公約通り・・・第一話です。 投稿者: おばQ
こんにちは、おばQです。今は色々悩み事がありますが、ここへのカキコには影響しないように心がけたいと思います。
昨日約束したとおり、今日は第一話をお送りします。
注意してほしいのは、この作品(作品と呼んで良いのか?)は完全にダークでシリアスなので、暗い話、グロい話の苦手な人は気をつけてくださいね。

闇の咆吼(『痕』SS・シリアス)

第一話 戦慄の序曲・・・そして覚醒

「真二く〜ん、もう帰るんでしょ〜?一緒に帰りましょうよ〜」
 放課後、剣道部の練習が終わった頃、見計らったようにやって来たのは榊原早苗(さかきばらさなえ)、俺の彼女だ。毎日部活が終わった頃にあわせてやって来るので、いつも一緒に帰っている。
「おう、もうちょっと待ってろ。着替えてくるから」
 俺はそう言うと、更衣室に向かって駆けていった。
 更衣室に入って竹刀を壁に立てかけ、胴と籠手、面を外して道着を脱ぐ。頭に巻いた頭巾を取り去って、手早く学生服に着替える。
 カバンを手に取り、俺は更衣室を出た。
「よし、じゃあ行こうか」
 早苗に声をかけて俺は剣道場の出口に向かい、出ざまに振り返り、
「じゃあ、後片付けはたのむな」
 今日の後片付けの当番になっている水月沙羅(みづきさら)にそう言った。
 沙羅は俺の幼なじみであり、幼稚園からの付き合いである。剣道歴は俺より遙かに長く、たしかもう10年になる位だろう。
 普段はおっとりしているが、竹刀を持つと俺なんかより遙かに強い。
 俺もそこそこ強い方ではあるのだが、沙羅は比較にならないほど強い。一度ならず勝負したことがあるが、すべて圧倒的に敗北した。それもわずか1分以内に、である。そのせいで何度悔しい思いをしたことか・・・。
 どうやら家が古い武家らしく、”叢雲(むらくも)”とかいう刀を代々伝えているらしい。家宝らしく、見せてはもらえなかったが・・・。
 俺の声に、床を雑巾で乾拭きしていた沙羅はこちらに振り返り、
「うん、わかった。気をつけて帰ってね、しんちゃん」
「おう。んじゃな」
 俺はそう返事をすると、早苗と一緒に道場を後にした。

「うわぁ、もうこんなに暗くなっちゃった。真二くんのせいだからね」
 早苗は時計を見ると、俺に向かってそう文句を言った。もう時計は午後9時を指している。
 そろそろ隆山市内のすべての高校の剣道部が覇権を争う”隆山市高校剣道大会”が開催される。この大会に優勝すれば県大会の出場権が得られるとあって、どこの高校でもこの大会には全力を傾ける。
 むろんそれはうちの高校とて例外ではなく、居残りの特訓などで最近はしばしば遅くなるのだ。
「だから先に帰れって言ったろう」
「それはそうだけど・・・」
 俺の言葉に早苗は不服そうな顔をした。
 早苗がやたらと不服そうなので、俺は仕方なく、
「・・・わかったわかった。今度からなるべく早く帰るようにする」
 そう言った。
「うん!そうして!」
 早苗は嬉しそうな顔をしてそう答えた。
 その時、俺達の脇を自転車で一人の男子生徒が通り過ぎていった。

