『Departure』 投稿者:あんB
 春の温もりをいっぱい感じるAprilと、夏の輝きの予感を感じる、June。

 ――5月は、季節の変わり目。

 安らかなそよ風にさわさわと揺れる、生き生きと活気づく緑の若葉たち。
 眩しいスカイブルーの空に白く輝く、水彩絵の具で描いたみたいな薄いすじ雲。

 GWも、今日が最終日。
 今年のゴールデンウィークは、いろんな出来事と共に、何だかあっという間に過ぎ
去っていっちゃって。

 ……そして、明日からは、修学旅行です。



              『Departure』



 今日は朝から、旅行の準備。
 押入の奥からバッグを取り出して、必要な道具の場所を聞いて、「あかり、これも
持ってくでしょ?」って、いろいろお母さんに出してもらったり。
 お父さんからカメラを貸してもらって、フィルムの入れ方、教えてもらって。


 そうやって、旅に必要そうなものを、とりあえず1つ1つ並べていったら。

 「…………」

 ――ベッドの上、旅の荷物でいっぱいになって、もうぐちゃぐちゃ(汗)

                  ***

 …で。

 とりあえず、「ちゃんと全部揃ってるか、何か忘れている物はないか」って、紙に
書いて1つ1つ、チェックして。

 赤い表紙の修学旅行のしおりに、チェック済みのガイドブック、いつもの筆記用具。
 それにカメラにフィルム、旅行用の目覚まし時計に、折りたたみの傘。

 それに替え着が、部屋着に寝間着に下着に、この季節の北海道ってどんな気候か想像
つかないから、セーターやカーディガンとかも。
 もちろん、洗面用具にお風呂セット、身だしなみ用品や遊び道具にお菓子もいろいろ。
 それにドライヤー、ソーイングセットに、旅行用の折り畳めるアイロン。

 念のために風邪薬や胃腸薬、バンドエイドに酔い止めの薬、保険証のコピー、あと、
「女の子」用品とか(まだ大丈夫だとは思うけど、一応ね)


 …そうやって、荷物を全部揃えてみたら、これじゃあ鞄に入りそうになくて。

 「ねー、お母さーん(汗)」

 ――結局、お家にある一番大きい鞄、『これ以上は海外旅行用のトランクしかない』
ってのを出してもらうことに。

 「…あかり、そんなに何持っていくつもり?」
 「……あ、えーと」
 「あっ、北海道のお土産たくさん買ってきてくれるの?カニとかホタテとか(^^)」
 「…………(^^;;)」

 …たった4泊5日の修学旅行にはあまりにも不釣り合いな、大きな大きなトラベル
バッグ。
 ……うん、旅の荷物は軽いほうがいいってのは、わかってるけど。


 でも。
 ――わかってても、「あれもこれも」とやっぱり膨れ上がる、女の子の旅の荷物。

 …結局、その大きなバッグも、着替えや洗面道具とかでぱんぱん。
 小さなミニリュックを肩に背負って、大切なものはそっちに入れておくことに。


 …きっと、わたしが海外旅行にでも行ったら。
 帰るときは荷物やお土産でトランクぱんぱんにして、ホテルの部屋で、よいしょ!
って乗っかって体重かけて、無理矢理トランク閉めたりするんだろうな。

 ――うーん。

                  ***

 結局のところ。
 …たとえ1泊だけでも、重く大きくかさばる、女の子の鞄。

 ――その大部分を占めるのが、いわゆる『お泊まりセット』の類。

 男の子なら、洗面用具の類は歯ブラシ歯磨き石鹸に、櫛、タオルに手拭い、あと…
まあムースやシェーバーぐらいで収まるんだろうけど。
 旅館にはシャンプーとかちゃんと置いてあるだろうし、もし何か足りなくても、
現地で買っちゃえばいいし。

 でも、女の子の場合。
 …もちろん歯ブラシ歯磨き石鹸に、シャンプー・リンスはいつも使ってるものを鞄に
入れて旅先にも持って行くし、女の子の必需品、洗顔フォームやローションに、髪の毛
用にスタイリングミストにジェルにウォーターフォーム、ブラシもブラッシング用と
スタイリング用とで別々だし、他にも髪留めゴムとかリボンとかいろいろあるし。
 …あと、ヘアバンドにデオドラントにリップ、タオルだって、大きなバスタオルに、
スポーツタオル、フェイスタオル、手拭い…と、何本も持って行くし。

 ……洗面用具とお風呂セット(そして、化粧品の類)だけで、女の子は鞄1個ぶん、
余計に必要になっちゃうんだもん、うん。


 その上、『お泊まりセット』まで、あるんだから。
 …女の子達は、男の子みたいに部屋着のトレーナーのまま、ぐーぐー寝たりしないの。
 みんな可愛いパジャマやネグリジェとか着て、お部屋でナイショの『オシャレ大会』
とか、女の子達でしちゃうんだよ。

 わたしも、ピンクの可愛いパジャマに、上から着るカットソーやスウィングトップ、
それに下着だって、こういう時はレースやリボン付きのちょっと素敵なのとか、ブラと
ショーツとスリップがお揃いの、Cuteな”3点セット”とかで、キメてみたいし。

 ――ね?

