もう一つのTo Heart(智子編) 投稿者: おばQ
 やっと面倒くさい試験も終わり、オレが心地よい開放感に包まれつつ家路を急いでいると、坂道の真ん中あたりで前に見覚えのある人影を見つけた。
「やっほ〜、いいんちょ〜」
 開放感も手伝ってそう声をかけると、委員長は面倒くさそうにこちらを一瞥し、
「なんや、またあんたかいな・・・」
 溜め息混じりにそう呟いた。
「また・・・って、そんな言い方ないだろぉ?オレとおまえの仲じゃないかぁ」
「あほ。あたしとあんたがいつどんな仲になったんや。寝言は寝てからいいや」
 き、きつぅ〜。
「あ、相変わらずきついなぁ。ただの冗談だろ?」
「そないくだらん冗談言わんといて。あほが伝染るやろ」
 またまたきつぅ〜。
 取り付く島もないというのはこんな状態のことを言うのだろうか。
「・・・で、あたしに何か用でもあるんかいな」
 委員長のきつい二連発で少しダウン気味のオレに、委員長はそう尋ねた。
「え?あ・・・いや、その・・・せっかくこうして会ったわけだし」
 一緒に帰らないか?
 そう続けて言おうとしたのだが、
「あんたとは一緒に帰らへんで」
 オレの考えを見透かしたかの様に委員長が言った。
 や・・・やるな委員長・・・。
「あんたと一緒におるとあほが伝染るさかい。本当なら席も隣じゃない方がいいんやけど、ここでは前の学校と違って通年で席を決めるさかい、それは仕方ないとして我慢するわ。でもな、それ以外であたしの側には来んといて」
「ああ、確かにオレは委員長みたいに頭は良くないさ!どうしてそんな事を言うんだ!?オレがあんたに何かしたか!?」
 あほあほ言われていい加減に腹が立ったオレは、委員長にそう言った。
「別に。ただ、あんたがあんまり馴れ馴れしいんで追い払いたいだけや。他の連中でも鬱陶しいヤツには言うで」
「そうやっていつまでも一人で良いのかよ!?周りに打ち解けようとは思わないのかよ!?」
 オレの問いに委員長は少し間をおいて、
「・・・打ち解ける必要なんかあらへん。どうせ高校を卒業するまでの付き合いや。卒業してしまえば顔を合わすこともあらへん。そないな連中と打ち解ける必要はないやろ」
「だけど・・・」
「それにな、あたしはあんたらと違って真剣に進学のことを考えとんのや。あんたらみたいな脳天気な連中に合わせとったらろくな学校に行かれへん。せやからあたしはあんたらには合わせる気なんかないんや」
「・・・・・・」
「もうええか?これから塾があるさかい、こんな所で油を売っとる暇はあらへん。もう用がないんなら帰らしてもらうで」
 オレが絶句したのを見計らって、委員長はそう言ってオレに背をむけた。
 しかし、オレの目にうつった委員長の背中は、言っていることとは裏腹にひどく寂しげに見えた。
 ・・・オレは諦めねえぞ!委員長が本音を話すまで、粘って粘って絶対に離れねえからな!!
 そう決心してオレは拳を堅く握りしめた。
 絶対、絶対、絶対に負けないからなぁっ!! 

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