…夢を見ている… …薄暗い空間で硬い檻に閉じ込めれている… 自分の周囲を観察する…池…池がある…… …池の他にも、よく見ると草がある……草? 俺の中のもう一人の俺が語り掛ける…オイオイ、アレは草じゃねぇ… …草じゃない?じゃあ、なんなんだ?… …オマエ…ありゃあ、笹だ… 笹?…何故、笹が!? …考える間も無くもう一人の俺、檻以外に抑制の無い獣性が笹を貪る… 腹が空いている…久しく他の動物を狩りたい欲求が目覚めかけている… …否!この野生本能を外の世界に出してはいけない!こいつはエサが来れば収まる、消えて行くんだ! エサはまだか!エサ!エサ!餌!餌!エサエサエサエサエサエサエサエサエサ!! エサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサエサ!!! 俺は狩猟者を自分の檻へ閉じ込めながらエサを待った。 薄暗い曇り空のことだった。 …………〜〜〜………… 「…って夢を見たんですよ、千鶴さん。」 「…耕一さん、それは…」 「千鶴さん?」 「…耕一さん、それはあなたの前世が上野動物園のパンダだったという前世の夢ですよ。」 「なぁ〜んだ!俺はパンダだったんだ!あっはっはっは!」 「(あら、ウケたわ!)可笑しいですね、うふふふふふふふふ!」 めでたし、めでたし 『傷跡』―完―