続・交霊会 投稿者:あり
 初めて書き込みます。あらかじめ言っておきますが先輩のファンの人・・気を悪くしないでください。あと、ネタかぶってても盗作では絶対ありませんのであしからずです。
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 いつもと変わらない午後の昼休み。いつもと変わらない中庭のベンチ。
 隣には先輩・・・来栖川先輩が小さなからになった弁当箱を膝に抱えてぼーっと空を見上げている。
 いつもと変わらない先輩。可愛くて、綺麗な先輩。もちろん、外見だけではない。優しくて・・・優しくて・・・優しくて・・・?その言葉しか思い浮かばない。
 あの・・二人が結ばれた日から数ヶ月。実は、なにも進展がないのだ。俺は、先輩の・・・芹香のことは学校で会うだけで、放課後はセバスの野郎が待っているので一緒に帰れない。休日にどこかなんて・・・。
 ふと思った。

 先輩は俺のことが本当に好きなのだろうか。
 
 俺は好きだ。誰よりも。もっと先輩のことを知りたい、見たい、愛し合いたい。「・・・・・」
「えっ、どうしましたかって?」
 俺はそんなことを考えていたらいつの間にか仏頂面になっていたようだ。
「なんでもないけど・・」
「・・・・・」
「先ぱ・・・芹香。」
「・・・・・」
「キス、していい?」
「・・・・・」
 先輩は少し戸惑って、こくんと頷いた。そして俺は先輩の頬に手を当てしずかに唇を唇に近づけた。先輩は、微かに震えていた。
 それから少しの沈黙の後、俺ははっきりとこう言った。
「芹香は俺のこと好きか?」
「・・・・・」
「芹香はいつもおれと一緒にいたいと思うか?」
「・・・・・」
「芹香は・・・」
「・・・・・」
 そこまで言うと俺は先輩がうつむいて困っていることに気がついた。
「ご、ごめん。」
「・・・・・」
「おれ、おれ・・・」
「・・・・・」
 なでなで。先輩が俺の頭を撫でている。そして小さい声で
「・・なにがそんなに不安なんですか?」
「おれ、ごめん・・・」
 それ以上言葉を交わせれなかった。


 今日の授業が終わり明日からは夏休みという俺にとって最大の行事(?)が始まる。俺は6時間目にやった今時中学生でもやらない夏休みの過ごし方と銘打った計画表を見ながら思った。

 自分の机に突っ伏す俺。  
 先輩。やっぱり・・・あのときの先輩は、惚れ薬のせいなのか・・。
 俺の、今一番の考え事は、そのことだ。
 あの時の先輩。
 二人で愛を確かめ合ったとき。
 もしかしたら、あの時のことを後悔しているのでは?
 本当は、いやだったんじゃないか?
 あの後、泣いていたんじゃないのか?
 誰にもそのことを言えずに、一人で・・・苦しんでいたんじゃ?
 ・・・・・あーーーーっ、もう。何でこんなことで悩まなくちゃならないんだ。
 俺はふっきれたように眠る体制から勢いよく体を仰け反らす。
 しかし、本当にどうすればよいのか解らなかった。
 俺がそんなことを問いつめても、先輩は本当の答えを出さないだろう。
 そして、俺を傷つけまいとするだろう、優しい先輩は。

 俺はそれ以上何も考えなかった。いや、考えれなかった。
 そして、時がどうにかしてくれる・・・曖昧で他力本願の答えを自分自身の中で肯定するほか無かった。
 そして心の中でこう言った。
 ”藤田浩之の夏休み、先輩ゲッチュウだいさくせーーーん!!どんどん、ぱふぱふーー!!”
 自己満足のタイトルコールをして、夏休みの計画を考える。俺って・・
 