                  ***

 …実はわたしね、つい一昨日も、浩之ちゃん家に『お泊まり』、してきちゃって。
 (…お父さんお母さんにはナイショで、だけど)

 昨日の今頃は、2人して昼過ぎまで寝てて、起きたあとも浩之ちゃんの腕の中で、
胸に頭を預けて、ごろごろ…って、ねこみたいに甘えてたの。

 季節の変わり目の、午後の素敵な昼下がり。
 薄いカーテン越しの、ぽかぽか優しい日差しがさんさんと降り注ぐ窓辺。
 恋する2人はそっと優しく寄り添って、静かに時の流れるままに過ごして…。

 ――お休みの日は、こういうふうに幸せに過ごしてみたいよね、浩之ちゃん?


 そして。

 その日は、手帳にチェック入れてカレンダーに○つけた、わたしの『記念日』に。
 ……ううん、”わたしと浩之ちゃんの”、2人の、新しい『記念日』だよ。


 ――季節の、変わり目。
 一つの季節が過ぎ去り、また、別の新しい季節がやって来る。

 この地方にも、この街にも、そして、わたし達2人にも…。
 …新しい、輝く季節がやって来る――

                  ***

 夕方までかかって、何とか荷造りは完成。
 何か忘れてるものは……うん、ないよね。

 今晩は、普段よりもちょっと長くお風呂に入って、しっかりカラダ磨いて、細かく
『身だしなみチェック!』して、明日は朝早いからいつもより早めに寝ちゃおっと。


 …そして。

 ――窓の外に広がる、とっても綺麗な夕焼け空のグラデーション。
 この部屋を、茜色に染めている……明るく燃える西の空の、柔らかな、優しい光。


 「――あ!!」

 ――その遙か遠くに、オレンジの空を横切るようにゆっくり延びていく、ひとすじの
飛行機雲。
 それは途切れることなく、長く長く尾を引いて、夕焼けの空に昇っていく…。

 ちょっと、感動。
 ……明日の今頃は、あの飛行機に乗って……北海道、に――。



 まだ見ぬ場所への期待と、胸弾む感動の予感を、鞄いっぱいに詰め込んで。

 ――わたし達、明日から修学旅行に行って来ます。


                 <おしまい>
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【PostScript】
 タイトル:『Departure』
 コメント:北へ行こうランララン(笑)
 ジャンル:らぶらぶ/東鳩/あかり

 こん○○は。修学旅行SSにつられて出てきた(^^;)あんB(北海道民)です。
 …σ(^^;)は「かでる2・7」とか「アスティ45」とか「Kitara」とか
「つどーむ」とかのネーミング、いいと思うんですが(笑)

 ラストの夕焼け&飛行機雲は、ナムコ「エースコンバット3」のEDから。
 真っ赤な夕焼けの中を、一筋の飛行機雲が延々と空に――字にするとたったそれだけ
の事ですが、シンプルなのにとっても綺麗で、妙に印象に残りました。

【おまけ】

 …君たちに北海道最新くま情報(笑)を紹介しよう!

 港町小樽の観光名所、といえば「運河」「ガラス」「オルゴール」、その小樽
オルゴール堂二号館の隣に『小樽からくり動物園』という店があります。

 そこの店頭で、可愛いぬいぐるみの『くまの音楽隊』が楽しく演奏してるんです。
 ……というわけで、ここにあかりちゃん連れていくってのはどうでしょうか?(^^)


#良くない例(謎)

「私ね、本場のクマが見たい!」
「…はいはい、クマね」
 オレは、あかりからガイドを受け取り、パラパラとめくる。

「おっ、登別クマ牧場ってのがあるぞ。どこだ? げっ、バスの通り道じゃねえか。
なんで寄らねえんだ、ったく。他には…と」
「…浩之ちゃん、やっぱりいいよ。クマだったら近所の動物園でも…」
「ばーか、北海道で見るクマに価値があんだろーが。

 …お、苫前ってところに何かあるぞ」
「…えっ? ほんと?」
「…えーと、なになに……三毛別熊事件復元現場?
 大正4年12月、部落に羆が出没、2件の民家を襲い7人が犠牲に、小説にもなった
その大惨事の現場をリアルに再現した……」

「……ひろゆきちゃん」
「…………(^^;)」

「……なああかり、ここだったらクマの1頭ぐらい、薮からがおーって出てくるんじゃ
ねーか?」
「…ううん、いい」


 …アホかあんたは(爆)

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 久々野 彰さん、アルルさん、『H大好きっ』に感想ありがとうございました。
 …「H」って「”H”iroyuki」のことだったのかー、ってオチでしたが、
やっぱり、その、えーと、18禁でしたね(汗)
 ちょっと反省。

あと、>久々野さん

>> 何方か、女性の服装&下着の名前が判りやすく文章で書けるような資料になりそう
>>な本、知りませんか。流行物とかじゃなく、純粋に名前とモノがわかるもの。

 私がいつも使ってるのは、ニッセンやセシールの「通販カタログ」です。
 服装&小物&化粧品等、基本的な名称やサイズがしっかり判るし、何せ無料(笑)

 あと、女性誌(ゴシップ誌でなく、ファッション雑誌)もなかなか勉強になります。
 …『「AがCに?!」と、広告で豊乳器具買っちゃおうかなーと悩む千鶴さん』(爆)
なんてネタ浮かびましたが、どーせあとがきでザクッと殺られちゃいそうなので(笑)
やめときました(^^;)

では。

http://member.nifty.ne.jp/AMB/