田中ちゃんだもの。」 「えっっ!?」 「うん、田中ちゃんは優しいからね。」 「る、瑠璃子さん…ぼ、僕は田中じゃなくて…」 「………」 「僕は…僕の名前は『なが―…」 「いけない、いけない……間違えちゃったよ。」 「瑠璃子さん…(安堵)。」 「忘れないよ………だって…鈴木ちゃんだもの。」 「すずき!?」 「…鈴木ちゃんはわたしを助けてくれたもんね。」 「…瑠璃子さん…僕は…その…『なが―…」 「鈴木ちゃん、これからはずっと一緒だよ…。」 「いや、だからね…僕は『長瀬』だって…」 「………え…?」 「……だ、だから『長瀬』というのが僕の名前であって…。」 「………」 「…お、思い出してくれた?」 「………」 「る、瑠璃子さん?」 「…いけない、いけない…騙されちゃうところだったよ…。」 「えっ!?」 「…ごめんね…人違いだったよ…。」 「いや、あの…その違うけど違ってない…ていうか…。」 「じゃ、さよなら。(とてとて)」 「あっ!?ちょっ…瑠璃子さん!?瑠璃子さぁ〜〜ん!!」 〜『雫』…完〜