青き星の、白き勇者 投稿者: アクシズ
序文 〜アクシズの日記より〜

“この作品を、西山さんをはじめとした全ての【ルナ・エターナルブルー】を愛する皆様に
 捧げたい……ハズだったのだが……
 何故……こんなことになってしまったのだ……(T^T)
 誰か、誰か誰か伝えてほしい……一滴の涙に地球光うつし……(T^T)”






「耕一の、馬鹿あああああああああああああああああああああ!!!!」
梓の絶叫とともに、耕一の顔が“めきょ”とへこんだ。
一秒間に数百発繰り出される高速の拳。
この地上で、彼女以外にこれを繰り出せるのは他にはペ○サス星矢ぐらいであろう。
縦回転を繰り返しながら、重力の法則を無視して真横に一直線に吹っ飛んでいく耕一の体。
漆喰の壁を自分の体ラインにそって何枚かぶち抜き続け、台所に達したところで彼の体は
ようやく止まった。
……この辺り、まるでトム&ジェリーでも見ているかのようだ。
「……耕一なんか、大ッ嫌いだああああ」
まるでマクラーレン“シルバーアロー”のような加速力と爆音で、梓は廊下を駆け抜けそのまま
自分の部屋へと飛び込んでいった。
未だ意識の戻らぬ、耕一の姿をそこに残して。

「……はあ……」
自分の机の上に突っ伏したまま、梓は深くため息をついた。
「……なんで、いつもいつもこんな風にケンカしちゃうんだろう……」
そう。
幼いときからいつも二人はこうだった。
他の姉妹たちと違い、梓と耕一はどちらかというと兄弟のような関係を続けていた。
そしてそれは今も変わってはいない。
だが、梓の気持ちは変わっていた。
梓はいつの間にか一人の女性として、一人の男性である耕一を意識していた。
……しかし……
「……耕一は、あたしのことどう思ってるんだろう……」
梓は、“女の子”としてみてもらえている初音がうらやましかった。
楓がうらやましかった。
千鶴は……千鶴は…… いやちょっと……だったかもしれないが。
「……あたしも、あたしももっと女の子らしくすれば……あいつは……」
そして梓は再びため息をつく。


がしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!

「わははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、
うわははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


……その時だった。
窓ガラスをぶち破り、突然一人の男が梓の部屋に飛び込んできたのは!!!

「仮面の白騎士、ただいま参上!!!」

梓はイスから転げ落ちたままの格好で目をまん丸にしたまま口をぱくぱくさせていた。
「……あ、……あ、……あ、……あ……!」
謎の男を指さす梓の手がプルプルと震えている。
「どうした少女よ! いったい何が言いたい!!」
「……あ、あ、あんたいったい何者だあああああ!!!」
ようやく言葉を取り戻した梓の問いかけに、謎の男はマントを翻しながらくるりと一回転する。

「……ふっ…… 私の名は、“愛”と“正義”の使者、仮面の白騎士いいいぃぃぃぃッッ!!!」

「………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………柳川???」

落ち着きを取り戻してきた梓が、ふとその謎の男の正体に気付いた。
そう、顔をパーティドレス用の羽根マスクで隠してはいるものの、明らかにいま梓の目の前に
いる変態男は、あの“暴れん坊エルクゥ”こと柳川に相違なかった!
(ちなみにこの世界観、リーフファイト後という設定で……)

「私は、柳川などという男ではないッッ!!」
激しく動揺しながらも必死で否定する柳川、いや、仮面の白騎士。
「いや、でも……」
「ええい、違うと言うとろうがッッ!!」
「……は、はあ……」
……あんまり否定するので、もはや梓もこれ以上突っ込みきる気にはなれなかった。
「私は、困った人がいたら決して見捨てることのできない、愛と正義の男、仮面の白騎士にすぎ
ないのだ!! 柳川!? あんな悪の男など、私は知らんッ!!」
…………………………………………………………………………………………………………
何があったか知らないが、どうやら柳川は突然正義に目覚めてしまったようだ。
正義と悪とは表裏一体。
もともと悪の力が強かった柳川が正義に目覚めたとき、ぶり返しがあまりに激しくて、正義を行う
ことに激しく燃えてしまう男になったのだろう。
……いままでの自分を恥じ、仮面で顔を隠して、正義の使者【仮面の白騎士】となって……!

