起動武闘伝Gマルチ 投稿者:アクシズ
(前回までのあらすじ)
さて皆さん。浩之は神社での修行の結果、遂に真のスーパーモード『主役の意地』を会得するのです。
しかしその時、怒りに燃えるマスターが浩之のマルチを襲います。
互いに激しいダメージをおい、遂に頓挫する両者のマルチ。
果たして浩之はこの危機をどう乗り越えるのでしょうか?
それでは皆さん!
「マルチファイトオォッ! レデイィィ、ゴォーッ!!」

『戦士の絆! マルチ包囲網を突破せよ!』
(ちゃららら〜 ちゃら〜 ちゃ〜ら〜ら〜♪) 


「……お……俺のシャイニングマルチが……」
マスターマルチと相打ちになり、静かに横たわるシャイニングマルチを呆然と見つめていた浩之は、
そのまま崩れるようにその場に膝をついた。
「……浩之ちゃん……」
同じネオジャパンのパートナーにしてメカニックのあかり・ミカムラは、そんな浩之・カッシュを
ただ優しく見つめるしかできないのであった。
「俺と一緒にマルチファイトを戦い抜いてきたシャイニングマルチ…… 
数々のライバル達との戦いに耐え抜いてくれたシャイニングマルチ……」
浩之の脳裏に、これまで戦ってきた様々な勝負の名シーンがフラッシュバックでよみがえっていく。
レミィ・チャップマンのジョンブルマルチ……、橋本・シジーマのコブラマルチ……。
志穂・チャリオットのネロスマルチには卑怯な戦法に随分と苦しめられたっけ……
シャイニングマルチはそんな過酷な戦いを共に勝ち抜いてきてくれた。
けれどそのシャイニングマルチは…………もう、無い……
「お、俺は一体これからどうすればいいんだ……」
浩之は既に完全な負け犬モードに入っていた。

ガカアッ!!

「甘いぞッ! 浩之ッ!!」
突然辺りに響いたその声の持ち主は、浩之の座り込んでいた床の真下からいきなり噴き出した水柱の上に
屹然と立っていたのであった。
「あ……あなたは……」
その水柱に吹き飛ばされた浩之のことなど全く気にもせず、あかりは口をあんぐりと開けて
そのマスクの男を見上げていた。
「ま…………雅史・ブルーダー!」
雅史・ブルーダー。
ネオドイツの覆面マルチファイター。
浩之とはマルチファイトを戦い抜くライバル同士だが、何故か浩之のことを気にしており、
何かと助けてくれる謎の男である。
「いつまでも女々しく壊れたマルチに気を取られているとは……未熟、未熟うッ!!」
「な、なんだとッ!」
雅史の言葉が浩之の逆鱗をさかなでた。
「貴様に何がわかるッ! シャイニングマルチは俺の手となり、足となり、
このマルチファイトを共に戦ってきたんだ! この俺の怒りと悲しみ、貴様などに、
何がわかるというんだぁッッッ!!」
浩之は『見よう見まね』を使い、「ティリアのシャインクルス」を繰り出す。
しかし「無」属性の雅史にはいまいちだった。
「寝ぼけるなッ!」
雅史のタイガーシュートがカウンター気味に浩之を襲った。
めちゃくちゃ効果的だ。
吹き飛ばされ、地面をソ○ックのように転がり回る浩之。
「思い出せッ! シャイニングマルチはなんのために倒れたのだッ! 
貴様にいつまでも泣いていてもらうためかっ! 違うッ! 
お前に、マルチファイトに優勝してもらうためあえて礎となったのだ!! それが何故解らんッ!!」
「!!」
「そのシャイニングマルチの気持ちを、お前は無にするつもりかっ! 
シャイニングマルチを誠に思うのなら、お前は戦わねばならん! 
お前とのファイトを心待ちにしているライバル達のためにもッ!」
「……し、しかし……シャイニングマルチ無き今、俺はもう、マルチファイトを戦うことなど……」
「来栖川研究所に行けッ!」
「!?」
「そこに、お前を待つマルチがいる。そう、新しいマルチが……」
「あ、新しいマルチ……!?」

