機動武闘伝Gマルチ2 投稿者: 嘘エヴィン
(前回までのあらすじ)
さて皆さん。
ついに最強最悪の悪魔、デビル祐介は滅びました。
しかしそれは、雅史ブルーダーと雅史の二人の犠牲をともなったものでした。
浩之の心中はいかなるものでしょうか……しかし無情にもマルチファイトは続くのです。
それでは皆さんッ!
マルチファイトオオォ、レディ、ゴオォッ!!

「さらば師匠! マスター綾香暁に死す!!」
(ちゃららら〜 ちゃら〜 ちゃ〜ら〜ら〜♪)

「……わ、私のデビル祐介が……」
炎と共に崩れ落ちるデビル祐介を呆然と見つめながらマスター綾香はただただ嘆くだけだった。
その向こうでは、親友を自らの手で殺めてしまった浩之が、片膝を付いたまま頭を垂れうなだれている。
「……許さんぞ………………許さんぞ、浩之ぃいいいいぃッ!」
綾香の目に怒りの火がともる。
「アンタは、自分が何をしたのか、解っているのかああああああぁッ!」
「だまれマスター綾香ッ!」
「なにいィッ!」
「デビルマルチを使い、世界を我が物としようとする悪党が!」
「たわけぇ! 誰がそんなことを望んだッ!」
「智子首相と手を組みながら、今更何をッ!」
ゆらり、と綾香の体が自然体へと戻るように揺らいだ。
「……ふふふ知りたいか、ならば、その拳に直接教え込んでくれるわあああッ」
「おうッ! マルチファイトオッ……」
「レディ……」
「「ゴオオオオオッ!!」」

再び拳と拳を合わせる二人。
飛び散る稲妻とオーラが、決勝トーナメントの行われている学園の校舎すら次々と破壊していく。
巻き添えを食らってツイスターのごとく空中に吸い飛ばされる理緒ちゃん。
「綾香さまっ」
これはたまらんと、ネオホンコンのセバスチャン首相が横から口を挟んだ。
「このセバスチャン、綾香様の気持ちよく解りました! ついては綾香様にはぜひこの大会に勝ってもらい、
ネオホンコンに再び世界の指導権をもたらして、共に世界を我々のために……」
「このたわけがぁッ!」
セバスチャンお得意の一喝を、芹香がより強力なものとして吐き飛ばす。
「ひいいいいッ!」
「私がそんな愚な事のために戦っていたと思うのか、この政治屋がッ!」
すると綾香は、今までとは一転して静かに、だが厳しい口調で言い放った。
「よいか、この私の目的は、人類全体の抹殺なのだぞ」
「なんだとッ!」
「ば、バカな……!」
驚愕する浩之とセバスチャン。
「確かに人類はマルチを得て、その生活は豊かになった。だがどうだ?
その一方で雑務を忘れた人類は堕落し、また、マルチをただの機械としてしか見ることの
出来ぬ者達の、その、あまりにむごいマルチの扱いぶりは……」
ハッとする浩之。
「蹂躙され、使い捨てられるマルチ。そしてその事を当たり前としてしか感じ取れぬ人々……」
綾香の肩がわずかに震えている。
「そうだ、そんな人類など滅ぶべきなのだ、滅んでしまえええッッッ!!」
「……し、師匠……」
今や浩之も全身を震わせている。
「く、狂っている、狂っていますぞおおッ!」
その時ー
天からあるものが降ってきてセバスチャンに直撃した。
それは先程吹き飛んだはずの理緒ちゃんだった。
轟音と大量の土煙と共に、学園は完全に崩れ、セバスチャンはそれに巻き込まれていったのであった……

アイキャッチ

CM
ドラゴン○ォースU編
「あ〜ずさ、三四郎♪」
一人の梓が、
「「「あ〜ずさ、三四郎♪」」」
十人の梓に、
「「「「「「「「「「あずささんと、シロッ♪」」」」」」」」」」
そして百人の梓が一斉に耕一に向かって走り出す。
「どわああああああああっ!!」
関ヶ原の合戦を思い浮かべる光景。けれど耕一は一人。
「みんなで戦えッ!」

アイキャッチ

「浩之いいいぃぃッ!」
綾香と浩之の拳が、凄まじい勢いでぶつかりあう。
「まだ、まだこの私の気持ちが解らないか浩之いいぃ」
「ああ、あんたのやろうとしている事は、ただの人殺しにすぎんッ!」
「ひ、浩之……」
一瞬、悲しげな表情を見せるマスター綾香。
その拳が開かれ、浩之の手を包み込もうとする。
だが浩之は、思い切りよくそれをはねのけた。
「! こ、このバカ弟子があああぁッ!!」

