もうひとつのTo Heart(あかり編) 投稿者: おばQ(お馬鹿な九大生)
どうやら漸くこのコーナーは直ったみたいですね。
では、頑張って第三段!いってみましょー!!
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「浩之ちゃ〜ん、起きてるぅ〜?」
 未だ布団から出しぶっているオレを急かすように、いつものごとくあかりが
オレの家の前で大声で名を呼ぶ。
 ・・・相変わらずちゃんづけかい。
 何度止めろと言っても、何故かあかりはオレの名前をちゃんづけで呼ぶ。
 まったく!近所迷惑(一番迷惑なのはオレなんだが・・・)を考えろ!!
「起きてるよ!起きてるからでかい声で名前を呼ぶな!」
 オレは窓を開け、顔をつきだしてそう叫ぶと、急いでパジャマを脱ぎ捨てて
学生服に着替えた。
 そのままリビングに降りようとしてカラーをつけていないことに気付き、
部屋にとって返す。
 机の棚に外して置いていたカラーを襟に付けながら、一段とばしで階段を駆け下りる。
 前の日の夜にセットしておいたトーストをくわえ、鞄を小脇に抱えてオレは玄関に急いだ。
 ドアを開けると、そこにはにっこり微笑んだあかりが立っていた。
「おはよう、浩之ちゃん」
「おう、おはよう・・・じゃなくて!お前、いつになったらその『浩之ちゃん』
 っていうのを止めてくれるんだ!?恥ずかしいから止めろって何度も言ったはず だぞ!」
「でもぉ・・・。私にとっての浩之ちゃんはやっぱり浩之ちゃんだし、浩之ちゃん にはいつまでも浩之ちゃんでいてほしいし・・・」
「だぁ〜っ!分かった分かった!分かったから連呼するな!」
 いつぞやのようにあかりが『浩之ちゃん』を連呼するので、オレはとりあえず
その話を打ち切ることにした。
「そう言えば浩之ちゃん!もうこんな時間だよ!」
 あかりに言われて時計を見ると、なんともう8時5分!?
「そうだ!こんな無駄話してる場合じゃねぇ!いくぞ、あかり!」
 そう言うと、急いで玄関に鍵を掛けた。
「走るぞ、あかり!遅れずについてこい!」
 オレはあかりにそう言って走り出した。

 何だかんだ言いつつ、オレはあかりのペースに合わせて走った。
 どうして・・・と尋ねられてもはっきりとは答えられない。
 あれはたしか小学6年の頃だっただろうか。
 あかりは小学生の頃、今より遙かに内気で控えめだった。だから、塾に行くのも一人では無理だったのだ。
 それであかりはいつもオレを待っていて、オレと一緒に塾に行っていた。
 オレはずっとあかりのことなど考えず、自分のペースで塾まで走り、塾に着いた頃にはあかりは完全に息が上がってしまっていた。
 もっとひどいときは、あかりが見えなくなっても放っておいて自分だけ塾に行ったりしたこともあった。
 塾の玄関脇で胸を押さえてハァハァと苦しそうにしているあかりを見ても、そのころのオレは大して悪いとは思わなかった。
 だけど、あの日・・・あの日を境にオレはあかりを気遣うようになった。
 
 あれはたしか小学6年の秋だったと思う。
 その日まで、オレはあかりのことを男友達と同じと考えていた。
 だから、あかりが女だからとか言うことはいっさい考えなかった。オレのペースについていけないあかりが悪いんだと思っていた。
 でも、あの日・・・。
 学校からの帰り道、あかりが横断歩道を渡ろうとしたとき、信号無視のトラックに撥ねられそうになった時。
 オレは咄嗟にあかりを後ろから抱きかかえるようにして歩道の手前に引き戻したのだが、その時の感触は明らかに男友達(例えば雅史)にふざけて抱きついたときの感触とは異なっていた。
 やわらかくて、華奢で、ほんの少し力を加えると壊れてしまいそうな・・・。

 その時からだろう。オレがあかりを女の子として意識(認識といった方が良いかも知れないが)し始めたのは。
 こんなに華奢な体じゃあ、オレのペースについていけないのも無理はない。
 そう思うと同時に、いままであかりに無理をさせていたことにも気づき、謝りたいとも思った。
 だが、オレは今更あかりに謝るのも照れくさくて、謝る代わりにそれとなくあかりの手助けをするようにしたのだ。
 例えば、掃除の時に代わりにゴミを持っていってやるとか、重いプリントを持つのを手伝ってやったりというように。
 周りのみんなからからかわれたりもしたが、そんな事はどうでも良かった。
 とにかくオレは、あかりに対して罪滅ぼしがしたかったのだ。それまでかけてきた苦労を帳消しにしたかったのだ。
  
 ・・・と、そんな事を回想しているうちにもう学校の手前の坂道にさしかかった。
 時計の針は8時25分を指している。
「もう大丈夫だな。・・・あかり、大丈夫か?」
「うん。浩之ちゃんがペースを下げてくれたおかげで、何とか平気」
「そ、そうか」
 柄にもなくあかりを気遣うような言葉を口にして、オレは照れ臭さに頬を指で掻きつつそう答えた。
 これもさっきふと思い出したことのせいかもしれない。
「じゃあ、行くぞ」
「うん」
 そしてオレたちはゆっくりと、学校への坂道を上り始めた。
 オレは坂道を上りつつ、隣を歩くあかりの横顔を垣間見ていた。
 あかりは地味な格好をしているせいで目立たないが、オレからいわせればかなり可愛いと思う。
 だが、オレはあかりを見てもドキッとはしない。
 きっと、オレのあかりに対する気持ちは兄の妹に対する気持ちと同じなのだろう。
 だけど、あかりは・・・?
「なあ、あかり・・・」
「なあに、浩之ちゃん」
「・・・いや、何でもない」
 訊けるはずない・・・か。
 このままの関係がオレたちには一番なんだ。
 この関係を壊したくない。兄と妹の関係に似たこの関係を。
 だけど、あかりが他の男と付き合う姿を想像すると胸が締め付けられる感じにおそわれる。
 結局、オレはあかりをどう思っているんだろう。
 答えはいつまで経っても見つからなかった。

PS:すっ、すみませぇん!またもや駄文ですぅ!(マルチばーじょん) 
   何だか尻切れトンボですね。やはり徹夜明けでのカキコは辛ひ・・・。
   さらに、このシナリオは書きながら考えたので全然練られていません。
   前2作も同じ様なもんか・・・。(ToT)
   でも、私はめげない!これも修行の一環だぁっ!!
   というわけで、また今度カキコします。
   次回は芹香編にチャレンジ!
   久々野 彰さん!素晴らしい作品でした!

 

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