「やあ、待っていたよ」
来栖川研究所で浩之を出迎えたのは、ネオジャパン統括責任者の長瀬ウルベであった。
「ちょうどロールアウトが済んだところだ。決勝大会用に準備していた新しいマルチが、浩之くん、
君の購入を待っているよ」
「決勝大会用……?」
「そう、シャイニングマルチはあくまでも予選用のプロトタイプ。予選が終われば、
データを取って役目を終える予定だったんだ」
浩之は脳天を金槌で殴られたような衝撃を受けた。
シャイニングマルチはプロトタイプ……?
すると事が済んだ後、シャイニングマルチは一体どうなる予定だったんだ!? 
ずっと保管されて、もう会えなくなっちまう予定だったのか?
「さあ、これが……」
分厚い金属の扉が開き、光と冷気の向こうからその新しいマルチが姿を現した。
「君のお買いあげいただいた新しいマルチ、『ゴッドマルチ』だ。ユーザー登録はお早めにな」
「……こ、これが…………ゴッドマルチか……」
浩之は目を丸くしてその新しいパートナーを見つめた。
見た目は今までのシャイニングマルチと変わってはいなかった。
だが、ゴッドマルチには機能と性能を優先するために、シャイニングマルチにあった
「心」の要素がないのであった。
浩之がその事実に気付くのに、さほど時間は必要なかった。
「なんなりとご命令ください」
「………………」
「なんなりとご命令ください」
「………………」
「なんなりとご命令ください」
ぶつんっ
「うがあああああああああああああああッッ!!」
浩之の「主役の意地」が長瀬ウルベのヒットポイントをひん死すれすれまで削った。
「こんなの、俺のマルチじゃねえええええッ!」
「落ち着けッ! 落ち着くんだ浩之くんッ!」
ダウン状態にある長瀬は必死に訴えるしか術がない。
「データを移植するんだデータをッ! シャイニングのデータをDVDでゴッドに写し渡す。
それで以前のマルチが目を覚ますのだッ!」

「そうはさせるかあァーッ!!」
ドッギャアアァーーーンッ!!!

ジョジョの奇妙な擬音と共に、壁を突き破って、突然ヤツは研究所に突入してきた。
「むうッ! エクストリーム不敗、マスター綾香ァッ!! 生きていたのかあッ!!」
「フハハハハ馬鹿があッ! この私があんな事で死ぬと思っていたかあッ!!」
綾香と浩之の拳がぶつかりあい、激しく火花が辺りに飛び散りまくる。
「新しいマルチなんかに貴様をのせるものかあッ! やはり最後は拳と拳の勝負! 
ここで決着をつけてくれるわァッ!!」
「ぬううううううう邪魔するなあッ!! 俺は決勝大会に行くんだッ!! 
貴様と遊んでいる暇なんかァ、無いッッッ!!」
顔を中心にした巨大なオーラの火球となって、共にぶつかりあう浩之と綾香。
二人が互いの意地をかけ戦っている頃、今まで完全に(書いている俺からも)忘れ去られていたあかりは、
一人ネオホンコンにある公園のブランコで浩之が来るのを待ち続けるのであった。
(ダンダカダンダカダンダーン♪ ダラダラ〜〜〜♪)
みなさんお待ちかねー 遂に決着をつけようとするかつての師匠と弟子。
しかしその間にも刻々と決勝トーナメントの時間は迫るのです。
果たして浩之は間に合うのか、そしてゴッドマルチは……?
次回、起動武闘伝Gマルチ。
『新たなるプラットフォーム、PS版は振動対応なのか!?』に、
レデイィィ、ゴオオォォォッ!!

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……こんなんなっちゃいました……ゴメン。