 そのまま何気ない雑談をしつつ帰り道を歩き、街灯が全くない暗い通りに差し掛かった。このあたりは登下校時以外、滅多に人は通らない。
 こんなところで暴漢とかに襲われたら、声を上げたくらいでは辺りには聞こえないな・・・。
 そんなことを考えつつ俺が歩いていると・・・
 ぐしゃっ
 どこからともなくそんな不自然な音がした。まるで生肉をコンクリートに叩きつけたような、そんな気味の悪い音だった。
「な、何?あの音・・・」
 早苗が怯えたような声で俺に訊ねた。
「・・・・・・」
 俺はその問いに答えない、いや答えられない。言いようのない恐怖が俺の口を強張らせていたのだ。
 俺のカンは危険を告げていた。
 何かが暗闇の向こうにいる、その気配が感じられた。そしてその気配の主がこちらに気づいていると言うことにも俺は気づいていた。
 俺はその場に立ちすくんだまま、暗闇の向こうに目を凝らす。すると、暗闇に慣れ始めた俺の目に、徐々にその気配の主が見え始めた。
 まず最初に見えたのは、その頭部に生えた二本の角と口から突きだした二本の牙。
 その次に見えたのは、人の太股くらいもある太い腕と、その指から突きだした鋭い爪。
 その得体の知れないもの・・・言うならば昔話の鬼、それがこちらに顔を向けている。
 そして、その足下に転がっているのは・・・
「きゃあぁぁぁっ!」
 早苗はその足下に転がっているものに気づいて、思わず悲鳴を上げた。
 赤黒い液体の海の中心に転がるそれは、肉の塊だった。
 腕もなく、頭もなく、足もない、まさしく肉の塊だった。
 だが、俺はその肉の塊が元々何であったかを知っている。その肉の塊の上にまとわりついた黒いぼろ切れが学生服であること、そしてその脇に転がったぐしゃぐしゃの自転車に気付いているからである。
「あ、あ、あれ、あれ・・・・・・」
 さっきの生徒じゃ・・・そう言おうとしたのだろう。早苗はあまりの光景に気が動転し、呂律が回らなくなってしまっている。
「・・・・・・」
 俺は何も言わず、肩にかけた袋から木刀を取り出した。左手に持ったカバンを地面に放り、青眼の構えをとる。
 逃げられないことは分かっていた。
 奴はこちらに気付いている。そして奴の脚力が人間のそれを遙かに凌駕していることは火を見るよりも明らかなことだ。ましてこちらは早苗を連れている・・・逃げられるはずもなかった。
 生き残るすべ、それは戦うことだけだったのだ。そう、たとえそれが無駄な足掻きだと分かっていても・・・。
 その”鬼”はこちらの姿を認めると、
 ぐおぉぉぉおおおぉぉぉんっ!!
 大きく一声吼えた。その叫びは大気を震わせ、聞いたものに言いしれぬ恐怖感を与えた。それは絶対的な力を持つものに対する動物的本能だったのかもしれない。
 そして”鬼”はこちらに踊りかかってきた。
 飛びかかりざま、太股よりも太いその腕を俺の頭に叩きつけてきた。
 俺は後ろに飛びすさってその一撃をかわし・・・
 どんっ!
 だが、予想に反して俺の体は何かにはね飛ばされ、遙か後ろの塀に叩きつけられた。どうやら衝撃波か何かにはじき飛ばされたらしい。
 ばきいっ!
 そういう音がして、背中にものすごい激痛が走る。咄嗟に頭を庇ったために即死は免れたものの、背骨に亀裂でも入ったかのような猛烈な痛みに、一瞬意識が遠のく。
 そのまま俺は壁により掛かるような形で地面にずり落ちた。
「ぐ・・・ううっ」
 俺は何とか痛みに耐えつつ木刀を支えに立ち上がった。だが体中が痛み、もはや敏捷な動きは不可能である。
 ぐるるぅぅぅ・・・
 ”鬼”は勝ち誇ったかのような唸りをあげ、もはやすくみ上がって動けない早苗の方に向き直った。
「あ・・・」
 びくんっと身をすくませる早苗。”鬼”はその腕を振り上げて・・・
「や・・・止めろぉっ!!」
 俺はその”鬼”に向かってなけなしの力を振り絞って飛びかかり、眉間めがけて全力で木刀をたたき込んだ。甘く見ていたか、その一撃は”鬼”の眉間にクリーンヒットする。
 赤樫で作られた木刀は、ある意味では真剣より大きいダメージを与える。それが命中したのだ。無傷では・・・
 だが、”鬼”は全く動じず、うるさい蠅でも追い払うかのように右腕を振るった。
「くっ!」 
 咄嗟に木刀でその一撃を受け止めつつ後ろに飛びすさり・・・
 ばぎぃっ!
 俺はおれた木刀とともに後ろにはじき飛ばされた。再び塀に叩きつけられ、今度こそ動けなくなる。全身の骨が粉々に砕けてしまったような気の遠くなるような痛みに声すら上げられない。
 ”鬼”は俺がもう動けないのを見ると、醜い顔をさらに歪めておぞましい笑みを浮かべ、再び早苗に向き直ると、
 ばんっ!
 その腕で無抵抗な早苗の細い体を打ち据えた。
 早苗は後ろのフェンスに叩きつけられ、声を上げるまもなく卒倒する。
 早苗が意識を失い、抵抗できなくなったのを確認すると、”鬼”はその身体にのしかかり・・・
 俺はどうすることもできなかった。
 自分の恋人が化物に陵辱されていく様を、為すすべもなく見ることしかできなかった。
 ”鬼”は早苗の身体をしばらくの間弄ぶと、仕上げにその頭を手で鷲掴みにして高々と頭上にさしあげ・・・
 ぐしゅっ
 一息に握り潰した。
 高々とあがる血飛沫。あたかも燃え上がる命の炎のように、あたかも赤い噴水のように、非現実的な光景が俺の網膜に焼き付いた。
 だが、不思議だった。
 恋人が殺されて悲しいはずなのに、俺の中の何かが喜悦の声をあげていた。
 死にゆくものほど美しい。そんな言葉が脳裏をよぎる。
 そして、俺の意識は遠のいていった。白い紗が目の前にかかり、何かに奪われるように意識が失われ・・・
 
 次に意識が戻ったのは、自分の部屋のベッドの上だった。
 何故か知らないが、俺は全裸で横たわっていた。腕にはべっとりとした赤黒い液体が絡みついている。だが、俺はそんなことには全く関心がなかった。
 今はただ、何も考えずに眠ってしまいたかった。
 どうせ家族はここにはいないのだ。どんな格好でいたって構わない。
 俺は沙羅とともにこの高校に通うためにこの隆山市にやって来た。もちろん進学のことを考えて、である。
 だから、俺はこのアパートに独りで住んでいる。
 ・・・もう少し眠ろう・・・。
 そう思うと同時に、俺の意識は深い眠りに落ちていった。

(続く)

PS:はっきり言って下手ですね。やはりしばらく書かないと勘が鈍ります。
   もう一つは疲れたから適当に終わらせた、という意見も・・・。
   とにかく、こんな感じの話です。下手ですよね<まだ言うか(笑)
   次回から柏木家のみんなが出てきます。期待していてください。
 
<感想>
八塚祟乃さま:オーフェン(爆)は読んだことがないので・・・。すみません。
       ですが、作品としてはおもしろかったです。次回も続きを書いてく       ださいね。
vladさま:何となく最後まで読んでしまいました。ううむ、面白かったです。
       こういう話は個人的に大好きです。笑わせてもらいました。しか        し、哀れ矢島(笑)所詮はちょい役ということですか。
貸借天さま:ホワイトアルバムやってないんで・・・コメントできません。すみま      せん・・・。
もっと書きたいですが、もう長くなりすぎたので。
 
 



   

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