 俺は3年生の教室へ急いだ。
 いた。先輩は教室に一人机を見つめるようにうずくまっていた。
 よし。昼休みは湿っぽくなってしまったからここでいっちょ・・・
 俺は音もなく先輩の後ろの机に近づく、よしここで、ポルターガイスト現象だーー。
 さっきの暗い気持ちを綺麗さっぱり洗い流し、俺は机を揺らし始めた。
 まったく。この性格が俺の長所であり、短所だな。
 がたがた。
 ・・・・無反応。
 なにくそと思いもうちょっと強めに、
 がたがた。無反応。
 ちくしょー!!がたがたがたがたがた。無反応。
 はぁ。俺は息をつき、
「せーーんぱい!!」
 無反応。???
「せ、ん、ぱ、いーー!!」
 大声で叫ぶと、びくっと先輩の体が動き、声のしたほうに顔を向けた。
「・・・・・」
 うっ、そ、そんな虚ろな目・・・綺麗だ。
「先輩、どうしたの?」
 そういうと、先輩はじゅるっと口を拭った。そして小さなあくび。
「・・・・・」
 どうやら先輩は眠っていたようだった。先輩は、自分のはしたない格好を見られたと思い、第二発目のあくびをかみ殺す。恥ずかしかったのか、少し顔が赤い。
 ううっ、なんて可愛いんだ!!そして俺は少しの優越感を覚えた。
 先輩の・・・芹香の新しい一面を見れたことだ。多分あの顔は肉親でも見ていないかも!!俺は、なんだかとても嬉しくなり、自然と顔がにやけていた。
「帰ろっか、先輩。」
「・・・・・」
 まだ赤い顔を、こくんとさせ俺達は教室を出た。

 何気ない女の仕草を見て男はドキッとする。そんなことはあり得ないと思っていたが・・・。
 廊下を一緒に歩いているときにそんなことを考え、思い出し笑いをかみ殺す。いや、笑いというよりにやけか。
 あっ。そうだったそうだった。夏休みのことを切り出さなくちゃ!!えーっとまず・・・。
「先輩。」
「・・・・・」
「夏休み・・・のことだけど。」
 俺はできるだけさりげなく切り出したつもりだ。
「なんか、用事とか・・・ある?」
 俺は探るような目で聞いてみた。
「・・・・・」
 こくん。
「・・・・・」
「えっ、イギリス?ロ、ロンドン?」
 やっぱそうだよなー。相手は超一流の来栖川のお嬢様。避暑地も超一流というわけか・・・・。
「いつ、出発?」
 しかし俺はあきらめなかった。出発までの間なら・・・・
「・・・・・」
「えっ、あ、明日?マジに?」
 先輩はただただ頷くだけ。
 ・・・で、でも帰ってきてからでも遅くない。そう思い、
「いつ・・帰ってくるの?」
 そういうと先輩は寂しそうな顔をして、
「8月・・・31日」  
「・・・・・」
「・・・・・」
「まじに?」
 こくんと頷く先輩。 
 見事に粉砕された俺の計画が頭の中でのたうち回る。
 小さなため息をつく。先輩にわかるように。
 俺はひどい奴だ。
 俺が、こういう仕草をすれば、優しい先輩は自分のことを呪うはずだ。
 俺は、故意に先輩を傷つける。
 やっぱり先輩はうつむいている。
 そして少しの沈黙・・・
 先輩が決心したように俺にこう言った。
「・・・・・」
「えっ?今日の夜?学校にこれますかって?交霊会?」
 こくんと頷く先輩。心なしか少し先輩は顔を赤らめている
 そういえば・・・春休みにそんなことがあった。次は夏ごろと言っていたけど、もうそんなに立つのか。あのときの電話はびっくりしたな。
 しみじみと考え、
「うん、いくいく。」
 よっしゃ、ここで一発、夏休み分の思い出を作るぞーー!!
「・・・・・」

 午後8時。いくら夏といってももう辺りは暗く、いつもの公園はたくさんのアベックが徘徊している。少し耳を傾ければ、喘ぎ声さえ聞こえてくるようだ。
 その公園のベンチに先輩がうつむき加減に腰を下ろしている。
 こんな所は脅かしがいもあるのだが、そんな空気ではなかった。
「せーんぱい。」
「・・・・・」
 いつもの虚ろな瞳で俺を見つめる先輩。  
 先輩の私服は始めてみた。白いブラウスにしろいスカート、全身真っ白で夜にはとても目に付く。
 はぁーーっ。やっぱかわいい。
 
