新世紀マルチエリオン(謎) 投稿者:有馬 瞬


(謎)の方です。
やたら長くて、たいして意味はありません。
読み飛ばしてもらった方がいいかも・・・

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第参話とらない、電話

その日の放課後、浩之は一年上の橋本先輩に体育館裏に呼び出された。
何故か、バスケ部の矢島もいた。
「おい、下級生!」(橋本)
「下級生って、俺には藤田浩之って言う立派な名前が・・・」(浩之)
「お前がマルチのご主人様だっていうのは本当か?」(橋本)
橋本が浩之の襟首を掴み上げる。
「そ、そうだけど・・・」(浩之)
== ばきぃぃーーーっっっ! ==
浩之が戸惑いながら答えるや否や、橋本が殴りかかった。
「なら、昨日のあれもお前の仕業だな!」(橋本)
「昨日のあれって?」(浩之)
「駅前のパソコンショップのことだよ。」(矢島)
# ・・・昨日、来栖川電工中央研究所−−通称『リーフ』(<おいっ)
# −−の指令で、駅前のパソコンショップ『ア◯ライド』に出現が確
# 認された敵「To Heart」を殱滅するためにマルチを連れて出動した。
# ・・・したのだが・・・
「あそこをマルチを使って潰したのはお前だろう!」(橋本)
== ばきぃぃーーーっっっ!! ==
再び浩之の頬に拳が飛んだ。
# 出動し、「To Heart」を壊滅したまではよかったのだが・・・
#    『ああっ!』
#    ばきばきばきっっっっ!!
#    『きゃっっ!』
#    ぱりぃぃぃぃーーーーーーーーんっ!!!
#    『ごっ、ごめんなさぁーーーーいっっ!!』
#    めきめきめきっっ、ずずぅぅぅーーーーーーんっっっ!!!!!
# ってな感じでいつものように店まで崩壊させてしまった。
# 店の親父の背中が妙に白く感じた、そんな変わらない予感・・・
「お前のせいで、俺が汗水垂らして工面した金持って期待に満ち溢れながら店に向かったのに、
 あれ無いやってな感じで店が無くなってて、深い悲しみと絶望と虚無感に囚われたんだぞっっ!!
 俺の『同◯生2win95』と『鬼畜王ラン◯』を返せっ!」
目を血走らせながらながら橋本が食って掛かる。
「お前はマルチのご主人様だからっていい気になってるかもしれないがな、俺には彼女がいないんだぞっ!」(橋本)
「でも先輩もてるじゃないですか。そう言えば、(ピー)とつきあってるとか・・・」(浩之)
「あっ、馬鹿・・・」(矢島)
矢島が止めようとしたが、時すでに遅く、橋本はさらに噴怒の形相になる。
「そうだ、あれがけちの付き始めだったんだ。
 (ピー)の奴、気の有りそうな素振りだったんでその気になってやったのに、
 急に掌を返して『さよなら』なんて言いやがって。
 さらに、何故か次の日には有ること無いこと学校中の噂になってて、先公には呼び出されるわ、
 女子には近寄っただけで逃げ出されるわ。一体、俺が何したってんだ!」(橋本)
絶叫する橋本の隣で矢島が無言で泣いている。
「とにかく、この上お前に唯一の楽しみまで取られたんだ、2〜30発お前を殴らないと気が済まんっっ!!」(橋本)
浩之には状況が容易に想像できた。
(確かに『ア◯ライド』は壊してしまったしなぁ。)
仕方なく浩之は2、3発黙って殴られてやった。
まだ殴ろうとする橋本を矢島が止め、二人は去って行った。
(マルチ、もっとしっかりしてくれよ。)

