鬼戦隊 エルクゥレンジャー 投稿者: アクシズ


これは、かつてくまさんの言われたリクエストによって書かれたSSです。
え? ……なんだか、かなり違ったものになった気がする?
……それは貴方の気のせいです……
……気のせいなんだってば……(^_^;)


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りりり……りりり……

月明かりと静寂だけが支配する闇の中、控えめに、ただ控えめに虫の音が静かに俺の耳に
届く。
今、俺は千鶴さんの後に続いてその闇の中をどこかへと歩いていた。

千鶴さんは言った。
「叔父様の真実を、耕一さんに伝えます」と。
千鶴さんの叔父……つまり、俺の親父。
俺にとって、もっとも遠い存在の一人。
今更、あんな親父について何を教えようと言うんだろう……俺は心の中でそう反発する。
だがその一方で、千鶴さんが何を俺に伝えようとしているのかとても気になっているもう
一人の俺がいることを否定は出来なかった。
だから、今俺はこうやって歩いている。
千鶴さんの後について、夜の土手道を、どこまでも、どこまでも。

「……耕一さん、この場所を覚えていますか?」

「……ここは……」
千鶴さんが連れてきた場所はとある堤防のほとりだった。
……思い出した。
ここは俺が子供の時、梓と、楓ちゃんと、初音ちゃんを連れ一緒に釣りにきたところだ。


「……ここは、叔父様と私たちの修行の地……」


…………………………………………………………………………………………………………

「……はい?」
俺は思わず間抜けな声を出していた。
「……今、修行と言いましたか? 千鶴さん……」
千鶴さんは黙ったままコクリと頷く。
「……柏木の家には古来より受け継がれる一子相伝の暗殺拳があるのです。その名も……」
「…………その名も?」
「………………」
「…………………………」
「……………………………………」
「………………………………………………」
「……………………………………………………北○神拳とでも、言うと思ったでしょう?」

…………………………ちっ…………………………

「その名は、流派エクストリーム不敗! かつて伝説の変態お下げじじいが完成させたと
いう、伝説の最強拳!!! そしてそれは私たちの血を通じて、現代まで脈々と受け継が
れてきたのです!!!」

…………………………………………(¨;)
……いつの間にか、千鶴さんは拳をぐっと握りしめ、熱く熱く熱く語っていた……

「けれどその後、私たちと叔父様は、その最強の拳をより完璧なものとするため、五味一
体の戦隊戦法をとることにしたのです……」

「……戦隊???」
と、その時だった!!

♪ ちゃらっちゃらっ ちゃちゃ〜ちゃちゃ〜〜!!! ♪

突然、まるでヒーロー登場のようなBGMが辺りに流れたかと思うと!

「……! ああッ! がけの上に!!!」
「あっはっはっはっは!!」
「うふふふふふふふふふ!!」
「……………………くすっ」

……いつの間にか、がけの上に、梓と初音ちゃんと楓ちゃんが、わけの分からないポーズを取りながら“したっ!”と立っていた!

「耕一! あんたも私たちの仲間になるんだよッ!」
「耕一お兄ちゃん! 戦隊ものの基本メンバーは五人いなければならないんだよッ!」
「……耕一さん、レッドの役がいないんです…… ずっと、待ってました……」

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唖然としたまま、ただ固まっている俺に千鶴さんがさらに追い打ちをかけた。

「耕一さん、叔父様が死んで以来私たちはずっと“レッド”を待ち望んでいたんです……」
「……親父が死んで以来?」
「はい」
「……親父も、こんな事をやっていたの??」
「はい! 叔父様が私たちを率先して、“鬼戦隊”を結成したのです!」

「………………帰ります…………」

「あああ! 待ってください耕一さんんんん!!!」
えぐえぐ泣きながら千鶴さんが俺の腕にしがみつく。
「お、俺はこんな事に付き合うほどマニアでもオタクでもないんです!!!(T.T)」
「そんなことはありませんッ!!!」
千鶴さんは俺の腕にしがみついたままずるずると引きずられていく。
「耕一さんも心の奥で認めている筈ですッ!! あの曲を聴いて、あの妹たちのポーズを
見て、なぜだか熱く燃えているもう一人の自分の存在をッ!!」