「……少女よ!!」
「は、はいッ!?」
白騎士の発言があまりにキビキビしていて、思わず梓も姿勢を正してしまう。
「いったい何を悩んでいるというのだ! 一人で悩んでいても始まらん! この仮面の白騎士に
話してみるがいい! さあ、さあ! さあっ!! さあぁっ!!!」
「……え、ええと……」
「いや、言わずとも良い!」
バッと手を出し、梓を征する白騎士様。
「少女よ、おまえは“柏木耕一”に自分が女としてみてもらえないことに激しいジレンマを感じているのだろう!?
そうであろうッ!?」
「……!? な、何故それを……!?」
「ふっ…… この仮面の白騎士に、見通せぬものなどないッ!!」

……ずっと部屋を覗いていたのか? 白騎士様……

「案ずるな少女よ! この白騎士に任せておけば万事OK!! 誰にでも出来るカリキュラムで
いままでの自分よさようなら、明日から君も浜辺の視線を独り占めであるぞ!!!」
まるでどこかの通販みたいなセリフを熱く語る白騎士様。
「……本当かなあ……??」
「ふっ…… 我に秘策あり…… これなら柏木耕一ゲットだぜ間違いなしであるぞ!!」
……あまりに自信満々に語る白騎士様に、梓の好奇心もいつしか揺れ動き始めていた。
「ま、まあ、そこまで言うなら……とりあえず……その作戦とやらを聞いてあげてもいいけど……
…………で、いったいその秘策って何さ…………?」

「おっぱぁいっっっ!!!」

……梓の部屋にその一言が激しく響き渡った。
そしてその直後。永遠とも思われる重苦しい沈黙。
「………………………………………………………………………………………………………
………………………………………お…………おぱ…………おっぱ…………???」
顔を赤く染めたり青くさせたりしながら、ようやく梓が口を開く。
「そう、おっぱい!! バスト、乳房、ちち、胸。男達永遠の憧れ、母の象徴、リビドーの引き金、
“おっぱいがいっぱい、うれしいな、触りたい〜♪”の、おっぱいだあああああ!!」
(……皆さんもご存じの通り、仮面の白騎士こと柳川はおっぱい星人だった。それは“痕”で
柳川が毒牙にかけた女性達を見れば一目瞭然である)
「……あ、あんたな…… うら若き女の子を目の前にして……いったい何を言って……」
梓の拳が怒りでプルプルと震える。
「恥ずかしがっている場合かあああ!!」
ドゴッ!!!!
白騎士様にぶん殴られ、先ほどの耕一と同じように回転しながら吹っ飛んでいく梓の体。
さすがエルクゥ。梓とケンカしても一歩も引けを取らない。
壁をぶち破って庭へ飛んでいき、塀にぶつかってようやく止まる梓の体。
「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ!!!」
どこかのジオンの息子のようなことをほざきながら梓の元へと近づいていく白騎士様。
「よいか、その胸は他の柏木の娘達にはない、おまえだけの最大の武器だ! その胸を生かす
道こそ、おまえの勝利の方程式!!」
その言葉に梓はハッとなって顔を見上げた。
「そうだ! 他のライバル達にそれはないのだ!! ゆめゆめその事を忘れるな!!」
「……私が、私が間違っておりました、白騎士様!!」
ウルウルと瞳を潤ませながら梓は白騎士に跪いた。
……だまされてる、だまされてるぞ梓!!!
「ふっ…… わかればいいのだ…… それではオペレーションを開始する!!」
「はいッ!!!」

そして、ファイナルフュージョンは承認されたのだった……

「作戦その一ッ!! 【おっとどっきり!! プロレスごっこで背中に当たる胸の感触にいつしか
メロメロ大作戦】ッ!!!」
「……白騎士様……」
なんだか呆れたような視線で梓は白騎士を見つめていた。
「……プロレスごっこはしょっちゅうあたし達やってんですが…… それで帰って男っぽいって
認識されてるような……」
「それは、おっぱいが足りないからだ! もっと押しつけるのだ! それこそ柏木耕一が前屈み
になってプロレスを続行できなくなるくらいにだ!!」
……若い女性を前にして、何を熱く語っているのだ白騎士様。(笑)
「はあ…… もっと押しつける……か……」
ぶつぶつとその言葉を反復する梓。彼女も少しおかしくなり始めている。
「……では、作戦開始!!」

ばあああああああああああああああああああああん!!

