「ねぇ、楓ちゃん。君の特技って『猫と仲良くなること』…だったよね?」 「ええ、そうですけど……なにか?」 「いやさ……そのワリには猫と一緒にいるのを見ないなぁ…と思って。」 「仲良くはなりますけど、飼うわけじゃないですから…」 「ふぅん………」 「………」 「………」 「…?…あの…まだなにか?」 「いや…聞こうか、聞くまいか迷ってたんだけどさ…」 「………」 「その…顔とか腕とか……体中についてる引っ掻き傷はなんなんだろうね……って。」 「………」 「あ、あ〜………答えたくなきゃいいんだけどさ…」 「……蚊…です。」 「……『か』?」 「…はい。蚊に挿されて、痒くて痒くて…」 「………」 「………納得してくれました?」 「…あ、ああ…。」 「それじゃ、わたしはこれで…」 「…も、もう一つだけ…いいかな?」 「………どうぞ。」 「そ、その……アレ。……部屋の隅に積んであるアレは…一体…?」 そう言って俺が指差した先には三味線の山があった。 「三味線です。」 「………どこからあんなに…?」 「手作りです。」 「……ざ、材料は…?」 「……………」 「……ざ、材料………?」 「………」 「あ、あの…楓ちゃん?」 しばらくすると楓ちゃんはすっと人差指を口元に持ってくると、ただ静かに「し〜〜〜っ。」と言って立ち去ってしまった。 ………三味線弾いてる楓ちゃんって結構ラヴリー……そう思った。