(……もう一人の、自分???……)

どくっ!
突然、俺の心臓が激しく高鳴った。

「耕一さんも私たちと同じ血を引く者! さあ自分に素直になってください! 私たちと
共に同じ道を歩んでくださいッ!!」
「……や、やめろッ! やめてくれ千鶴さん!!」
千鶴さんのその言葉に、俺は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。
「梓! 楓! 初音! さあ、耕一さんの心の鬼を今こそ解放するのよ!!」
「「「はいっ!」」」

♪ ……っちゃあああ〜〜!! どんっ!! (でけでけでけでけ……)
ちゃかちゃかちゃ〜ちゃかちゃかちゃ〜ちゃかちゃかちゃ〜ちゃかちゃかちゃ〜ちゃか
ちゃかちゃ!! ♪

「うっ! こ、これは仮面○イダーのオープニング!?」

「迫る〜ショッ○ー♪ 地獄の軍団〜♪」(梓)
「我らをねらう〜黒い影〜♪ 世界の平和を守るため〜♪」(楓)
「ゴー! ゴー! レッツゴー♪ 輝くマシン〜♪」(初音)

「!! や、止めろ○ョッカー! ぶっ飛ばすぞおおおおおッ!!!」

「ライ○ー……♪」(梓)
『…………ジャンプッ!!』(耕一)
「ラ○ダー……♪」(楓)
『……キックッ!!!』(耕一)
「仮面○イダー、仮○ライダー♪」(初音)
『りゃいどぅわああ♪ るわあぁいでぃやあああああぁ!!! ……♪』(耕一)


……いつの間にか俺は、柏木四姉妹と共にポーズを取って崖の上に立っていた……

「「「「ひゅ〜〜♪ ぱちぱちぱちぱち……♪」」」」
「……ああ、叔父様見てください…… 耕一さんは見事に貴方の代わりをつとめてくれま
した……」
天を仰いだまま千鶴さんはまたえぐえぐと涙を流す。
「さあみんな! 新生鬼戦隊の新しい出発よ! 鬼レッドを迎えて、早速名乗りを上げる
わよ!!」
「「「「おう!!」」」」
今や俺達の気持ちは一心同体だった。
五つの力を一つに合わせて、叫べ勝利の雄叫びを!!!
魂の震えるまま、俺は天に向かって叫ぶ!

「鬼! レッド!!」
どかあああああああああああああああん!!!

……と、突然俺の背後でなぜだか爆発が起こる。しかも爆風は赤く染まっている!
(……か、かっこいい……!!)
今や俺は自分の中の鬼を全く隠そうともしていなかった(笑)
……そして俺に続き、千鶴さんが見得を切ろうとする!

「……鬼! ピンクッ!!!」
どかあああああああああああああああん!!!

(……むうう、これだ、これだよなあああ……)
感涙にむせぶ俺の向こうで……
「……おや??」
……なぜだか、梓と初音ちゃんと楓ちゃんが、顔を真っ赤にして千鶴さんに詰め寄ろうと
していた。
「……ち、千鶴姉……」
「ず! ずるいよ千鶴お姉ちゃん!!」
「……千鶴姉さんは、鬼ブルーの役じゃないですか……!」
「……いいじゃない! たまには私だって、ピンク役をやりたいわ!!」
ふくれっ面でぷいっと千鶴さんは顔を背けた。
「ず、ずるいぞそんなの!!」
「そうだよ! ヒロイン役は私だってやりたいもの!」
「……私だって、耕一さんのピンクになりたい……」
「ふんだ! とにかく私がもう言っちゃったんだから、私が取りあえずピンクよ! 
ピンクったらピンクなの!!」
両手をぶんぶん振って子供のようにだだをこねる千鶴さん。
「ずるいよ〜〜! ずるいずるいずるい!! ピンクは私〜〜!!」
「……ダメです。耕一さんのピンク役は、私なんです……!」
「あ、あたしだって耕一のピンク役に……」