「……耕一いいいぃぃぃぃいぃぃぃ!!!」
自分の部屋で一人寝っ転がって雑誌を読んでいる耕一。そこに突然強襲する梓。
「!! う、うわ、な、何だ!? 梓!?」
「耕一いいいぃぃぃい! ファイトしようよファイトおおぉぉ!!」
まるでバーサークしたアレンビーのように梓は耕一に組みかかる。
未だ倒れたままに耕一にのしかかり、そのままやや甘めにスリーパーホールドの体勢へ持って
いった。
ぐいぐいぐいぐい
そして耕一の背中に胸を何度も押しつける。白騎士様に言われた戦法そのままに。
「……梓あああぁ!! おまえ突然何しやがるんだああああ!!!」
だが突然ぐーたらを邪魔された耕一は、そんな梓の気持ちになんか全く気付かないまま怒りに
まかせて梓の体を思い切り投げ捨てた。
「!?」
驚愕しながらも空中で一回転して無事着地する梓。
そしてそのままー
「……耕一いいいいいぃぃぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃ!!!」
……もはや短絡化した梓は、自分の胸を耕一に押しつけると言うことしか頭になかった。
本来の目的を失念したまま、プロレスごっこに興じるため耕一に再び突進する。
と。

ゴガッ!!!
まるでそれを待っていたと言わんばかりに、耕一のネックブリーカードロップが梓に炸裂した。
轟音とともに床に叩きつけられる梓の体。
「……ワン! ツー!……」
そのままのしかかってフォールに入ろうとする耕一。

そして梓は切れた。(笑)

「うがあああああああああああああああああああああああああ!!!」
腹筋と背筋だけで耕一の体をはねとばし、そのまま耕一の体を鷲掴み!!

「エクスプロイダーッ!!!」
……これは受け身が取りづらい……

「ストレッチプラムううううぅぅぅ!!!」
……耕一の腰が悲鳴を上げる……

「スペースフライングタイガードロップ!!」
……こ、これは初代タイガー幻の大技!

「タイガードライバー’91!!!」
三沢あああ! 三沢あああああ!!!


……そして耕一は永遠の眠りについた……


「なんでこんな風になってしまうのだ!」
「あたしに言われたって知らないよううううぅぅぅ!!」
白騎士様に問いつめられ、えぐえぐと涙を流すチャンピオン梓。
「と、とにかく次の作戦に入るぞ!! 続いては、【おっとバッチリ!! 服の中に虫が入り
込んじゃったの! お願い……手を入れて虫をとって大作戦】だあああああああ!!!」
「……!! そ、そんなこと出来ないよおおお!!」
「作戦スタートおおおおおっっ!!!!」

「あ、あたしはやんないぞおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!(; ;)」






耕一は、居間で一人テレビを見ていた。
と、何も言わぬまましずしずと居間に入り、耕一の横にちょこんと腰を下ろす梓。
耕一は一度だけチラと梓を一別しただけで、何も言わずテレビに集中する。
「………………」
「………………」
しばらくして、梓もチラと耕一を一別した後、ポケットに入れていた(生きている)アマガエルを
取りだし、気付かれぬようそっと自分の胸元に入れた。

「……いやあああああああああああああああ!!!」
そして梓はわざとらしく悲鳴を上げる。
「……ど、どうした梓!?」
さすがに仰天して耕一は顔を上げる。
「何か! 何か服の中に入り込んじゃったああああああ!!!」
自分でやったとはいえ、肌の上をカエルが動き回る感触はかなりきも悪い。
畳の上で梓はどたばたと暴れまくっている。
「お願い耕一いいぃ!! 何とか、何とかしてよおおおぅぅ!!」
演技できなく、割と本心から梓は耕一に懇願していた。
「ど、どうにかって…… いま服の中のどこにいるんだよ……」
「ここ! いまここにいる!!」
ちょうど都合良く、カエルさんは梓の右の胸に張り付いていたところだった。
「よ、よしそこだな……!」
意を決したように耕一は真剣な顔になり、ゆっくりと梓へと近づいていく。
梓もまた、耕一がこれから行うだろう行為を想像して気恥ずかしくなり、顔を真っ赤に染めるのだった。
「……い、いくぞ……!」
右手を構えてゴクリと唾を飲む耕一。
梓はただ何も言わずコクリと頷いただけだった。

「うりゃあああああああああああああ!!!」

ぶちゅっ!!

