嘘と沈黙 (2) 投稿者:あかすり 投稿日:4月26日(水)01時27分
―先輩は心が清らかすぎて嘘がつけない。
 それはそれでいいことだが、もし先輩が社会に出ていったら嘘の一つも必要になるだろう。
 嘘は良くない、しかし『嘘も方便』…


「先輩は嘘がつけない!つーコトで嘘をつく練習をしてみよう!」

「………(ふるふる)」

「…え?…嘘はつきたくない、って?」

「………(こくん)」

「…そっか…先輩、嘘ついてくれないんだ……」

「………」

「…オレの頼み聞いてくれないんだ……さっびっしいなぁ〜…」

「………」

「…え?…なんとかやってみる、って!?」

「………(こくん)」

「よ〜し、先輩、どんな嘘でも構わないからビシッと決めてくれ!」

「………(こくっ!)」

「うむ、気合タップリだな、先輩。」

「………」

「………」

「………(ごそごそ)」


先輩は懐からお馴染みの三角帽子を取り出した。

そして、待つこと数十秒。

先輩が帽子を振りかざすと、帽子の中から鳩が数匹飛び出していった。

「………」

「………」

「………」

「…どうですか?…って…言われても…」

「………」

「…先輩…今のは『嘘』っつーか、『手品』なんじゃないか?」

「………」

「………な?」

「………(ぐすん…うるうる)」

「……ゴメンな、先輩…もうちょっと簡単なトコから始めよう…な?…だから泣かないで…いや、マジで…頼むから。」

「………(こくん+ぐすっ)」

「………だから、泣かないで、って……頼むよ…ホント…」