 学校へ上る坂道。いつも通る道も夜にはとても印象が変わる。電灯がぱちぱち音がする。こんな所に電灯なんてあったのか。電灯の下に先に歩いている先輩がさしかかった。
 んっ?おおっ先輩の白いブラウスが透けて、ブラジャーのひもが見える。
 いろっぺーー!!あれだけでぬけそうだ。っておいおい。

 夜の学校。やはりとても不気味だ。いつもの場所から学校へ忍び込む。
 いつもの廊下、いつもの教室、しかし夜という雰囲気が学校を、俺達を支配していた。
 月明かりだけを頼りに先に行く先輩は突き進む。
 先輩の後ろ姿を見ている。綺麗なつやのある髪、病弱とも言える肌の白さ。綺麗なうなじ。細い手首。月明かりでそれらは映える。
 心配なのか、途中何度もちらっと俺の方を横目で見る。
 そのたび俺は抱きしめたいという衝動にかられる。後ろから抱きしめて髪のにおいを嗅ぎたい。先輩の首筋に下を這わして感じさせたい。味わいたい。 
 いやっ、ダメだダメだ。感情を抑えろ!そんなことをしてしまったら元も子も・・・
 ちらっと先輩がこちらを見る。
 うーーーーーっっっっ!!!くっこんなことでっ!
 あっ!!や、やばい立っちゃ・・・
 そんな欲望を何とか理性で押さえ込み部室の前にやってきた。
「・・・・・」
 俺の様子を気づいたのか気づいていないのか先輩は少し赤い顔をしてどうぞと部室のドアを開けた。
 きぃーーーー。
 ちょうつがいの金属が悲鳴を上げるように音を立てる。
「ねぇ、先輩。」
 俺は思いだしたように聞いた。
「ほかの部員って今日も来てる?」
「・・・・・」 
「今日は来てないって?ふーん」
 まじ?これって・・・
 俺は平静を装っていたが心の中ではもう・・・う、ううぅせんぱいーー。
 そのことを知ってか知らずか、先輩はまた一段とポッと赤くなった。
「おじゃましまーす。」
 部室の中は真っ暗だが・・・ん?気配が・・する。
 先輩か?いやいや、先輩は月の光をバックにドアのところで俺の方を見ている。
 そして先輩は俺に尋ねる暇も与えず、
 きぃーーーーばたん。
 静かにドアが閉められる。
 かさっ、かさかさ。
 何だ?布を擦る音か?
「せ、先輩?なんかいるの?」
 暗くなった部屋に何処にいるとも所在のつかめない先輩に話しかける。
「・・・・・」
「えっ?なに?聞こえないよ、先輩。」
 いつもはそばにいてやっと聞こえる声なので声の方向さえ解らなかった。  
 そのとき・・・何かが俺の足に触れた。
「先輩!せ・・せんぱぱぱいいぃぃぃっっ!!な、な、なんか、足・・に・・」
 その物体は、生きている。そして、かなり息使いが荒い。
 襲われる雰囲気はない・・と思う。
 な、なんなんだろう、ほんとに。
 人が暗闇を恐れる理由が痛いほど解る。
 俺の普段働かない想像力というものが活発になる。
 
 そして先輩がろうそくをつけ物体の正体を明らかにする。
「い、犬?」
 野良犬だろうか、少し・・いやだいぶくすんでいる毛を少しだけ震わせ、尻尾を振りながらこっちを見ている。
 先輩はこくんと頷き、聞こえる声で、
「ボスさんの霊を呼び出しても、媒体となる者がありませんとこの前のようなことが起こってしまうので・・・。」
 先輩は言葉を選ぶようにゆっくりはっきりと言った。
 そして先輩は少し頬を赤らめほほえみながらこう言った
「浩之さん・・・怖かったですか?」
「い、いやべつに・・。」
 強がりを見せる俺に先輩はいつもよりにこやかに俺に微笑みかける。
 俺も負けじとにへら笑いを先輩に返した。