「………………………………………………………………………………ぶちゅ??」
その奇妙な音と胸の上の奇妙な感触に、梓は思わず堅く閉じてしまっていた両目をそっと開く。
「……よし、成功だ……」
満足げにうなずく耕一。耕一の拳は、梓の胸、カエルが隠れているところの真上触れるか触れないかギリギリのところで
止まっていた。

……梓に全くダメージを与えず、カエルだけを見事に潰しながら……

梓の着ているTシャツに、カエルの体液がじわじわと染みていく……
そしてそれは、梓の胸の上にも……
そのあまりに気色悪い感触に、一気に顔を青ざめさせる梓。
「!!!! …………こ、こ、こ、こ、こ、こ、こ、耕一いいぃぃい!! あんた何を……!!」
「何っておまえ…… おまえが何とかしてって言うから、潰してやったんだよ」
耕一はケロッとした表情のまま言い放つ。
「梓にはダメージを与えず、カエルだけを潰す。これが仙道。これが波紋の力!!!」
「ツェペリさんかあんたわああああああ!!!」
いまや目をなるとマークにしながら完全にパニクっている梓。Tシャツが肌に触れぬよう伸ばしながらドタバタと居間の
中を走り回っている。
「だいたいが、波紋の力は“カエルを殺さずにその下の岩を割ってしまう”、そういうヤツだったろうがああああ!!!」
「……あ、そういえばそうだな」
突っ込まれて耕一はポンと手をたたく。
「……? と、言うことは……」
「…………………………………………………………あ!」
と、突然全身に激しい痛みが走り、梓はまるで体が割れてしまうような感触を味わいながら
そのまま気絶するのであった。


「……何故だ!? 何故こうもうまく行かん!?」
「そんなこと、あたしが聞きたいよおおお〜〜〜!!」
顔を突き合わせたままただえぐえぐと泣き続ける梓と白騎士様。
「だが案ずるな少女よ! まだまだ作戦はいくらでもある!」
「ってまだやるのおおお!?」



「【曲がり角を曲がったらあの子と衝突! 倒れ込んで胸に顔をうずめちゃうの大作戦】」
「うぎゃあああああああああああ!!」(耕一)

「ならばッ! 【お風呂をあけたらそこには彼女が!! 裸と裸で思わずご対面大作戦】」
「いやああああああああああああ!!」(梓)

「続いては! 【転びかけた彼女を支えようと、思わず後ろから胸タッチ大作戦】だっ!」
「あれええええええええ!!“ごろごろごろごろ……”(梓)」

「炎のコマにはこれで対抗!! 【ノーブラボイン撃ち大作戦】!!!」
「あひいいいいいいぃぃぃいいいっっ!!!」(梓)

「しからばッ!!」
「うひいいいいいいっ!!」

「まだまだあッ!!」
「あぎゃああああああああああああッ!!」

「これからこれから!!」
「もういい加減に……」(耕一)
「してえええええええええええ!!!」(梓)










「よし! 続いての作戦は……」
「……も、もういい……」
嬉々として作戦を考えている白騎士様に、げっそりとした表情で梓が口を挟んだ。
「もうたくさんだ…… もうこんな作戦こりごりよ……」
「何を言う少女よ! 諦めてしまうつもりか! 耕一のハートは今目の前すぐにあるというのに!!」
「何が……耕一のハートよ……! だいたいがそんなもの他人の力を借りずとも……」

「……俺のハートが、どうしたって?」

「うわっ!?」
と、突然梓と白騎士様の目の前に耕一が姿を現した。
「……さっきから様子がおかしいおかしいと思っていたら……そういうことだったのか……」
呆れたような表情で耕一は梓の瞳をのぞき込む。
「……いや、これは、その、そういうんじゃなくって!! ……だ、だから……」
完全に計略のばれてしまったことに慌てふためいて、梓は真っ赤な顔のまま手足をばたつかせる。
そんな梓の様子を見て、耕一はふと今までにないほどの優しい表情を見せた。
「……馬鹿だな……」
そして優しく梓を抱きしめたのだった。

