好評なのかどうか反応が殆どないのでよく判りませんが、 第2弾を書いてみました。 『決戦前夜』 =坂下好恵さんの場合= オレはロビーにある公衆電話を使い、ある家へと電話を掛けた。 番号を押して、しばし待つ。 ぷるるる、ぷるるる、ぷるるる…。 …カチャ。 『――はい、坂下ですが』 「あ、その声、坂下か? オレだ、オレオレ。元気してっか?」 オレが掛けた相手は、葵ちゃんと勝負をした、 あの空手部の坂下だった。 『なによ、突然。たしか今ごろは綾香や葵たちと 一緒に隆山温泉に行ってるんじゃなかったの?』 「だからその、隆山の旅館から電話してるんだって」 『へぇ、そうなの。そっちはどう? 楽しい?』 「ああ。色々とあったが、まぁ楽しいと言えば楽しいな。坂下も来れば良かったのにな」 『仕方が無いでしょ、たまたま昇級試験と日程が重なっちゃったんだから』 「全く、残念だよな〜。それでどうなんだ?次の段に進めそうか?」 『楽観視は禁物だけど、大丈夫だとは思う』 「そりゃ良かった」 ・ ・ ・ 「なぁ坂下。やっぱ秋口はエクストリームに出るんだろ? なんだかんだ言っても、葵ちゃんも綾香も、お前が来るの待ってると思うぜ?」 話題は、エクストリームの事へと移っていた。 『そうね…、空手の実力の違いを、大会を通して教えてあげる、っていうのも一興かもね』 「武道はいいぞー、拳を通じて、相手と分かり合えるっていうか」 『…それって葵か綾香かの受け売りでしょ』 「あ、やっぱ判るか?」 『当然』 フン、と鼻で笑う音が受話器から聞こえた。 ・ ・ ・ もう少し、もう少しと思い、ついつい長電話してしまう。 「なぁ、オレらが旅行から帰ったらどっか行かねぇか? お前のことだから、この夏休み何して遊ぶとか、 そういった予定立ててないんだろー?」 『別にいいわよ、私は。興味も無いし』 「だーっ。駄目だぜ、女のコがそんな調子じゃ。 もっと柔軟に考えようぜ? 『柔よく剛を制す』って言うだろ? 坂下のそういうガチガチに堅い思考、直していった方がいいと思う。 武道やる上でも関わってくるんじゃねーかな。素人意見だけどさ」 オレがそう言うと坂下は、しばしの間の後に、 『そうね…。じゃあ…、プールか海にでも、行くとしましょうか?』 と言ってきた。 「おっ! いいねぇ! じゃあ海で決まりな」 『どうせ神岸さんとかも誘って来るんでしょ?』 「もちその気でいるが…。なんだ? もしかして二人っきりの方が良かったか?」 『なっ…、そ、そ、そんなわけ、ないじゃない!』 声に動揺の色が見て取れる。 普段冷静な坂下の、こういう一面を見るのは、非常に面白い。 「はっはっは〜。それで、水着とか、どうする?」 『どうするも何も、学校で使用してる水着着るに決まってるじゃないの』 「あれぇ〜? いいのか〜? そんな事したら綾香から絶対に、 『あら好恵、そんなダサダサのスクール水着なんか着てんの? まぁ、色気とかそういうのから程遠い好恵の事じゃ仕方がないかもね〜』 とか言われるぜ?」 『な、んですって?』 あ、口調が変わった。 ちょっと怒ってるな、これは。 「だから、そんなことが無いように、オレ達が 帰る前に可愛い水着を購入しておくよーに。いいな?」 『なっ…、なんで私がそんな事…』 「じゃあ綾香に、『好恵ってば相変わらず女っ気のカケラも見当らないわね〜。 そういうのと無縁だからね〜、好恵は』とかなんとか言われてもいいってわけだ」 『そんな事、言わせるもんですか!』 「はい、じゃあ決定な。思いっきり可愛いやつ選んでおくんだぞ」 『え…、あ…、あれ?』 「あっはっは、お前ってばホンットに、あしらい方分かり易いなー! 自分で言ったから、もう訂正はナシな」 『…くっ』 「はっはー」 ・ ・ ・ 『…ところで訊きたいんだけど』 今度は坂下の方から、なにやら振ってきた。 「おう、なんだ?」 『そっちで、何か、あったの?』 …鋭い。 「まあ、ちょっと、な」 さすがに、『明日、異世界の破壊神とひと勝負やらかす』とか、言う訳にもいかないので、 ぼかして答えた。 『…詳しくは詮索しないけど…。…帰って、来るよね』 「…ああ」 『約束よ』 「おう、坂下の水着姿も拝みたいしな」 『もう、解ったわよ。ちゃんと買っておくから、 その代わり五体満足で帰って来るのよ?』 「ああ、約束だ」 『じゃあもうそろそろ切るわね』 「そうだな。長電話に突き合わせてすまねぇ。 …おやすみ」 『おやすみ』 カチャ、と受話器をフックに掛けた。 …これで生きて帰る理由が出来た。 約束もしちまったしな。 明日はなにがなんでも、絶対に勝つ。勝ってみせる。 ここにいないことで、戦えない者達の為にも。 →To Be Continued 『Leaf Fight97』 Last Battle あとがき 前回に引き続き、今度は坂下好恵さん編です。 『そもそもLF97に出てないじゃないか』 とかいった理屈は、私には通用しませんので、 あしからず(爆)。 http://www.fit.ac.jp/~s9482043/HomePage/cat_s.html