 いつもの可愛い魔道士ルックに着替えた先輩が魔法陣らしきものを古びた布に怪しい本を見ながら書き込んでいる。
 俺は、小さいとも言えず大きいとも言えない犬と遊びながら考えていた。
 今夜の先輩はなんかおかしい。
 今も魔法陣らしきものを書きながらちらっちらっとこっちを見ては頬を赤く染め、目が合うとそそくさと目線をはずす。
 なんか今日の先輩は表情豊かでおれといるのを楽しもうとしている感じがする。 誘っているのか?いやいやそんなことは・・・あったらいいな。   
 うーーん。どうしてだろう。やっぱり、俺と夏休みを一緒に過ごせないので責任感を感じて俺を喜ばせようとしているのか?
 また目があった。
 しかし先輩はすぐに目をそらしてしまう。
 やっぱ誘ってんのかな?よし、じゃぁ・・・でも、間違ってたら嫌われるだろうなー。
 うーーーーーっ、これじゃ蛇の生殺しだーー。

「・・・・・」
「えっ、準備ができたって?」
 そんなことを考えている間に先輩はもうスタンバイしていた。
「ごめん、ごめん。んで、俺はなんかすんの?」
 さっきまでの下心を微塵もみせず、先輩に尋ねた。
「・・ま、魔法陣の・・な、中に入って、犬・・が出ないように押さえて・・あの・・いてください・・。」
「う、うん。わかった。」
 先輩は震える声でやっとのことでそういった。???なぜ?
 とにかく、俺は言われたとおりワン公を抱き上げ魔法陣が書いてある布の中心にのっかった。

 先輩は震える声で呪文の詠唱を始めた。緊張でもしているのだろうか。
「・・・to・・p・・・・・ks」
 おおうっ、英語・・だろうか、先輩は外国語で呪文を詠唱していた。
「y・・lms・・・・・dr・・・浩・・・・芹・・・jms・・」  
 んっ?俺の名前・・・だろうな。あと、芹香って・・言ったのか?
「k・・ks・・・・y・・kf・・・@@@@!!」
 先輩がはっきりとした口調で唱え終えた。終わったのか?
「先輩?おわっ・・・・・・・・・」
 