「…………あ…………」

「無理することなんてないんだよ…… 梓は梓のままでいいんだ。少なくとも俺は、そんな梓が
好きなんだから」
「こ……耕……一……」
借りてきた猫のように、耕一の胸の中でたちまちおとなしくなる梓。
髪を優しくなでられ、恍惚とした表情で静かに目を閉じる。
「何もそんなにあわてる必要はないだろ? ぼちぼちと行こうぜ、ぼちぼちと」
「………………………………………………………………………………うん……」
「ほら、初音ちゃんや楓ちゃんだってまだまだ成長期なんだし…………決めるのは、まだまだ
これからこれから」
「………………………………………………………………」
梓の眉間に青筋が浮かんだのに気付かなかったのは、耕一一生の不覚であった。


「わははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、
うわははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!
どうやらこの私のおかげで全てうまくいったようだな!!!」

「……………………」
「……………………」
突然かんらかんらと笑い声をあげる白騎士様に、ジトーと向けられる耕一と梓の白い視線。
「いや、そんなに感謝せずともよい! 全ては正義のため! この世に生きるみんなの幸せの
ためにしたことにすぎない!!」
ふっ…… と目を閉じ、一人悦にいる白騎士様であった。
「それではまた、何か困ったことがあったら私を呼ぶといいだろう!!」
「……呼ぶって……」
「……どうやって……?」
「それは、こうだ!!!」

ガコン!!!

と、突然サーチライトが照らし出され、夜空に煌々と浮かび上がるバットマーク!!!
「……………………………………」
「……………………………………」
「それではさらばだ諸君!! うわははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」


嵐の後の静寂とともに、ただ取り残された梓と耕一はぽつねんと立ち尽くしたまま白騎士様が
走り去っていく方向を黙って見ているだけしか出来なかったのだった。
「…………あれ、柳川さんだろ……?」
「…………うん………… たぶん……」
「……………………………………何だかなあ」
「……………………………………うん……」

……と、物語はそこで終結してはくれなかった。

「……ところで耕一……」
「? なんだよ」
「さっきあんた、面白いこと言ってたね…… 初音や楓がまだまだ成長期だとか何とか……」
「……それがどうしたんだ?」

「……あんた、やっぱり胸がでかければそれでいいんだね……」

「……!!」
「……あんた、やっぱり胸でしかあたしのことを女として見ていなかったんだね……」
「……!! い、いやそれは違うぞ梓!!!」
「じゃあ初音や楓の胸が大きくなっても、ずっとあたしのこと見ていてくれる?」
「………………………………………………………………………………」
「………………」
「………………」

「なんでそこで黙り込むううううぅぅぅぅうううううううっっっっっっっっ!!!」

……そしてセブンセンシズに目覚め全身を黄金色に染めた梓が、ペガ○ス流星拳を耕一にめり
込ませるのであった……

(……やっぱり……俺が付き合うしかない…… この世界、俺以外誰にも梓の拳を受けられる
奴はいない…… 梓に人殺しをさせるわけには……わけには……くくく……)

泣きながら意識を失っていく耕一の表情は、なぜだか一つの決意を終えた男の満足げな
微笑みが浮かんでいるのだった。

だがこの後、柏木家では耕一を巡り激しい独立戦争が勃発する。
……それはまた、いつかの講釈にて。


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「……ルナ?」
「…………あううナリ……」
「……どこが、ルナ?」
「……だ、だからほら、これはいいゲームだから、あんまりネタばれしないで出来るだけ
 たくさんの方にやってもらいたいと。そういう気持ちがこのSSになったナリよ……」
「……こんなもの、貴方の傲慢ですよ!!」
「か、カミーユくん…… 押さえて押さえてナリ……」
「貴方の都合でルナ2の素晴らしさを汚すようなことはさせてはならないんです!!」
「……う、このパターンは……(^^;)」
「だから、修正してやるううううううぅぅぅぅぅぅぅぅうう!!!!」
「ああ、やっぱりいいいぃぃぃいいいいいい!!! (;ロ;)」



今回のSSには元ネタがあります。

東芝EMI 『ルナ エターナル・ブルー 〜ルナティックパレード:VOL.2』
       ドラマその2  【はじめてのチュウ】より

http://www.tt.rim.or.jp/~sage/leaflib/acsiz/