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「探査システムに反応が!パターンは青、『TH』です!!」(雅史)
「浩之さんに連絡を!マルチエリオン、出動!!」(千鶴)
今度の『TH』は商店街の『ベス◯電気』に出現した。
早速、現場にたどり着いた浩之とマルチは、フロアの一角にあるパソコンコーナーに
毒電波を放出している『TH』を確認した。
「マルチ、毒電波を中和してロケットパンチだ!!」(浩之)
「は、はいっ!!」(マルチ)
毒電波を放出しながら『TH』に照準を合わせるマルチ。
# 今回は無事に済みそうだ。つまずきそうな小石も、バナナの皮もない。
# 心配してた電気コードも見当たらない。
浩之は安堵の息を漏らした。
マルチの腕からロケットパンチが放たれようとした瞬間!
『わんっ!』(客の連れている犬)
「あっ、犬さんですっ・」(マルチ)
くるっと振り向くマルチから放たれた『腕』は浩之の鼻の頭をかすめ、後方20mにある
34型ワイドテレビに命中した。
爆発して火があがり、さらなる誘爆を引き起こす。
「あ、ああっっっ。」
あせったマルチの振り回す手の軌道には商品のフロッピーの山。
がらがらがらーーーーーっっっ!!!
「あ、あああっっっっ。」
すて〜〜〜〜〜〜んっ!
慌てて拾おうとしたマルチはコードに足をとられてころんだ。
しかも、その手にはとっさに掴んだテーブルクロスが(笑)。
たちまち起こる大響音の中、浩之は呆気にとられていた。
逃げ惑う客の中、母親に連れられている子供が浩之を指差して笑った。
「あははは、ねぇお母さん。あの人キチ(ピー)だよ。」
確かに鼻から血をだし、両肩を落し、口を大きく開けて呆然としている浩之はキチ(ピー)
に見えただろう。
いつもなら聞きのがすだろうが、今は気が立ってた。
瞬間、浩之の心を横切る憎怒。
『それ』は浩之とシンクロ中のマルチにも伝わった。
急激な刺激にマルチの内部で何かが変わった。
「うおおおおおーーーーーーーーーーーんんんんっっっっ、です。」
可愛らしい雄叫び(?)をあげながら走りだし、その子供をひったくる。
「ご主人様の悪口を言いましたねっ?!」(マルチ)
子供をぶんぶんと振り回すマルチ。
「うわーーーーーーーんっ、お母さーーーーーーーんっ(泣)!」(子供)
「あ、貴方、何をするんですっ?!」(子供の母親)
「貴方も文句があるんですか。あっ、貴方も悪口言ってますね?」(マルチ)
変貌したマルチは目の合ったもの全てに襲いかかる。
「マルチ、やめるんだっ!」(浩之)
「ご主人様を馬鹿にした人は許せませーーーーんっっっ!!」(マルチ)
止めにはいった浩之をも振り払うマルチ。
浩之の声も聞こえていないようだ。
「恐らく急な刺激によってシステムが異常をきたしたんだろう。
 浩之君、直にマルチを回収して戻ってきてくれ。」(長瀬主任)
「回収って・・・」(浩之)
店内は既に地獄と化してた。
「・・・に、逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ!」(浩之)
浩之は自己暗示を始めた。

浩之とマルチから少し離れた所。
そこには腰を抜かして座り込んだ橋本と矢島の姿があった。
もしかして『ベス◯電気』に、と思って来てみたのであった。
「ご主人様の怒りっ!!」(マルチ)
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ
 逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ・・・」
  (浩之、マインドコントロール中)
「あ、あれがマルチ・・・お、俺、殺されるっっっ!!」(橋本)
「・・・謝るんです・・・」

日が暮れようとしていた。

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・・・夜。
マルチは内部電源が切れた後でようやく回収され、すぐ修理にまわされた。
浩之は精魂疲れ果ててベッドの上に横たわった。
もう何も考えたていなかった。
ジリリリリリン、ジリリリリリン
電話が鳴っている。
ジリリリリリン、ジリリリリリン
放っておきたかったが、切れる気配はない。
ジリリリリリン、ジリリリリリン
「わかったよ、出るよ。」
仕方なく体を起こす。
ジリリリリリン、ジリリリ・・・ガチャ
「はい、藤田で・・・」(浩之)
「は〜い、志保ちゃんでーす。ねぇ、ちょっと聞いた聞いた? 今日『ベス◯電気』で・・・」(志保)
ガチャン!
出なきゃ良かった。心から後悔してると・・・
ジリリリリリン、ジリリリリリン
また鳴り始めた。
ジリリリリリン、ジリリリ・・・ガチャ
「ちょっと、いきなり切るなんてヒドイじゃ・・・」(志保)
ガチャン!
ジリリリリリン、ジリリリリリン
「しつこいっ!!」(浩之)
浩之は部屋へと戻った。
ジリリリリリン、ジリリリリリン
「もう、絶対でねーぞ。」(浩之)
ジリリリリリン、ジリリリリリン・・・
薄暗い家の中、電話の音がいつまでも鳴り響いた。

回線のむこうで橋本が受話器を握り締めて泣いていることを誰も知らない。

『ジリリリリリン、ジリリリリリン』

フェイド・アウト

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わざわざ読んで下さって、ありがとうございます。
要は、最後のパートを書きたかっただけです。
読むのに疲れたでしょうが、書くのも疲れました(笑)。
別に、橋本先輩が嫌いなわけじゃないですよ、念のため。