 喋れない。
 喋り方を忘れてしまったかのように。
 あれ?何だろう。体が宙に浮くような。
 目の前が真っ白になってなにも見えない。なにも聞こえない。
 でも、いい気持ちだ。
 体の何処にも力を入れなくていい感じ。
 すがすがしい脱力感。
 人は母のおなかにいるような感じと言うが、まさにそんな感じだった。
 優しい光が俺を包む。
 やがてその光が具象化され先輩になった。
「先・・芹香・・・」
 俺は夢を見ているのだろうか。
「浩之さん。」
 いつになく先輩の声がはっきりと、通る。
 何を思うか先輩は、俺にこう問いた。
「私は、あなたのことが好きです。それは、あなたも同じですか?」
 光に包まれた先輩が俺に説いてくる。
「はい」
 なぜそんな質問を聞くかも忘れ、俺は敬語で答えた。
「私はあなたのことをもっと知りたい、見たい、愛し合いたい」
「お、俺も、同じ、です」
 なんか・・体が熱い。
 話すのが、今の俺にとって苦痛になる。
 しかし、それと同時に芹香のことをいつもより愛おしく思えてならない。
 前にもこんな・・・あっ、惚れ薬の時・・・
 あの時と同じように芹香を見ているだけで興奮してしまう。
 そして・・・や、やっぱ立ってる。
 冷静に自分の様子と置かれた現状を把握しようとする俺に、
「今、私とあなたは、精神だけの状態で話しています」
「精・・神?」
「わかりやすく言えば・・・幽体離脱して話をしている、といったところでしょうか」
「わか・・る・・といえば・・わかる・・けど・・」
 俺は、自分の体に鞭打って芹香と話す。
「私はこの状態には慣れていますけど・・浩之さんは、苦しそうなので頷くとか、顔や身体の表現で話してください」
 俺はいつもの芹香のようにこくんと頷く。
 芹香も言っていたがかなり辛かった。
 そして、芹香はいつもと違ったちゃんと聞き取れる声でこう言った。
「浩之さん・・・私は、イギリスなんかに行きたくありません」
 芹香は少し悲しそうな顔で俺を見つめる。
「私、本当は・・・あなたとずっと一緒にいたい」
 俺は頷いて、俺も同じ、というジェスチャーをする。 
「私・・・一ヶ月もあなたと会えないなんて・・・耐えられない!!」
 こんな先輩の、一生懸命で情熱的な顔は、初めて見る。
 あの時でも、こんな熱のこもった声を聞いたことがない。
「実は・・・私は、こういう世界に一人で行くことが多いんです・・誰も・・学校でも家でも話す人はいませんでしたから・・」
 さっきの情熱的な顔から一変して少し寂しそうな顔になる。
「だから・・・普通の世界では、「話す」という行為が、余りできなくなってしまって・・」
 俺は、真剣に芹香を見つめる。
「けど、この世界では、言いたいことが言えます・・だから・・あなたに・・世界中で誰よりも愛しているあなたに私の気持ちを伝えたかっ・・・」
 そこまで言わせず、俺は芹香の体を抱きしめる。
 うぐっ・・・いてえ。
 体を何処も動かそうとしなければとてもここは気持ちがいいのだが・・
「や、やめて・・そんなことをしたらあなたに苦痛が・・・」
 俺は芹香の忠告に耳を貸さず、抱きしめ、キスをする。
 き、きもちえぇっ。
「あ、あんっ・・」
 俺はキスだけで未だ味わったことのない快感を覚えた。それは芹香も同じだった。
「こ、この世界で・・は、ぁん、す、少しの、こ、ことで・・あぁ、とても、うっ、感じて・・し、しまうの・・あぁぁっ」
 惚れ薬の時みたいに、芹香と俺は、体が敏感になっていた。
 芹香の目がとろんとなっている。フレンチキスだというのに。
 まぁ俺も感じていたが、声を出すのが痛かったので、声をかみ殺した。
「浩・・ゆき、さん」
 芹香は、目でオッケーサインを出した、と思う。
 よっしゃ、一発やったるでーーー!!と思った瞬間。
 今度は、はっきりした声で、
「ひ、浩之さん!!」
 芹香は、とろんとした目から急に真剣な目で俺を見つめる。
 何かに気づいたようだけど?
 何?というジェスチャーを身振り手振りをして伝える。
「や、やばいです。精神の糸が、切れかかってます。」
 ん?何だ?精神の糸って?
「浩之さんの後頭部に、白い糸がついていますよね?私にもついていますが・・」 といって芹香は俺に後頭部を見せつけた。
 ん、これか?
 と思い、苦痛に耐え少しだけふれてみる。
「あっ、あああぁ触っちゃ・・・いやぁ・・ダメ・・感じるの」
 ふふん、俺は好奇心とスケベ心でもみもみしてみると、
「だ、だ・・だめーーーーっっっっっっっ!!ああっっっーー!!いっ、いっちゃうぅぅぅーーーーーーーっ!!」
 あっけなく果てた芹香。
 ・・・なんかものたりない・・・。
 達したばかりの芹香が震える声でこう言った。
「は、はやく・・もどら・・・ないと・・・し、死んで・・しまいま、す。」
 へ?なんのことだ?
「精神、の・・糸が切れてしまうと・・二度と、自分の・・体に帰れません・・・」
 少し冷静を取り戻した芹香がそう言った。
 えっ?や、や、や、やばいじゃん!!!
 俺は身振り手振りでそのことを伝える。
「大丈夫、助かります」
 ほっ・・胸をなで下ろした俺に芹香がこう言った。
「だけど・・・」
 えっ、俺の顔がひきつる。
「今、私は、性的エネルギーを使ってしまったので・・戻れることは戻れるんですが・・多少副作用が・・・」
 それでもいい、生きれるんなら、そう思い俺は必死にぶんぶん頭を縦に振った。
「わかりました」
 芹香はそう言うと・・・
「・・A・・・r・・・・・s・・・・y・・・」
 と、またどこかの言葉の呪文を唱えた。
「f・・・・・lk・・・p・・・浩・・・芹・・・」
 俺の名前だ。
「jms・・・pjh・・・th・・・@@@@!!」
 と、唱えると・・・
 うわっ・・・・目、目の前が・・・・うっまぶしい・・・
 
 不思議な空間だった。
 俺は、光に包まれたと思うとその光がはじける。
 はじけた後の虚無感。
 と同時に、俺の視界は黒く染まる。
 暗くて何も見えない。
 何か、明かりを、光を。
 と思った瞬間、俺の目の前に小さな、だけど俺を照らすとても明るく、優しい光を見つけた。
 その光が芹香だとすぐに俺は気づいた。
 俺はその光に触れてみる。
 その瞬間・・・・俺はとてつもない光景を見た。

