「おーい、マルチー」 「はいっ! なんでしょう浩之さん」 いつものように廊下の掃除を続けているマルチに俺は尋ねた。 「お前この間研究所で大幅なバージョンアップが施されたって聞いたけど……」 「はいっ! その通りですっ!」 そう言ってマルチは目を輝かせた。 「凄いんですよ! 今度の装備はメイドロボ初の画期的装備なんだって主任さんがいってました!」 「ほう……」 俺はジロジロとマルチの全身を探った。 「特に今までとなんかが変わったような気はしねーが……」 と、マルチの額に何か文字が書かれているのを見つける。 「ん? なんだ? ……V…………2…………?」 「ビクトリーツーだそうです」 「………………………………………………………………びくとりー?」 「はい。今日から私は、V2マルチなんです」 「……………………………………………………」 「これがその新装備です!」 次の瞬間ー マルチの耳カバーから高密度の重金属粒子が広がり、まるで天使の羽のように輝いた。 その時、たまたま次のバイトに急いでいた理緒ちゃんがちょうどその場を通りかかり、マルチの耳から発生しているミノフスキー粒子の固まりに直撃、胴体から真っ二つに寸断されたのだった。 「光の翼って言うんですよー」 純真無垢な笑顔のまま、マルチは嬉しそうに自慢する。 「………………………………へ、へえ……………………」 まるで寄生獣が通り過ぎたかのような血の海の中、浩之はただ笑い続けるしかないのでした。