「「「あんたは、キ!!!」」」


千鶴さんと初音ちゃんと楓ちゃんの声が見事なまでにハモる。

「……ひ、酷い……!」
ウルウルと涙を潤ませる梓。
「あっちでカレーでも食べていなさい!」
千鶴さんの一言が、さらに止めとなって梓に突き刺さる。

そのまま梓は、地面に“の”の字を書きながらえぐえぐと泣き続けた。

……激しい言い争いは、三時間にも及んだ……

あまりに白熱しすぎて、もう少しで超球覇王電影弾の撃ち合いになり、結局一週間ごとに
“ピンク”役を譲り合うと言うことでようやく事態は決着した。
(……そのローテーションの中に、とうとう梓の名前は組み込まれなかったが……)

「……そ、それでは気を取り直して!!」
コホンと一息ついて、再び見得を切る俺。

「……鬼! レエエッッッドッ!!!」(耕一)
どかああああああああああああああああぁぁぁん!!!

「……鬼! ピンクッ!!!」(千鶴)
どかああああああああああああああああぁぁぁん!!!

「……鬼! ブルーッ!!」(楓)
どかああああああああああああああああぁぁぁん!!!

「……鬼! ホワイトッ!!!」(初音)
どかああああああああああああああああぁぁぁん!!!

「……鬼……(えぐえぐ) ……イエロー……(えぐえぐ)」(梓)
どかああああああああああああああああぁぁぁん!!!


「……五人そろって!」

「ゴレ○ジャー!!」「ジェッ○マン!!」「ダイレン○ャー!!」「ギンガ○ン!!」
「デンジ○ン!!」












「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」


「……ちょっと待てよみんな……」
頭を抱えたまま俺はみんなに忠告する。
「戦隊ものと言ったら、まず基本としてゴレ○ジャーというのがセオリーでしょう!?」
「何を言っているんです! トレンディドラマ風のジェッ○マンこそ、私たちの目指す姿
です!!」
千鶴さんが激しく抗議する。
「……何故、あのダイレン○ャーの主題歌の熱さがわからないんですか??」
楓ちゃんが信じられないと言った表情で俺達を見回す。
「普通は、最新作を押さえるべきだよ! 当然ギンガ○ンでしょ!?」
初音ちゃんが珍しく自分の意見を押し通そうとする。
「あんた達、デンジマ○の主題歌にちゃんとコーラスつけて歌ってみろよ! 泣くよおお
おお!!!」
そして梓は一人デンジマンを歌い始めた。

それがきっかけとなって、夜の堤防にそれぞれの戦隊ものの主題歌が次々と響き渡り、
やがて議論は全く持って折り合いをつけようとしないままついに殴り合いとなった。

「所詮、流派エクストリーム不敗は拳と拳でしか分かり合えないのね……」

そして、鬼戦隊はここに解散することとなったのだった。
めでたしめでたし♪


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「……ようやく、くまさんのリクエストに応えることが出来ましたね……」
「……長かったナリな……」
「いろいろありましたもんねえ……」
「……いろいろあったナリな……」
「……で、どうしてこんなものになってしまったんです?」
「こんなものとはなんだナリいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!」
ばきいいいいいぃぃぃ!!!
「ぐはっ!!!」
「ふ! 知りたければ教えてやろうナリ…… プレステ版の、仮面ライダーに我が輩は今どっぷりとはまっているからナリだ!!!」(と、胸を張る)

どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど……

「……む? なんナリ? この爆音は……?」
「あ、あれは……」
「カ、カミーユ!?」

「アクシズ〜〜!! そんなことが言い訳になるものかああああああぁぁぁぁぁ!!! 
そんな大人、修正してやるううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

ぼぎぐしゃげろごきばごめきょぐちゃごろずでばんぶちゅぐしゃっ……

「……フォウ…… 本当にこれで良かったのか……フォウ……」

「ああ…… カミーユが……」
「カミーユが、ブースターにのって宇宙に返っていく……」
「必ずアーガマが見つけてくれると信じるんだ、カミーユ……」

(……………………………………)
そして、ゴミとなったアクシズが一人残るのだった……

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