 それは、小さい頃の芹香がいる。そこに、俺が登場して、キスをしている。
 と思ったら、今度は、七五三だろうか、着物を着た小さな芹香に俺はキスをしている。
 と思ったら、今度は泣いている芹香に、小学校卒業の時の芹香に、中学校の制服を着た芹香に、スクール水着を着た芹香に、本を読んでいるとき、食事をしているとき、風呂に入っているとき、占いをしているとき、少し笑っているとき、ぼーっとしているとき赤ん坊のとき・・・・・・・・・
 いろんな芹香に、いろんな格好で、いろんなことをしているとき、いろんな状況でキスをしている俺と芹香を見た。
 それは、とても官能的なものであり、美しいものであった。
 そして俺は、見つけた。
 一人だけキスをしていない芹香を。
 芹香は、白いブラウス、白いスカートで公園のベンチで誰かを待っていた。
 ・・・多分、今日のことだろう。
 俺を待っている。俺は、直感的にそう思った。
 俺はその芹香に近づく。
 芹香は俺に気づきすっくとベンチを立つ。
 周りにいた芹香とキスをしている俺達の姿はもう無かった。
 俺は、キスをした。
 下を向いている芹香に、有無を言わさず、激しくキスをした。
 舌を入れる俺、それに答える芹香。

・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・

 何分そうしていただろう。
 お互い息をするのも忘れ、いやらしい音をたてた。

 行為が終わった後、芹香は涙を流しながらは俺の目を見つめこう言った。
「ずっと、ずっと待っていました。もう、もう私を離さないで!」
 俺は優しく目を細め、こう言った。
「誰が離すもんか・・・俺の宝物だ。何処へも行かせやしない!ずっと俺のそばにいさせる!!」
 そう言ってまた濃厚なキスをした・・。

