―先輩は心が清らかすぎて嘘がつけない。 それはそれでいいことだが、もし先輩が社会に出ていったら嘘の一つも必要になるだろう。 嘘は良くない、しかし『嘘も方便』… 「先輩は嘘がつけない!つーコトで嘘をつく練習をしてみよう!」 「………(ふるふる)」 「…え?…嘘はつきたくない、って?」 「………(こくん)」 「…そっか…先輩、嘘ついてくれないんだ……」 「………」 「…オレの頼み聞いてくれないんだ……さっびっしいなぁ〜…」 「………」 「…え?…なんとかやってみる、って!?」 「………(こくん)」 「よ〜し、先輩、どんな嘘でも構わないからビシッと決めてくれ!」 「………(こくっ!)」 「うむ、気合タップリだな、先輩。」 「………」 「………」 「………(ごそごそ)」 先輩は懐からお馴染みの三角帽子を取り出した。 そして、待つこと数十秒。 先輩が帽子を振りかざすと、帽子の中から鳩が数匹飛び出していった。 「………」 「………」 「………」 「…どうですか?…って…言われても…」 「………」 「…先輩…今のは『嘘』っつーか、『手品』なんじゃないか?」 「………」 「………な?」 「………(ぐすん…うるうる)」 「……ゴメンな、先輩…もうちょっと簡単なトコから始めよう…な?…だから泣かないで…いや、マジで…頼むから。」 「………(こくん+ぐすっ)」 「………だから、泣かないで、って……頼むよ…ホント…」