「…なぁ、マルチ。お前ってサ…もしかして、変形とか…できる?」 オレは昼休み、前々から気になっていたコトをマルチに尋ねた。 「へ、変形ですかぁ…?」 「やっぱ…できないか…。」 わかっていたコトだが、オレは落胆の色を隠せなかった。 何故なら、『変形』はある意味、漢のロマンだったからだ。 「すいません、浩之さん…今日、帰ったら主任さんに相談してみます。」 「…そうか。いや、すまなかったな、マルチ。あんま、気にすんなよ。…じゃな。」 …翌日、 「あっ、浩之さん、おはようございます。」 「………」 登校して来たオレを待っていたのは、巨大なゴリラの着ぐるみに身を包んだマルチだった。 「…ソレ、なんだ…?」 「昨日、主任さんに相談したら変形できるように改造してくれて…」 「ソノ…なんでゴリラ?」 「よくわかりませんけど、今風で、司令官だから偉いんだぞ、だそうです。」 「そ、そうか…?」 「まだ、試したコトないんですけど…変形します?」 「…………いや、いい。」 「そうですか…。」 「スマン…マルチ。」 オレはそう言うと、マルチに背を向け歩き出した。 スマン…マルチ、本当のコトいうと変形してもらいたかったんだ! ジェットモードとか、タンクモードになって欲しかったんだ!! そんでもって顔とか手足がどんな位置に行くか、どんなムチャクチャな変形過程辿るか確かめたかったんだ!! けど… けど… いくらなんでも、ゴリラはないだろ!ゴリラは!! せめて、チーターかネズミにしとけよ!!