・・・・・
・・・・・
・・・・・

 んっ!俺は目を覚ました。
 うぁっ、なんか頭痛ぇ。
 なんかだりぃなぁ、体の節々が痛ぇ。
 うーん・・あれは夢だったのかな?
 んー・・でも妙にリアルだったような・・・
 俺が目を開けたそのとき・・・ん?この顔・・俺?
 目を開けて最初に飛び込んできたのは、俺の顔だった。
 何だ?鏡か?
 俺は寝ぼけ顔で、冷静にそう判断した。
「・・・・・」
 んっ?今なんか俺が話したような・・・?
 俺ってなんか言ったっけ?
「・・・・・」
 大丈夫ですか・・今、俺そう言ったのか?
 あれ?ちょっと待てよ・・エーと、確か・・・
 俺が物事を整理しているとき、目の前にいる俺じゃない俺は聞き取りにくい声でこう言った。
「あの・・やっぱり、精神が肉体に戻るときに、副作用が生じてしまったようです」
「・・・・え?せ、芹香?」
 やっぱ夢じゃなかったのか?
 と声を出したと同時に、何か違和感を感じた。
 あれ?俺のこの声・・・・芹香?
「あーあーえーえーあいうえお、かきくけこ・・芹香先輩の声・・?」
 こくんと頷く俺じゃない俺。
「あの・・なんか鏡なんか・・・」
 そう言うと俺じゃない俺は部室のロッカーから怪しげな鏡を取り出し、俺に手渡した。
 おそるおそる鏡を見てみると・・・
「・・・・・」
 声も出ない俺。そこに写っていたのは紛れもない芹香だった。
 艶のある綺麗な髪、色白ですべすべな肌。
 あっけらかんとした顔をしている。
 ・・・ちょとまて・・・つーことは・・・
「もしかして・・・芹香先輩?」
 俺じゃない俺に俺は尋ねた。
 こくん。
 俺じゃない俺・・俺のかたちをした芹香は頷いた。
 これが副作用・・・ははは・・
 顔がひきつる。
「あの時・・浩之さんが・・あの、その、精神の糸を、触らなければ、こんなことには・・・」
 先輩は、恥ずかしめな顔をして静かにゆっくりそう言った。
「あの時は・・・ごめん」
 先輩の聞き慣れないはっきりとした声でそう言った。
 でもあの時は仕方がない。
 あれで触らなかったら男がすたる。俺は、そう自分に言い聞かせる。
 いやいや、それより解決策だ。
「先輩・・どうしましょう・・?」
 俺は、芹香のかわいらしい声で俺のかたちをした先輩に尋ねた。
「・・とりあえず、もう一回精神の状態にならないとどうにもなりませんが・・」
「じゃあもう一回・・」
「そ、それが・・できないんです」
 俺の声で俺に敬語を使う・・・おかしな光景だ。
「なんで?」
「その・・もうエネルギーを使い果たしてしまったので・・今日はもう・・」
「・・・・・」
 言葉を失う俺。
「じゃ、じゃあいつまでにエネルギーってのは回復するの?」
「えっと・・見当がつきませんが・・・一ヶ月ぐらいだと」
 俺の声は、とても小さく聞き取りにくい。
「・・・・・」
「・・・・・」
 互いに言葉を失う。
 だけど・・裏を返せば・・・
 そして、俺は突然先輩の声で話を変えた。
「先輩・・精神世界のこと・・覚えてる?」
 少し恥ずかしめに芹香は俺の顔で頷く。
「あの・・世界中で一番愛してるとか、一ヶ月も離れたくないって・・本心?」
 芹香は俺の顔を真っ赤にして小さくこくんと頷く。
「そっか・・じゃあ・・一ヶ月ずっとこのまんまか・・・イギリスとか・・・どうなるんだろうな・・」
 もう先輩は、俺が何を言いたいのかを理解するように俺の顔で俺を見つめる。
 芹香は、目を見開いて次の言葉を今か今かと待ちつづけている・・と思う。
 俺は、ためるようにしてこう言い放った。
「夏休み・・ずっと一緒にいた方がいいと思わない?ほらやっぱまずだろう、誰かにばれたとしたら・・イギリスだって、この状態じゃいけっこないし・・」
 俺は少し顔が赤いことを悟られまいとし、うつむき加減でつなげた。
「やっぱ俺も・・せんぱ・・芹香と一ヶ月も離ればなれになるなんて・・・耐えれない・・」
 可愛い声でそこまで言うと・・俺のかたちをした芹香が涙を流して俺の声でこう言った。
「私・・幸せ!!」
 俺の野太い声を発して芹香は俺の・・先輩の体を抱きしめる。
 俺に抱かれる俺・・・うーん。
「先輩・・愛してます」
「わたしも!!」
 そう言うと先輩は俺がするみたいな濃厚なディープキスをかました。それも舌入れで。
 うっ、なんかやだなぁ自分で自分にキス・・おえっ・・。
「なんか・・一ヶ月後には、二人してナルシストになってたりしてね?」
「ふふふっ」
「芹香先輩・・・二人で、男と女の両方の快感を分かち合いましょう。」
 俺が女言葉でそう言うと
「お、おう」
 と先輩は俺のまねをして返すのだった。



 今考えると、犬の交霊会なんてうそっぱちだったんだろう。
 多分こうなることを予測していたんじゃないかと俺は思えてくる。
 可愛い芹香のちょっと変な愛情表現。   
 不器用な愛だけど・・・
 俺は、一生この人を護り続けるんだろう絶対。
 絶対・・手放さない、俺の一生の宝物だから・・・。   
  
                             <終>

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 ほえーーー。疲れました。初めましてです。
 いやーほんとに、ごめんなさい。先輩ファンの人。ちょっと淫乱・・かな?と、書いている自分も思ってしまいました。ほんとごめんなさい。あと、話もつながってなかったし・・・。
 二週間ぐらい前に「TH」を買って、最初にクリアしたのが先輩でした。いやーはまりました。夢にまで出てきましたから。(危ないって)
 実は全くリーフという会社も「TH」という作品も知りませんでした。もちろん恋愛ものもエロゲーものもこれが初めてです。恋愛ものっていうと「ときめも」しか浮かばないんですけどそれをやっている人をとても軽蔑してましたからなんかカルチャーショックって感じですわ。
 何はともあれ「リーフ」さん有り難う、スタッフさん有り難う、「To Heart」ありがとう!!といいたいです。