「マスター綾香! あんたは間違っているッ!!」
「なにい!?」
「何故なら、マルチの真の願いは『人のお役に立つこと』!」
目を見開く綾香。
「確かに、マルチのその存在は不遇だった。だがしかしッ! 
人間全部を滅ぼしてしまっては、マルチのその願いそのものが意味をなさなくなってしまう。
マルチは人と共に生きるしかないのだッ! 人あってのマルチ、マルチあっての人! 
その人間を滅ぼしてでのマルチ救済など、愚の骨頂ッッ!!」
「…………」
綾香の目には、まるで覆い被さるような浩之の巨大な姿が見えていた。
そう、今この瞬間、確かに弟子は師匠を超えたのだ。
「…………ふっ、ならば、アンタが正しいか私が正しいか、この場で決着をつけてくれるわっ」
「おうッ! キングオブトゥハートの名に賭ぁけてぇッ!」

互いの闘気が高まって行く。
二人の乗ったゴッドマルチとマスターマルチが、蒸着したかのように全身金色に輝く。
「……流派ッ! エクストリーム不敗がァ……」
「最終、奥義ィ……」
闘気によってめくり上がり吹き飛ぶ周辺の大地。
「石ッ!」
「破ッ!」
「「てんきょおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉけえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」」

互いに放ちあう、巨大な掌の形の気と気。
それがぶつかりあい、辺りは真っ白な光で包まれていく。
だがー
わずかに浩之は押されていた。
「クッ…………」
彼の額を汗が流れ落ちる。
「どうした、この程度かッ! あんたの思いなんてこの程度のものでしかないのかッ!」
叱責する綾香。
「足を踏ん張り、腰をいれんかこのバカ弟子があああッ」
更に強力に放たれる綾香の気。
ついにゴッドマルチはガックリと膝をついてしまう。
【け、拳王はひざまづかぬものなんですー】
ゴッドマルチのCPUがショートし始めた。
「どうした! そんなことでは、悪党の私一人倒せぬぞこの馬鹿者がああ!」
「う、うるさい、今日こそ俺は、あんたを越えてみせるッ!」
気迫と共に、再び立ち上がるゴッドマルチ。
それは放たれている天驚拳にも現れていた。
新たな力を得て、逆にマスターマルチに一気に襲いかかった。
「う、うわあああああああああああああああッ」
絶叫する綾香。天驚拳がしぼるようにマスターマルチを握りつぶしていく。
「ヒイィト、エーーーーーーーーーーーーーン……」
浩之がとどめを刺そうとしたその時……
「ようし……」
綾香が笑みを浮かべる。
ハッとする浩之。
「今こそアンタは、本物のキングオブトゥハート……」
ついに耐えきれず、爆発を起こすマスターマルチ。
「し……」
そして浩之は気付いたのだ。
綾香がこの結果を望んだことを。
その思いの全てを浩之に託していることを。
満足げに微笑む綾香を見つめながら絶叫する浩之。
「しいぃしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉッ!!」

夜が明けようとしている。
綾香は髪を乱し、ボロボロの服装になりながら倒れ込んでいた。
そしてその肩を、涙を流し続ける浩之に抱きかかえられている。
「ねぇ浩之……」
力無く綾香が声を出した。
「アンタには教えられたよ。マルチもまた、人間と共に生きる仲間。
人間を抹殺するなど、マルチを抹殺するのと同じ…… 
私はまた、同じ過ちを繰り返すところだった……」
「し、師匠……」
「私をまた、師匠と読んでくれるの……」
「俺は今の今になって、初めて綾香の悲しみを知った。メインシナリオからはずれ、HCGだけを発表された、綾香の悲しみに……」
「所詮私はただの脇役よ……」
フッと自虐的な笑みを浮かべる綾香。
「せめて、せめてPS版まで待っていれば……」
「浩之……」
綾香の瞳から涙がこぼれる。
「あの日神社でアンタと会っていなければ、アンタが葵や芹香姉さんを追いかけなければ、こんな事にはならなかったのに……」

日が昇る。
朝焼けの中、ゴッドマルチがきらきらと輝く。
「美しいな……」
「はい、美しゅうございます……」
「ならばッ」
綾香が声を上げる。
「リーフッ! とうとうPSはっ!」
浩之がそれに答える。
「冬弥の為よッ!」
「全身痙攣ッ!」
「ユーザー狂乱ッ!」
「「見よッ! 開発はとても遅れているううぅぅぅぅ」

最後の言葉がよほどショックだったのか、綾香はガックリと頭を垂れた。
「……ボキャブラかよ……」
号泣しながら浩之は、こんな出来じゃ小玉しか押せないなと思うのであった。

(ダンダカダンダカダンダーン♪ ダラダラ〜〜〜♪)
みなさんお待ちかね〜
ついにマルチファイトは終わりました。
しかしその時、長瀬ウルベがデビル祐介を使い、世界の覇者を名乗ろうとするのです。
そしてあかりの身にピンチが……
次回、機動武闘伝Gマルチ。
「セガ派の嘆き! 次はDCで痕を出せコンチクショウ」に、
レディ、ゴオォッ!!